訂正仕訳

1.このページで学ぶこと

帳簿に誤った仕訳が記録されてしまったとき、それを正しい状態へ直す処理を訂正仕訳といいます。

ねらいは3つです。

  1. 現在の記帳状態本来あるべき状態を並べて比べる
  2. その差だけを仕訳する
  3. 誤りの型(科目・金額・向き・漏れ・内訳)ごとに、直し方を判断する

題材となる取引(家賃の支払い、商品売買、消費税など)の基礎処理は、それぞれの単元で扱っています。ここで身につけるのは「誤記帳を差分で直す」技能そのものです。


2.訂正仕訳とは

訂正仕訳は、すでに行った誤った仕訳の記帳結果を、正しい状態へ修正する処理です。

本教材で扱う訂正仕訳では、誤った記帳をなかったことにして直接置き換えたものとして扱うのではなく、必要な仕訳を追加して、結果として正しい記帳状態へ合わせます。


3.現在の記帳状態と正しい状態を比べる

訂正仕訳の考え方は1つだけです。

訂正仕訳 = 本来あるべき記帳効果 − 現在の誤った記帳効果

いま帳簿がどうなっているかと、本当はどうなっているべきかを並べ、足りない分を足し、多すぎる分を戻す——それだけです。


4.基本手順

次の4段階で進めます。

手順1 実際に行われた誤仕訳を書く 手順2 本来行うべきだった正しい仕訳を書く 手順3 2つを見比べ、共通している部分を消す 手順4 残った差分を訂正仕訳として記入する

手順3が要です。両方に同じ科目・同じ側・同じ金額で登場しているものは、すでに正しいので動かしません。


5.誤仕訳の取消し+正しい仕訳という考え方

差分がすぐに見えないときは、次のように分けて考えると整理できます。

 誤仕訳を反対仕訳で取り消す  正しい仕訳を行う

この2つを合わせたものが、必要な訂正の内容です。


6.差額1本へまとめる考え方

ただし、答案に書くのは差分1本です。

第5節の①と②を合わせると、共通する部分が打ち消し合って消えることが多く、結果として1本の仕訳にまとまります。

訂正するときは必ず、誤仕訳の取消仕訳と正しい仕訳の2本を記帳する

とは限りません。

①②は考え方の補助であり、記帳の形を決めるものではありません。まとめられる場合は1本で記入します。


7.勘定科目の誤り

片側の科目だけが違う型です。

たとえば、事務所家賃 53,000円を現金で支払ったのに、次のように記帳していたとします。

借方 貸方
誤仕訳 通信費 53,000 現金 53,000
正しい仕訳 支払家賃 53,000 現金 53,000

貸方の現金 53,000円は両方に同じ形で登場しているので、すでに正しい状態です。動かしません。

違うのは借方だけなので、誤って計上した通信費を取り消し、正しい支払家賃を計上します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
支払家賃 53,000 通信費 53,000

8.金額の過少

方向は合っているが、金額が足りない型です。

正しくは 135,000円のところ、106,000円しか記帳していなかったとします。

不足額 = `135,000 − 106,000` = 29,000円

同じ方向へ、不足の 29,000円だけを追加します。

正しい金額 135,000円をもう一度そのまま記帳してはいけません。 すでに 106,000円は記録済みなので、それでは 241,000円になってしまいます。


9.金額の過大

方向は合っているが、金額が多すぎる型です。

正しくは 101,000円のところ、123,000円を記帳していたとします。

超過額 = `123,000 − 101,000` = 22,000円

超過した 22,000円だけを反対方向へ戻します。全額を取り消してから記帳し直す必要はありません。


10.借方・貸方の完全逆記

科目も金額も合っているのに、借方と貸方が入れ替わっている型です。

正しくは「(借)A 37,000/(貸)B 37,000」のところを、「(借)B 37,000/(貸)A 37,000」と記帳したとします。

科目Aについて考えます。

Aの記帳
現在 貸方 37,000
本来 借方 37,000

貸方の 37,000円を打ち消すのに借方 37,000円、さらに本来の借方 37,000円を立てるのに 37,000円。合わせて借方 74,000円が必要です。Bも同様に貸方 74,000円になります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
A 74,000 B 74,000

11.記帳漏れ

取引の一部、または全部が記帳されていなかった型です。

現在の記帳効果がゼロなので、打ち消すものがありません。したがって、

本来行うべき仕訳を、そのまま追加する

だけで訂正できます。一部だけが記帳済みの場合は、抜けている部分だけを追加します。

「訂正仕訳では必ず誤仕訳を反対仕訳する」と考えてはいけません。 取り消すべき誤った記録が存在しないケースがあります。


12.内訳・配分誤り

相手科目は正しいが、片側の内訳が違う型です。

たとえば、本体 390,000円・消費税 39,000円・合計 429,000円の仕入について、合計額をすべて仕入として記帳したとします。

借方 貸方
誤仕訳 仕入 429,000 買掛金 429,000
正しい仕訳 仕入 390,000・仮払消費税 39,000 買掛金 429,000

貸方の買掛金 429,000円は両方で一致しているので動かしません。借方の内訳だけを直します。

仕入の過大分 = `429,000 − 390,000` = 39,000円

借方科目 金額 貸方科目 金額
仮払消費税 39,000 仕入 39,000

13.すでに正しい側を動かさない

第7節から第12節まで、繰り返し出てきた考え方です。

動かさない部分
勘定科目の誤り 正しかった相手科目
金額の過少・過大 記帳済みの正しい部分
内訳・配分誤り 一致している相手科目

両方の仕訳に同じ科目・同じ側・同じ金額で登場しているものは、すでに正しい状態です。 訂正仕訳に登場させると、正しかったものが二重になります。


14.2倍訂正が生じる条件

第10節で訂正額が元の金額の2倍になりました。ただし、

訂正仕訳は元の金額の2倍にする

と覚えてはいけません。2倍になるのは、

同じ2つの勘定・同じ金額を、借方と貸方で完全に逆向きに記帳していた場合

に限られます。

片側だけが違う場合、金額が違う場合、複数科目にまたがる場合は2倍になりません。必ず「現在の状態」と「本来の状態」を並べて確かめてください。


15.訂正後の検算

訂正仕訳を書いたら、必ず次を確認します。

訂正後の各勘定の記帳効果が、最初から正しく仕訳していた場合と同じになっているか

科目ごとに次の形で確かめると確実です。

勘定 誤仕訳の効果 訂正仕訳の効果 合計 本来の正しい効果 一致

借方合計と貸方合計が一致しているだけでは、正しいと判断できません。 誤った仕訳でも貸借は一致していることがあります。科目ごとの記帳効果まで確認してください。


16.再振替仕訳との違い

再振替仕訳は訂正仕訳ではありません。

訂正仕訳(本ページ) 再振替仕訳(C09-T06
なぜ行うか 記帳が誤っていたから 決算整理を翌期首に戻すため(正常な手続)
前期の仕訳 誤り 正しい
いつ行うか 誤りが判明したとき 翌期首(決まった時点)

前払家賃などを翌期首に戻す再振替は、前期の処理が正しかったからこそ行うものです。誤りを直しているわけではありません。C09-T06(再振替仕訳と経過勘定の一巡) が扱います。


17.元論点の知識と訂正技能の切り分け

訂正仕訳の問題には、いろいろな取引が題材として登場します。

題材 基礎処理を扱う単元
資本的支出と修繕費の判別 C07-T02
減価償却 C07-T03・C07-T04
償却債権取立益 C06-T03
社会保険料 C08-T02
消費税(税抜方式) C08-T05
経過勘定 C09系
純資産・剰余金の配当 C10系
主要簿・伝票 C11系・C12系

題材の基礎処理を知っていることは前提です。このページで身につけるのは、「誤記帳を差分で直す」技能そのものです。

なお、答案用紙上での解き方(読み方・時間配分・語群処理など)は C17-T02「第1問(仕訳問題)の攻略」 が扱います。ここでは会計処理そのものを学びます。


18.まとめ

  1. 訂正仕訳は、現在の記帳状態と本来あるべき状態の差を仕訳する処理である。
  2. 手順は「誤仕訳を書く → 正しい仕訳を書く → 共通部分を消す → 差分を記入する」。
  3. 「取消し+正しい仕訳」は考え方の補助必ず2本に分けて記帳するわけではない
  4. すでに正しい側は動かさない。
  5. 過少なら不足額を同じ方向へ追加。正しい金額をもう一度全額記帳しない。
  6. 過大なら超過額だけを反対方向へ戻す。
  7. 完全逆記では2倍になる。ただし同じ2勘定・同額を完全に逆向きに記帳した場合に限る。
  8. 記帳漏れなら、打ち消すものがないので本来の仕訳を追加する。
  9. 内訳・配分誤りでは、一致している相手科目を動かさず内訳だけを直す。
  10. 検算は科目ごとの記帳効果で行う。貸借一致だけでは不十分。
  11. 再振替仕訳は訂正仕訳ではない(C09-T06)。題材の基礎処理は元の各単元、解答手順の攻略は C17-T02「第1問(仕訳問題)の攻略」が扱う。


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