経過勘定の決算整理

1.このページで学ぶこと

決算整理のうち、費用・収益がどの会計期間に属するかを判断して調整する処理をまとめて扱います。

このページのねらいは、次の3つです。

  1. 決算整理前残高試算表と決算整理事項から、どの経過勘定にあたるかを4分類から選び分ける
  2. 4分類が費用・収益をどちら向きに動かすかを、方向として区別する
  3. 調整後の決算整理後の費用・収益の金額まで求める

前払・未払・未収・前受のそれぞれがどういう状況で生じるかという初出の説明は、次の3単元ですでに扱っています。

単元 扱う区分
C09-T03 費用の前払い(繰延) 前払
C09-T04 収益の前受け(繰延) 前受
C09-T05 費用の未払いと収益の未収(見越し) 未払・未収

このページは、それらを決算整理の場面で横断的に使い分けることに集中します。


2.経過勘定の目的

現金を支払った日・受け取った日と、その費用・収益が属する会計期間は、必ずしも一致しません。

  • 家賃を1年分まとめて支払えば、支払った日は当期でも、中身の一部は翌期の分です。
  • 借入金の利息を後払いにしていれば、当期に発生した分がまだ支払われていないまま決算日を迎えます。

このまま決算を締めると、当期の費用・収益の金額が実態からずれます。そこで決算日に、

その金額を当期の費用・収益として計上してよいか

を判断し、はみ出した分・足りない分を調整します。この調整に使う勘定が経過勘定です。


3.判断軸① 当期か翌期か

第1の軸は、その金額が属する会計期間です。

会計期間が4月1日から翌年3月31日まで、決算日が3月31日であれば、切れ目は次のとおりです。

期間 帰属
4月1日 〜 3月31日 当期
4月1日以降 翌期

決算日をまたぐ契約では、契約期間を当期側と翌期側に割り、当期に属する分だけを当期の費用・収益として残します


4.判断軸② 支払・受取済みか

第2の軸は、現金の受け渡しがすでに済んでいるかです。

本教材で扱う基本ケースでは、支払済み・受取済みの金額は、支払時・受取時に対応する費用・収益科目へ全額計上済みであり、未払・未収として示された当期分は決算整理前には未計上であるものとします。問題文に別の処理が明記されている場合は、その条件に従います。

状態 本教材の基本ケースでの帳簿の状態
済んでいる 対応する費用・収益科目へすでに全額計上している
済んでいない 未払・未収として示された当期分がまだ計上されていない

この基本ケースでは、計上済みの金額に翌期分が含まれていれば当期分としては多く、未計上の当期分があれば当期分としては足りないと判断します。


5.4分類一覧

判断軸①と判断軸②を組み合わせると、次の4つに整理できます。

区分 費用/収益 支払・受取 期間帰属 決算整理の効果 経過勘定の分類
前払 費用 済み 翌期分を含む 当期費用を減らす 資産
未払 費用 当期分が未計上 当期費用を増やす 負債
未収 収益 当期分が未計上 当期収益を増やす 資産
前受 収益 済み 翌期分を含む 当期収益を減らす 負債

このページで最も重要なのは、この表を暗記することではなく、判断軸①と②から表を組み立て直せることです。

  • 費用・収益として計上済みで「翌期分がある」 → 当期分として多い → 減らす
  • 決算整理前には未計上で「当期分がある」 → 当期分として足りない → 増やす

という筋道で導けます。


6.前払

支払は済んでいるが、中身に翌期分が含まれている状態です。

翌期分は当期の費用ではないので、当期の費用から取り除きます。取り除いた分は、翌期にサービスを受ける権利として資産に振り替えます。

(借)前払家賃 /(貸)支払家賃

  • 資産の増加 → 借方
  • 費用の減少 → 貸方

初出の詳細は C09-T03(費用の前払い(繰延)) を参照してください。


7.未払

当期分の費用が発生しているのに、支払がまだで帳簿に乗っていない状態です。

当期分なので、当期の費用に加えます。相手は、あとで支払う義務として負債です。

(借)支払利息 /(貸)未払利息

  • 費用の増加 → 借方
  • 負債の増加 → 貸方

初出の詳細は C09-T05(費用の未払いと収益の未収(見越し)) を参照してください。


8.未収

当期分の収益が発生しているのに、受取がまだで帳簿に乗っていない状態です。

当期分なので、当期の収益に加えます。相手は、あとで受け取る権利として資産です。

(借)未収利息 /(貸)受取利息

  • 資産の増加 → 借方
  • 収益の増加 → 貸方

初出の詳細は C09-T05(費用の未払いと収益の未収(見越し)) を参照してください。


9.前受

受取は済んでいるが、中身に翌期分が含まれている状態です。

翌期分は当期の収益ではないので、当期の収益から取り除きます。取り除いた分は、翌期にサービスを提供する義務として負債に振り替えます。

(借)受取家賃 /(貸)前受家賃

  • 収益の減少 → 借方
  • 負債の増加 → 貸方

初出の詳細は C09-T04(収益の前受け(繰延)) を参照してください。


10.4分類の仕訳方向比較

4つを並べると、方向の違いがはっきりします。

区分 借方 貸方 当期の費用・収益
前払 前払◯◯(資産の増加) 費用の科目(費用の減少) 費用が減る
未払 費用の科目(費用の増加) 未払◯◯(負債の増加) 費用が増える
未収 未収◯◯(資産の増加) 収益の科目(収益の増加) 収益が増える
前受 収益の科目(収益の減少) 前受◯◯(負債の増加) 収益が減る

経過勘定の側から見ると、4つとも同じ規則です。

  • 資産である前払・未収 → 借方
  • 負債である未払・前受 → 貸方

経過勘定が借方か貸方かは、資産か負債かだけで決まります。費用・収益の科目は、その反対側に入ります。この見方をとると、4つを別々に覚える必要はありません。


11.月割による期間配分

決算整理額は、契約期間のうち調整の対象になる月数の分だけを取り出して求めます。

総額 ÷ 対象総期間 × 調整対象期間

たとえば1年分 552,000円をまとめて支払っており、そのうち翌期分が2か月分であれば、

  • 1か月分:`552,000 ÷ 12 = 46,000円`
  • 翌期分(2か月):`46,000 × 2 = 92,000円`
  • 当期分(10か月):`552,000 − 92,000 = 460,000円`

となります。

月数を数えるときは、決算日の切れ目を先に確認します。決算日が3月31日であれば、3月までが当期・4月以降が翌期です。契約開始日・契約終了日・決算日を並べ、当期側と翌期側の月数が総月数になることを確かめてください。

問題が月単位で与えられていれば月割で計算します。日数が明示されている問題は、その問題の条件に従ってください。月割の問題に30日基準・365日基準・実日数基準を持ち込んではいけません。逆に、日数を求める条件の問題を月割に置き換えてもいけません。


12.決算整理後の費用・収益

決算整理前残高試算表の金額は、まだ調整していない金額です。決算整理を行うと、次のように変わります。

区分 決算整理後の金額
前払 `整理後費用 = 整理前費用 − 翌期分`
未払 `整理後費用 = 整理前費用 + 未計上の当期分`
未収 `整理後収益 = 整理前収益 + 未計上の当期分`
前受 `整理後収益 = 整理前収益 − 翌期分`

第5節の「増やす/減らす」がそのまま式の符号になります。

なお、同じ科目に経過勘定以外の修正事項があるときは、この式だけを当てはめてはいけません。問題の条件をすべて反映してください。


13.具体的な勘定科目

本教材では、もとの費用・収益に対応する具体的な経過勘定科目を使います。名称は「前払家賃」「未払利息」などの形になりますが、単純に語を機械的に付ければよいのではなく、使用勘定科目マスタにある正式科目を選びます。

区分 費用・収益の科目 経過勘定
前払 支払家賃 前払家賃
前払 保険料 前払保険料
前払 支払利息 前払利息
未払 支払家賃 未払家賃
未払 支払利息 未払利息
未払 給料 未払給料
未収 受取利息 未収利息
未収 受取家賃 未収家賃
前受 受取家賃 前受家賃
前受 受取地代 前受地代
前受 受取手数料 前受手数料

未払金・未収入金との区別

経過勘定の未払・未収を、未払金・未収入金へ置き換えてはいけません。区別のポイントは、時の経過にともなって発生する費用・収益かどうかです。

科目 使う場面
未払利息(未払費用) 借入期間の経過にともなって発生した利息のうち、未払いの分
未払金 備品の購入代金など、商品以外の売買から生じた未払いの分
未収利息(未収収益) 貸付期間の経過にともなって発生した利息のうち、未受取の分
未収入金 固定資産の売却代金など、商品以外の売買から生じた未受取の分

「未払い」「未収」という語が出てきただけで経過勘定と決めてはいけません。時の経過で発生する費用・収益かどうかを先に確認してください。

前払金・前受金との区別

同様に、本教材で扱う基本例では、前払金・前受金は商品売買の手付金・内金に用いる科目であり、経過勘定とは区別します。

科目 使う場面
前払家賃(前払費用) 支払済みの家賃のうち、翌期に属する分
前払金 商品を受け取る前に支払った手付金・内金。商品を受け取ったときに仕入へ振り替える
前受家賃(前受収益) 受取済みの家賃のうち、翌期に属する分
前受金 商品を引き渡す前に受け取った手付金・内金。引渡し時に売上へ振り替える

14.財務諸表表示との関係

仕訳で使う科目と、財務諸表に表示する名称は別です。

仕訳で使う具体的科目 財務諸表の表示名 表示区分
前払家賃・前払保険料・前払利息 前払費用 貸借対照表 流動資産
未収利息・未収家賃 未収収益 貸借対照表 流動資産
未払家賃・未払利息・未払給料 未払費用 貸借対照表 流動負債
前受家賃・前受地代・前受手数料 前受収益 貸借対照表 流動負債

前払費用・未収収益・未払費用・前受収益は、使用勘定科目マスタ上、財務諸表の表示総称として位置づけられています。本教材では、仕訳の正解科目は具体的科目(前払家賃・未払利息など)で作成します。

仕訳の解答に総称を書いたり、逆に表示名の欄に具体的科目を書いたりすると、仕訳科目と表示科目が混ざります。どちらを問われているのかを、問題文で確認してください。


15.再振替との境界

このページで扱うのは、当期末の決算整理までです。

前期末に計上した経過勘定を翌期首に逆の仕訳で戻す処理は「再振替仕訳」と呼ばれ、C09-T06(再振替仕訳と経過勘定の一巡) が扱います。

時点 仕訳 扱う単元
当期末(決算整理) (借)前払家賃 /(貸)支払家賃 本ページ(C14-T07)
翌期首(再振替) (借)支払家賃 /(貸)前払家賃 C09-T06

決算整理仕訳と再振替仕訳は借方・貸方がちょうど逆になりますが、行う時点も目的も違います。本ページの問題では、翌期首の処理は求めません。

なお、精算表の修正記入欄・損益計算書欄・貸借対照表欄への記入といった精算表そのものを作る技能C15-T01(精算表) が扱います。題材に精算表と書かれていても、求められているものが決算整理仕訳や決算整理後の金額であれば、本ページの技能です。


16.まとめ

  1. 経過勘定は、現金の受け渡しの時点と、費用・収益が属する期間のずれを決算日に調整する仕組みである。
  2. 判断は2つの軸で行う。当期分か翌期分かと、支払・受取が済んでいるかである。
  3. 済んでいて翌期分を含むなら減らす(前払・前受)。済んでおらず当期分が未計上なら増やす(未払・未収)。
  4. 経過勘定が借方か貸方かは、資産(前払・未収)か負債(未払・前受)かだけで決まる。費用・収益の科目は反対側に入る。
  5. 金額は 総額 ÷ 対象総期間 × 調整対象期間。月数は決算日の切れ目を先に確認してから数える。
  6. 決算整理後の費用・収益は、整理前残高に調整額を加減して求める。符号は第5節の「増やす/減らす」と一致する。
  7. 仕訳の正解科目は具体的科目、財務諸表の表示は総称である。両者を混ぜない。
  8. 未払金・未収入金・前払金・前受金は経過勘定ではない。時の経過で発生する費用・収益かで区別する。
  9. 翌期首の再振替は C09-T06、精算表の欄記入は C15-T01 が扱う。


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