社会保険料と法定福利費

標語:従業員負担分は社会保険料預り金、会社負担分は法定福利費。


① このページで学ぶこと

このページでは、社会保険料について誰が負担する金額なのかを見分け、正しい勘定科目で仕訳する方法を学びます。

学習目標は次の5つです。

  • 従業員負担分を社会保険料預り金として処理できる
  • 会社負担分を法定福利費として処理できる
  • 給料から社会保険料を控除する仕訳を作成できる
  • 従業員負担分と会社負担分を合わせて納付する仕訳を作成できる
  • 納付額を負担者ごとに分けて考え、貸借を確認できる

② 基礎概念

社会保険料預り金

給料から控除した従業員負担分の社会保険料は、会社が納付まで一時的に預かる金額です。

この金額は会社自身の費用ではなく、後で関係機関へ納付する義務を表すため、社会保険料預り金という負債で処理します。

  • 発生するとき:貸方
  • 納付するとき:借方

法定福利費

社会保険料のうち会社が負担する部分は、会社自身の費用です。

この会社負担分は法定福利費で処理します。

  • 費用が発生するとき:借方

同じ社会保険料でも性質が違う

社会保険料という名称は同じでも、簿記上は負担者によって性質が異なります。

負担者 勘定科目 5要素
従業員 社会保険料預り金 負債
会社 法定福利費 費用

③ 仕組み・理由

社会保険料の処理は、給料支給時社会保険料の納付・計上が示された時点を分けて考えると整理しやすくなります。

給料支給時

給料から従業員負担分の社会保険料を控除した場合、その金額は社会保険料預り金として貸方に記録します。

たとえば、給料総額が260,000円、従業員負担分が13,000円なら、実支給額は247,000円です。

社会保険料を納付する場面

問題文で、従業員負担分と会社負担分を合わせて納付したことが示された場合は、次のように分けます。

  • 従業員負担分:社会保険料預り金を減らす
  • 会社負担分:法定福利費として処理する
  • 支払総額:現金や普通預金を減らす

本教材の基本例では、会社負担分を納付時に法定福利費として処理する形を扱います。問題文に会社負担分の計上時点や既計上額について別の条件が示される場合は、その条件に従います。


④ 基本例

例1 給料から従業員負担分を控除する

給料260,000円から社会保険料13,000円を控除し、残額を普通預金から支払った。

実支給額 = 260,000 − 13,000 = 247,000円

仕訳

(借)給料 260,000 / (貸)社会保険料預り金 13,000、普通預金 247,000

例2 従業員負担分と会社負担分を合わせて納付する

従業員負担分13,000円と会社負担分15,000円を普通預金から納付した。

納付額 = 13,000 + 15,000 = 28,000円

仕訳

(借)社会保険料預り金 13,000、法定福利費 15,000 / (貸)普通預金 28,000

例3 「半額」という条件から内訳を求める

社会保険料36,000円を納付した。このうち半額が従業員負担分で、残額が会社負担分である。

36,000 × 1/2 = 18,000円

仕訳

(借)社会保険料預り金 18,000、法定福利費 18,000 / (貸)普通預金 36,000


⑤ 仕訳例

次の取引を、6つの手順で考えます。

給料320,000円から従業員負担分の社会保険料48,000円を控除し、残額を普通預金から支払った。後日、従業員負担分48,000円と会社負担分52,000円を合わせて普通預金から納付した。

手順1 給料支給時と納付時を分ける

取引は2つあります。

  1. 給料を支払う
  2. 社会保険料を納付する

手順2 給料支給時の従業員負担分を確認する

従業員負担分48,000円は、社会保険料預り金として処理します。

手順3 実支給額を求める

320,000 − 48,000 = 272,000円

手順4 給料支給時の仕訳を作る

(借)給料 320,000 / (貸)社会保険料預り金 48,000、普通預金 272,000

手順5 納付時の内訳を分ける

  • 従業員負担分:48,000円
  • 会社負担分:52,000円
  • 納付総額:100,000円

手順6 納付時の仕訳を作り、貸借を確認する

(借)社会保険料預り金 48,000、法定福利費 52,000 / (貸)普通預金 100,000

借方合計は100,000円、貸方合計も100,000円です。


⑥ 間違いやすいポイント3つ

1.納付額を1つの科目だけで処理する

従業員負担分と会社負担分を合わせて納付しても、性質は同じではありません。

従業員負担分は社会保険料預り金の減少、会社負担分は法定福利費として分けます。

2.従業員負担分と会社負担分を同額と決めつける

問題文で金額が個別に示されているときは、その金額を使います。

たとえば従業員負担分16,000円、会社負担分18,000円と示されていれば、17,000円ずつには分けません。

3.給料から控除した社会保険料を会社の費用にする

給料から控除した従業員負担分は、会社が一時的に預かる負債です。

会社自身の負担分を処理する法定福利費とは区別します。


⑦ 試験での問われ方

当サイトの第1問形式

  • 給料から従業員負担分を控除する仕訳
  • 従業員負担分と会社負担分を合わせて納付する仕訳
  • 内訳が異なる場合の仕訳

を練習します。

当サイトの第2問形式

資料から従業員負担分・会社負担分・納付額を読み取り、どの金額が負債で、どの金額が費用なのかを整理する力につながります。

当サイトの第3問形式

決算日時点で未納付の社会保険料預り金が残っている場合は、負債として貸借対照表に反映されます。法定福利費は費用として損益計算書に反映されます。


⑧ まとめ

場面 借方 貸方 考え方
給料から従業員負担分を控除 給料 社会保険料預り金・普通預金など 従業員負担分は負債
会社負担分を処理 法定福利費 普通預金など 会社負担分は費用
両者を合わせて納付 社会保険料預り金・法定福利費 現金・普通預金など 負担者ごとに内訳を分ける

従業員負担分=社会保険料預り金、会社負担分=法定福利費という対応を軸に整理しましょう。


⑨ 関連問題への導線

  • 一問一答:C08-T02「社会保険料と法定福利費」全10問
  • 仕訳問題:C08-T02「社会保険料と法定福利費」全5問(初級2問/標準2問/応用1問)
  • 前のテキスト:C08-T01「給料の支払いと源泉徴収」
  • 次のテキスト:C08-T03「租税公課と貯蔵品」

⑩ 2級への接続

2級では、会社負担分の社会保険料について決算をまたぐ未払処理や、賞与に関係する社会保険料など、処理時点を含めた判断が増えます。

3級ではまず、誰が負担する金額なのかを確認し、従業員負担分と会社負担分を別の性質として処理することを固めておきましょう。


コメント

タイトルとURLをコピーしました