この単元の標語:掛取引の債権は売掛金、債務は買掛金。総勘定元帳が合計を示し、補助元帳が得意先・仕入先ごとの内訳を示す。
① このページで学ぶこと
- 掛取引で生じる売掛金・買掛金の仕訳が切れるようになる
- 売掛金の回収・買掛金の支払いの仕訳が切れるようになる
- 回収・支払時に売上・仕入を二重計上しない理由を説明できる
- 売掛金元帳・買掛金元帳が何を管理する帳簿かを説明できる
- 総勘定元帳と補助元帳の「合計=内訳」の関係を使えるようになる
② 基礎概念
掛取引とは
商品を売買し、代金の受け渡しを後日に回す取引を掛取引といいます。
| 立場 | 生じるもの | 勘定科目 | 5要素 |
|---|---|---|---|
| 売った側 | 代金を受け取る権利 | 売掛金 | 資産 |
| 買った側 | 代金を支払う義務 | 買掛金 | 負債 |
売掛金・買掛金は「商品売買から生じたもの」に限られます。 商品以外のものを売買した場合は未収入金・未払金です(C05-T05)。
決済したときに売上・仕入を再計上しない
掛け売上のときに売掛金と同時に売上を計上しているため、回収時には売上を再計上しません。
掛け仕入と買掛金の支払いも同じで、掛け仕入のときに仕入を計上済みなので、支払時には仕入を再計上しません。
決済時に動くのは、債権債務と支払手段だけです。
合計しか見えない勘定に「内訳」を持たせる
総勘定元帳の売掛金勘定は、全得意先を合わせた合計しか示しません。
しかし実務では「どの得意先にいくら残っているか」を知る必要があります。そこで、得意先ごとのページを持つ補助簿を別に用意します。これが売掛金元帳(得意先元帳)です。
買掛金についても同様に、仕入先ごとに管理する買掛金元帳(仕入先元帳)があります。
なお、得意先名・仕入先名をそのまま勘定科目として使う方法もあり、これを人名勘定といいます。
③ 仕組み・理由
統制勘定と補助元帳の「合計=内訳」
総勘定元帳の売掛金勘定を統制勘定、売掛金元帳を補助元帳と呼びます。
総勘定元帳の売掛金勘定の残高 = 売掛金元帳の全得意先の残高合計
この一致が、記入の正しさを確認する手がかりになります。一致しなければ、どちらかに記入漏れや誤りがあります。
なぜ両方に記入するのか
片方だけに記入することはありません。 役割が違うからです。
| 帳簿 | 役割 |
|---|---|
| 総勘定元帳(売掛金勘定) | 会社全体の売掛金の合計を管理する |
| 売掛金元帳 | 得意先ごとの内訳を管理する |
片方だけに記入すると「合計=内訳」が崩れ、確認の手がかりが失われます。
補助元帳の残高はどちら側に立つか
| 補助元帳 | もとの勘定の5要素 | 残高の側 |
|---|---|---|
| 売掛金元帳 | 資産 | 借方 |
| 買掛金元帳 | 負債 | 貸方 |
どちら側に残高が立つ勘定かを考えれば、「借/貸」欄の表示は判断できます。
④ 基本例
青森商事の得意先は山形商店と福島商店の2社のみである。×1年10月の取引は次のとおりである。
- 10月8日 山形商店へ商品 ¥52,000 を掛けで売り上げた。
- 10月15日 山形商店から ¥4,000 の返品を受けた。
- 10月22日 山形商店から売掛金 ¥60,000 を普通預金口座へ回収した。
- 10月12日 福島商店へ商品 ¥30,000 を掛けで売り上げた。
- 10月28日 福島商店から売掛金 ¥38,000 を現金で回収した。
⑤ 仕訳例:思考の手順つき
場面1:掛け売上(10月8日)
- 取引を読む:商品を販売し、代金は後日受け取る。
- 勘定科目を決める:受け取る権利 → 売掛金/収益 → 売上
- 5要素と増減を確認する:売掛金(資産)の増加/売上(収益)の発生
- 借方・貸方を決める:資産の増加は借方、収益の発生は貸方
- 金額を記入する:どちらも ¥52,000
- 貸借一致を確認する:借方 52,000 = 貸方 52,000
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 52,000 | 売上 | 52,000 |
あわせて売掛金元帳の山形商店のページの借方にも ¥52,000 を記入します。
場面2:売掛金の回収(10月22日)
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 60,000 | 売掛金 | 60,000 |
- 借方の理由:普通預金(資産)の増加
- 貸方の理由:売掛金(資産)の減少。回収したので権利が消える
- 売上を計上しない:本例では10月8日の掛け売上の時点で売上を計上済みです
あわせて売掛金元帳の山形商店のページの貸方にも ¥60,000 を記入します。
場面3:売掛金元帳の記入
上記の取引を記入すると、山形商店のページは次のようになります。
| ×1年 | 摘要 | 借方 | 貸方 | 借/貸 | 残高 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 10 | 1 | 前月繰越 | 36,000 | 借 | 36,000 | |
| 8 | 売上げ | 52,000 | 〃 | 88,000 | ||
| 15 | 返品 | 4,000 | 〃 | 84,000 | ||
| 22 | 回収(普通預金振込) | 60,000 | 〃 | 24,000 | ||
残高欄は1行ずつ上から更新していくだけです。
場面4:合計=内訳の確認
福島商店のページの10月末残高が ¥16,000 だったとすると、
売掛金元帳の合計 = 山形 24,000 + 福島 16,000 = ¥40,000
これが総勘定元帳の売掛金勘定の残高と一致していれば、記入は正しいと確認できます。
⑥ 間違いやすいポイント3つ
1.回収・支払時に売上・仕入を再計上してしまう
売掛金を回収したときに「(借)普通預金/(貸)売上」としてしまう誤りです。
掛け売上のときに売上を計上済みであり、回収は債権が現金預金に変わっただけです。同じ売上を2回計上すると、収益が過大になります。
2.商品以外の取引に売掛金・買掛金を使ってしまう
売掛金・買掛金は商品売買から生じたものに限られます。
備品を売却した代金の未回収は未収入金、備品を購入した代金の未払いは未払金です(C05-T05)。「後払いかどうか」ではなく「商品売買かどうか」で判断してください。
3.補助元帳への記入を忘れる/片方だけに記入する
総勘定元帳と補助元帳は両方に記入します。
片方だけに記入すると「合計=内訳」が崩れます。試験でも、総勘定元帳の残高と補助元帳の残高合計を突き合わせる形で問われます。
⑦ 試験での問われ方
当サイトの本試験形式では、第1問対策(仕訳問題)と第2問対策(補助簿)の両方に位置づけています。
第1問対策
掛取引の発生と決済の仕訳が問われます。一部回収・一部支払いの形もあります。
第2問対策
売掛金元帳・買掛金元帳の記入や、空欄の金額を「合計=内訳」から逆算する形があります。補助簿の選択(どの帳簿に記入するか)でも登場します。
第3問対策
決算整理前残高試算表に売掛金・買掛金が並びます。売掛金は貸倒引当金の設定対象になります(C14-T03)。
⑧ まとめ
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 商品を掛けで売り上げた | 売掛金 | 売上 |
| 売掛金を回収した | 現金・普通預金など | 売掛金 |
| 商品を掛けで仕入れた | 仕入 | 買掛金 |
| 買掛金を支払った | 買掛金 | 現金・普通預金など |
補助元帳との関係
| 帳簿 | 管理するもの | 残高の側 |
|---|---|---|
| 総勘定元帳 売掛金勘定 | 全得意先の合計 | 借方 |
| 売掛金元帳 | 得意先ごとの内訳 | 借方 |
| 総勘定元帳 買掛金勘定 | 全仕入先の合計 | 貸方 |
| 買掛金元帳 | 仕入先ごとの内訳 | 貸方 |
総勘定元帳の残高 = 補助元帳の全ページの残高合計。
⑨ 関連問題への導線
- 一問一答:C05-T01「売掛金・買掛金」(全12問)
- 仕訳問題:C05-T01「売掛金・買掛金」(全8問・初級4問/標準3問/応用1問)
- 計算問題:C05-T01「売掛金元帳」(全5問・初級4問/標準1問)
- 前のテキスト:C03-T02「仕入・売上の返品と諸掛」
- 次のテキスト:C05-T02「クレジット売掛金」
- 商品以外の債権債務:C05-T05「未収入金・未払金」
⑩ 2級への接続
2級では、貸借対照表で債権を営業債権(売掛金など)と営業外債権(未収入金など)に区分して表示する考え方が本格的に扱われます。
また、売掛金は貸倒引当金の設定対象として、決算整理でも中心的な役割を果たします。
「合計と内訳を突き合わせて確認する」という3級で身につける発想は、2級以降の帳簿組織の理解にもつながります。

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