学習のポイント
① 何を学ぶか
前の単元では、短期間で売買して利益を得る目的の有価証券を学びました。この単元では、満期まで保有し続ける目的で取得した債券の処理を学びます。これを満期保有目的債券といいます。
この単元では満期まで保有する前提で処理するため、途中の時価変動による評価替えは行いません。時価評価は行いません。
その代わりに問題となるのが、取得価額と額面総額の差額です。
債券は額面と異なる金額で取得することがあります。しかし満期には額面が払い戻されるため、この差額は満期までの間に生じる利息の性格を持ちます。そこで差額を満期までの期間に配分し、帳簿価額を少しずつ額面へ近づけていきます。
この方法を償却原価法といい、2級では定額法(毎月同額ずつ配分する方法)を学びます。
学ぶことは3つです。
- 取得価額と額面の差額を期間で配分する
- 帳簿価額を加減し、相手科目を有価証券利息とする
- 満期時に帳簿価額が額面と一致することを確かめる
② 基本Rule
計算式
当期償却額 =(額面総額 - 取得価額)×(当期保有月数 ÷ 取得日から満期日までの月数)
償却額を計算する数値問題では、額面総額・取得価額・取得日・満期日・決算日が問題文に示されます。 取得日・満期日・決算日から月数を一意に確認して計算します。
月数のクロスチェック
当期保有月数 + 残存月数 = 取得日から満期日までの総月数
この式が成り立たなければ、月数の読み取りを誤っています。
取得価額が額面より低い場合(割引取得)
差額の分だけ帳簿価額を増やしていきます。満期には額面まで到達します。
満期保有目的債券 ××× / 有価証券利息 ×××
有価証券利息が増加します。 額面より安く買えた分は、満期までの間に得られる利益だからです。
取得価額が額面より高い場合(打歩取得)
差額の分だけ帳簿価額を減らしていきます。満期には額面まで下がります。
有価証券利息 ××× / 満期保有目的債券 ×××
有価証券利息が減少します。 額面より高く買った分は、満期までの間に失われるからです。
方向の見分け方
| 取得価額 | 帳簿価額 | 仕訳の借方 |
|---|---|---|
| 額面より低い | 増やす | 満期保有目的債券 |
| 額面より高い | 減らす | 有価証券利息 |
満期時の確認
満期時の帳簿価額 = 額面総額
割引取得でも打歩取得でも、満期には帳簿価額が額面と一致します。
取得時とクーポン利息
(取得時)満期保有目的債券 ××× / 普通預金 ××× (利息受取)普通預金 ××× / 有価証券利息 ×××
クーポン利息の受取と、償却原価法による調整は別の処理です。 両者を混ぜて計算してはいけません。
③ 処理手順
手順1:取得価額と額面総額の差額を求める
どちらが大きいかで、その後の方向が決まります。
手順2:取得日から満期日までの総月数を確定する
問題文の取得日と満期日から数えます。
手順3:当期の保有月数を確認する
決算日までに何か月保有していたかを数えます。期中取得の場合は取得日から決算日までです。
手順4:按分して当期償却額を求める
差額 × (当期保有月数 ÷ 総月数)
手順5:帳簿価額に加減し、相手科目を有価証券利息とする
割引取得なら加算、打歩取得なら減算です。
④ 注意点
注意1:時価評価は行わない
満期保有目的債券は満期まで持ち続けるため、期末の時価で評価し直すことはありません。売買目的有価証券とはこの点が異なります。
注意2:方向を取り違えない
取得価額が額面より低ければ帳簿価額を増やし、高ければ減らします。どちらの場合も相手科目は有価証券利息ですが、借方と貸方が入れ替わります。
注意3:月数を推測しない
取得日・満期日・決算日は問題文に示されます。そこから月数を数えます。 日数に換算する必要はありません。
注意4:クーポン利息と混同しない
利息の受取と償却原価法の調整は、どちらも有価証券利息を使いますが別の処理です。片方だけを問われることも、両方を問われることもあります。
注意5:満期時の一致を確認する
各期の償却額を積み上げると、満期には帳簿価額が額面と一致します。一致しなければ計算のどこかを誤っています。
注意6:この単元で扱う範囲
差額を配分する方法には、毎期同額ずつ配分する方法のほかに、利回りを用いて配分する利息法もあります。利息法はこの単元では扱いません。 また、時価による評価替えや、保有する目的を途中で変更した場合の処理も扱いません。
⑤ 試験での使われ方
この論点は第1問の仕訳形式、第2問の勘定記入形式、第3問の決算整理につながります。
第1問では、取得時の仕訳や決算時の償却の仕訳が問われます。
第2問では、満期保有目的債券や有価証券利息の勘定の動きを記入する形が考えられます。帳簿価額が毎期どう変化するかを追えることが前提になります。
第3問では、決算整理事項として当期償却額を計算し、貸借対照表の金額を求める形が考えられます。
償却額を計算する数値問題では、額面総額・取得価額・取得日・満期日・決算日を確認します。
⑥ 年度注記
この論点は2026年度・2027年度の両方で出題範囲です。
償却原価法(定額法)の取扱いについて、2026年度と2027年度で変更はありません。どちらの年度を受験する場合も、同じ内容を学習してください。