精算表、覚えるのは「横に流して、縦で締める」だけです

この単元の標語:精算表は、試算表の残高に決算整理を横へ合成し、5要素で行き先を決めて縦を締める集計表。新しい取引を記録する帳簿ではない。


① このページで学ぶこと

  • 8桁精算表の4つの欄と、それぞれの役割を説明できる
  • 「同じ側は足す・反対側は引く」という横の流れができるようになる
  • 収益・費用と資産・負債・純資産で行き先の欄が分かれる理由を説明できる
  • 当期純利益・当期純損失の金額と記入位置を求められるようになる
  • P/L欄の差額とB/S欄の差額が一致することを、検算として使えるようになる

② 基礎概念

精算表とは

精算表とは、決算整理前の残高試算表から損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)ができあがるまでを、1枚のワークシートで見渡す表です。

試算表欄 → 修正記入欄 → 損益計算書欄 → 貸借対照表欄

精算表は、新しい取引を記録する帳簿ではありません。 決算整理前の数字から決算整理後の財務諸表の数字へつなぐための、計算・整理用の表です。

「8桁」の意味

8桁の「8」は、8けたの数字を書くという意味ではありません。

上の4区分に、それぞれ借方・貸方の2列があるため、金額を書く欄が合計8つになるという意味です。

区分 借方 貸方
:-: :-:
試算表 1 2
修正記入 3 4
損益計算書 5 6
貸借対照表 7 8

4区分 × 借方・貸方2列 = 8つの金額欄

各欄の役割

記入するもの 出どころ
試算表欄 決算整理の各勘定残高 C13(試算表)
修正記入欄 決算整理仕訳を借方・貸方に分けて C14-T02〜T09(各決算整理)
損益計算書欄 決算整理収益・費用 本単元
貸借対照表欄 決算整理資産・負債・純資産 本単元

左の2つは既習です。 精算表は新しい知識ではなく、試算表と決算整理を1枚に合体させたものであり、本単元で身につけるのは「横にどう流すか」だけです。

[関連単元] 個別の決算整理をどう仕訳するか(商品棚卸・貸倒引当金・減価償却・経過勘定・法人税等など)は C14-T02〜T09 で扱います。本単元は、できあがった決算整理仕訳を精算表のどの欄へ流すかに集中します。


③ 仕組み・理由 ── 横の流れの3ルール

ルール1:同じ側の修正は足す、反対側の修正は引く

試算表欄の金額に修正記入欄の金額を合成して、右の欄へ流します。

試算表欄の残高 修正記入 計算
借方 借方 加算
借方 貸方 減算
貸方 貸方 加算
貸方 借方 減算

1行ずつ「決算整理後はいくらか」を確定してから右へ流すのが安全です。表全体を一度に完成させようとしないでください。

ルール2:行き先は5要素で決まる

5要素 行き先
収益・費用 損益計算書欄
資産・負債・純資産 貸借対照表欄

1つの科目が両方の欄に行くことはありません。

ただし、1本の決算整理仕訳から生まれた2つの行が、別々の欄へ分かれることはあります。

決算整理仕訳 一方の行 もう一方の行
(借)前払家賃/(貸)支払家賃 前払家賃 → B/S欄(資産) 支払家賃 → P/L欄(費用)
(借)減価償却費/(貸)備品減価償却累計額 減価償却費 → P/L欄(費用) 累計額 → B/S欄(資産のマイナス)
(借)仕入/(貸)繰越商品 ほか 仕入 → P/L欄(費用) 繰越商品 → B/S欄(資産)

名前が似ている科目こそ、「これは資産か費用か」を一拍おいて判定してください。

ルール3:当期純利益で縦を締める

P/L欄で収益(貸方)が費用(借方)を上回る場合、その差額が当期純利益です。

当期純利益の記入側 当期純損失の記入側
損益計算書欄 借方 貸方
貸借対照表欄 貸方 借方

P/L欄では少ないほうの借方に足して縦を一致させ、B/S欄では同額を貸方に記入します。

[重要] この記入は、精算表を完成させるための記入です。「(借)損益/(貸)繰越利益剰余金」という帳簿締切の仕訳を作っているわけではありません(その仕訳は C15-T06 で扱います)。


④ 基本例

次の決算整理前残高試算表と決算整理事項がある(青森商事株式会社・×2年3月31日)。

勘定科目 借方 貸方
現金 300,000
売掛金 200,000
繰越商品 100,000
備品 600,000
備品減価償却累計額 120,000
買掛金 180,000
資本金 500,000
売上 1,020,000
仕入 500,000
支払家賃 120,000
合計 1,820,000 1,820,000

決算整理事項

  1. 期末商品棚卸高は ¥130,000 である。
  2. 備品の当期減価償却費は ¥60,000 である(間接法)。
  3. 支払家賃のうち ¥30,000 は翌期分である。

⑤ 記入例:思考の手順つき

手順1:決算整理仕訳を作る

この段階は C14 の仕事です。 本単元では、できあがった仕訳を使います。

# 決算整理仕訳
1 (借)仕入 100,000/(貸)繰越商品 100,000
1 (借)繰越商品 130,000/(貸)仕入 130,000
2 (借)減価償却費 60,000/(貸)備品減価償却累計額 60,000
3 (借)前払家賃 30,000/(貸)支払家賃 30,000

手順2:修正記入欄へ写す

修正記入欄は、決算整理仕訳の写しです。 仕訳の借方に来た科目はその行の修正記入・借方へ、貸方に来た科目は貸方へ書きます。

手順3:1行ずつ決算整理後の金額を求める(横の流れ)

科目 計算 決算整理後 5要素 行き先
繰越商品 100,000 − 100,000 + 130,000 130,000 資産 B/S 借方
仕入 500,000 + 100,000 − 130,000 470,000 費用 P/L 借方
備品減価償却累計額 120,000 + 60,000(同じ貸方) 180,000 資産のマイナス B/S 貸方
減価償却費 修正記入から生まれる 60,000 費用 P/L 借方
支払家賃 120,000 − 30,000(反対の貸方) 90,000 費用 P/L 借方
前払家賃 修正記入から生まれる 30,000 資産 B/S 借方

仕入の ¥470,000 は売上原価を表します。 売上原価の式(期首 100,000 + 当期仕入 500,000 − 期末 130,000 = 470,000)と同じ答えになります。

手順4:縦を締める(当期純利益)

P/L欄

貸方(収益)= 売上 1,020,000 借方(費用)= 仕入 470,000 + 支払家賃 90,000 + 減価償却費 60,000 = 620,000 当期純利益 = 1,020,000 − 620,000 = ¥400,000

記入位置

金額
損益計算書欄 借方 400,000
貸借対照表欄 貸方 400,000

手順5:二重検算

借方合計 貸方合計
損益計算書欄 620,000 + 400,0001,020,000 1,020,000
貸借対照表欄 300,000 + 200,000 + 130,000 + 600,000 + 30,000 = 1,260,000 180,000 + 180,000 + 500,000 + 400,0001,260,000

2つの欄の差額が同じ ¥400,000 で出会えば完成のサインです。 一致しなければ、どこかの行の流し方に誤りがあります。


⑥ 間違いやすいポイント

主なものを3つ確認します。 実際の誤りはこの3つに限りません。

1.反対側の修正を足してしまう

支払家賃 ¥120,000 に貸方修正 ¥30,000 が付いたら引き算です(¥150,000 は誤り)。

「同じ側は足す・反対側は引く」を、行ごとに指差し確認してください。 加減を誤ると、最後の二重検算(P/L差額 ≠ B/S差額)で露見します。

2.修正記入欄の金額をそのまま右の欄へ移してしまう

修正記入欄に ¥30,000 と書かれていても、それが最終金額とは限りません。

支払家賃なら、試算表 借方 120,000 と修正記入 貸方 30,000 を合成した差額 ¥90,000 をP/L欄へ移します。

必ず「試算表残高 + 修正 = 決算整理後残高」を求めてから流します。

3.当期純利益の記入位置を逆にする

純利益はP/L欄では借方、B/S欄では貸方です。純損失のときはちょうど逆になります。

B/S欄の借方に純利益を書くと、B/Sの縦計が二重にずれて合わなくなります。「P/L借方・B/S貸方」をセットで覚え、純損失は逆と対で確認してください。


⑦ 試験での問われ方

当サイトの本試験形式では、第3問対策(精算表)の中核に位置づけています。

基本の解答順序

① 試算表欄を確認する ② 決算整理仕訳を作る ③ 修正記入欄へ写す ④ 科目ごとに決算整理後残高を求める ⑤ 収益・費用をP/L欄へ、資産・負債・純資産をB/S欄へ流す ⑥ 当期純利益(または当期純損失)を求める ⑦ 各欄の貸借一致を検算する

応用形式

修正記入欄の一部が埋まった状態から、決算整理事項を推定して残りを埋める逆算形式もあります。修正記入欄は決算整理仕訳の写しなので、欄の記入から仕訳を復元するという読み方ができます。

隣接する形式

  • 損益計算書・貸借対照表そのものを作成する形式は C15-T02・C15-T03 で扱います。
  • 決算整理後残高試算表を作る形式は C15-T05 で扱います。
  • 本試験形式のまとまった精算表問題は E-T10(第3問A)で扱います。

⑧ まとめ

ルール 内容
横の流れ1 同じ側は足す・反対側は引く
横の流れ2 収益・費用 → P/L欄/資産・負債・純資産 → B/S欄
縦の締め 純利益は P/L借方・B/S貸方(純損失は逆)
検算 P/L欄の差額 = B/S欄の差額 なら完成のサイン

主な決算整理の行き先

決算整理 P/L欄へ行く行 B/S欄へ行く行
商品棚卸 仕入(売上原価) 繰越商品
減価償却 減価償却費 ○○減価償却累計額
費用の前払い 支払家賃など(減った後) 前払家賃など
貸倒引当金の設定 貸倒引当金繰入 貸倒引当金
法人税等 法人税、住民税及び事業税 未払法人税等

精算表は「横に流して、縦で締める」──既習を1枚に合体させた集計表です。


⑨ 関連問題への導線

  • 一問一答:C15-T01「精算表」(全10問)
  • 仕訳問題:C15-T01「精算表」(全6問・初級2問/標準3問/応用1問)
  • 計算問題:C15-T01「精算表」(全7問・初級2問/標準4問/応用1問)
  • 前のテキスト:C14-T01「決算の全体像」
  • 個別の決算整理C14-T02〜T09
  • 次のテキスト:C15-T02「損益計算書(勘定式)」
  • 決算整理後残高試算表:C15-T05
  • 帳簿の締切り:C15-T06
  • 本試験形式E-T10「第3問A 8桁精算表」

⑩ 2級への接続

2級の精算表は、決算整理事項が増えるだけで、8桁の構造と横の流れの考え方は変わりません。

3級で「行き先は5要素で決まる」という感覚を固めておけば、科目が増えても流し方そのものは同じです。

また2級では、精算表の中間成果物にあたる決算整理後残高試算表を作らせる形式も扱われます。


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