① このページで学ぶこと
このページでは、商品売買の利益を計算するうえで土台になる売上原価と売上総利益を学びます。
- 売上原価とは何か(当期仕入との違い)
- 期首商品・期末商品の意味
- 販売可能商品の原価
- 売上原価 = 期首商品 + 当期仕入 − 期末商品
- なぜ期首商品を足し、期末商品を引くのか
- 売上総利益 = 売上 − 売上原価
- 売上総利益と当期純利益の違い
商品有高帳の記入方法(先入先出法・移動平均法)はC03-T04・C03-T05で学びました。ここでは、そこで求めた原価が利益の計算へどうつながるかを扱います。
② 売上原価とは
売上原価とは、その期間に販売した商品の原価です。
ここで大切なのは、当期に仕入れた金額とは限らないという点です。
- 当期に仕入れても、売れ残ればその分は当期の売上原価に入りません
- 前期から繰り越された商品でも、当期に売れれば当期の売上原価に入ります
売上原価は「いくら仕入れたか」ではなく、「いくら分が売れたか」を原価で表したものです。
③ 期首商品と期末商品
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 期首商品(期首商品棚卸高) | 前期末から当期へ繰り越された商品。当期に販売できる商品に含まれる |
| 当期仕入(当期商品仕入高) | 当期に仕入れた商品の原価。三分法では仕入勘定に記録される |
| 期末商品(期末商品棚卸高) | 当期末にまだ売れ残っている商品。資産として翌期へ繰り越される |
期末商品は、まだ販売されていないため当期の費用にはなりません。決算日の時点では会社が持っている財産なので、資産として扱います。
④ 販売可能商品の原価
当期に販売できる可能性があった商品は、次の2つを合わせたものです。
販売可能商品の原価 = 期首商品 + 当期仕入
期首にあった在庫と、当期に仕入れた分。この合計が「当期に売ることができた商品の全体」です。
⑤ 売上原価の公式
販売可能な商品のうち、売れ残った分(期末商品)を差し引けば、売れた分の原価が残ります。
売上原価 = 期首商品 + 当期仕入 − 期末商品
具体例で確認します。
期首商品 50,000円/当期仕入 300,000円/期末商品 70,000円
- 販売可能商品の原価 = 50,000 + 300,000 = 350,000円
- 売上原価 = 350,000 − 70,000 = 280,000円
なぜ期首商品を足すのか
期首商品は前期に仕入れたものですが、当期に販売される可能性があるからです。実際に当期売れたなら、その原価は当期の売上原価に含めなければ、売上と原価の対応がとれません。
なぜ期末商品を引くのか
期末商品はまだ売れていないからです。売れていない商品の原価を当期の費用に入れてしまうと、利益が実際より小さく計算されてしまいます。売れ残りは資産として翌期へ持ち越し、翌期に売れたときに翌期の売上原価とします。
検算に使える形
公式を移項すると、次の関係も成り立ちます。
販売可能商品の原価 = 売上原価 + 期末商品
計算後にこの形で確かめると、足し引きの向きの誤りに気づけます。
⑥ 「売上原価=仕入」ではない
三分法では当期の仕入を仕入勘定に記録します。しかし、決算整理前の仕入勘定の残高は、そのままでは売上原価になりません。
期首商品と期末商品があるため、決算整理前の仕入勘定の残高と売上原価は一致するとは限りません。期首商品と期末商品が同額なら結果的に一致する場合もありますが、先ほどの例では仕入勘定の残高300,000円に対し、売上原価は280,000円です。
三分法で売上原価を仕入勘定で算定する方法では、決算整理で次の2つの振替を行い、仕入勘定の残高を売上原価に対応する金額へ調整します。
| 振替 | 仕訳 | 意味 |
|---|---|---|
| 期首商品を加える | (借)仕入 / (貸)繰越商品 | 前期繰越分を当期の原価へ含める |
| 期末商品を除く | (借)繰越商品 / (貸)仕入 | 売れ残り分を当期の原価から外す |
この2本を通すと、仕入勘定の中で「期首を足し、期末を引く」という計算が行われ、この方法では決算整理後の仕入勘定の残高が売上原価に対応する金額になります。
先ほどの例で確かめると、300,000 + 50,000 − 70,000 = 280,000円。公式と一致します。
なお、決算整理前残高試算表を読み取って実際にこの振替を行う技能はC14-T02(商品棚卸と売上原価の決算整理)で扱います。ここでは、公式がなぜ成り立つのかを理解できていれば十分です。
⑦ 売上総利益
売上総利益 = 売上 − 売上原価
売った金額(売価)から、売った商品の原価を差し引いた利益です。商品売買そのものからどれだけ儲かったかを表します。
売上 720,000円/期首商品 70,000円/当期仕入 460,000円/期末商品 90,000円
- 売上原価 = 70,000 + 460,000 − 90,000 = 440,000円
- 売上総利益 = 720,000 − 440,000 = 280,000円
検算には 売上 = 売上原価 + 売上総利益 の形が使えます。
⑧ 売上総利益と当期純利益は別のもの
売上総利益は、会社の最終的な利益ではありません。
売上総利益から差し引かれていないものがあります。
- 給料
- 支払家賃
- 通信費
- 減価償却費 など
これらの費用だけでなく、売上原価以外の収益・費用なども反映し、最終的に当期純利益を求めます。売上総利益は、まず売上高と売上原価の関係から求める段階の利益だと理解してください。
損益計算書の作成や当期純利益の算定は、C15-T02(損益計算書)で扱います。
⑨ 商品有高帳との接続
返品・棚卸減耗などの追加調整がない基本ケースでは、商品有高帳の売上による払出原価の合計が売上原価につながります。
つまり、売上原価には2つの求め方があります。
- 公式から:期首商品 + 当期仕入 − 期末商品
- 商品有高帳から:売上による払出原価の合計
返品・棚卸減耗などの追加調整がなく、同じ期間・同じ原価資料を正しく記録した基本問題では、この2つの金額は一致します。条件をそろえたうえで、片方の計算結果をもう片方で検算できます。
ただし1点注意があります。月末に帳簿を締め切る際、次月繰越を払出欄へ記入する形式をとることがあります。この場合、払出欄の縦計には次月繰越が含まれるため、そのまま売上原価としてはいけません。売上原価とするのは、売上による払出の行だけを合計した金額です。
商品有高帳の記入方法そのもの(先入先出法・移動平均法)はC03-T04・C03-T05で扱っています。
⑩ 2027年度から加わる方法との区別
2027年度の出題区分表から、販売のつど売上原価勘定へ振り替える方法(売上原価対立法)が3級の範囲に加わります。
この方法では、商品を販売するたびに売上原価を計上する処理を行うため、本ページで扱った三分法とは記録の仕方が異なります。
本ページで扱っているのは、2026年度・2027年度に共通する三分法による売上原価の算定です。
2027年度から加わる方法はC03-T07で扱います。受験する年度によって範囲が異なるため、区別して学習してください。
⑪ この単元と他の単元の境界
- 商品有高帳の記入方法(先入先出法) → C03-T04
- 商品有高帳の記入方法(移動平均法) → C03-T05
- 決算整理前残高試算表を読んで期首・期末商品を振り替える技能 → C14-T02
- 損益計算書の表示・当期純利益の算定 → C15-T02
- 販売のつど売上原価勘定へ振り替える方法(2027年度限定) → C03-T07
⑫ まとめ
- 売上原価 = その期間に販売した商品の原価(当期仕入とは限らない)
- 販売可能商品の原価 = 期首商品 + 当期仕入
- 売上原価 = 期首商品 + 当期仕入 − 期末商品
- 期首商品を足すのは当期に売れる可能性があるから、期末商品を引くのはまだ売れていないから
- 期末商品は資産として翌期へ繰り越す
- 決算整理前の仕入勘定の残高は、そのままでは売上原価ではない
- 売上総利益 = 売上 − 売上原価
- 売上総利益は当期純利益ではない(給料・家賃などは未控除)
⑬ 2級への接続
2級でも「売上原価 = 期首+当期仕入−期末」という考え方は変わりません。加えて、期末に実地棚卸を行い、帳簿上の在庫との差を棚卸減耗損、価値の下落分を商品評価損として処理する論点へ進みます。
また損益計算書では、売上総利益の下に販売費及び一般管理費を並べ、営業利益・経常利益・当期純利益へと段階的に利益を計算していく形式を学びます。売上総利益がその出発点であることを押さえておいてください。

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