帳簿の締切り、主役は「2種類の勘定の運命」です

この単元の標語:収益・費用は損益勘定へ振り替えて残高をゼロにする。資産・負債・純資産は次期繰越として翌期へ引き継ぐ。


① このページで学ぶこと

  • 帳簿の締切りが決算のどの段階にあたるかを説明できる
  • 収益・費用を損益勘定へ振り替える仕訳が切れるようになる
  • 資産・負債・純資産の勘定を締め切る方法(次期繰越・前期繰越)を説明できる
  • 仕訳を切る締切りと、仕訳を切らない締切りを区別できる
  • 繰越試算表に載る勘定を判別できる

② 基礎概念

帳簿の締切りとは

決算整理(C14)と精算表(C15-T01)で数字が確定したら、最後に総勘定元帳の全勘定を締め切り、帳簿を翌期へ引き継げる状態にします。

勘定は2種類に分かれ、運命が異なる

グループ 勘定 締切りの方法 仕訳
成績表グループ 収益・費用 損益勘定へ振り替えて残高ゼロにする あり(損益振替)
財産グループ 資産・負債・純資産 次期繰越として翌期へ引き継ぐ なし(勘定内に記入)

締切りは4ステップ

① 損益振替(収益・費用 → 損益勘定) ② 純損益の振替(損益 → 繰越利益剰余金) ③ 資産・負債・純資産の勘定の締切り(次期繰越) ④ 繰越試算表の作成

②は C10-T02 で学んだ仕訳です。 本単元では、その前後の手続とつながって1本の流れになります。


③ 仕組み・理由

なぜ2種類で運命が違うのか

売上や給料は「当期の成績」です。翌期の成績と混ぜてはいけないので、毎期ゼロに戻します。

一方、現金や借入金は期をまたいで存在し続ける「財産・義務の在高」です。決算だからといって消してしまえば、翌期に何も残らなくなります。

振替と繰越の違い

収益・費用のリセットは損益振替という仕訳で行います。振替先である損益勘定へ移す必要があるからです。

一方、資産・負債・純資産の繰越しは、3級で学ぶ方法(英米式決算法)では仕訳を切りません。 各勘定の中に「次期繰越」と直接記入して締め、翌期首に「前期繰越」と書き出します。

「仕訳する締切り」と「仕訳しない締切り」の区別が、この単元の急所です。

決算整理と損益振替は別の手続き

決算整理(C14)は、当期の収益・費用の金額を正しくする手続きです。損益振替は、正しくなった金額を損益勘定へ集める手続きです。

決算整理 → 損益振替 → 純損益の振替 → 締切り

順序が決まっており、混同すると精算表問題で「どの段階の処理か」を問われたときに迷います。


④ 基本例

青森商事株式会社の決算整理後の残高は次のとおりである(×2年3月31日)。

  • 収益:売上 ¥900,000、受取利息 ¥5,000
  • 費用:仕入 ¥510,000、給料 ¥200,000、保険料 ¥27,000、雑損 ¥8,000
  • (参考)現金の残高:¥120,000(借方)

⑤ 手順(4ステップ)

ステップ1:損益振替(仕訳あり)

収益は損益勘定の貸方へ、費用は借方へ集めます。

収益の振替

借方科目 金額 貸方科目 金額
売上 900,000 損益 905,000
受取利息 5,000

収益は通常貸方に残高があります。これをゼロにするので、借方に記入します。相手科目の損益は貸方です。

費用の振替

借方科目 金額 貸方科目 金額
損益 745,000 仕入 510,000
給料 200,000
保険料 27,000
雑損 8,000

費用は通常借方に残高があります。これをゼロにするので、貸方に記入します。

これで収益・費用の全勘定が残高ゼロになり、損益勘定に貸方 ¥905,000・借方 ¥745,000 が集まりました。

ステップ2:純損益の振替(仕訳あり)

損益勘定の差額 905,000 − 745,000 = 当期純利益 ¥160,000 を、繰越利益剰余金へ振り替えます。

借方科目 金額 貸方科目 金額
損益 160,000 繰越利益剰余金 160,000

これで損益勘定もゼロになります。

精算表(C15-T01)の当期純利益と同じ ¥160,000 になるはずです。 ここが精算表とのクロスチェックのポイントです。

この仕訳そのものの意味(当期純利益は純資産の増加要因である、資本金との違いなど)は C10-T02 が扱います。 本単元では、締切り手続きの中での位置づけ——収益・費用を集めた損益勘定を、最後にゼロにする——を確認してください。

そのため本単元の仕訳問題では、純損益の振替だけを単独で問う形は扱わず、収益振替から純損益振替までを連続して処理する形で出題します(問5)。

ステップ3:資産・負債・純資産の締切り(仕訳なし)

たとえば現金勘定(借方残高 ¥120,000)は、貸方に「次期繰越 120,000」と記入して借方合計=貸方合計で締め、翌期首(×2年4月1日)の借方に「前期繰越 120,000」と書き出します。

買掛金のような貸方残高の勘定は逆で、借方に「次期繰越」を記入し、翌期首の貸方に「前期繰越」と書き出します。

仕訳は切りません。 帳簿の中の記入だけで引き継ぎます。

ステップ4:繰越試算表

全勘定の次期繰越額を1枚に集めた繰越試算表を作り、借方合計=貸方合計を確認します。

載るのは資産・負債・純資産だけです。 収益・費用はステップ1で残高ゼロになっているため、1円も登場しません。


⑥ 間違いやすいポイント3つ

1.資産・負債の勘定まで損益勘定へ振り替えてしまう

損益勘定へ行くのは収益・費用だけです。

現金や買掛金を「損益 / 現金」のように振り替えると、財産が帳簿から消えてしまいます。振替の要否は5要素で決まります。

2.次期繰越に仕訳を切ってしまう

英米式決算法では、資産・負債・純資産の繰越しに仕訳を切りません。

「買掛金 130,000 / 損益 130,000」のような仕訳は誤りです。勘定の中に「次期繰越」と記入するだけで引き継ぎます。

3.繰越試算表に収益・費用を載せてしまう

繰越試算表に載るのは、次期繰越を行う財産グループ(資産・負債・純資産)だけです。

とくに繰越利益剰余金を「損益がらみだから載らない」と外す誤りに注意してください。繰越利益剰余金は純資産の勘定であり、純損益を受け入れて翌期へ繰り越されます。


⑦ 試験での問われ方

当サイトの本試験形式では、第1問対策(仕訳問題)第2問対策(勘定記入)の両方に位置づけています。

第1問対策

損益振替の仕訳、純損益の振替の仕訳が問われます。複数の費用を一括して振り替える形もあります。

第2問対策

損益勘定や繰越利益剰余金勘定の記入が問われることがあります。摘要欄に書かれるのは相手科目の名前であるという転記のルール(C11-T01)が前提になります。

第3問対策

精算表・財務諸表で算定した当期純利益と、損益振替で求めた当期純利益が一致することを確認します。


⑧ まとめ

手続き 借方 貸方 仕訳
① 収益の振替 売上・受取利息など 損益 あり
① 費用の振替 損益 仕入・給料など あり
② 当期純利益の振替 損益 繰越利益剰余金 あり
② 当期純損失の振替 繰越利益剰余金 損益 あり
③ 資産の締切り (翌期首に前期繰越) 次期繰越 なし
③ 負債・純資産の締切り 次期繰越 (翌期首に前期繰越) なし

収益・費用は損益勘定へ振り替えて残高をゼロにし、資産・負債・純資産は次期繰越として翌期へ引き継ぎます。


⑨ 関連問題への導線

  • 一問一答:C15-T06「帳簿の締切り」(全10問)
  • 仕訳問題:C15-T06「帳簿の締切り」(全5問・初級2問/標準2問/応用1問)
  • 前のテキスト:C15-T05(財務諸表の作成)
  • 関連テキストC10-T02「当期純利益の振替(損益振替・繰越利益剰余金)」
  • 決算整理:C14「決算整理」
  • 精算表:C15-T01「精算表(8桁精算表)」

⑩ 2級への接続

2級では、損益勘定や繰越利益剰余金勘定の記入から、空欄の金額や相手科目を推定する問題が扱われます。

3級で身につける「収益・費用は損益勘定へ、資産・負債・純資産は次期繰越へ」という振り分けが、その推定の土台になります。


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