この単元で身につけること
所得税の税額控除のうち、配当控除と住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)について次の状態を目標とします。
- 税額控除が所得控除と何が違うのかを説明できる。
- 一定の国内法人からの配当等について総合課税を選択した場合に配当控除の対象となり得ることを判断できる。
- 住宅ローン控除の基本控除率0.7%と、対象借入金等の償還期間等10年以上という基本要件を答えられる。
- 控除額が年末残高等を基礎として計算される考え方を理解できる。
- 住宅ローン控除の適用初年度は原則として確定申告が必要であることを判断できる。
金額・要件はすべて法令基準日2026-04-01時点の現行制度によります。
全体像
所得税は、所得金額から所得控除を差し引いた課税所得金額に税率を適用して税額を算出します。税額控除は、この算出された税額から直接差し引く控除であり、所得控除とは差し引く段階が異なります。
FP3級の代表的な税額控除は配当控除と住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)です。住宅ローン控除では控除率・償還期間要件・初年度の手続が重要な基本論点です。なお住宅の区分や入居年によって借入限度額等の取扱いが異なるため、本単元では基本要件の理解に絞ります。
用語の説明
税額控除:算出された所得税額から直接差し引く控除。所得控除とは差し引く段階が異なります。
配当控除:一定の国内法人からの配当等について総合課税を選択した場合に、税額から一定額を差し引くことができる制度です。
総合課税:他の所得と合算して累進税率で課税する方式。配当所得は課税方式の選択により配当控除の適用可否が変わります。
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除):一定の住宅の取得等のために借入れを行い居住した場合に、年末残高等を基礎として計算した額を税額から控除する制度です。
年末残高等:控除額の計算基礎となる、その年12月31日時点の借入金等の残高です。
基本ルール
配当控除:一定の国内法人からの配当等について総合課税を選択した場合、配当控除の適用対象となり得ます。課税方式の選択と配当控除の適用は結びついています。
住宅ローン控除の控除率:令和4年以降入居の対象住宅に関する基本控除率は0.7%です。ただし住宅の区分・入居年で借入限度額等の取扱いが異なるため、控除率だけで控除額のすべてが決まるわけではありません。
償還期間等の要件:対象となる借入金等は、償還期間等が10年以上であることが基本要件です。これを下回る借入れは対象になりません。
控除額の計算の考え方:控除額はその年の年末残高等を基礎として計算します。当初の借入額や支払った利息の額をそのまま基礎とするものではありません。
適用初年度の手続:適用初年度は原則として確定申告が必要です。給与所得者でも年末調整だけで適用を受けることはできません。
重要な数字
本単元の重要数字は次のとおりです(2026-04-01基準)。
・住宅ローン控除の基本控除率:0.7%(令和4年以降入居の対象住宅に関する基本率) ・対象借入金等の償還期間等:10年以上 ・控除額の計算基礎:その年の年末残高等 ・適用初年度:原則として確定申告が必要
住宅の区分・入居年ごとの借入限度額や控除期間は本単元の範囲を超えるため、具体的な金額をここで一般化することはしません。
具体例
会社員のEさんが、償還期間20年の住宅ローンで住宅を取得し、その年に居住を開始した場合を考えます。
・償還期間20年は10年以上という基本要件を満たします。 ・給与所得者であっても、適用初年度は原則として確定申告が必要です。 ・控除額は当初の借入額ではなく、その年の年末残高等を基礎として計算します。
償還期間が10年に満たない借入れは、他の要件を満たしていても対象になりません。
計算のしかた
住宅ローン控除の控除額の計算の考え方を確認します(数値は例示用です)。
年末残高等が1,800万円で、基本控除率0.7%を適用する場合。
- 求めるもの:その年の住宅借入金等特別控除の額の計算基礎となる金額
- 使用するルール:年末残高等×基本控除率0.7%
- 数値代入:1,800万円×0.7%
- 計算:126,000円
- 単位確認:円単位で126,000円
- 結果:126,000円
ただし実際の控除額は住宅の区分・入居年に応じた借入限度額等の影響を受けます。この計算は基本的な考え方を示すものです。
よくある間違い
- 所得控除との混同:税額控除は算出された税額から直接差し引きます。
- 計算基礎の取り違え:基礎は年末残高等です。当初の借入額や支払利息の額ではありません。
- 償還期間要件の取り違え:償還期間等は10年以上が基本要件です。
- 初年度の手続の誤解:給与所得者でも適用初年度は原則として確定申告が必要です。
- 控除率の桁の誤り:基本控除率は0.7%です。桁を取り違えないでください。
- 住宅区分の過度な一般化:借入限度額や控除期間は住宅の区分・入居年で異なります。
試験での出題のされ方
本単元の過去問観測枠はEX-D-009(住宅ローン控除・学科)とEX-D-013(実技:税務特例・申告)で、いずれも分析期間2024-2026 CBT公表分の観測数3/3(頻度100%・頻度区分A)です。
EX-D-013は税務特例・申告に関する広い実技出題枠であり、上記の頻度は枠全体としての観測値です。住宅ローン控除という個別のサブ論点がそれぞれ毎回出題されたという意味ではありません。
また、配当控除に関する問題は、当該Question_Slotへ過去問頻度を直接付与していない管理状態(UNVERIFIED)に基づいています。これは管理上の状態であり、出題可能性の否定ではありません。総合課税の選択と配当控除の関係は基本論点として押さえてください。
学科では控除率・償還期間要件・初年度の手続を問う出題が中心です。実技では資料から要件の充足を判断させたり、年末残高等を基礎とした計算をさせたりする形式が代表的です。
まとめ
・税額控除は算出された税額から直接差し引く。所得控除との段階の違いを明確に。 ・一定の国内法人からの配当等について総合課税を選択した場合、配当控除の対象となり得る。 ・住宅ローン控除の基本控除率は0.7%(令和4年以降入居の対象住宅に関する基本率)。 ・対象借入金等の償還期間等は10年以上が基本要件。 ・控除額は年末残高等を基礎として計算する。 ・適用初年度は原則として確定申告が必要。 ・住宅の区分・入居年で借入限度額等が異なるため、過度に一般化しない。
練習のしかた
- 税額控除は、課税所得金額を計算する前に所得から差し引くものである。○か×か。
- 住宅借入金等特別控除の基本控除率は何%か。
- 控除の対象となる借入金等の償還期間等は何年以上か。
- 給与所得者が住宅ローン控除の適用を受ける初年度に原則として必要な手続は何か。
(答え:1 ×(算出された税額から直接差し引く)/2 0.7%/3 10年以上/4 確定申告)
FP2級へのつながり
FP2級では、住宅ローン控除の住宅区分・入居年ごとの借入限度額や控除期間、所得要件・床面積要件などがより詳細に問われ、配当控除も控除率の区分が扱われます。FP3級では本単元の基本控除率・償還期間要件・計算の基礎・初年度の手続を正確に押さえることが土台になります。
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