決算整理後残高から財務諸表を作る|P/L・B/Sの金額と表示をつなぐ

この単元の判断軸:決算整理で金額を直した後、「どの金額を、どの表示名で、P/LとB/Sのどちらへ載せるか」を決める。


① このページで学ぶこと

このページでは、決算整理前の残高と決算整理事項から、損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)へつながる金額を組み立てる方法を学びます。

学習目標は次のとおりです。

  • 財務諸表には決算整理を反映した金額を使うと説明できる
  • P/Lに載る収益・費用と、B/Sに載る資産・負債・純資産を区別できる
  • 帳簿上の勘定科目と財務諸表の表示科目を読み替えられる
  • 貸倒引当金や減価償却について、P/Lの当期額とB/Sの期末額を使い分けられる
  • 当期純利益と繰越利益剰余金の関係を確認に使える
  • P/LとB/Sそれぞれの基本的な整合確認ができる

個々の決算整理仕訳そのものは関連単元で学びます。この単元では、仕訳を反映した後の残高を財務諸表へ着地させることが中心です。


② P/LとB/Sは何を表すか

損益計算書(P/L)

P/Lは、一定期間の収益と費用をまとめ、その差額として当期純利益または当期純損失を示します。

たとえば、

  • 売上高
  • 受取手数料
  • 売上原価
  • 給料
  • 減価償却費
  • 支払利息

などが対象です。

貸借対照表(B/S)

B/Sは、決算日時点の資産・負債・純資産を示します。

たとえば、

  • 現金
  • 普通預金
  • 売掛金
  • 商品
  • 前払費用
  • 買掛金
  • 未払費用
  • 資本金
  • 繰越利益剰余金

などです。

同じ決算整理がP/LとB/Sの両方へ影響することがあります。たとえば家賃の前払いを整理すると、当期の支払家賃を減らす一方で、B/Sには前払費用が生じます。


③ 本教材で使う5段階の整理手順

財務諸表作成では、次の順で整理すると金額の流れを追いやすくなります。

  1. 決算整理事項を確認する
  2. 決算整理を反映する
  3. 各科目の決算整理後残高を確定する
  4. 財務諸表の表示科目へ読み替え、P/L・B/Sへ振り分ける
  5. 当期純損益とP/L・B/Sの整合を確認する

この順番は本教材での整理方法です。問題資料の構成に応じて途中計算の置き方は変わっても、整理前残高をそのまま財務諸表へ写さず、整理後の金額を確定してから表示するという考え方は変わりません。

未処理事項がある場合も先に反映します。たとえば売掛金の回収漏れが判明したあとで貸倒引当金を設定するなら、率を掛ける対象は回収漏れを直した後の売掛金残高です。


④ 勘定科目と表示科目を分けて考える

仕訳や元帳で使う勘定科目と、財務諸表に表示する名称が異なることがあります。

帳簿・決算整理で使う科目 財務諸表での主な表示
繰越商品 B/S「商品」
仕入(決算整理後の売上原価相当額) P/L「売上原価」
売上 P/L「売上高」
前払家賃・前払保険料・前払利息 B/S「前払費用」
未収利息・未収家賃 B/S「未収収益」
未払家賃・未払利息・未払給料 B/S「未払費用」
前受家賃・前受地代・前受手数料 B/S「前受収益」

ここでいう「商品」はB/Sの表示名です。2026年度共通問題で、仕訳の正解科目として「商品」を使うという意味ではありません。

また、前払費用・未払費用などは、この教材では財務諸表の総称表示として使います。決算整理仕訳の正解には、前払家賃・前払保険料・未払利息などの具体科目を使います。


⑤ 中間の仕訳と財務諸表の表示は別の段階

支払家賃480,000円のうち40,000円が次期分だったとします。

決算整理の中間処理は、

(借)前払家賃 40,000円 / (貸)支払家賃 40,000円

です。

この結果、

  • P/Lの支払家賃:480,000-40,000=440,000円
  • B/Sの表示:前払費用 40,000円

となります。

仕訳では具体科目の「前払家賃」、B/Sでは総称の「前払費用」です。

同じ考え方は未払利息にも使えます。支払利息の決算整理前残高が13,000円、未払分が9,000円なら、

  • P/Lの支払利息:13,000+9,000=22,000円
  • B/Sの表示:未払費用 9,000円

となります。


⑥ 基本例:決算整理からP/L・B/Sへつなぐ

青森商事株式会社の決算整理前残高試算表から、主要科目だけを抜き出します。

科目 借方 貸方
現金 350,000
普通預金 1,730,000
売掛金 600,000
繰越商品 280,000
建物 1,500,000
仕入 3,850,000
給料 940,000
保険料 72,000
支払利息 18,000
買掛金 480,000
借入金 800,000
貸倒引当金 4,000
建物減価償却累計額 540,000
資本金 2,000,000
繰越利益剰余金 176,000
売上 5,300,000
受取手数料 40,000

借方・貸方の合計はいずれも9,340,000円です。

決算整理事項は次の5つです。

  • 期末商品棚卸高:320,000円
  • 売掛金の2%を貸倒引当金として設定(差額補充法)
  • 建物を定額法、耐用年数25年、残存価額ゼロで減価償却
  • 保険料24,000円が次期分
  • 支払利息6,000円が未払い

1.決算整理後の主要金額

  • 売上原価:280,000+3,850,000-320,000=3,810,000円
  • 貸倒引当金の期末設定額:600,000×2%=12,000円
  • 貸倒引当金繰入:12,000-4,000=8,000円
  • 建物の当期減価償却費:1,500,000÷25=60,000円
  • 建物減価償却累計額:540,000+60,000=600,000円
  • 保険料:72,000-24,000=48,000円
  • 前払費用:24,000円
  • 支払利息:18,000+6,000=24,000円
  • 未払費用:6,000円

2.P/L

収益合計は、

5,300,000+40,000=5,340,000円

費用合計は、

3,810,000+940,000+48,000+8,000+60,000+24,000 =4,890,000円

したがって、

当期純利益=5,340,000-4,890,000=450,000円

です。

3.B/S

主な資産側は、

  • 現金:350,000円
  • 普通預金:1,730,000円
  • 売掛金:600,000-貸倒引当金12,000=588,000円
  • 商品:320,000円
  • 前払費用:24,000円
  • 建物:1,500,000-減価償却累計額600,000=900,000円

合計は3,912,000円です。

負債・純資産側は、

  • 買掛金:480,000円
  • 借入金:800,000円
  • 未払費用:6,000円
  • 資本金:2,000,000円
  • 繰越利益剰余金:176,000+450,000=626,000円

合計は3,912,000円となり、資産側と一致します。


⑦ P/LとB/Sの金額を照合する

財務諸表が完成したら、少なくとも次の2方向から確認します。

P/L

収益合計-費用合計=当期純利益(または純損失)

基本例では、

5,340,000-4,890,000=450,000円

です。

B/S

資産合計=負債・純資産合計

基本例では両方とも3,912,000円です。

さらに、当期純利益を繰越利益剰余金へ反映する設計では、

626,000-176,000=450,000円

となり、当期純利益を反映する直前の繰越利益剰余金残高からの増加分がP/Lの当期純利益と一致します。

ここで比較するのは単純な「期首残高との差」ではありません。配当など当期中の他の変動がある場合は、それらを反映した後の振替前残高を基準に考えます。


⑧ 主な間違いやすいポイント

1.決算整理前の残高を使う

整理事項がある科目は、決算整理後の金額へ直してからP/L・B/Sへ載せます。

2.勘定科目と表示科目を混同する

`前払保険料`をそのままB/Sへ書くのではなく、問題の表示様式では`前払費用`へ読み替えることがあります。`繰越商品`とB/S表示`商品`の関係も同じです。

3.P/Lの当期額とB/Sの期末額を混同する

貸倒引当金では、P/Lの貸倒引当金繰入とB/Sの期末貸倒引当金は別の数字になることがあります。減価償却でも、P/Lは当期の減価償却費、B/Sは期末までの減価償却累計額を使います。


⑨ 関連問題への導線

この単元のQAでは、表示科目・決算整理後残高・P/LとB/Sの関係を確認します。CALCでは、1つまたは複数の決算整理を反映して財務諸表の金額を求めます。

当サイトの本試験形式では、財務諸表作成を第3問対策として扱います。答案様式を含む完成問題はE-T11「第3問B 財務諸表作成」、精算表など他形式も含めた横断的な解答戦略はC17-T04「第3問(決算総合問題)の攻略」で扱います。

帳簿の締切りや損益振替そのものはC15-T06の担当です。


⑩ 2級への接続

2級では、決算整理の種類や財務諸表の作成範囲が広がります。それでも、

  • 整理前の金額を修正する
  • 整理後残高を確定する
  • 表示区分へ振り分ける
  • P/LとB/Sのつながりを確認する

という考え方は土台になります。

3級では、「当期の収益・費用」と「決算日時点の資産・負債・純資産」を分け、同じ決算整理が両方へどう残るかを見る習慣を固めておきましょう。


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