商品売買、主役は「三分法」です|仕入・売上・掛け取引の基本

この単元の標語:買ったら仕入、売ったら売上。売上原価は決算整理で求める。


① このページで学ぶこと

  • 商品売買を「仕入」「売上」「繰越商品」の3つの勘定に分けて記録する方法(三分法)がわかる
  • 商品を買ったとき・売ったときの仕訳が、現金取引でも掛け取引でも切れるようになる
  • 「買掛金」「売掛金」という後払いの約束を勘定で表せるようになる
  • 販売の仕訳でその都度 売上原価を計上しないという、三分法の最大の特徴を説明できる
  • 商品の仕入・販売の都度は繰越商品を動かさないことがわかる

② 基礎概念

商品とは

商品とは、販売する目的で仕入れた品物のことです。

文房具店にとってのノートは商品ですが、事務作業に使うために買ったノートは商品ではありません(消耗品費になります)。同じ品物でも「売るために買ったのか」で扱いが変わる、というのが簿記の見方です。

会社が長く使うために買った机やパソコンも、販売目的ではないので商品とは区別します(これは第7章の固定資産で学びます)。

三分法とは

商品売買の記録方法にはいくつかの種類がありますが、簿記3級の中心は三分法(さんぶんぽう)です。三分法では、商品売買を次の3つの勘定に分けて記録します。

勘定科目 5要素 使う場面
仕入 費用 商品を買ったとき
売上 収益 商品を売ったとき
繰越商品 資産 決算のとき

3つに分けて記録するので「三分法」といいます。

日々の取引で使うのは仕入と売上の2つだけ

3つのうち、日々の取引(期中)で登場するのは仕入と売上の2つです。

三分法では、商品を仕入れたり販売したりする都度、繰越商品を動かすことはありません。 商品を仕入れるたびに繰越商品を増やしたり、売るたびに減らしたりはしないのです。

繰越商品が動くのは決算整理のときです。期首に残っていた商品を仕入勘定へ振り替え、期末に残っている商品を繰越商品として計上する——この処理を通じて、当期の売上原価が求まります。

決算整理での具体的な処理は C14-T02「商品棚卸と売上原価の決算整理」で詳しく学びます。ここでは「仕入・販売の都度は繰越商品を動かさない」とだけ押さえてください。


③ 仕組み・理由:なぜ買った値段と売った値段を別々に記録するのか

コンビニがおにぎりを1個100円で仕入れ、150円で売ったとします。このとき儲けは50円ですが、三分法では販売の仕訳に「儲け50円」も「原価100円」も登場させません。買ったときに仕入100円、売ったときに売上150円と、別々に記録します。

なぜ、わざわざ分けるのでしょうか。

理由は、日々の記録を単純にするためです。

売るたびに「この商品の仕入値はいくらだったか」を調べて売上原価を計算する——これは、商品の種類が多い実際の商売では手間がかかりすぎます。おにぎり1個売れるたびに帳簿をさかのぼって仕入値を確認していては、レジが止まってしまいます。

そこで期中は「買った事実」と「売った事実」だけを淡々と記録しておき、売上原価は決算整理でまとめて求める。この割り切りが三分法の発想です。

決算整理で繰越商品を使うのも、この「まとめて求める」ためです。②で「仕入・販売の都度は繰越商品を動かさない」と説明したのは、そういう意味です。


④ 基本例

次の一連の取引を例に、仕訳の作り方を見ていきます。

4月5日 青森商店は、商品(ノート50冊)を ¥45,000 で仕入れ、代金は現金で支払った。 4月10日 青森商店は、商品 ¥80,000 を仕入れ、代金は掛けとした。 4月18日 青森商店は、商品を ¥60,000 で売り上げ、代金は現金で受け取った。 4月25日 青森商店は、商品を ¥120,000 で売り上げ、代金は掛けとした。


⑤ 仕訳例:思考の手順つき

仕訳1:商品を現金で仕入れた(4月5日)

手順どおりに考えます。

  1. 取引を読む:販売するための商品を買って、現金を支払った
  2. 勘定科目を決める:商品を買った → 仕入/現金を支払った → 現金
  3. 5要素を確認する:仕入は費用/現金は資産
  4. 増減を判定する:費用が発生した/資産(現金)が減った
  5. 借方・貸方を決める:費用の発生は借方/資産の減少は貸方
  6. 金額を記入する:どちらも ¥45,000
借方科目 金額 貸方科目 金額
仕入 45,000 現金 45,000

仕訳2:商品を現金で売り上げた(4月18日)

  1. 取引を読む:商品を売って、現金を受け取った
  2. 勘定科目を決める:商品を売った → 売上/現金を受け取った → 現金
  3. 5要素を確認する:売上は収益/現金は資産
  4. 増減を判定する:収益が発生した/資産(現金)が増えた
  5. 借方・貸方を決める:資産の増加は借方/収益の発生は貸方
  6. 金額を記入する:どちらも ¥60,000
借方科目 金額 貸方科目 金額
現金 60,000 売上 60,000

ここで注意してほしいのは、売上の金額が売った値段の全額 ¥60,000 であることです。

「仕入値との差額が儲けでは?」と考えたくなりますが、三分法では販売の仕訳でその都度 売上原価も売上総利益も計上しません(③で見たとおりです)。売価をそのまま売上に記録し、仕入原価はこの仕訳に一切登場させない。 これが三分法のルールです。

掛け取引:代金は「あとで」

商売では、取引のたびに現金をやり取りするのではなく、「月末にまとめて支払う」といった約束がよく使われます。これを掛け(かけ)取引といいます。

  • 商品を掛けで仕入れたとき、あとで代金を支払う義務が生じます。この義務を買掛金(かいかけきん)という負債の勘定で表します。
  • 商品を掛けで売り上げたとき、あとで代金を受け取る権利が生じます。この権利を売掛金(うりかけきん)という資産の勘定で表します。

仕訳3:商品を掛けで仕入れた(4月10日)

借方科目 金額 貸方科目 金額
仕入 80,000 買掛金 80,000

貸方が現金から買掛金(負債の増加)に変わっただけで、借方は現金仕入とまったく同じです。

仕訳4:商品を掛けで売り上げた(4月25日)

借方科目 金額 貸方科目 金額
売掛金 120,000 売上 120,000

掛け代金の決済

掛けはいずれ精算されます。このとき動くのは買掛金・売掛金と、お金の勘定だけです。

5月10日 4月10日の買掛金 ¥80,000 を普通預金口座から支払った。

借方科目 金額 貸方科目 金額
買掛金 80,000 普通預金 80,000

5月25日 4月25日の売掛金 ¥120,000 が普通預金口座に振り込まれた。

借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 120,000 売掛金 120,000

ここで仕入や売上は動きません。 商品売買そのものは掛けにした時点で記録済みだからです。買掛金を支払ったときに借方を仕入としてしまうと、同じ仕入が二重に記録されてしまいます。

支払えば買掛金という負債が消える(借方)、回収すれば売掛金という資産が消える(貸方)。「約束が生まれる仕訳」と「約束が消える仕訳」がセットになっている、と捉えると忘れません。

なお、売掛金・買掛金そのものの管理(得意先ごとの内訳や補助簿)は C05-T01「売掛金・買掛金」で詳しく学びます。ここでは「掛けは、いずれお金の勘定と振り替わって消える」という一巡を押さえれば十分です。


⑥ 間違いやすいポイント3つ

1.「商品を買った」からといって「商品」勘定を使わない

三分法では、期中に商品を仕入れたときに使うのは仕入です。

問題文の「商品を仕入れ」という言葉につられて、そのまま「商品」や「繰越商品」を選んでしまう誤りが最も多く見られます。商品を仕入れる → 仕入、と反射で出るようにしてください。

なお、2027年度からは「商品」勘定を使う別の処理方法(売上原価対立法)も3級の範囲に加わりますが、これは C03-T07 の専用単元で三分法と比較して学びます。混同しないよう、まずは三分法を固めましょう。

2.買掛金と未払金を取り違える

どちらも「あとで支払う義務」ですが、次のように使い分けます。

  • 商品の仕入代金 → 買掛金
  • それ以外の購入代金(備品など) → 未払金

簿記は本業の商品売買とそれ以外を厳密に区別します。問題文の「商品を」の一語が判断の分かれ目です(未払金は C05-T05 で学びます)。

売る側も同じ構造で、商品の売上代金は売掛金、それ以外は未収入金です。

3.売上に「儲け」を記録してしまう

売価 ¥60,000・仕入値 ¥40,000 の商品を売ったとき、売上を差額の ¥20,000 としてしまう誤りです。

三分法の売上は売価の全額販売の仕訳では、その都度 売上原価も売上総利益も計上しません。 分けて記録するからこそ「三分法」だと思い出してください。

同じ理由で、販売の仕訳に仕入原価を書き加えることもしません。 問題文にわざわざ原価が書かれていても、それは引っかけです。売上原価は決算整理で、期首商品・当期仕入・期末商品から求めます。


⑦ 試験での問われ方

商品売買は、日商簿記3級で最も出題頻度の高い分野です。

第1問(仕訳問題)

現金仕入・掛け仕入・現金売上・掛け売上の4つの基本形が土台になります。この単元の内容がそのまま出ることもありますが、多くは次単元以降の要素(返品・諸掛・手付金・クレジット売掛金など)と組み合わせて出題されます。

原価が問題文に書かれている売上の問題は取り違えやすい形です。売価だけを売上に計上してください。

第2問(帳簿・資料問題)

仕入帳・売上帳・商品有高帳といった、商品売買に関係する帳簿問題につながります(C03-T03・C03-T04)。

第3問(決算総合問題)

売上・仕入・売掛金・買掛金は決算資料の常連です。また決算整理では、期首商品・期末商品と繰越商品を使って売上原価を計算します。

仕入・販売の都度は仕入・売上だけで記録し、繰越商品は決算整理で動かす——この三分法の仕組みを理解しておくことが、第3問を解く前提になります。ここの理解があいまいだと決算問題全体が揺らぐ、土台の単元です。


⑧ まとめ

この単元の仕訳パターン一覧

取引 借方 貸方
商品を現金で仕入れた 仕入 現金
商品を掛けで仕入れた 仕入 買掛金
商品を現金で売り上げた 現金 売上
商品を掛けで売り上げた 売掛金 売上
買掛金を支払った 買掛金 現金・普通預金など
売掛金を回収した 現金・普通預金など 売掛金

三分法の3勘定

勘定科目 5要素 役割 使う時期
仕入 費用 期中の商品仕入を記録する 期中
売上 収益 商品販売による収益を記録する 期中
繰越商品 資産 期首・期末に残っている商品を資産として計上する 決算整理(仕入・販売の都度は動かさない)

⑨ 関連問題への導線

  • 一問一答:C03-T01「商品売買と三分法」(全12問)
  • 仕訳問題:C03-T01「商品売買と三分法」(全12問・初級8問/標準4問)
  • 前のテキスト:C02-T04「貸借平均の原理」
  • 次のテキスト:C03-T02「仕入・売上の返品と諸掛」

次の C03-T02 では、いったん売買した商品を返品した場合や、商品売買に送料などの付随費用(諸掛)が発生した場合の処理を学びます。


⑩ 2級への接続

三分法は2級でも商業簿記の土台として使い続けます。

2級ではこれに加えて、期末商品の評価(棚卸減耗損・商品評価損)や、収益をいつ・いくらで計上するかを定める収益認識の考え方が積み上がります。3級で「買ったら仕入・売ったら売上」を反射で切れるようにしておくことが、そのまま2級の学習速度になります。


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