商品有高帳と先入先出法|原価で記入する理由と層の管理

① このページで学ぶこと

このページでは、商品の在庫を管理する商品有高帳と、その払出単価を決める方法の1つである先入先出法を学びます。

  • 商品有高帳とは何か、なぜ作るのか
  • 受入・払出・残高の意味
  • すべて原価で記入するという原則
  • 先入先出法の考え方
  • 単価の違う在庫を「層」として管理する
  • 月末の締切と検算
  • 売上原価と売上総利益への接続

もう1つの払出単価の決め方である移動平均法はC03-T05で扱います。


② 商品有高帳とは

商品有高帳とは、商品の種類ごとに、受け入れた数量・単価・金額払い出した数量・単価・金額、そしてその時点で残っている在庫を継続的に記録する帳簿です。

総勘定元帳の仕入勘定や売上勘定を見ても、「A商品が今いくつ残っているか」「その在庫はいくらの価値か」までは分かりません。そこで商品ごとにページを分けて詳しく管理するのが商品有高帳です。

帳簿は次の3つの欄で構成されます。

記録する内容
受入欄 商品が増えたとき(前月繰越・仕入)
払出欄 商品が減ったとき(売上・仕入返品など)
残高欄 その取引の直後に残っている在庫

なお、前月繰越は受入欄に書きますが、当月に仕入れたという意味ではありません。前月から繰り越された在庫を、当月の出発点として受入欄に置いているだけです。

返品は種類によって記入側が異なります。仕入返品は商品が減るので払出欄、売上返品は商品が戻るので受入欄に記入します。単に「返品」とだけ覚えず、在庫が増えるか減るかで判断します。


③ すべて原価で記入する

商品有高帳で最も重要な原則です。

受入欄・払出欄・残高欄のいずれも、記入するのは売価ではなく原価(仕入時の単価)です。

商品を1個800円で売ったとしても、払出欄に書くのは800円ではありません。その商品を仕入れたときの原価を書きます。

理由は、この帳簿の目的が在庫の管理だからです。倉庫から出ていったのは「800円の売上」ではなく「原価いくらの商品」であり、いくらで売れたかを記録するのは売上帳の役割です。

したがって、販売価格が変わっても、商品有高帳の払出単価は変わりません。払出単価は、その商品をいくらで仕入れたかによって決まります。


④ なぜ払出単価を決めるルールが必要か

同じ商品でも、仕入れる時期によって単価は変わります。

たとえば、@150円で仕入れた在庫と@165円で仕入れた在庫が混ざっているときに35個を払い出すと、その35個の原価はいくらになるでしょうか。実際の商品はどれも同じ見た目で、どちらの単価のものが出ていったかを1個ずつ追いかけることはできません。

そこで、一定のルールを決めて計算上の払出単価を定めます。3級で扱うのは次の2つです。

  • 先入先出法(本単元)
  • 移動平均法(C03-T05)

⑤ 先入先出法

先入先出法とは、先に受け入れた商品から先に払い出すと仮定して払出単価を決める方法です。

ここで大切なのは、これが計算上の仮定だという点です。実際の商品がどの順に売れたかは関係ありません。帳簿上は、古い単価のものから順に使い切ったものとして計算します。


⑥ 残高は「層」で管理する

先入先出法では、単価の違う在庫を1行にまとめてはいけません

たとえば、@150円の在庫20個がある状態で@165円の商品を40個仕入れたとき、残高欄は次のように2行に分けて記入します。

数量 単価 金額
20 150 3,000
40 165 6,600

これを「60個・9,600円」と1行にまとめてしまうと、平均単価@160円になってしまいます。そうすると次に払い出すときにどの単価から使えばよいのか分からなくなります

このように単価ごとに分かれた在庫のまとまりを、ここではと呼びます。先入先出法は、古い層から順に崩していく方法だと考えると分かりやすくなります。


⑦ 払出の計算

先ほどの状態(@150が20個、@165が40個)から35個を払い出すとします。

手順1:古い層から使う。@150の層は20個しかないので、まず20個すべてを払い出す。 20個 × @150 = 3,000円

手順2:不足する 35 − 20 = 15個 を、次に古い@165の層から払い出す。 15個 × @165 = 2,475円

手順3:払出金額を合計する。 3,000 + 2,475 = 5,475円

このとき払出欄も2行に分けて記入します。層をまたぐ払出は、必ず古いほうから順にという点が先入先出法の核心です。


⑧ 月末の締切と検算

月末には帳簿を締め切ります。締切のルールは次のとおりです。

  • 前月繰越 → 受入欄に記入
  • 次月繰越 → 払出欄に朱記

次月繰越を払出欄に書くのは、在庫を翌月へ送り出すという形で処理するためです。こうすると受入欄の合計と払出欄の合計が一致し、帳簿がきれいに締まります。

この関係は検算にも使えます。

期首在庫(前月繰越)+当月の受入総額 = 当月の実際の払出総額+月末残高

数量でも金額でも同じ関係が成り立ちます。ここでいう「実際の払出」は、売上や仕入返品など月中に商品が実際に減った取引を指し、締切のために払出欄へ記入する次月繰越は含めません数量だけを合わせて満足せず、金額でも必ず確認してください。どちらか一方しか合っていない場合は、単価の扱いを間違えている可能性があります。

この式は、4つのうち3つが分かっていれば残り1つを逆算できるという点でも役立ちます。


⑨ 売上原価と売上総利益

返品がない基本ケースでは、商品有高帳の月中の売上による払出原価の合計が、その期間に売れた商品の原価、つまり売上原価を表します。月末締切のため払出欄へ記入する次月繰越は売上原価ではありません。また、売上返品がある場合は、戻ってきた商品の原価を売上原価から控除して考えます。

そこから売上総利益を計算できます。

売上総利益 = 売上高 − 売上原価

売上高は「売った数量 × 売価」で計算します。売上高は売価の世界、売上原価は売上による実際の払出原価(原価の世界)という区別が大切です。

ここで注意すべき点が2つあります。

  1. 売上原価に月末残高を含めない。まだ売れていない在庫の原価は、売上原価ではありません。
  2. 当月の仕入高をそのまま売上原価としない。仕入れた分がすべて売れたとは限らないためです。

売れた分の原価だけを売上高に対応させる、という考え方が売上総利益の計算の土台になります。


⑩ 仕訳と商品有高帳の違い

仕訳は、取引を勘定科目と金額で記録するものです。一方、商品有高帳は商品そのものの数量と原価の動きを記録します。

同じ仕入取引でも、

  • 仕訳:(借)仕入 / (貸)買掛金 など、金額だけ
  • 商品有高帳:数量・単価・金額を商品ごとに、在庫として

という違いがあります。どちらか一方があればよいのではなく、目的が違うため両方を作成します。


⑪ 主な間違いやすいポイント

1.払出欄に売価を書く

商品有高帳はすべて原価で記入します。売価を使うのは売上帳です。

2.単価の違う在庫を1行にまとめる

層ごとに行を分けます。まとめると次の払出単価が決められなくなります。

3.新しい層から払い出す

先入先出法では古い層からです。新しいほうから使うのは別の考え方(3級の範囲外)です。

4.売上原価に月末残高を含める

売れていない分の原価は売上原価に入りません。

5.数量だけで検算を終える

数量と金額の両方で「期首在庫+当月受入=月中の実払出+月末残高」を確認します。締切用の次月繰越は、この「実払出」には含めません。


⑫ この単元と他の単元の境界

  • 移動平均法(受入れのたびに平均単価を計算し直す方法) → C03-T05
  • 商品有高帳を答案として完成させる本試験形式(空欄A〜Gを埋め、売上原価・売上総利益まで求める形式) → E-T06
  • 商品有高帳が補助元帳の一種であるという帳簿分類の理解 → C11-T03
  • 仕入帳・売上帳の記入 → C03-T03

本単元は、先入先出法による商品有高帳の記入と計算を身につけることを目標にします。


⑬ まとめ

  1. 商品有高帳は、商品ごとに数量・単価・金額を継続管理する補助元帳(補助簿)の一つ
  2. 受入欄・払出欄・残高欄ともすべて原価で記入する(売価ではない)
  3. 前月繰越は受入欄、次月繰越は払出欄に朱記
  4. 先入先出法=古い層から順に払い出すという計算上の仮定
  5. 単価の違う在庫は層ごとに行を分ける
  6. 検算は 期首在庫+当月受入=月中の実払出+月末残高(数量・金額の両方で。締切用の次月繰越は実払出に含めない)
  7. 返品がない基本ケースでは、売上による実払出原価の合計=売上原価売上総利益=売上高−売上原価

⑭ 2級への接続

2級では、総平均法など払出単価の決め方が増え、工業簿記では材料元帳という同じ構造の帳簿が登場します。また、期末に実地棚卸を行い、帳簿上の在庫との差を棚卸減耗損・商品評価損として処理する論点へ進みます。

いずれも「帳簿上の在庫を原価で正確に追う」という本単元の考え方が土台になります。「期首在庫+受入=実払出+残高」という関係式も、2級工業簿記のボックス図へ自然につながります。


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