法人税等の決算整理

1.このページで学ぶこと

決算整理のうち、法人税・住民税・事業税を確定させる処理を扱います。

このページのねらいは、次の4つです。

  1. 決算整理前残高試算表にある仮払法人税等の残高を読み取る
  2. 当期の法人税等の年税額(確定額)と、中間納付額を区別する
  3. 当期の費用になる金額と、まだ納めていない金額を区別する
  4. 決算整理仕訳を行い、決算整理後の残高まで確認する

法人税等で使う勘定科目そのものや、中間納付の仕訳、決算後に納付する仕訳は、C08-T04(法人税、住民税及び事業税) ですでに扱っています。


2.C08-T04との役割分担

同じ法人税等でも、C08-T04 とこのページでは見ている場面が違います。

内容 扱う単元
法人税、住民税及び事業税・仮払法人税等・未払法人税等という科目 C08-T04
中間納付をしたときの仕訳((借)仮払法人税等 /(貸)普通預金) C08-T04
決算後に、確定済みの未払法人税等を納付する仕訳 C08-T04
中間納付 → 決算 → 後日の納付という一連の関係 C08-T04
決算整理前残高試算表から仮払法人税等の残高を読み取る 本ページ(C14-T08)
中間納付がない場合の決算整理 本ページ(C14-T08)
決算整理後の仮払法人税等・未払法人税等の残高 本ページ(C14-T08)

このページは、決算という一場面の中で資料を読み、処理を完結させることに集中します。


3.決算整理前の状態

このページで扱う基本ケースでは、当期の法人税等に関する3科目は決算整理前に次の状態にあります。

  • 期の途中で中間納付をしていれば、その金額が仮払法人税等(資産)として残っている
  • 当期分の法人税、住民税及び事業税(費用)は、まだ計上されていない
  • 当期分の未払法人税等(負債)も、まだ計上されていない

したがって、当期分については、この3科目のうち決算整理前に残っているのは仮払法人税等だけ、という前提で進めます。前期以前の未払額や別の修正事項がある問題では、その残高・条件もあわせて考慮してください。

資料 決算整理前残高試算表(一部)

勘定科目 借方 貸方
仮払法人税等 131,000

このページで扱う基本ケースでは、この残高は当期の中間納付として仮払法人税等に計上され、決算整理前にそのまま残っているものです。

なお、問題文に別の調整事項や訂正事項がある場合は、残高がそのまま中間納付額とはかぎりません。残高=中間納付額と決めてかからず、問題の条件を確認してください。


4.法人税、住民税及び事業税

会社が負担する法人税・住民税・事業税を、簿記3級ではまとめて1つの費用科目で処理します。

法人税、住民税及び事業税(費用・借方で増える)

公式の勘定科目表では、「法人税等」という表記も許容されています。「法人税等」が誤りというわけではありません。問題文で科目が指定されている場合は、その指定に従ってください。本教材では標準の科目名である法人税、住民税及び事業税を解答として用います。

固定資産税・印紙税・自動車税などに使う租税公課とは別の科目です(C08-T03)。ただし、租税公課が税金に使えない科目ということではありません。どの税金かで科目が決まります。


5.仮払法人税等

期の途中で中間納付をしたとき、その金額を記録しておく科目です。

仮払法人税等(資産・借方で増える)

中間納付の時点では、当期の法人税等がいくらになるかがまだ確定していません。そのため費用にはせず、いったん資産として預けておくという形をとります。

決算で年税額が確定したら、この残高は貸方で取り崩します。

商品代金などの前払いに使う前払金や、用途不明の支出に使う仮払金とは別の科目です。


6.未払法人税等

決算で年税額が確定したとき、まだ納めていない金額を表す科目です。

未払法人税等(負債・貸方で増える)

これから納める義務なので負債です。決算後に納付したときに取り崩します(C08-T04)。

消費税の決算整理で生じる未払消費税C08-T05・C14-T06)とは別の科目です。どちらも「未払」で始まりますが、対象の税金が違います。


7.年税額と中間納付額の区別

決算整理では、次の2つの金額が登場します。

呼び方 意味 帳簿での位置
年税額(当期の法人税等の確定額) 決算で確定した、当期1年分の法人税等の全額 まだ帳簿にない
中間納付額 期の途中ですでに納めた金額 仮払法人税等として残っている

年税額は問題文で与えられます。税率から年税額そのものを計算することはしません。

この2つのうち、大きいのは年税額です。本ページで扱う基本ケースでは、

年税額 ≧ 仮払法人税等

が成り立つものとします。


8.費用額と未払額の区別

このページで最も重要な区別です。

金額 意味
当期の費用 年税額の全額 法人税、住民税及び事業税として計上する
未払額 年税額 − 仮払法人税等 未払法人税等として計上する

未払額だけを費用にしてはいけません。

中間納付をしたときは、その金額を仮払法人税等という資産として記録しており、費用にはしていません。したがって、決算で費用として計上するのは、すでに納めた分も含めた年税額の全額です。


9.未払法人税等の算定

未払額は次の式で求めます。

未払法人税等 = 年税額 − 仮払法人税等

検算は次の形です。

仮払法人税等 + 未払法人税等 = 年税額

たとえば、年税額が 310,000円、決算整理前の仮払法人税等が 131,000円であれば、

  • 未払法人税等:`310,000 − 131,000 = 179,000円`
  • 検算:`131,000 + 179,000 = 310,000円` ✓

となります。

この式は、年税額が仮払法人税等以上で、未払額が生じるか0円となる基本ケースを前提としています。仮払法人税等が年税額を上回る場合には、この式をそのまま当てはめることはできません。本ページではそのケースは扱いません。


10.中間納付ありの決算整理

第9節の例(年税額 310,000円・仮払法人税等 131,000円)で仕訳を作ります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
法人税、住民税及び事業税 310,000 仮払法人税等 131,000
未払法人税等 179,000

この1本で、次の3つを同時に行っています。

内容 金額
借方 当期の費用を年税額の全額で計上 310,000
貸方① 中間納付済みの仮払法人税等を取り崩す 131,000
貸方② 未納分を未払法人税等として計上 179,000

貸借は `310,000 = 131,000 + 179,000` で一致します。

仮払法人税等を借方に書いてはいけません。 中間納付のときにすでに借方で計上しているので、決算では貸方で取り崩すのが正しい向きです。


11.中間納付なしの決算整理

中間納付をしていない場合、仮払法人税等の残高はありません

このとき、年税額の全額がそのまま未払額になります。

未払法人税等 = 年税額 − 0 = 年税額

年税額が 260,000円なら、仕訳は次のとおりです。

借方科目 金額 貸方科目 金額
法人税、住民税及び事業税 260,000 未払法人税等 260,000

仮払法人税等を使ってはいけません。 取り崩すべき残高が存在しないからです。「決算整理だから3科目そろえる」と考えて仮払法人税等を登場させると、実在しない資産を減らすことになります。

問題文に中間納付を行っていないと明示されている、または仮払法人税等の残高が0と示されていることが、このケースの手がかりです。抜粋された試算表では、行の有無だけで中間納付の有無を決めつけないでください。


12.決算整理後残高

決算整理を終えたあとの残高を確認します。第10節の例(年税額 310,000円・仮払法人税等 131,000円)では次のとおりです。

勘定科目 決算整理前 決算整理 決算整理後
仮払法人税等(資産) 131,000 貸方 131,000 で取崩し 0
未払法人税等(負債) 0 貸方 179,000 を計上 179,000
法人税、住民税及び事業税(費用) 0 借方 310,000 を計上 310,000

本ページで扱う当期分の中間納付だけが残っている基本ケースでは、決算整理で当期分の仮払法人税等を全額取り崩すため、

決算整理後の仮払法人税等 = 0円

となります。

これは、この基本ケースについて言えることです。どのような場合でも仮払法人税等は決算後に必ず0円になるという形で一般化しないでください。問題文に他の調整事項がある場合は、条件をすべて反映して残高を求めてください。


13.決算整理前残高試算表との接続

決算の問題では、資料が決算整理前残高試算表の形で与えられます。読み取る手順は次のとおりです。

手順1 決算整理前残高試算表で仮払法人税等の残高を確認し、問題文の中間納付の有無と対応させる 手順2 決算整理事項で当期の年税額を確認する 手順3 年税額の全額を費用として計上する 手順4 仮払法人税等を貸方で取り崩す 手順5 差額を未払法人税等とする 手順6 決算整理後の残高を確認する

手順3を手順5より先に置いていることが重要です。差額(未払額)を先に求めてしまうと、その金額をそのまま費用にしてしまう誤りにつながります。費用は年税額の全額です。


14.精算表との接続

決算整理仕訳ができれば、精算表の修正記入欄へ反映できます。ただし、

  • 精算表のどの欄に記入するか
  • 修正記入欄・損益計算書欄・貸借対照表欄の関係
  • 精算表を完成させること

といった表そのものを作る技能は、C15-T01(精算表) が扱います。本ページで求めるのは、決算整理額・決算整理仕訳・決算整理後の残高までです。


15.誤りを避けるポイント

誤りとなる考え方 この考え方が誤りである理由
未払額だけを当期の費用にする 中間納付額は仮払法人税等(資産)として記録しており、費用にしていません。費用は年税額の全額です
年税額の全額を未払法人税等にする(中間納付がある場合) すでに納めた分まで債務に含めることになり、二重に計上してしまいます
決算で仮払法人税等を借方に書く 中間納付時にすでに借方で計上済みです。決算では貸方で取り崩します
未払法人税等を借方に計上する 負債の増加は貸方です
中間納付がないのに仮払法人税等を使う 取り崩すべき残高が存在しません
決算整理仕訳と中間納付の仕訳を混同する 中間納付は(借)仮払法人税等 /(貸)普通預金 です(C08-T04
決算整理仕訳と後日の納付を混同する 納付は(借)未払法人税等 /(貸)普通預金 で、費用は計上しません(C08-T04
法人税等に租税公課を使う 租税公課は固定資産税・印紙税・自動車税などに使う科目です(C08-T03
未払法人税等と未払消費税を取り違える 対象の税金が違います(未払消費税は C08-T05・C14-T06

16.まとめ

  1. 本ページの基本ケースでは、当期分の法人税等について、決算整理前に計上済みなのは仮払法人税等であり、当期の費用と未払額は今回の決算整理で計上する。
  2. 年税額は問題文で与えられる。税率から計算することはしない。
  3. 当期の費用は年税額の全額。未払額だけを費用にしない。
  4. 未払法人税等 = 年税額 − 仮払法人税等。検算は 仮払 + 未払 = 年税額
  5. この式は、年税額が仮払法人税等以上で、未払額が生じるか0円となる基本ケースを前提とする。
  6. 中間納付ありの仕訳は、借方に費用の全額、貸方に仮払の取崩しと未払の計上。
  7. 中間納付なしなら仮払法人税等を使わない。 年税額の全額が未払額になる。
  8. 当期分の中間納付だけが残っている基本ケースでは、決算整理後の仮払法人税等は0円になる。一般則としては扱わない。
  9. 科目・中間納付・後日の納付は C08-T04、精算表の欄記入は C15-T01 が扱う。


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