FP技能士3級 金融資産運用 債券投資

この単元で身につけること

このUnitでは、債券を「満期まで持てば額面が返る商品」という一面だけで覚えず、種類、価格と市場金利、信用リスク、個人向け国債、利回り計算の順に整理します。学習後には、固定利付債・変動利付債・割引債の違いを説明し、他の条件が同じ場合の市場金利と既発債価格の関係を判断できることを目指します。

さらに、信用力と利回りの一般的な関係、格付の意味、個人向け国債の基本商品性を区別し、直接利回り・応募者利回り・最終利回り・所有期間利回りの基本式を使えるようにします。実技では、資料に示された発行価格・表面利率・償還年限等から、求める利回りを一つずつ計算できる状態を目標とします。

全体像

債券は、国や企業などが資金を調達するために発行する有価証券です。投資家は債券を購入し、商品条件に応じて利子を受け取り、償還時には定められた条件で元本の返済を受けます。ただし、満期前に市場で売買する場合の価格は一定ではなく、市場金利や発行体の信用力などの影響を受けます。

FP3級では、複雑な債券価格モデルよりも、基本的な商品分類と利回りの読み方が中心です。「市場金利と既発債価格は一般に逆方向」「信用力が低いほど、他条件が同じなら高い利回りが要求される」という関係を、前提条件付きで理解することが重要です。

用語の説明

  • 固定利付債:原則として、発行時に定めた表面利率に基づく利子を受け取る債券です。
  • 変動利付債:市場金利等に応じて適用利率が変動する債券です。
  • 割引債:利札を付けず、額面より低い価格で発行し、額面で償還することによって収益を得る債券です。
  • 額面:債券に表示される基準となる金額です。利回り計算では額面100円を基準とする形がよく用いられます。
  • 表面利率:額面に対して支払われる利子の割合を示す基本的な利率です。
  • 市場金利:市場で形成される金利です。既発債の価格と一般に逆方向の関係があります。
  • 信用リスク:発行体が利子や元本を約束どおり支払えなくなる可能性に関するリスクです。
  • 格付:発行体等の債務履行能力・信用力を記号等で評価したものです。
  • カントリーリスク:国や地域の政治・経済・制度等の事情により、投資回収等へ影響が及ぶリスクの考え方です。
  • 応募者利回り:新規発行債を発行価格で購入し、償還まで保有する場合の単利ベースの基本利回りです。
  • 最終利回り:既発債を購入価格で購入し、残存期間を保有して償還を受ける場合の単利ベースの基本利回りです。
  • 所有期間利回り:債券を購入後、償還前に売却した場合の保有期間中の単利ベースの基本利回りです。
  • 経過利子:利付債を利払期の途中で売買するとき、前回の利払日から売買時点までの経過期間に対応する利子相当額を調整する考え方です。具体的な計算は問題資料の条件に従います。

基本ルール

債券の種類

固定利付債は、原則として発行時に定めた表面利率に基づいて利子を受け取ります。変動利付債は、市場金利等に応じて適用利率が変動します。割引債は、利札を付けず額面より低い価格で発行され、額面で償還される差額が収益の基本になります。

分類問題では、「固定か変動か」と「利札があるか」を混同しないことが大切です。商品名だけで判断するのではなく、どのように利子・収益が生じるかを確認します。

市場金利と既発債価格

他の条件が同じなら、市場金利が上昇すると既発債価格は一般に下落し、市場金利が低下すると既発債価格は一般に上昇します。既発債の表面利率が市場の新しい金利水準と比べて相対的に魅力的かどうかが、価格調整につながるためです。

試験では「金利上昇=債券価格上昇」と逆に覚えないことが重要です。ただし、現実の価格は複数要因で動くため、問題文の「他の条件が同じ」という前提を確認します。

信用リスクと格付

信用力が低い債券ほど、他条件が同じなら、投資家から一般に高い利回りを要求されます。逆に、信用力が高いから必ず高利回りになるわけではありません。格付は、発行体等の債務履行能力・信用力を記号等で評価したものです。

格付は価格上昇を保証するものではなく、信用力を考えるための情報の一つです。また、外国の債券等では発行体固有の信用だけでなく、投資対象となる国・地域に関するカントリーリスクも意識します。

個人向け国債

個人向け国債には、変動金利型10年、固定金利型5年、固定金利型3年の3種類があります。3種類に共通して最低金利は年0.05%で、最低1万円から1万円単位で購入できます。また、発行後1年を経過すれば原則として中途換金できます。

試験では「変動10・固定5・固定3」の組合せ、最低金利、購入単位、中途換金開始時期を別々に整理します。各回号の実際の発行利率を暗記する必要はありません。

利回りの基本

債券では、表面利率だけで収益性を判断できない場合があります。額面100円の債券を100円以外の価格で購入すると、購入価格と償還・売却価格との差も収益に影響するためです。

  • 直接利回り=表面利率÷購入価格×100
  • 応募者利回り={表面利率+(100-発行価格)÷償還年限}÷発行価格×100
  • 最終利回り={表面利率+(100-購入価格)÷残存年数}÷購入価格×100
  • 所有期間利回り={表面利率+(売却価格-購入価格)÷所有年数}÷購入価格×100

いずれもFP3級で用いる単利の基本式です。どの価格を分母に使うか、100との差を何年で配分するかを確認します。

利付債を利払期の途中で売買する場合には、経過期間に対応する利子相当額を調整する「経過利子」という考え方もあります。FP3級では、問題資料に日数や計算条件が与えられたとき、その条件を読み落とさないことが重要です。

重要な数字

個人向け国債の基本数値は次のとおりです。

項目 基本
種類 変動10年・固定5年・固定3年
最低金利 年0.05%
購入単位 最低1万円から1万円単位
中途換金 発行後1年を経過すれば原則可能

利回り計算では、額面100円を基準とする表面利率、発行価格または購入価格、残存年数等を問題文から読み取ります。端数処理は必ず問題文の指定に従います。

具体例

額面100円、表面利率2%の既発債を考えます。同じ条件の新しい債券で市場金利が上昇すると、表面利率2%の既発債は相対的な魅力が低下し、一般に価格が下落する方向へ調整されます。逆に市場金利が低下すると、既発債の相対的な魅力が高まり、一般に価格は上昇する方向になります。

また、同じ残存期間・同じような条件で信用力だけが異なる債券を比較するなら、信用力の低い債券ほど高い利回りを要求されるのが一般的です。この2つの関係は、「市場金利」と「信用力」という別の判断軸なので混同しないようにします。

計算のしかた

最終利回りの基本例です。

<条件>

  • 額面:100円
  • 表面利率:年2.0%
  • 購入価格:96円
  • 残存年数:4年
  • 小数第3位を四捨五入し、小数第2位まで求める
  1. 求めるもの:最終利回り
  2. 式:{表面利率+(100-購入価格)÷残存年数}÷購入価格×100
  3. 値上がり分の年換算:(100-96)÷4=1
  4. 年間収益相当:2.0+1=3.0
  5. 購入価格で割る:3.0÷96×100=3.125%
  6. 端数処理:3.13%

計算では、表面利率2.0を「2」として式へ入れる点、分母が額面100ではなく購入価格96である点に注意します。

よくある間違い

第一に、市場金利と既発債価格を同じ方向に動くと覚える誤りです。他条件が同じなら、一般に逆方向です。

第二に、信用力の低い債券ほど利回りも低いと考える誤りです。他条件が同じなら、信用リスクを負担する分、一般に高い利回りが要求されます。

第三に、固定利付債と変動利付債を逆にする誤りです。固定利付債は原則として発行時に定めた表面利率、変動利付債は市場金利等に応じて適用利率が変動します。

第四に、割引債を「高い表面利率の利札が付く債券」と考える誤りです。割引債は利札を付けず、額面より低い価格で発行して額面で償還される差額が収益の基本です。

第五に、応募者利回りと最終利回りの価格を取り違える誤りです。新規発行債なら発行価格、既発債を途中で購入して償還まで持つなら購入価格を使います。

第六に、個人向け国債の3種類や購入単位を混同する誤りです。「変動10・固定5・固定3」「1万円から1万円単位」を分けて覚えます。

試験での出題のされ方

2024~2026年のCBT公表分では、EX-C-003「債券の基本」が3/3で観測され、2024年は債券格付と利回り、2025年は市場金利と債券価格、2026年は個人向け国債という能力が確認されています。

EX-C-006「金融商品の計算」も3/3で観測され、2026年には債券最終利回りが確認されています。また、日本FP協会の資産設計提案業務EX-C-013「実技:金融商品計算」も3/3で観測され、2026年には債券応募者利回りが確認されています。

一方、C04-T01の債券種類は公式範囲補完としてQuestion_Slotを設けており、Past_Exam_FrequencyはUNVERIFIEDです。UNVERIFIEDは「出題されない」や「低頻度」という意味ではなく、当該Slotに頻度を直接付与していない管理状態です。

まとめ

  • 固定利付債:原則、発行時に定めた表面利率に基づく利子
  • 変動利付債:市場金利等に応じて適用利率が変動
  • 割引債:利札を付けず、額面より低く発行して額面償還
  • 他条件が同じなら、市場金利上昇→既発債価格は一般に下落
  • 信用力が低い債券ほど、他条件が同じなら一般に高い利回りが要求される
  • 個人向け国債:変動10・固定5・固定3、最低金利年0.05%、1万円から1万円単位
  • 応募者利回りは発行価格、最終利回りは購入価格を使う
  • 利回り計算では「100との差」「年数」「分母の価格」を順に確認する

練習のしかた

次の6点を説明・計算できるか確認してください。

  1. 固定利付債・変動利付債・割引債の違いは何ですか。
  2. 他条件が同じとき、市場金利が上昇すると既発債価格は一般にどうなりますか。
  3. 信用力と債券利回りには一般にどのような関係がありますか。
  4. 個人向け国債の3種類、最低金利、購入単位を説明できますか。
  5. 購入価格96円・表面利率2%・残存4年の最終利回りを計算できますか。
  6. 応募者利回りでは、発行価格と償還年限をどこに使いますか。

FP2級へのつながり

FP2級では、債券価格と金利の関係、各種利回り、債券のリスクをより詳しく扱います。FP3級で「債券種類」「市場金利と価格」「信用力と利回り」「個人向け国債」「4種類の基本利回り」を整理しておくと、より複雑な債券比較へ進みやすくなります。

また、C04で学ぶ価格変動と信用リスクの考え方は、C09のポートフォリオ運用やC10の金融商品と税金にもつながります。実技では、公式名を暗記するだけでなく、資料から発行価格・購入価格・年数・利率を正しく拾う習慣を身につけてください。

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