この単元で身につけること
このUnitでは、株式投資を「値上がりを期待して買うもの」だけで捉えず、株主の基本的な権利、売買注文、受渡し、株価指数、株式投資指標、投資に伴うリスクまで順序立てて整理します。学習後には、指値注文と成行注文の違い、上場株式の受渡日、日経平均株価とTOPIXの違いを正しく判断できることを目指します。
さらに、PER・PBR・ROE・配当利回り・配当性向の式を使い分け、株価やEPS、BPS、1株当たり配当金などの資料から必要な指標を計算できる状態を目標とします。実技では、資料のどの数値を使うのかを先に決め、指定された指標だけを正確に計算することが重要です。
全体像
株式は、株式会社が資金を調達するために発行する証券で、株主は会社の所有者の一員として一定の権利を持ちます。一般に、議決権、配当を受ける権利、会社清算時の残余財産の分配を受ける権利などが基本論点になります。一方で、株価は企業業績や市場環境などにより変動し、元本や利益が保証される商品ではありません。
FP3級では、取引実務の細部よりも、注文方法・受渡日・株価指数・代表的な投資指標が中心です。特に株式指標は、式の分子と分母を取り違えやすいため、「何と何を比較する指標か」を言葉で確認してから計算する習慣が有効です。
用語の説明
- 約定日:売買が成立した日です。
- 受渡日:売買代金と株式の受渡しを行う日です。上場株式は原則として約定日の2営業日後(T+2)です。
- 指値注文:売買価格を指定して発注する注文です。
- 成行注文:売買価格を指定せずに発注する注文です。
- 日経平均株価:日本経済新聞社が選定する代表的225銘柄を基に算出する株価指数です。
- TOPIX:東京証券取引所の広範な上場銘柄を対象とする代表的な時価総額加重型株価指数です。
- EPS:1株当たり当期純利益。PERの分母として使います。
- BPS:1株当たり純資産。PBRの分母として使います。
- PER:株価収益率。株価がEPSの何倍かを示します。
- PBR:株価純資産倍率。株価がBPSの何倍かを示します。
- ROE:自己資本利益率。自己資本に対してどれだけ利益を上げたかを見る指標です。
- 配当利回り:株価に対する1株当たり年間配当金の割合です。
- 配当性向:利益のうち、どの程度を配当に回しているかを見る割合です。
基本ルール
株式の注文と受渡し
上場株式の受渡日は、原則として約定日の2営業日後、つまりT+2です。約定日そのものや翌営業日と混同しないようにします。
指値注文は、買いたい価格・売りたい価格を指定して発注します。成行注文は売買価格を指定せずに発注します。注文の優先順位では、原則として価格条件が有利な注文が優先され、同一価格では早く発注された注文が優先されます。
日経平均株価とTOPIX
日経平均株価は、日本経済新聞社が選定する代表的225銘柄を基に算出されます。一方、TOPIXは東京証券取引所の広範な上場銘柄を対象とする代表的な時価総額加重型株価指数です。「225銘柄」と「広範な上場銘柄」、「日本経済新聞社」と「東京証券取引所」を対応させて整理します。
株式投資指標
PERは「株価÷EPS」、PBRは「株価÷BPS」です。どちらも単位は「倍」です。ROEは「当期純利益÷自己資本×100」で、教材計算ではEPS÷BPS×100でも整合します。配当利回りは「1株当たり年間配当金÷株価×100」、配当性向は「1株当たり配当金÷EPS×100」です。
指標はそれぞれ比較する対象が異なります。PERは利益、PBRは純資産、ROEは自己資本に対する利益、配当利回りは株価に対する配当、配当性向は利益に対する配当の割合です。単に公式を暗記するだけでなく、分母が何かを確認します。
株式投資のメリットとリスク
株式では、株価上昇による値上がり益や配当などが収益源になり得ます。一方で、株価が変動する価格変動リスク、企業の経営状態悪化等に関する信用・事業上のリスク、売買が少ない銘柄で希望どおりに取引しにくくなる流動性リスクがあります。株主優待を設ける企業もありますが、内容や継続は保証されるものではありません。
重要な数字
| 項目 | 基本 |
|---|---|
| 上場株式の受渡日 | 約定日の2営業日後(T+2) |
| 日経平均株価 | 代表的225銘柄 |
| PER | 株価÷EPS |
| PBR | 株価÷BPS |
| ROE | 当期純利益÷自己資本×100(教材計算ではEPS÷BPS×100でも整合) |
| 配当利回り | 1株当たり年間配当金÷株価×100 |
| 配当性向 | 1株当たり配当金÷EPS×100 |
株式指標では、PER・PBRは「倍」、ROE・配当利回り・配当性向は「%」で表すのが基本です。問題文で端数処理の指定がある場合は、その指定に従います。
具体例
株価1,800円、EPS120円、BPS900円の株式を考えます。
- PER=1,800÷120=15倍
- PBR=1,800÷900=2倍
- ROE=120÷900×100=13.33…%
同じ会社でも、指標によって比較対象は異なります。PERは利益との関係、PBRは純資産との関係、ROEは自己資本に対する利益の割合です。数値が似ていても公式を入れ替えないことが大切です。
計算のしかた
株価2,400円、EPS120円、BPS1,500円、1株当たり年間配当金48円の会社について、3つの指標を確認します。
- ROE=120÷1,500×100=8%
- 配当性向=48÷120×100=40%
- 配当利回り=48÷2,400×100=2%
計算前に分母を確認すると、取り違えを防げます。ROEはBPS、配当性向はEPS、配当利回りは株価を分母にする、と整理します。実技では、資料に多くの数値があっても、指定された指標に必要な数値だけを抜き出して計算します。
よくある間違い
第一に、指値注文と成行注文を逆にする誤りです。価格を指定するのが指値、指定しないのが成行です。
第二に、受渡日を約定日や翌営業日とする誤りです。上場株式は原則T+2です。
第三に、日経平均株価とTOPIXを混同する誤りです。日経平均は代表的225銘柄、TOPIXは東京証券取引所の広範な上場銘柄を対象とする時価総額加重型指数です。
第四に、PERとPBRの分母を逆にする誤りです。PERはEPS、PBRはBPSです。
第五に、配当利回りと配当性向を混同する誤りです。配当利回りは株価に対する配当、配当性向は利益に対する配当です。
第六に、株式は配当があるから元本も保証されると考える誤りです。株価は変動し、企業の状況や市場の流動性によるリスクもあります。
試験での出題のされ方
2024~2026年のCBT公表分では、EX-C-004「株式市場・株式取引」が3/3で観測されています。2024年は株式の受渡日、2025年は指値・成行注文、2026年は日経平均株価が観測されています。
EX-C-007「株式投資指標」も3/3で観測され、2024年はPBR、2025年はROE、2026年は配当性向・配当利回りが確認されています。また、日本FP協会の資産設計提案業務EX-C-011「実技:株式投資指標」も3/3で観測され、企業データからPER・PBR・ROE・配当指標を計算・比較する能力が継続して確認されています。
C05-T04の株式投資のリスクについては公式範囲補完Slotとして設計し、Past_Exam_FrequencyはUNVERIFIEDです。UNVERIFIEDは「出題されない」「低頻度」という意味ではなく、当該Slotへ頻度を直接付与していない管理状態です。
まとめ
- 上場株式の受渡日:原則T+2
- 指値注文:価格を指定、成行注文:価格を指定しない
- 日経平均株価:代表的225銘柄
- TOPIX:東京証券取引所の広範な上場銘柄を対象とする時価総額加重型指数
- PER=株価÷EPS
- PBR=株価÷BPS
- ROE=当期純利益÷自己資本×100
- 配当利回り=年間配当金÷株価×100
- 配当性向=配当金÷EPS×100
- 株式には価格変動・信用・流動性等のリスクがある
練習のしかた
次の7点を自分で説明・計算できるか確認してください。
- 上場株式の受渡日は約定日の何営業日後ですか。
- 指値注文と成行注文の違いは何ですか。
- 日経平均株価とTOPIXはどのように違いますか。
- 株価・EPS・BPSからPERとPBRを計算できますか。
- EPS・BPS・配当金・株価からROE、配当性向、配当利回りを計算できますか。
- 実技資料から指定された株式指標に必要な数値だけを選べますか。
- 価格変動リスク・信用リスク・流動性リスクを区別できますか。
FP2級へのつながり
FP2級では、株式評価や取引制度をより詳しく扱います。FP3級で「注文・受渡し」「株価指数」「PER・PBR・ROE・配当指標」という基礎を正確に整理しておくと、企業比較やより詳細な株式分析へ進みやすくなります。
C05で身につける株式指標の読み方は、C09のポートフォリオ運用やC10の金融商品と税金にもつながります。指標の数値だけで投資判断を断定せず、各指標が何を表しているかを理解することが重要です。基本式と単位をセットで確認する習慣も役立ちます。
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