【2027年度(2027年4月~)受験の方】
この単元は、2027年4月1日以降の試験で出題範囲となる論点です。 しっかり学習してください。
【2026年度(~2027年3月)受験の方】
この単元は出題範囲外です。 学習の必要はありません。C03-T01 の三分法を確実にしてください。
この単元の標語:仕入れたときは商品(資産)で受け入れる。売るたびに、売価の仕訳と原価の仕訳を2本切る。
① このページで学ぶこと
- 売上原価対立法が三分法と何が違うのかを説明できる
- 仕入時に商品(資産)で受け入れる仕訳が切れるようになる
- 販売時に売価と原価の2本の仕訳を切れるようになる
- 売価と原価を取り違えずに記入できる
- 決算での売上原価の扱いが三分法とどう違うかを説明できる
② 基礎概念
もうひとつの記帳方法
商品売買の記帳方法には、C03-T01 で学んだ三分法のほかに、販売のつど売上原価勘定に振り替える方法があります。
教材上は売上原価対立法と呼ぶこともありますが、公式には「販売のつど売上原価勘定に振り替える方法」と表現されます。
使う勘定科目
| 勘定科目 | 5要素 | 何を表すか |
|---|---|---|
| 商品 | 資産 | 手元にある商品の原価 |
| 売上原価 | 費用 | 販売した商品の原価 |
| 売上 | 収益 | 販売した金額(売価) |
三分法の「仕入」「繰越商品」は使いません。
三分法との違い
| 三分法 | 売上原価対立法 | |
|---|---|---|
| 仕入時 | (借)仕入(費用) | (借)商品(資産) |
| 販売時 | (借)売掛金/(貸)売上 の1本 | 売価の1本 + 原価の1本=2本 |
| 売上原価の確定 | 決算整理で算定する | 販売のつど確定する |
| 販売時の商品勘定 | 減少させる処理を行わない | 販売のつど減少させる |
③ 仕組み・理由
なぜ「売るたび2本」なのか
商品を販売すると、2つのことが同時に起きています。
① 売価の分だけ収益が発生する ② 原価の分だけ、手元の商品が会社から出ていく
三分法では②を期中に記録せず、決算整理でまとめて売上原価を算定します。
売上原価対立法では、②をその場で記録します。 だから仕訳が2本になります。
売価と原価は別の金額
1本目は売価、2本目は原価です。
原価 ¥50,000 の商品を ¥75,000 で売れば、収益は ¥75,000、費用は ¥50,000 です。差額の ¥25,000 が売上総利益にあたります。
同じ取引に2つの金額が出てくる——これが売上原価対立法の最大の特徴であり、間違えやすい点でもあります。
決算での違い
売上原価対立法では、決算を待たずに売上原価が確定しています。
三分法のように「期首商品 + 当期仕入 − 期末商品」で売上原価を算定する決算整理は必要ありません。商品勘定の残高が、帳簿上の期末商品の原価を示します。
販売のつど正しく記帳している限り、商品勘定の残高から帳簿上の手元商品の原価を把握できます——これがこの方法の利点です。
④ 基本例
×1年6月3日、青森商事は商品 ¥80,000 を掛けで仕入れた。
×1年6月10日、上記の商品のうち原価 ¥50,000 分を ¥75,000 で掛けで販売した。
⑤ 仕訳例:思考の手順つき
場面1:仕入時(×1年6月3日)
- 取引を読む:商品を仕入れ、代金は後日支払う。
- 勘定科目を決める:受け入れた商品 → 商品(資産)/支払義務 → 買掛金
- 5要素と増減を確認する:商品(資産)の増加 ¥80,000/買掛金(負債)の増加 ¥80,000
- 借方・貸方を決める:資産の増加は借方、負債の増加は貸方
- 金額を記入する:どちらも ¥80,000
- 貸借一致を確認する:借方 80,000 = 貸方 80,000
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 商品 | 80,000 | 買掛金 | 80,000 |
仕入時には費用が発生しません。 商品は資産として受け入れ、売ったときに初めて費用(売上原価)になります。
場面2:販売時(×1年6月10日)
1本目:売価の仕訳
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 75,000 | 売上 | 75,000 |
これは三分法とまったく同じです。
2本目:原価の仕訳
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上原価 | 50,000 | 商品 | 50,000 |
- 借方の理由:販売した商品の原価が費用になる = 売上原価(費用)の発生
- 貸方の理由:手元の商品が減る = 商品(資産)の減少
1本目は売価 ¥75,000、2本目は原価 ¥50,000。金額が違う点に注意してください。
記帳後の状態
| 勘定 | 残高 | 意味 |
|---|---|---|
| 商品 | 80,000 − 50,000 = 30,000 | 帳簿上の手元商品の原価 |
| 売上原価 | 50,000 | 販売した商品の原価 |
| 売上 | 75,000 | 販売した金額 |
この時点で、売上総利益(75,000 − 50,000 = ¥25,000)まで分かります。
⑥ 間違いやすいポイント3つ
1.仕入時に「仕入」を使ってしまう
三分法の癖で借方を仕入とする誤りです。
売上原価対立法では、仕入れた商品は資産(商品)として受け入れます。 費用になるのは売ったときです。
2.販売時に2本目を忘れる
売るたびに2本が、この方法の核心です。
1本目だけでは、手元の商品が減ったことも、費用が発生したことも記録されません。商品勘定の残高が実際と合わなくなります。
3.売価と原価を取り違える
1本目は売価、2本目は原価です。
2本目を売価で書くと、売った金額がそのまま費用になり、利益がゼロになってしまいます。問題文に「原価 ¥○○ の商品を ¥△△ で販売した」とあれば、2つの金額を必ず拾い分けてください。
⑦ 試験での問われ方
当サイトの本試験形式では、主に第1問対策(仕訳問題)に位置づけています。
販売時の2本の仕訳が中心です。返品の場合は2本とも戻す形もあります。
第3問対策では、この方法を採用している会社の決算で、三分法のような売上原価の算定が不要である点が判断のポイントになります。
なお、この論点は2027年度から3級の出題範囲に加わったものです。
⑧ まとめ
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 仕入時 | 商品(原価) | 買掛金・現金など |
| 販売時(1本目・売価) | 売掛金・現金など | 売上 |
| 販売時(2本目・原価) | 売上原価 | 商品 |
| 仕入返品 | 買掛金など | 商品 |
| 売上返品(1本目・売価) | 売上 | 売掛金など |
| 売上返品(2本目・原価) | 商品 | 売上原価 |
三分法との対比
| 三分法 | 売上原価対立法 | |
|---|---|---|
| 仕入時の借方 | 仕入(費用) | 商品(資産) |
| 販売時の仕訳 | 1本 | 2本 |
| 売上原価 | 決算整理で算定 | 販売のつど確定 |
⑨ 関連問題への導線
- 一問一答:C03-T07「売上原価対立法」(全10問)
- 仕訳問題:C03-T07「売上原価対立法」(全7問・初級3問/標準3問/応用1問)
- 前のテキスト:C03-T06(商品有高帳)
- 次のテキスト:C04-T01「現金と現金過不足」
- 三分法:C03-T01「商品売買と三分法」
- 三分法の決算整理:C14-T02「商品棚卸と売上原価の決算整理」
⑩ 2級への接続
2級でも同じ処理が使われ、商品売買の記帳方法として定着します。
また、収益認識の考え方が入ると、売上をいつ計上するかという判断が加わります。
3級で身につける「売価の仕訳と原価の仕訳を分ける」という発想が、その土台になります。

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