減価償却の決算整理
テキスト日商簿記3級『減価償却の決算整理』を基礎から学べる解説ページです。仕訳や計算で必要となる考え方を、初学者向けに整理しています。
2026.08.28
① この単元の位置づけ
C07-T03(減価償却の基本)では、次のことを学びました。
- 減価償却は、固定資産の取得原価を使用期間に応じて各年度へ費用配分する処理であること
- 定額法:取得原価 ÷ 耐用年数(残存価額がある場合は(取得原価 − 残存価額)÷ 耐用年数)
- 間接法:固定資産そのものは減らさず、資産名を冠した減価償却累計額を貸方に立てること
- 期中取得の資産は月割で計算すること
- 帳簿価額 = 取得原価 − 減価償却累計額
このページでは、その計算を決算の資料へ実際に適用するところを扱います。
決算問題では、「当期の減価償却費は ¥○○ である」と親切に書かれているとは限りません。決算整理前残高試算表と決算整理事項を読み、自分で当期分を計算し、決算整理後の各金額まで確認することになります。その流れを確認していきます。
② 決算整理前残高試算表に載っているもの
ここでは、当期の減価償却を決算日にまとめて計上し、期中に減価償却累計額を増減させる別の処理がない基本ケースを前提とします。
この基本ケースの決算整理前残高試算表には、固定資産について次の2つが載っています。
| 勘定科目 |
意味 |
| 備品(建物・車両運搬具など) |
取得原価。間接法では決算整理をしても変わらない |
| 備品減価償却累計額 |
当期の決算整理分を反映する前の累計残高。この基本ケースでは、当期首に繰り越された過年度分の累計であり、当期の費用そのものではない |
この基本ケースでは、当期分の減価償却費は決算整理前残高試算表にまだ反映されていません。 そのままでは、
- 当期の費用が少なすぎる
- 減価償却累計額が少なすぎる
- 帳簿価額が大きすぎる
という状態です。そこで決算日に、当期分を追加するのが減価償却の決算整理です。
③ 決算整理で確認する4つの数値
| # |
拾うもの |
どこにあるか |
| :-: |
— |
— |
| 1 |
取得原価 |
決算整理前残高試算表(備品・建物など) |
| 2 |
決算整理前の減価償却累計額 |
決算整理前残高試算表 |
| 3 |
耐用年数・残存価額・償却方法 |
決算整理事項などの資料 |
| 4 |
取得の時期(期中取得なら月数) |
決算整理事項・固定資産に関する資料など |
この4つがそろえば、あとは計算するだけです。
④ 当期の減価償却費を計算する
設例
決算整理前残高試算表(一部)
| 勘定科目 |
借方 |
貸方 |
| 備品 |
330,000 |
|
| 備品減価償却累計額 |
|
66,000 |
決算整理事項:備品は前期以前から保有している。定額法(耐用年数10年、残存価額ゼロ)により減価償却を行う。
当期分は、試算表の累計額ではなく、取得原価と耐用年数から自分で計算します。
当期の減価償却費 = 330,000 ÷ 10年 = ¥33,000
試算表の累計額 ¥66,000 を、そのまま当期の減価償却費にしないでください。 この設例では、これは当期の決算整理分を反映する前の累計(33,000 × 2年分)であって、当期の費用ではありません。
⑤ 決算整理仕訳
| 借方科目 |
金額 |
貸方科目 |
金額 |
| 減価償却費 |
33,000 |
備品減価償却累計額 |
33,000 |
- 借方:減価償却費(費用)……当期分の費用が発生します。
- 貸方:備品減価償却累計額(資産の控除項目)……間接法なので、備品そのものは減らしません。
貸方は「減価償却累計額」ではなく、資産名を冠した「備品減価償却累計額」と書きます。(建物なら建物減価償却累計額、車両運搬具なら車両運搬具減価償却累計額です。)
⑥ 決算整理後の減価償却累計額
決算整理仕訳を書くと、累計額は次のようになります。
決算整理後の累計額 = 決算整理前の累計額 + 当期の減価償却費 66,000 + 33,000 = ¥99,000
取得原価 ¥330,000 は変わりません。 間接法では、固定資産の勘定に手を触れないためです。
⑦ 決算整理後の帳簿価額
帳簿価額 = 取得原価 − 決算整理後の減価償却累計額 330,000 − 99,000 = ¥231,000
検算:決算整理後の累計額 99,000 + 帳簿価額 231,000 = 330,000 = 取得原価 ✓
貸借対照表では、備品を取得原価で示し、そこから減価償却累計額を控除する形で表示します。
⑧ 決算整理の流れ(まとめ)
| 手順 |
やること |
設例 |
| :-: |
— |
— |
| 1 |
試算表から取得原価と決算整理前の累計額を拾う |
330,000/66,000 |
| 2 |
決算整理事項から償却方法・耐用年数・残存価額・取得時期を確認する |
定額法・10年・ゼロ・前期以前 |
| 3 |
当期の減価償却費を計算する |
330,000 ÷ 10年 = 33,000 |
| 4 |
決算整理仕訳を書く |
減価償却費 33,000/備品減価償却累計額 33,000 |
| 5 |
決算整理後の累計額を求める |
66,000 + 33,000 = 99,000 |
| 6 |
決算整理後の帳簿価額を求める |
330,000 − 99,000 = 231,000 |
| 7 |
検算する |
99,000 + 231,000 = 330,000 ✓ |
⑨ 3つの金額を取り違えない
決算整理の場面では、似た金額が3つ出てきます。それぞれ表している期間が違います。
| 金額 |
表しているもの |
設例 |
どこに載るか |
| 当期の減価償却費 |
当期1年分(または月割分)だけ |
33,000 |
損益計算書(販売費及び一般管理費) |
| 決算整理後の減価償却累計額 |
取得時から当期末までの累計 |
99,000 |
貸借対照表(固定資産から控除) |
| 決算整理後の帳簿価額 |
取得原価から累計額を引いた残り |
231,000 |
(表示は取得原価と累計額の差として示される) |
仕訳に書くのは、いちばん上の「当期の減価償却費」だけです。
なお、期中に取得した資産は当期分を月割で計算します(C07-T03)。決算整理事項に取得年月日が示されている場合は、その月数を数えてください。
⑩ 定率法について
定率法は、2027年度から3級の出題範囲に加わる償却方法です。帳簿価額に償却率を掛けて当期分を求めます。
本教材では、定率法は C07-T04(減価償却の定率法) で扱います。2026年度を受験する方は、このページの定額法だけで足ります。
このページの設例・問題は、すべて定額法で構成しています。
⑪ 精算表・財務諸表への接続
決算整理仕訳を書いたあとは、次の手続きへつながります。
| つながる先 |
何を扱うか |
| C15-T01(精算表) |
決算整理仕訳を修正記入欄へ反映し、試算表欄の残高と区別しながら損益計算書欄・貸借対照表欄へ振り分ける |
| C15-T02・C15-T03(損益計算書・貸借対照表) |
減価償却費を損益計算書に、減価償却累計額を固定資産から控除する形で貸借対照表に表示する |
このページでは、決算整理仕訳と、決算整理後の各金額を確認するところまでを扱います。精算表の完成や財務諸表の作成そのものは、それぞれの単元で学びます。
⑫ まとめ
確かめたい5つの点
- 試算表の減価償却累計額は決算整理前の累計であり、当期の費用ではない。
- 当期分は取得原価と耐用年数(と月数)から自分で計算する。
- 貸方は資産名を冠した減価償却累計額。取得原価は変わらない。
- 決算整理後の累計額 = 決算整理前の累計額 + 当期分。
- 帳簿価額 = 取得原価 − 決算整理後の累計額。 検算は「累計額 + 帳簿価額 = 取得原価」。
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