貯蔵品の決算整理

① このページで学ぶこと

  • 決算日に未使用で残っているものを、なぜ費用から資産へ戻すのか
  • 収入印紙の決算整理(貸方は租税公課)
  • 郵便切手の決算整理(貸方は通信費)
  • 収入印紙と郵便切手をあわせて振り替えるときの書き方
  • 購入額と期末未使用額の区別
  • 決算整理後の費用残高決算整理後の貯蔵品残高
  • 翌期首の再振替

② C08-T03 で学んだ内容との違い

C08-T03(租税公課と貯蔵品)では、次のことを学びました。

  • 租税公課という費用科目と、そこで処理する税金(固定資産税・自動車税・印紙税)
  • 収入印紙は購入時に租税公課郵便切手は購入時に通信費で処理すること
  • 決算日に未使用の収入印紙が残っていたら、未使用額だけを貯蔵品へ振り替えること

このページでは、その決算整理そのものを正面から扱います。

C08-T03 C14-T05(このページ)
中心 租税公課という費用科目と、収入印紙が貯蔵品になるという関係 決算整理としての振替と、決算整理後の残高
扱う範囲 購入時の処理/未使用収入印紙の振替 郵便切手の振替/複数種類の同時振替/決算整理後の費用残高と貯蔵品残高/翌期首の再振替

③ 決算整理前の状態

このページで扱うのは、購入時に費用として処理している場合です。

期中に収入印紙や郵便切手を買ったとき、次のように処理していました。

買ったもの 購入時の仕訳
収入印紙 (借)租税公課 /(貸)現金 など
郵便切手 (借)通信費 /(貸)現金 など

つまり決算整理前の時点では、買った金額の全額が費用になっている状態です。

しかし、買ったものを当期中に全部使い切ったとは限りません。決算日にまだ使わずに残っている分は、まだ費用として使い切っていない——手元に使える価値が残っています。

なお、購入時から貯蔵品(資産)として処理している場合は、この決算整理仕訳は行いません。 このページの処理は、購入時に費用処理していて、決算日に未使用分が残っている場合の基本形です。


④ 決算日に未使用額を確認する

決算整理では、まず次の2つを資料から拾います。

# 拾うもの どこにあるか
:-:
1 決算整理前の費用残高(租税公課・通信費) 決算整理前残高試算表
2 決算日に未使用で残っている金額 決算整理事項

そして、未使用額だけを費用から資産へ移します。

貯蔵品へ振り替える金額 = 決算日に未使用で残っている金額


⑤ 収入印紙の決算整理

購入時に租税公課で処理していた収入印紙が、決算日に未使用で残っている場合です。

(借)貯蔵品 /(貸)租税公課

  • 借方:貯蔵品(資産)……まだ使える価値が残っているので、資産として計上します。
  • 貸方:租税公課(費用)……当期の費用から抜きます。費用の減少なので貸方です。

⑥ 郵便切手の決算整理

購入時に通信費で処理していた郵便切手が、決算日に未使用で残っている場合です。

(借)貯蔵品 /(貸)通信費

設例A

前提:決算整理前の貯蔵品残高は ¥0 とします。 決算整理前残高試算表(一部):通信費 ¥46,000(借方) 決算整理事項:通信費のうち ¥22,000 は当期に購入した郵便切手であり、決算日に ¥3,500 が未使用で残っている。

借方科目 金額 貸方科目 金額
貯蔵品 3,500 通信費 3,500

振り替えるのは未使用額 ¥3,500 だけです。購入額 ¥22,000 でも、試算表の残高 ¥46,000 でもありません。


⑦ 収入印紙と郵便切手をあわせて振り替える

同じ決算で両方が残っている場合は、借方の貯蔵品は合計1本、貸方は元の費用科目ごとに分けます

設例B

決算日に、購入時に租税公課で処理した収入印紙 ¥17,500 と、通信費で処理した郵便切手 ¥8,500 が未使用で残っていた。

借方科目 金額 貸方科目 金額
貯蔵品 26,000 租税公課 17,500
通信費 8,500

貯蔵品 = 17,500 + 8,500 = ¥26,000検算:借方 26,000 = 貸方 17,500 + 8,500 = 26,000 ✓

貸方を1本にまとめないでください。 どの費用から抜くのかが分からなくなり、決算整理後の租税公課と通信費が求められなくなります。

貸方の科目は「購入時に何として処理したか」で決める

収入印紙だから必ず租税公課、郵便切手だから必ず通信費、と決めつけないでください。

貸方に書くのは、その未使用分を購入したときに実際に費用処理した科目です。問題文に「購入時に○○として処理していた」と書かれていれば、その科目に戻します。


⑧ 購入額と未使用額の区別

振り替えるのは、購入した金額の全部ではありません。設例Aで確かめます。

金額 どうなるか
当期の郵便切手の購入額 22,000 いったん全額を通信費とした
期末未使用額 3,500 貯蔵品(資産)へ振り替える
当期使用分 18,500 通信費(費用)として当期に残る

22,000 − 3,500 = 18,500 です。

取り違えに注意:問題文に購入額と未使用額の両方が示されていても、決算整理仕訳で使うのは未使用額です。


⑨ 決算整理後の費用残高

決算整理前の費用残高から、振り替えた未使用額を差し引きます。

決算整理後の費用残高 = 決算整理前の費用残高 − 期末未使用額

設例Aなら、

46,000 − 3,500 = ¥42,500

注意:差し引くのは未使用額であって、購入額ではありません。試算表の通信費 ¥46,000 には、郵便切手の購入額 ¥22,000 のほかに、はがき代や配送料など他の通信費も含まれていることがあります。購入額を引いてしまうと、他の通信費まで消してしまいます。


⑩ 決算整理後の貯蔵品残高

決算整理前から貯蔵品残高がある場合は、その残高に今回の振替額を加えます。

決算整理後の貯蔵品残高 = 決算整理前の貯蔵品残高 + 今回振り替える期末未使用額

設例Aでは、決算整理前の貯蔵品残高を ¥0 としているため、

0 + 3,500 = ¥3,500

です。

今回の振替額だけに着目した検算は、次の関係で確認できます。

決算整理後の費用残高 + 今回増加した貯蔵品額 = 決算整理前の費用残高 42,500 + 3,500 = ¥46,000

費用から資産へ今回の未使用分を移しただけなので、この関係は変わりません。既存の貯蔵品残高がある場合、その残高まで費用との検算に足さないようにします。


⑪ 翌期首の再振替

決算で資産へ移した分は、翌期首に費用へ戻します。これを再振替といいます。翌期に使う分なので、翌期の費用の位置へ戻しておくのです。

設例C(設例Bの続き)

翌期首、前期末に貯蔵品へ振り替えていた収入印紙 ¥17,500 と郵便切手 ¥8,500 について、再振替を行う。

借方科目 金額 貸方科目 金額
租税公課 17,500 貯蔵品 26,000
通信費 8,500

決算整理と完全に逆向きです。借方に費用(元の科目ごとに分ける)、貸方に貯蔵品の合計がきます。

期末:(借)貯蔵品 /(貸)費用  →  期首:(借)費用 /(貸)貯蔵品

向きを逆にしないでください。 期首に貯蔵品を借方に書くと、資産が二重に積み上がってしまいます。


⑫ 混同を避けるポイント

(1)購入額を振り替えてしまう

振り替えるのは期末未使用額だけです(⑧)。

(2)貸方を1本にまとめてしまう

複数種類があるときは、元の費用科目ごとに分けます(⑦)。

(3)元の費用科目を確認せずに決めてしまう

「収入印紙=租税公課」「郵便切手=通信費」は購入時処理の基本形ですが、貸方に書くのは実際に費用処理した科目です(⑦)。

(4)購入時に資産処理している場合まで同じ仕訳をしてしまう

このページの決算整理は、購入時に費用処理していた場合の処理です(③)。すでに貯蔵品として資産計上しているものについて、同じ振替仕訳を行うわけではありません。


⑬ 精算表・財務諸表への接続

つながる先 何を扱うか
C15-T01(精算表) 決算整理仕訳を修正記入欄へ反映し、試算表欄の残高と区別しながら損益計算書欄・貸借対照表欄へ振り分ける
C15-T02・C15-T03(損益計算書・貸借対照表) 租税公課・通信費を損益計算書に、貯蔵品を貸借対照表の流動資産に表示する

このページでは、決算整理仕訳と、決算整理後の残高を確認するところまでを扱います。


⑭ まとめ

場面 借方 貸方
期末・未使用の収入印紙 貯蔵品 租税公課
期末・未使用の郵便切手 貯蔵品 通信費
期末・両方が残っている 貯蔵品(合計1本) 租税公課/通信費(元の科目ごと)
翌期首の再振替 租税公課/通信費 貯蔵品

確かめたい4つの点

  1. 振り替えるのは期末未使用額だけ。購入額でも試算表の残高でもない。
  2. 貸方(再振替なら借方)は、購入時に実際に費用処理した科目
  3. 決算整理後の費用残高 = 決算整理前の費用残高 − 未使用額。貯蔵品は、決算整理前残高に今回の未使用額を加える
  4. 翌期首の再振替は決算整理と完全に逆向き。

関連する単元

  • C08-T03(租税公課と貯蔵品):租税公課の意味/収入印紙・郵便切手の購入時処理
  • C15-T01(精算表)C15-T02・C15-T03(財務諸表):決算整理後の反映


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