この単元の標語:元本の勘定と利息の勘定はセットで動く。利息は期間に比例するので、元本 × 年利率 × 月数 ÷ 12 で計算する。
① このページで学ぶこと
- お金を貸したとき・借りたときの仕訳が切れるようになる
- 貸付金が資産、借入金が負債であることを説明できる
- 回収・返済のときに、元本と利息を分けて仕訳できるようになる
- 利息の計算式(元本 × 年利率 × 月数 ÷ 12か月)を使えるようになる
- 利息が借入時に差し引かれる形でも、借入金を額面で計上できる
② 基礎概念
貸し借りから生じる債権債務
商品売買から生じる債権債務(売掛金・買掛金)とは別に、金銭そのものの貸し借りから生じる債権債務があります。
貸し借りの証拠として借用証書を取り交わすのが基本形です(証書貸付)。
4つの登場人物
| 立場 | 元本の勘定 | 5要素 | 利息の勘定 | 5要素 |
|---|---|---|---|---|
| 貸した側 | 貸付金 | 資産 | 受取利息 | 収益 |
| 借りた側 | 借入金 | 負債 | 支払利息 | 費用 |
元本の勘定と利息の勘定はセットで押さえてください。 仕訳の形そのものは単純で、この単元の主役は利息の計算です。
借り入れたお金は収益ではない
お金を借りると手元の現金や預金は増えますが、これは収益ではありません。 あとで返す義務が同時に生まれているため、貸方は借入金(負債)です。
同じように、貸し付けたお金は費用ではなく貸付金(資産)です。
役員との貸し借り
会社が役員(社長など)にお金を貸したり、役員から借りたりした場合は、通常の取引先と区別して役員貸付金・役員借入金という科目を使うことがあります。
処理そのものは貸付金・借入金と同じです。語群にこれらの科目があれば、そちらを選びます。
③ 仕組み・理由
利息は「期間に比例」する
利息は、お金を使わせてもらった期間の長さに比例して発生します。
年利率は「1年間借りた場合」の率なので、1年未満なら月数で按分します。
利息 = 元本 × 年利率 × 借入(貸付)月数 ÷ 12か月
たとえば ¥600,000 を年利率2%で9か月借りれば、利息は 600,000 × 2% × 9/12 = ¥9,000 です。
「× 月数 ÷ 12」を忘れて年額のまま答えるのが、この論点でよくある失点です。問題文の「年利率」と「貸付期間○か月」という2つの情報を、セットで拾ってください。
利息を受け払いするタイミング
基本形は「返済時にまとめて」ですが、「借入時に差し引かれる」形もあります。
差し引かれる形でも、借入金は額面で計上します。 手取りが少なくても、返す義務は額面どおりだからです。差し引かれた利息は、その時点で支払利息として計上します。
④ 基本例
場面1:貸し付けて、あとで利息とともに回収する
×1年5月1日、青森商事は取引先へ現金 ¥400,000 を貸し付けた(貸付期間8か月、年利率3%、利息は返済時に受け取る)。
×2年1月1日、上記の貸付金を利息とともに普通預金口座へ受け取った。
場面2:利息が差し引かれて借り入れる
×1年9月1日、青森商事は銀行から ¥600,000 を借り入れ(借入期間6か月、年利率2%)、利息を差し引かれた残額が当座預金口座に入金された。
⑤ 仕訳例:思考の手順つき
場面1-1:貸付け(×1年5月1日)
- 取引を読む:現金を貸し付けた。借用証書を受け取っている。
- 勘定科目を決める:あとで返してもらう権利 → 貸付金/出ていったもの → 現金
- 5要素と増減を確認する:貸付金(資産)の増加 ¥400,000/現金(資産)の減少 ¥400,000
- 借方・貸方を決める:資産の増加は借方、資産の減少は貸方
- 金額を記入する:どちらも ¥400,000
- 貸借一致を確認する:借方 400,000 = 貸方 400,000
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 貸付金 | 400,000 | 現金 | 400,000 |
貸付時には利息を計上しません。 利息はこれから期間の経過とともに発生するもので、この時点ではまだ受け取っていないためです。
場面1-2:回収(×2年1月1日)
- 利息を計算する:400,000 × 3% × 8/12 = ¥8,000
- 元利合計を確定する:400,000 + 8,000 = ¥408,000
- 勘定科目を決める:入ってきたもの → 普通預金/消える権利 → 貸付金/利息 → 受取利息
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 408,000 | 貸付金 | 400,000 |
| 受取利息 | 8,000 |
- 借方の理由:普通預金(資産)の増加。受け取った合計額を記入する
- 貸方の理由:貸付金(資産)の減少 ¥400,000 と、受取利息(収益)の発生 ¥8,000 に分解する
元本と利息を1行にまとめないでください。 貸付金は元本の ¥400,000 だけを消します。
場面2:利息が差し引かれる借入れ(×1年9月1日)
- 利息を計算する:600,000 × 2% × 6/12 = ¥6,000
- 手取額を確定する:600,000 − 6,000 = ¥594,000
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 594,000 | 借入金 | 600,000 |
| 支払利息 | 6,000 |
- 検算:借方 594,000 + 6,000 = 貸方 600,000 ✓
- 借入金は額面の ¥600,000 です。 手取りが ¥594,000 でも、返す義務は ¥600,000 だからです
なお、この形では返済時に払うのは元本だけになります。利息は借入時に支払済みだからです。
⑥ 間違いやすいポイント3つ
1.利息の月割を忘れる
元本 × 年利率で年額を出したまま答える誤りです。
「借りた(貸した)期間は何か月か」を必ず確認し、× 月数 ÷ 12 を付けてください。 問題文に「×1年5月1日に貸付け、×2年1月1日に回収」とだけ書かれ、月数を自分で数える形もあります。
2.利息差引きの形で、借入金を手取額にしてしまう
借入金は額面で計上します。
手取額 ¥594,000 を借入金とすると、返済時に ¥600,000 との差が説明できなくなります。「額面」と「手取額」を分けて考えてください。
3.貸した側と借りた側を取り違える
「貸し付けた」なら貸付金(資産)、「借り入れた」なら借入金(負債)です。
問題文の主語がどちら側かを最初に確定させるのが、事故を防ぐ基本です。利息も同様で、貸した側は受取利息(収益)、借りた側は支払利息(費用)になります。
⑦ 試験での問われ方
当サイトの本試験形式では、主に第1問対策(仕訳問題)に位置づけています。
第1問対策
「回収・返済 + 利息計算」の形が問われます。月数の按分を変えたバリエーションがあるほか、利息が借入時に差し引かれる形もあります。
第3問対策
決算をまたぐ貸し借りでは、当期に属する分の利息だけを見越し・繰延べする処理が必要になります。これは経過勘定(C09)の主要テーマです。
本単元では「利息は期間に比例する」という感覚を確実にしておいてください。それがそのまま経過勘定の土台になります。
⑧ まとめ
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 貸し付けた | 貸付金 | 現金・普通預金など |
| 回収した(利息とも) | 普通預金など(元利合計) | 貸付金(元本)/受取利息 |
| 借り入れた | 現金・普通預金など | 借入金 |
| 返済した(利息とも) | 借入金(元本)/支払利息 | 普通預金など(元利合計) |
| 利息差引きで借り入れた | 当座預金など(手取額)/支払利息 | 借入金(額面) |
利息の式:元本 × 年利率 × 月数 ÷ 12
⑨ 関連問題への導線
- 一問一答:C05-T04「貸付金・借入金」(全11問)
- 仕訳問題:C05-T04「貸付金・借入金」(全9問・初級4問/標準4問/応用1問)
- 前のテキスト:C05-T03「電子記録債権・電子記録債務」
- 次のテキスト:C05-T05「未収入金・未払金」
- 決算整理(利息の見越し・繰延べ):C09「経過勘定」
⑩ 2級への接続
利息の月割計算は、2級でも社債・長期借入金など、期間に比例する収益・費用のすべてに顔を出します。
また3級の範囲内でも、この単元の利息は決算整理(経過勘定)と直結しており、「期間のうち当期に属する分だけを計上し直す」処理へ発展します。
「利息は期間に比例する」——この一文が、3級後半から2級までを貫く軸になります。

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