この単元の標語:他者負担分を会社が肩代わりしたら立替金。他者へ渡すために一時的に預かったら預り金。
① このページで学ぶこと
このページでは、誰が本来負担するお金なのか、会社はあとで回収するのか、それとも他者へ渡すのかを見て、立替金と預り金を判断します。
学習目標は次のとおりです。
- 他者負担分を会社が一時的に肩代わりしたとき、立替金で処理できる
- 従業員負担分を個別に管理するとき、従業員立替金を使える
- 他者へ渡すために一時的に預かった金額を、預り金として処理できる
- 立替金の回収と預り金の支払いを、資産・負債の増減で説明できる
- 立替金を貸付金・仮払金と、預り金を前受金・仮受金と区別できる
給与から所得税・住民税を控除する具体的な給与処理は C08-T01、社会保険料と会社負担分の法定福利費は C08-T02 で扱います。
② 基礎概念
立替金とは
立替金は、本来は取引先など他者が負担すべき金額を、会社が一時的に代わって支払ったときに使う資産の勘定科目です。
会社はあとで相手からその金額を回収するため、
- 発生:資産の増加 → 借方
- 回収:資産の減少 → 貸方
となります。
従業員立替金
従業員が負担すべき金額を会社が一時的に肩代わりし、従業員分を個別に管理する場合は、従業員立替金を使います。従業員立替金も資産です。
預り金とは
預り金は、会社が他者へ納付・支払いする目的で一時的に預かった金額を記録する負債の勘定科目です。
- 発生:負債の増加 → 貸方
- 納付・支払い:負債の減少 → 借方
となります。
問題文で内容が明示される場合は、所得税預り金などの具体科目が使われることがあります。ただし、その具体的な給与処理はC08の各単元で学びます。
③ 仕組み・理由 ── 「取引の目的」と「最終的な行き先」で考える
立替金と貸付金
| 状況 | 科目 |
|---|---|
| 他者が負担すべき金額を会社が一時的に肩代わり | 立替金 |
| 金銭そのものを相手へ貸す | 貸付金 |
貸付金か立替金かは、利息の有無だけで決めません。 まず取引の目的を確認します。
立替金と仮払金
- 立替金:他者負担分であることが分かっている
- 仮払金:支払時点で内容や最終金額がまだ確定していない
預り金と前受金
- 預り金:他者へ納付・支払いするために預かる
- 前受金:自社の商品代金を商品引渡前に先に受け取る
預り金と仮受金
- 預り金:預かった理由と渡す目的が分かっている
- 仮受金:入金は確認したが、入金理由がまだ分からない
④ 基本例
例1 取引先の負担分を立て替えた
取引先が負担すべき送料 ¥12,000 を当社が現金で立て替えた。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 立替金 | 12,000 | 現金 | 12,000 |
例2 立替金を回収した
上記の立替金 ¥12,000 が普通預金へ振り込まれた。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 12,000 | 立替金 | 12,000 |
回収額は、新たな収益ではありません。以前計上した立替金という資産が減少します。
例3 預り金を所定の相手へ支払った
以前、他者へ渡すために預かり、預り金として処理していた ¥22,000 を普通預金から支払った。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金 | 22,000 | 普通預金 | 22,000 |
預り金という負債を減らす処理なので、新たな費用を計上する取引ではありません。
⑤ 仕訳の流れ
立替金
- 他者負担分を会社が肩代わりする → 立替金が増える(借方)
- 相手から回収する → 立替金が減る(貸方)
預り金
- 他者へ渡すための金額を会社が預かる → 預り金が増える(貸方)
- 所定の相手へ支払う → 預り金が減る(借方)
同じ「一時的なお金」でも、会社があとで受け取る権利なのか、あとで支払う義務なのかで資産と負債が分かれます。
⑥ 主な間違いやすいポイント
立替金と貸付金を「利息の有無」だけで分けない
立替金は他者負担分の肩代わり、貸付金は金銭そのものの貸付けです。
立替金と仮払金を「一時払い」という見た目だけで分けない
他者負担分が明らかなら立替金、内容や最終金額が未確定なら仮払金です。
預り金を会社の収益にしない
預かった金額は、会社が自由に使える収益ではなく、あとで他者へ渡す義務を表す負債です。
預り金を支払うときに新しい費用を計上しない
以前に負債として計上した預り金を減らす処理です。
⑦ 試験での問われ方
当サイトでは、次のような形で確認します。
- 他者負担分を立て替えたときの科目
- 立替金を回収したときの借方・貸方
- 預り金の資産・負債分類
- 預り金を支払ったときの負債の減少
- 立替金と貸付金・仮払金の区別
- 預り金と前受金・仮受金の区別
給与の総額・控除・実支給額を組み立てる問題は C08-T01、社会保険料の従業員負担分と会社負担分を区別する問題は C08-T02 で練習します。
⑧ まとめ
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 他者負担分を会社が立て替える | 立替金・従業員立替金 | 現金・普通預金など |
| 立替金を回収する | 現金・普通預金など | 立替金・従業員立替金 |
| 他者へ渡すための金額を預かる | 現金・普通預金など | 預り金 |
| 預り金を支払う | 預り金 | 現金・普通預金など |
判断するときは、会社があとで回収するのか、あとで他者へ渡すのかを先に確認してください。
⑨ 関連問題への導線
- 一問一答:10問
- 仕訳問題:4問(初級3問/標準1問)
- 計算問題:なし
- 前のテキスト:C05-T06「前払金・前受金」
- 次のテキスト:C05-T08「仮払金・仮受金」
- 関連:C08-T01「給料の支払いと源泉徴収」/C08-T02「社会保険料と法定福利費」
⑩ 2級への接続
2級でも、従業員・役員との金銭取引では、誰が負担する金額なのかを区別する考え方が重要です。
3級ではまず、立替金を資産、預り金を負債として捉え、発生と回収・支払いの向きを正確に仕訳できるようにしておきましょう。

コメント