この単元の標語:給料は控除前の総額、控除額は預り金など、差額が実支給額。
① このページで学ぶこと
- 給料を控除前の総額で費用計上する理由を説明できる
- 給料から源泉徴収した所得税を所得税預り金で処理できる
- 給料から控除した住民税を住民税預り金で処理できる
- 給料総額から控除額を差し引いて、従業員への実支給額を求められる
- 実支給額と控除額から、給料総額を逆算できる
- 預かっていた所得税を後日納付するとき、所得税預り金を減少させる仕訳ができる
② 基礎概念
給料
給料は、従業員の労働に対して会社が負担する費用です。
給料から税金などを差し引いて支払う場合でも、給料勘定に記録する金額は、控除する前の給料総額です。
給料は費用なので、発生すると借方に記録します。
所得税預り金
給料から源泉徴収した所得税は、会社自身の費用ではありません。
会社が従業員の給料から差し引き、納付するまで一時的に負っている支払義務を、所得税預り金という負債で記録します。
- 給料支払時:所得税預り金が増加 → 貸方
- 納付時:所得税預り金が減少 → 借方
住民税預り金
給料から控除した住民税も、納付までの間は住民税預り金という負債で処理します。
所得税と住民税は、税の種類が異なるため、本教材の標準解答ではそれぞれ具体的な預り金科目を使います。
③ 仕組み・理由
給料総額が ¥300,000 で、所得税 ¥12,000 と住民税 ¥18,000 を控除するとします。
従業員へ実際に支払う金額は、
300,000 − 12,000 − 18,000 = ¥270,000
です。
しかし、給料という費用が ¥270,000 になるわけではありません。
帳簿では、
- 給料総額 ¥300,000 → 給料という費用
- 所得税 ¥12,000 → 所得税預り金という負債
- 住民税 ¥18,000 → 住民税預り金という負債
- 差額 ¥270,000 → 実際に支払う普通預金等
と役割を分けて記録します。
したがって、給料支払の基本構造は次のようになります。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給料 | 300,000 | 所得税預り金 | 12,000 |
| 住民税預り金 | 18,000 | ||
| 普通預金 | 270,000 |
借方合計も貸方合計も ¥300,000 です。
給料総額が示されない場合の逆算
問題文に実支給額と控除項目・控除額が示され、給料総額が示されていない場合は、次の関係から給料総額を逆算できます。
給料総額 = 実支給額 + 控除額合計
たとえば、実支給額が ¥285,000、所得税が ¥13,000、住民税が ¥17,000 なら、
285,000 + 13,000 + 17,000 = ¥315,000
となります。逆算した給料総額を借方に記録し、控除額と実支給額を貸方に分けて仕訳します。
④ 基本例
給料総額 ¥250,000 から、所得税 ¥10,000 と住民税 ¥12,000 を控除し、残額を普通預金から支払った。
まず、控除額を求めます。
10,000 + 12,000 = ¥22,000
次に実支給額を求めます。
250,000 − 22,000 = ¥228,000
仕訳は次のとおりです。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給料 | 250,000 | 所得税預り金 | 10,000 |
| 住民税預り金 | 12,000 | ||
| 普通預金 | 228,000 |
⑤ 納付までの一巡
給料支払時
給料から所得税を差し引いた時点では、会社にはその金額を納付する義務が残ります。そのため、所得税預り金を貸方に計上します。
後日の納付時
たとえば、給料支払時に計上した所得税預り金 ¥12,000 を後日現金で納付した場合は、次の仕訳です。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 所得税預り金 | 12,000 | 現金 | 12,000 |
この納付では、給料支払時に計上した負債を減らします。従業員の負担分を納付する場面なので、新しい会社費用を計上する処理ではありません。
従業員立替金を給料から回収する場合
C05-T07で学んだ従業員立替金がある場合、給料からその金額を差し引いて回収することがあります。
たとえば、給料 ¥300,000 から所得税 ¥12,000、住民税 ¥18,000、従業員立替金 ¥10,000 を差し引き、残額 ¥260,000 を普通預金から支払うとします。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給料 | 300,000 | 所得税預り金 | 12,000 |
| 住民税預り金 | 18,000 | ||
| 従業員立替金 | 10,000 | ||
| 普通預金 | 260,000 |
所得税預り金・住民税預り金は負債の増加ですが、従業員立替金は資産の減少です。同じ貸方でも意味は異なります。
⑥ 主な間違いやすいポイント
給料を実支給額だけで計上する
給料は控除前の総額で費用計上します。実支給額は、総額から問題文で示された控除額を差し引いた支払額です。
所得税や住民税の控除を会社の費用にする
従業員の給料から差し引いた所得税・住民税は、会社が負担する税金ではありません。本教材では、所得税預り金・住民税預り金という負債で処理します。
納付時にもう一度費用を計上する
給料支払時に預り金として負債計上した金額を納付するときは、その負債を減少させます。給与控除分の納付を、会社自身の租税公課として処理しないように区別します。
従業員立替金と預り金を同じ性質だと考える
従業員立替金の回収は資産の減少、所得税預り金・住民税預り金の発生は負債の増加です。給料から差し引くという見た目が同じでも、勘定科目の意味は異なります。
⑦ 問題で確認するポイント
給料支払の問題では、次の順に整理すると仕訳を作りやすくなります。
- 給料の総額を確認する。総額が示されていない場合は、実支給額と控除額から逆算する
- 控除項目ごとの勘定科目を確認する
- 控除額を合計する
- 総額から控除額を差し引いて実支給額を求める
- 給料を借方、預り金や実支給額を貸方に配置する
後日の納付問題では、給料支払時に生じた預り金の残高を減らす取引として読みます。
なお、従業員負担分の社会保険料と、会社負担分の法定福利費はC08-T02「社会保険料と法定福利費」で扱います。
⑧ まとめ
| 内容 | 処理 |
|---|---|
| 給料 | 控除前の総額を費用として借方 |
| 給料から源泉徴収した所得税 | 所得税預り金の増加として貸方 |
| 給料から控除した住民税 | 住民税預り金の増加として貸方 |
| 実支給額 | 普通預金・現金などの減少として貸方 |
| 預かっていた所得税の納付 | 所得税預り金を借方にして減少 |
| 給料から従業員立替金を回収 | 従業員立替金を貸方にして資産を減少 |
実支給額 = 給料総額 − 問題文で示された控除額の合計 給料総額 = 実支給額 + 控除額合計(給料総額が示されていない場合)
⑨ 関連問題への導線
- 一問一答:C08-T01「給料の支払いと源泉徴収」(11問)
- 仕訳問題:C08-T01「給料の支払いと源泉徴収」(6問・初級2/標準1/応用3)
- 計算・応用問題:C08-T01「給料の支払いと源泉徴収」(2問・初級1/標準1)
- 前の関連単元:C05-T07「立替金・預り金」
- 次の単元:C08-T02「社会保険料と法定福利費」
⑩ 2級への接続
2級以降でも、給与に関する取引では、会社の費用として認識する金額と、従業員から控除して一時的に負債として処理する金額を区別する考え方が土台になります。
また、決算時の未払給料など、期間帰属を考える処理へ進むときも、まず給料そのものの費用額と支払・控除の内訳を分けて読めることが重要です。

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