この単元で身につけること
このUnitでは、所得税の10種類の所得区分と、代表的な所得金額の計算を学びます。目標は次のとおりです。
- 10種類の所得(利子・配当・不動産・事業・給与・譲渡・一時・雑・退職・山林)を区分できる
- 非上場株式の配当(配当所得・総合課税)と特定公社債の利子(利子所得・申告分離課税が基本)の課税区分を判断できる
- 不動産所得・事業所得の基本式(総収入金額-必要経費)と売上原価(期首棚卸高+年間仕入高-期末棚卸高)を計算できる
- 給与所得控除の最低保障額65万円(2026-04-01基準)を答えられ、給与所得を計算できる
- 総合課税の譲渡所得(特別控除50万円、長期は特別控除後の2分の1算入)を計算できる
- 一時所得(特別控除50万円、2分の1算入)を計算できる
- 公的年金等が雑所得であることを判断し、公的年金等に係る雑所得を計算できる
- 退職所得控除額(20年以下:40万円×勤続年数〔最低80万円〕、20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年))と退職所得(原則2分の1)を計算できる
- 山林所得が独立した所得区分であることを知っている
全体像
所得税は、所得を性質に応じて10種類に区分し、それぞれの方法で所得金額を計算します。D02で学んだ計算の流れの最初の段階「各所得の計算」が、このUnitのテーマです。
学習のコツは、所得ごとに「区分の判断」と「計算の型」をセットで覚えることです。区分の判断では「その収入はどの所得か」(例:公的年金等=雑所得)、計算の型では「収入から何を引くか」(必要経費か、控除額か、特別控除か)と「最後に2分の1を掛けるか」(長期譲渡・一時・退職)がポイントになります。複数のExam_Slotで所得区分の判断と所得金額計算の能力が継続して観測されており、分野Dの重要Unitのひとつです。まず10種類の名前と代表例を眺め、そのうえで計算の型を1つずつ確実にしていきましょう。
用語の説明
- 利子所得:預貯金・公社債の利子等による所得
- 配当所得:株式の配当等による所得
- 不動産所得:不動産等の貸付けによる所得
- 事業所得:事業から生じる所得
- 給与所得:給与・賞与等による所得
- 譲渡所得:資産の譲渡による所得
- 一時所得:営利を目的としない一時的な所得(保険の満期保険金等)
- 雑所得:他の9種類のいずれにも当たらない所得(公的年金等を含む)
- 退職所得:退職手当等による所得
- 山林所得:山林の伐採・譲渡等による所得
- 特別控除:譲渡所得・一時所得の計算で差し引く一定額(各50万円)
- 給与所得控除:給与収入から差し引く控除。最低保障額65万円(2026-04-01基準)
- 退職所得控除:勤続年数に応じて退職金から差し引く控除
基本ルール
利子所得・配当所得
- 非上場株式の配当は、原則として配当所得となり、総合課税の対象となります
- 特定公社債の利子等は、利子所得として申告分離課税の対象となるのが基本です
分野Cで学んだ預貯金利子(原則源泉分離課税)と対比し、「同じ利子・配当でも、商品により課税方式が異なる」ことを整理します。判断の手がかりは「何から生じた収入か」です。預貯金からなら源泉分離が原則、特定公社債からなら申告分離が基本、株式の配当なら配当所得、というように、収入の源泉と課税方式をセットで覚えます。FP3級では、この代表的な区分の理解で足り、高度な金融商品税務には立ち入りません。
不動産所得・事業所得
- 不動産所得=総収入金額-必要経費(不動産等の貸付けによる所得)
- 事業所得=総収入金額-必要経費
事業所得の必要経費の計算では、商品売買業の売上原価が代表論点です。
売上原価=期首棚卸高+年間仕入高-期末棚卸高
「期首にあった分と年間に仕入れた分のうち、期末に残らなかった分が売れた分(原価)」という考え方です。
給与所得
給与所得は、給与収入から給与所得控除額を差し引いて計算します。給与所得控除額の最低保障額は、2026-04-01の法令基準日時点で65万円です。収入が少ない場合でも、最低65万円の控除が保障されます。
譲渡所得(総合課税)
総合課税の対象となる資産の譲渡所得は、次の式で計算します。
譲渡所得の金額=総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(最高50万円)
特別控除の50万円は短期・長期を合わせた年間の上限で、短期から先に控除します。所有期間5年以下は短期譲渡所得としてその全額を、所有期間5年超は長期譲渡所得として特別控除後の金額の2分の1を総所得金額へ算入します。「長期は半分だけ算入」が最大のポイントです。なお、土地・建物等の譲渡の特例はFP3級のこのUnitでは扱いません。
一時所得
一時所得の金額=総収入金額-収入を得るために直接支出した金額-特別控除額(最高50万円)
そして、総所得金額へ算入するのは一時所得の金額の2分の1です。保険の満期保険金等が代表例で、「50万円を引いて、さらに半分にしてから算入」という2段階を正確に踏むことが重要です。
雑所得(公的年金等)
公的年金等として受け取る年金は、雑所得となります。公的年金等に係る雑所得は、公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を差し引いて計算します。分野Aで学んだ老齢年金などの公的年金の給付が、税務上は雑所得として扱われる、という分野間の接続を押さえましょう。なお、雑所得は「他の9種類のいずれにも当たらない所得」の受け皿であり、公的年金等はその代表例です。
退職所得
退職所得は、次の手順で計算します。
- 退職所得控除額を勤続年数から計算する
- 勤続20年以下:40万円×勤続年数(最低80万円)
- 勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
- 勤続年数の1年未満の端数は切り上げる
- 退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×2分の1(原則)
一般的な退職手当等では原則として2分の1を乗じます(一部に例外の区分がありますが、FP3級では原則の理解で足ります)。
山林所得
山林所得は、山林の伐採・譲渡等に係る独立した所得区分で、分離課税されます。FP3級では、「独立した区分として存在する」ことを知っていれば足ります。
重要な数字
| 項目 | 数値・式 |
|---|---|
| 不動産所得・事業所得 | 総収入金額-必要経費 |
| 売上原価 | 期首棚卸高+年間仕入高-期末棚卸高 |
| 給与所得控除の最低保障額 | 65万円(2026-04-01基準) |
| 総合譲渡所得の特別控除 | 最高50万円(短期・長期合わせた年間上限、短期から先に控除) |
| 長期譲渡所得(所有5年超)の算入 | 特別控除後の2分の1 |
| 一時所得の特別控除 | 最高50万円 |
| 一時所得の算入 | 特別控除後の2分の1 |
| 退職所得控除(20年以下) | 40万円×勤続年数(最低80万円) |
| 退職所得控除(20年超) | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
| 退職所得 | (収入金額-退職所得控除額)×2分の1(原則) |
具体例
- 例1(区分の判断):非上場株式の配当は配当所得、特定公社債の利子は利子所得、公的年金は雑所得、退職金は退職所得となる。
- 例2(2分の1のある所得):長期譲渡所得(総合)・一時所得は特別控除後の2分の1を算入し、退職所得は控除後の2分の1(原則)で計算する。「半分になる所得」をまとめて覚えると整理しやすい。
- 例3(売上原価):年初に商品在庫があり、年間に仕入れを行い、年末に在庫が残った場合、売れた分の原価は「期首+仕入-期末」で計算する。
計算のしかた
不動産所得
- 式:総収入金額-必要経費
- 例:家賃収入300万円、必要経費120万円 → 3,000,000円-1,200,000円=1,800,000円
売上原価(事業所得の必要経費)
- 式:期首棚卸高+年間仕入高-期末棚卸高
- 例:期首50万円、仕入400万円、期末70万円 → 500,000円+4,000,000円-700,000円=3,800,000円
給与所得(最低保障の例)
- 式:給与収入-給与所得控除額
- 例:給与収入180万円、給与所得控除額65万円(最低保障)の場合 → 1,800,000円-650,000円=1,150,000円
総合課税の譲渡所得
- 式:総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(最高50万円)
- 例:譲渡収入100万円、取得費40万円、譲渡費用5万円 → 1,000,000円-450,000円-500,000円=50,000円
一時所得(総所得金額への算入額まで)
- 式:(総収入金額-直接支出した金額-特別控除額50万円)×1/2
- 例:満期保険金350万円、払込保険料280万円 → (3,500,000円-2,800,000円-500,000円)=200,000円、算入額は200,000円×1/2=100,000円
退職所得控除額(20年以下の例)
- 式:40万円×勤続年数(最低80万円)
- 例:勤続18年 → 400,000円×18年=7,200,000円
いずれの例も端数は生じません。各所得の「何を引くか」「最後に半分にするか」を式の段階で確認してから計算しましょう。
よくある間違い
- 所得区分の取り違え(公的年金を一時所得とする、非上場配当を利子所得とする等)
- 特定公社債の利子と預貯金の利子の課税方式の混同。特定公社債の利子等は申告分離課税が基本
- 売上原価の式の符号誤り(期末を足す・期首を引く)。「期首+仕入-期末」
- 給与所得控除の最低保障額の誤記憶。2026-04-01基準で65万円
- 総合譲渡所得の特別控除50万円の控除忘れ、短期・長期合算の年間上限であることの誤解
- 長期譲渡所得(所有5年超)の2分の1算入を忘れる
- 一時所得で特別控除50万円を引き忘れる、または2分の1を掛け忘れる
- 退職所得控除の式の選択誤り(勤続20年超に40万円×年数を使う等)、最低80万円の見落とし
- 退職所得の2分の1を掛け忘れる
- 山林所得を他の所得区分に含めてしまう誤り。独立した所得区分である
- 「2分の1になる所得」(総合長期譲渡・一時・退職)と「ならない所得」の混同。半分にする所得をまとめて記憶する
試験での出題のされ方
2024~2026年のCBT公表分(3セット)の観測では、EX-D-002(所得区分・所得金額の基本)、EX-D-003(各種所得金額の計算構造)、EX-D-006(各種所得の計算)、EX-D-011(実技:所得税の計算)、EX-D-012(実技:所得控除・退職所得等)、EX-D-013(実技:税務特例・申告)がいずれも3/3回観測、頻度Aです。所得区分の正誤判断と、給与・一時・退職・年金等の所得金額計算が学科・実技の双方で継続的に問われています。
一方、総合譲渡所得の単独計算と山林所得のPast_Exam_FrequencyはUNVERIFIEDです。UNVERIFIEDは当該Question_Slotへ過去問頻度を直接付与していない管理状態を示す表示であり、出題可能性の否定ではありません。いずれも公式試験範囲の基本論点として学習しておきましょう。
まとめ
- 所得は10種類に区分。非上場配当=配当所得(総合)、特定公社債利子=利子所得(申告分離が基本)、公的年金=雑所得、山林所得=独立区分(分離課税)
- 不動産・事業所得=総収入金額-必要経費。売上原価=期首+仕入-期末
- 給与所得=給与収入-給与所得控除(最低保障65万円、2026-04-01基準)
- 総合譲渡所得=収入-(取得費+譲渡費用)-特別控除50万円。長期(5年超)は特別控除後の2分の1算入
- 一時所得=収入-直接支出-特別控除50万円、算入は2分の1
- 退職所得控除=40万円×勤続年数(20年以下、最低80万円)/800万円+70万円×(勤続-20)(20年超)。退職所得=(収入-控除)×1/2(原則)
- 「2分の1になる所得」:総合長期譲渡・一時・退職(原則)
練習のしかた
- 一問一答(TF)5問:非上場配当の区分、給与所得控除最低保障65万円、長期譲渡の2分の1算入、公的年金の所得区分、山林所得の独立区分
- 三答択一(MC3)1問:特定公社債の利子の課税区分
- 計算問題(CALC)5問:不動産所得、売上原価、総合譲渡所得、一時所得の算入額、退職所得控除額
- 実技事例(CASE)4問:給与所得、一時所得の算入額、公的年金等に係る雑所得、退職所得
05_Numbersの式の一覧を確認し、「何を引くか」「半分にするか」を意識して取り組んでください。
FP2級へのつながり
FP2級では、各所得の例外がより詳細に扱われます。FP3級の段階では、10所得の区分と代表的な計算の型(基本式・特別控除・2分の1)を正確に使えることが土台になります。このUnitの計算は、D04(損益通算)・D05(所得控除)・D07(確定申告)へ直接つながる、分野Dの中核スキルです。
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