法人税、住民税及び事業税|中間納付から決算・納付までの一巡

① この単元で扱う法人税等

会社は、法人税・住民税・事業税を負担します。簿記3級では、この3つをまとめて1つの費用科目で処理します。

このページでは次のことを学びます。

  • 法人税、住民税及び事業税という費用科目
  • 期の途中に納める中間納付と、仮払法人税等(資産)
  • 決算で税額が確定したときの処理
  • まだ納めていない分の未払法人税等(負債)
  • 中間納付 → 決算 → 納付という一巡

この単元を貫く一行は次のとおりです。

途中に納めた分は仮払い、決算で費用を確定、残りは未払い。

なお、本教材は簿記3級の教材です。税額そのものを計算する処理(課税所得の計算、税率の適用など)は扱いません。 問題文で与えられた当期の法人税等の金額を、簿記としてどう記録するかに集中します。


② 「法人税、住民税及び事業税」という費用科目

法人税・住民税・事業税をまとめて処理するため、簿記3級では 法人税、住民税及び事業税 という科目を用います。

内容
5要素 費用
増える側 借方

なお、公式の勘定科目表では 「法人税等」 という表記も許容されています。本教材では標準の解答として 法人税、住民税及び事業税 を使いますが、「法人税等」が誤りというわけではありません。問題文で使用する勘定科目が指定されている場合は、その指定に従ってください。


③ 中間納付と仮払法人税等

会社は期の途中で、法人税等の一部を先に納めることがあります。これを中間納付といいます。

この時点では、当期の法人税等の最終的な金額はまだ確定していません。本単元で扱う基本処理では、中間納付額をいったん 仮払法人税等 という資産の科目で記録し、決算で当期の法人税等を費用計上します。

×2年11月 法人税等の中間納付として ¥190,000 を普通預金口座から支払った。

借方科目 金額 貸方科目 金額
仮払法人税等 190,000 普通預金 190,000

検算:借方 190,000 = 貸方 190,000 ✓

本単元の基本処理では、中間納付時に「法人税、住民税及び事業税」という費用は計上せず、仮払法人税等で処理します。


④ 仮払法人税等は資産

仮払法人税等は、先に納めた分を、税額が確定するまで一時的に記録しておく科目です。

内容
5要素 資産
増える側 借方(中間納付時)
減る側 貸方(決算で取り崩す)

決算で当期の法人税等を計上するときに、仮払法人税等を貸方で取り崩します。


⑤ 決算時の基本処理

決算で当期の法人税等の金額が確定したら、次の3つを同時に行います。

① 確定した金額の全額を費用(法人税、住民税及び事業税)にする ② 中間納付済みの仮払法人税等を取り崩す ③ 差額を未払法人税等(負債)にする

③の金額は次の式で求めます。

未払法人税等 = 当期の法人税等 − 仮払法人税等

③の設例の続きで確かめます。

×3年3月31日 決算において、当期の法人税、住民税及び事業税が ¥580,000 と確定した。中間納付済みの仮払法人税等は ¥190,000 である。

  • 未払法人税等:580,000 − 190,000 = ¥390,000
借方科目 金額 貸方科目 金額
法人税、住民税及び事業税 580,000 仮払法人税等 190,000
未払法人税等 390,000

検算:借方 580,000 = 貸方 190,000 + 390,000 = 580,000


⑥ 当期の費用は確定額の全額

費用として計上するのは ¥580,000(確定額の全額)です。

未払分の ¥390,000 だけを費用にするのではありません。

金額 意味
法人税、住民税及び事業税 580,000 当期の費用(確定額の全額)
仮払法人税等(取崩し) 190,000 すでに納めた分
未払法人税等 390,000 これから納める分

中間納付時には、その支払額を仮払法人税等として記録しており、費用としては計上していません。決算では、当期の法人税等の確定額全額を費用として計上します。


⑦ 未納分は未払法人税等

確定した金額のうち、まだ納めていない分未払法人税等 です。

未払法人税等 = 当期の法人税等 − 仮払法人税等

なお、中間納付をしていない場合は仮払法人税等がないので、確定額の全額がそのまま未払法人税等になります。


⑧ 未払法人税等は負債

未払法人税等は、これから納める義務なので負債です。

内容
5要素 負債
増える側 貸方(決算時)
減る側 借方(納付時)

仮払法人税等(資産・借方から)と向きが逆になります。取り違えないよう注意したいところです。


⑨ 中間納付 → 決算 → 納付の一巡

3つの場面を並べると次のようになります。

場面 借方 貸方 費用は?
中間納付(期中) 仮払法人税等 190,000 普通預金 190,000 まだ計上しない
決算 法人税、住民税及び事業税 580,000 仮払法人税等 190,000
未払法人税等 390,000
確定額の全額を計上
後日の納付 未払法人税等 390,000 普通預金 390,000 もう計上しない

後日の納付では費用を計上しません。 費用はすでに決算で計上済みだからです。ここで再び費用にすると、同じ税金を二重に計上してしまいます。

決算と後日の納付は別の取引です。1つの仕訳にまとめないでください。


⑩ 租税公課との境界

同じ「会社が負担する税金」でも、科目が分かれます。

税金 科目 扱う単元
固定資産税・印紙税・自動車税など 租税公課 C08-T03「租税公課と貯蔵品」
法人税・住民税・事業税 法人税、住民税及び事業税 C08-T04(このページ)

勘定科目マスタでも、この2つは互いに取り違えやすい科目として挙げられています。

なお、租税公課は税金に使わない科目ということではありません。固定資産税・印紙税・自動車税などには租税公課を使います(C08-T03)。


⑪ 消費税との境界

税抜方式の消費税は、仮払消費税・仮受消費税・未払消費税という専用の科目で処理します(C08-T05「消費税(税抜方式)」)。

決算で生じる負債の科目も分かれます。

何の税金か 未納分の科目
消費税 未払消費税
法人税等 未払法人税等

⑫ 決算整理としての集中演習について

このページで扱ったのは、中間納付 → 決算 → 納付という一巡の基本処理です。

法人税等の決算整理を独立した論点として反復する演習、決算整理前残高試算表から仮払法人税等の残高を読み取って判断する問題は、C14-T08「法人税等の決算整理」が扱います。


⑬ まとめ

場面 借方 貸方
中間納付 仮払法人税等(資産) 普通預金 など
決算 法人税、住民税及び事業税(費用・確定額の全額 仮払法人税等(取崩し)+未払法人税等(負債)
後日の納付 未払法人税等(負債の減少) 普通預金 など

金額の求め方は次のとおりです。

未払法人税等 = 当期の法人税等 − 仮払法人税等 検算:仮払法人税等 + 未払法人税等 = 当期の法人税等

3つの科目の5要素は次のとおりです。

科目 5要素
法人税、住民税及び事業税 費用
仮払法人税等 資産
未払法人税等 負債

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