1.このページで学ぶこと
決算整理を終えたあとに作る財務諸表のうち、貸借対照表を扱います。
ねらいは3つです。
- 資産・負債・純資産を勘定式の左右に配置する
- 控除表示(△を付けて差し引いて見せる)と総称表示(まとめて見せる)という2つの見せ方を使い分ける
- 資産合計と負債・純資産合計が一致することを確認する
決算整理そのもの(減価償却費の算定・経過勘定の期間配分・法人税等の税額計算)は C14 の各単元が、決算整理から P/L・B/S を一式作る流れは C15-T04 が扱っています。ここは、貸借対照表という1枚の表の作り方に絞ります。
2.貸借対照表とは
貸借対照表(B/S)は、決算日という一時点に、会社が何を持ち、何を負い、正味いくら残っているかを示す財務諸表です。
載るのは資産・負債・純資産の3つだけです。収益と費用は載りません(それらは損益計算書)。
3.決算日時点の財政状態
貸借対照表は一時点を表します。そのため見出しには、
×2年3月31日現在
のように、決算日という1日を書きます。
損益計算書が「自×1年4月1日 至×2年3月31日」という期間を表すのとは違います。
| 財務諸表 | 表すもの | 見出し | 載る要素 |
|---|---|---|---|
| 貸借対照表 | 決算日という一時点の財政状態 | ×年×月×日現在 | 資産・負債・純資産 |
| 損益計算書 | 一定期間の経営成績 | 自〜至 | 収益・費用 |
4.勘定式の基本構造
勘定式は、左右に分けて並べる様式です。
| 左側(借方) | 右側(貸方) |
|---|---|
| 資産 | 負債 |
| 純資産 |
左右をこのように並べるのは、単に「借方だから左」という約束だからではありません。
- 左側:会社が何を持っているか(資金の使いみち)
- 右側:その資金がどのように調達されたか(返済義務のある部分=負債/返済義務のない持分=純資産)
貸借対照表は、同じ財政状態を「資産(資金の運用形態)」と「負債・純資産(資金の調達源泉)」の両面から示すため、正しく作成された表では左右の合計が一致します。
5.資産
会社が持っている財産や権利です。左側に並べます。
| 表示科目 | 例 |
|---|---|
| 現金・普通預金・当座預金 | 手元の資金と預金 |
| 売掛金・電子記録債権 | 代金を受け取る権利 |
| 商品 | 期末に残っている商品 |
| 前払費用・未収収益 | 経過勘定のうち資産になるもの |
| 備品 | 長く使う資産 |
6.負債
これから支払う義務です。右側の上部に並べます。
| 表示科目 | 例 |
|---|---|
| 買掛金・電子記録債務 | 商品仕入の代金を支払う義務 |
| 未払金 | 商品以外の購入代金を支払う義務 |
| 借入金 | 借り入れた資金を返す義務 |
| 未払費用・前受収益 | 経過勘定のうち負債になるもの |
| 未払法人税等 | 確定した法人税等のうち未納分 |
7.純資産
資産から負債を差し引いた正味の部分です。右側の下部に並べます。
| 表示科目 | 意味 |
|---|---|
| 資本金 | 出資等によって形成された資本 |
| 繰越利益剰余金 | これまでの利益のうち社内に蓄積されている部分 |
本教材の基本例では資本金と繰越利益剰余金を中心に扱います。ただし、問題によってはほかの純資産項目が示されることもあります。したがって、「純資産は必ずこの2科目だけ」と一般化せず、問題文・答案用紙に示された純資産項目をすべて確認してください。
8.決算整理後残高を使う理由
貸借対照表は、決算整理を終えたあとの残高で作ります。
決算整理前の残高では、
- 期末商品が確定していない
- 減価償却累計額が当期分だけ足りない
- 前払・未払の調整が済んでいない
- 現金過不足の期末整理や、内容が判明した仮払金・仮受金の正式科目への振替が未反映である
といった状態で、決算日の財政状態を正しく示せません。
なお、本教材の C14-T09 で扱う基本ケースでは、現金過不足は期末に整理し、内容が判明した仮払金・仮受金は正式科目へ振り替えます。仮払金・仮受金が常に決算日までにゼロになるという一般化はしません。 問題で決算整理後残高が与えられている場合は、その条件に従って貸借対照表への表示要否を判断します。
9.帳簿科目と表示科目
仕訳や元帳で使う勘定科目名と、貸借対照表の表示科目名は、一致しないことがあります。
| 帳簿の勘定科目 | 貸借対照表の表示 |
|---|---|
| 繰越商品 | 商品 |
| 前払家賃・前払保険料・前払利息 など | 前払費用 |
| 未収利息・未収家賃 など | 未収収益 |
| 未払家賃・未払利息・未払給料 など | 未払費用 |
| 前受家賃・前受地代・前受手数料 など | 前受収益 |
一方、本教材の基本例では、現金・売掛金・備品・買掛金・借入金・資本金・繰越利益剰余金などを同名で表示することがあります。ただし、表示名や区分は問題の様式によって指定されることがあるため、問題文・答案用紙の指示を優先してください。
仕訳や元帳で使う勘定科目と、貸借対照表で求められる表示科目は区別して確認します。
10.商品
期末に残っている商品は資産です。帳簿では 繰越商品、貸借対照表では 商品 と表示します。金額は決算整理後の期末残高そのままで、名前だけが変わります。
売上原価の計算に使われることと、期末に残った分が資産として表示されることは別の話です。売上原価は損益計算書側の表示です(C15-T02)。
11.前払費用・未収収益
経過勘定のうち資産になるものです。
| 帳簿の勘定科目 | 表示科目 | 意味 |
|---|---|---|
| 前払家賃・前払保険料 など | 前払費用 | 支払済みで、翌期のサービスを受ける権利 |
| 未収利息・未収家賃 など | 未収収益 | 当期分でまだ受け取っていない権利 |
本教材で扱う、表示科目を自分で記入する基本形式では、同じ総称表示にまとめる残高を合計して1行にします。たとえば前払家賃と前払保険料があり、答案上「前払費用」で表示する形式なら、その合計額を1行に記載します。
また、金額0の項目を記載する指定がない自由記入形式では、残高がない表示項目を新たに作る必要はありません。答案用紙にあらかじめ行が設けられている場合や、問題文に記載方法の指定がある場合は、その様式を優先してください。
経過勘定をいくら計上するかという期間配分の計算は C14-T07 が扱います。ここでは確定した残高をどう表示するかだけを扱います。
12.未払費用・前受収益
経過勘定のうち負債になるものです。
| 帳簿の勘定科目 | 表示科目 | 意味 |
|---|---|---|
| 未払家賃・未払利息・未払給料 など | 未払費用 | 当期分でまだ支払っていない義務 |
| 前受家賃・前受地代・前受手数料 など | 前受収益 | 受取済みで、翌期にサービスを提供する義務 |
合算や残高0項目の扱いは、第11節と同様に問題文・答案用紙の様式を優先して判断します。
13.固定資産
本教材で扱う控除表示の基本様式では、備品などの固定資産について取得原価を示し、決算整理後の減価償却累計額を控除して差引額を表示します。
減価償却費をいくら計上するかという計算は C07-T03・C14-T04 が扱います。ここでは、決算整理後の取得原価と減価償却累計額が確定したあとの表示だけを扱います。
14.減価償却累計額
減価償却累計額は、その固定資産の取得原価のうち、これまで減価償却費として配分された金額の累計です。
負債ではありません。本教材で扱う勘定式の基本様式では、対象となる固定資産に対応させて △ を付けて差し引く形で示します。これを控除表示といいます。実際の答案では、問題文・答案用紙の表示形式を優先します。
同じ考え方が貸倒引当金にも当てはまります。貸倒引当金は売掛金などの直下に △ を付けて差し引きます。
| 控除するもの | 控除される相手 |
|---|---|
| 備品減価償却累計額 | 備品 |
| 貸倒引当金 | 売掛金・電子記録債権など |
どちらも貸方残高の勘定ですが、負債ではなく、対象資産から控除して表示する性質があります。貸倒引当金は売掛金等について貸倒れを見積もった額を、備品減価償却累計額は取得原価のうち減価償却費として配分済みの累計額を示します。
なお、公開する解答では 備品減価償却累計額 のようにどの資産の累計額かが分かる科目名を用います。
15.帳簿価額
控除表示の3点セットは次のとおりです。
取得原価 − 減価償却累計額 = 帳簿価額(差引額)
たとえば備品の取得原価が 710,000円、決算整理後の備品減価償却累計額が 177,000円であれば、
| 資産 | 内訳 | 金額 |
|---|---|---|
| 備品 | 710,000 | |
| 備品減価償却累計額 | △177,000 | 533,000 |
となり、533,000円が資産合計に算入されます。
検算は次の形です。
帳簿価額 + 減価償却累計額 = 取得原価 `533,000 + 177,000 = 710,000` ✓
3つのうちどれか1つが空欄でも、残り2つから引き算・足し算で復元できます。
△ は「引く」の合図です。 取得原価に足してはいけません。
なお、本教材で扱う勘定式の様式では、取得原価・累計額・差引額を上のように並べます。表示形式は問題文の指示が優先されるため、「貸借対照表では必ず差引額だけを1行で示す」というように一般化しないでください。
16.資本金
出資等によって形成された資本で、純資産の中に表示します。
本教材の基本例のように、純資産項目が資本金と繰越利益剰余金だけである場合は、純資産合計から繰越利益剰余金を差し引いて資本金を求められます。ほかの純資産項目が示されている問題では、それらも含めて計算してください。
17.繰越利益剰余金
会社が稼いで社内に残っている利益です。純資産の中に表示します。
貸借対照表では、決算手続を反映した期末の繰越利益剰余金残高を表示します。
当期純利益が生じ、ほかに繰越利益剰余金を増減させる事項がない基本ケースでは、
期末の繰越利益剰余金 = 当期純利益の振替直前残高 + 当期純利益
となります。当期純損失であれば、その振替によって繰越利益剰余金は減少します。
本教材で扱う8桁精算表では、繰越利益剰余金の残高と当期純損益を別に示す形があります(C15-T01)。貸借対照表との表示の違いを、問題の様式に沿って確認してください。
18.当期純損益との接続
損益計算書で求めた当期純利益は、繰越利益剰余金を通じて純資産に反映されます。
当期純利益の振替による繰越利益剰余金の増加分 = 当期純利益
ここで注意が必要です。
「当期純利益 = 期末の繰越利益剰余金」ではありません。
期末残高には、それ以前から積み上がっていた繰越利益剰余金も含まれています。当期純利益と一致するのは、当期純利益の振替による増加部分です。当期純損失の場合は、振替による減少部分が当期純損失に対応します。
なお、帳簿上で `(借)損益 /(貸)繰越利益剰余金` と振り替える処理そのものは C15-T06(帳簿の締切り) が扱います。本ページでは振替仕訳を扱いません。
19.貸借一致の検算
作り終えたら、次を確認します。
資産合計 = 負債合計 + 純資産合計
この性質は空欄推定にも使えます。片側の合計が分かれば反対側の合計も決まるため、不足している科目の金額を引き算で求められます。
ただし、貸借が一致していても個別の科目が正しいとは限りません。たとえば貸倒引当金を控除表示せずに負債の列へ並べても、合計だけは一致してしまいます。確認は次の順で行ってください。
手順1 科目分類(資産・負債・純資産のどれか) 手順2 表示科目(読み替えが必要か、合算するか) 手順3 金額(控除表示の差引額、繰越利益剰余金の期末残高) 手順4 合計(貸借一致)
20.C15-T01 精算表との違い
C15-T01(精算表) は、8桁精算表という作業用紙の作り方を扱います。
| 精算表(C15-T01) | 貸借対照表(本ページ) | |
|---|---|---|
| 何を作るか | 8桁精算表 | 独立した貸借対照表 |
| 科目名 | 帳簿の勘定科目のまま | 表示科目へ読み替える |
| 控除表示 | 行を分けて記載 | △を付けて差し引いて見せる |
| 繰越利益剰余金 | 反映前の残高。当期純損益は独立行 | 当期純利益を反映した期末残高 |
「精算表の貸借対照表欄へ記入する」こと自体は C15-T01 の技能です。
21.C15-T02 損益計算書との違い
C15-T02(損益計算書(勘定式)) は、収益・費用と当期純損益を扱います。
| 損益計算書(C15-T02) | 貸借対照表(本ページ) | |
|---|---|---|
| 表すもの | 一定期間の経営成績 | 決算日という一時点の財政状態 |
| 載る要素 | 収益・費用 | 資産・負債・純資産 |
| 左側 | 費用 | 資産 |
| 右側 | 収益 | 負債・純資産 |
| 差額 | 当期純利益・当期純損失として表示 | 繰越利益剰余金に含まれる |
売上高・売上原価・売上総利益は損益計算書側の表示です。
22.C15-T04 財務諸表総合との違い
C15-T04(決算整理からの財務諸表作成) は、決算整理から P/L・B/S を一式仕上げるまでを通した横断技能を扱います。
本ページは、貸借対照表単独の基礎と表示に絞ります。決算整理の計算から始めて P/L と B/S を両方完成させる総合問題は、C15-T04 の領域です。
23.C15-T05 決算整理後残高試算表との違い
C15-T05(決算整理後残高試算表(ATB)) は、各勘定の決算整理後残高を借方・貸方に一覧化した試算表を扱います。
| 決算整理後残高試算表(C15-T05) | 貸借対照表(本ページ) | |
|---|---|---|
| 何を並べるか | すべての勘定(収益・費用を含む) | 資産・負債・純資産だけ |
| 科目名 | 帳簿の勘定科目のまま | 表示科目へ読み替える |
| 控除表示 | しない(累計額も独立行) | する |
| 繰越利益剰余金 | 反映前の残高 | 当期純利益を反映した期末残高 |
本ページは、確定した決算整理後残高を貸借対照表へ表示する段階を扱います。
24.まとめ
- 貸借対照表は決算日という一時点の財政状態を示す。見出しは「×年×月×日現在」。
- 載るのは資産・負債・純資産だけ。収益・費用は載らない。
- 勘定式は左に資産、右に負債・純資産。同じ財政状態を資金の運用形態と調達源泉の両面から示すため、正しく作成された表では左右が一致する。
- 帳簿の 繰越商品 → 商品、前払家賃など → 前払費用、未払利息など → 未払費用 のように読み替える。
- 総称表示や残高0項目の扱いは、問題文・答案用紙の様式に従う。 自由記入の基本形式では、同じ総称表示にまとめる残高を合算し、記載指定のない0項目を新設しない。
- 貸倒引当金・減価償却累計額は負債ではなく、対象資産から控除して表示する。 △を用いる位置・形式は問題の様式に従う。
- 取得原価 − 減価償却累計額 = 帳簿価額。 △は「引く」の合図で、足してはいけない。
- 繰越利益剰余金は決算手続を反映した期末残高。当期純利益=期末残高ではない。基本ケースでは、当期純利益の振替による増加部分が当期純利益に対応する。
- 資産合計 = 負債合計 + 純資産合計。 ただし一致するだけでは個別科目の正しさは保証されない。
- 精算表は C15-T01、P/L は C15-T02、P/L・B/S 一式は C15-T04、ATB は C15-T05、帳簿締切は C15-T06 が扱う。

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