学習のポイント
① 何を学ぶか
この単元では、その他有価証券を決算日に時価評価し、その評価差額を全部純資産直入法で処理する方法を学びます。
ポイントは、評価差額を損益へ入れず、税効果を考慮した後の純額をその他有価証券評価差額金として純資産へ直接計上することです。
② 計算の順序
まず評価差額を求めます。
評価差額 = 期末時価 - 取得原価
次に税効果を求めます。
繰延税金 = 評価差額の絶対額 × 法定実効税率
最後に純資産へ計上する金額を求めます。
その他有価証券評価差額金 = 評価差額の絶対額 × (1 - 法定実効税率)
検算は、
評価差額の絶対額 = 繰延税金 + その他有価証券評価差額金の絶対額
です。
③ 評価差益の場合
取得原価より期末時価が高い場合は評価差益です。
たとえば、
- 取得原価 1,000,000円
- 期末時価 1,100,000円
- 法定実効税率 30%
- 全部純資産直入法
なら、
- 評価差額:100,000円
- 繰延税金負債:30,000円
- その他有価証券評価差額金:70,000円
となります。
仕訳:
その他有価証券100,000 / 繰延税金負債30,000・その他有価証券評価差額金70,000
④ 評価差損の場合
取得原価より期末時価が低い場合は評価差損です。
- 評価差損に対応する税効果 → 繰延税金資産
- 税引後の純額 → その他有価証券評価差額金の借方
仕訳の形:
繰延税金資産・その他有価証券評価差額金 / その他有価証券
評価差額金は、評価差益のときは貸方、評価差損のときは借方になります。
⑤ 損益を経由しない
その他有価証券の全部純資産直入法では、評価差額を損益へ計上しません。
そのため、
有価証券評価損益法人税等調整額
をこの評価処理の標準解答として使いません。
税効果も、評価差額金と直接対応させます。
⑥ 翌期首の洗替
決算日に行った評価仕訳は、翌期首に全額を逆仕訳して戻します。
評価差益を計上した前期末仕訳が、
その他有価証券 / 繰延税金負債・その他有価証券評価差額金
なら、翌期首は、
繰延税金負債・その他有価証券評価差額金 / その他有価証券
です。
評価差損の場合も、前期末仕訳をそのまま反対にします。
⑦ 処理手順
- 問題文で全部純資産直入法であることを確認する。
- 取得原価と期末時価の差を求める。
- 評価差益か評価差損かを判定する。
- 法定実効税率を使って税効果を計算する。
- 評価差益なら繰延税金負債、評価差損なら繰延税金資産を使う。
- 税引後の純額をその他有価証券評価差額金へ計上する。
- 差額=税効果+純額を検算する。
- 翌期首は前期末仕訳を全額洗い替える。
⑧ 貸借対照表とのつながり
- その他有価証券:投資その他の資産
- その他有価証券評価差額金:評価・換算差額等
- 繰延税金資産:投資その他の資産
- 繰延税金負債:固定負債
この論点は第1問の仕訳形式と、第3問の決算整理につながります。
⑨ 注意点
- 評価差益と評価差損で、繰延税金負債・繰延税金資産を取り違えない。
- 税引前評価差額をそのまま評価差額金へ計上しない。
- 法人税等調整額を経由しない。
- 翌期首の洗替を忘れない。
- 部分純資産直入法はこの単元では扱いません。
- 保有目的の変更も扱いません。
⑩ 年度注記
この単元の処理は2026年度・2027年度で共通です。