この単元の標語:売掛金・買掛金と未収入金・未払金は、商品売買かどうかを基本軸に見分ける。
① このページで学ぶこと
- 未収入金・未払金がどのような債権・債務かを説明できる
- 売掛金・買掛金との判別基準(商品売買か、それ以外か)を使えるようになる
- 固定資産の売買を後払いにしたときの仕訳が切れるようになる
- 未収入金・未払金を回収・支払したときの仕訳が切れるようになる
- 未収入金と未収収益、未払金と未払費用の違いを説明できる
② 基礎概念
売掛金・買掛金と未収入金・未払金を分ける
「代金をあとで受け取る権利」「あとで支払う義務」は、その原因によって科目が分かれます。
| 原因 | あとで受け取る(資産) | あとで支払う(負債) |
|---|---|---|
| 本業の商品売買 | 売掛金 | 買掛金 |
| それ以外(固定資産の売買など) | 未収入金 | 未払金 |
この4科目を判別するときの基本軸は、「商品」の売り買いから生じたものか、それ以外の取引から生じたものかです。
文房具店が販売用のノートを掛けで売れば売掛金、店の中古の陳列棚を後払いで売れば未収入金です。この4科目では、商品売買から生じた債権・債務か、それ以外の取引から生じた債権・債務かを区別します。
判断の軸は「何を」ではなく「何のために」
同じパソコンでも、
- 自社の事務用に買った → 備品(後払いなら未払金)
- 販売目的で仕入れた → 仕入(後払いなら買掛金)
となります。C03-T01 で学んだ「商品かどうかは目的で決まる」の応用です。
標準として使う科目名
本教材では、標準解答として 「未収入金」 を使用します。「未収金」という表記が許容される場合もありますが、正解としては未収入金で統一します。
③ 仕組み・理由
なぜ売掛金・買掛金と分けるのか
本業の債権(売掛金)とそれ以外の債権(未収入金)を分けるのは、帳簿から本業の状況を読み取れるようにするためです。
売掛金の残高からは、商品販売によってまだ回収していない金額を把握できます。ここに備品の売却代金が混ざると、本業の商品販売から生じた未回収額を区別しにくくなります。
また、決算で貸倒引当金を設定する対象は原則として売上債権であり、未収入金は通常その対象になりません(詳しくは C14-T03 で学びます)。科目を正しく分けることが、後の決算処理の正確さに直結します。
単純な決済では、計上済みの資産をもう一度動かさない
本単元のように、追加の手数料などを伴わない単純な決済では、未収入金を回収したときに売却した資産(土地や備品)を再度動かしません。資産は売却時にすでに減額しているためです。
未払金の支払いも同じで、購入した資産を再度計上しません。このような単純な決済では、すでに計上した債権・債務を消し込み、現金や預金などの決済手段の増減を記録します。
④ 基本例
×1年8月10日、青森商事は不要になった土地(帳簿価額 ¥1,500,000)を ¥1,500,000 で売却し、代金は月末に受け取ることとした。
×1年8月20日、事務用のパソコン一式 ¥300,000 を購入し、代金は翌月末に支払うこととした。
×1年8月31日、10日に売却した土地の代金 ¥1,500,000 が普通預金口座へ振り込まれた。
⑤ 仕訳例:思考の手順つき
場面1:固定資産を売却し、代金は後日(×1年8月10日)
- 取引を読む:土地の売却。代金はあとで受け取る。
- 判別する:土地は商品ではない → 債権は未収入金。
- 勘定科目を決める:未収入金/土地
- 5要素と増減を確認する:未収入金(資産)の増加/土地(資産)の減少
- 借方・貸方を決める:資産の増加は借方、資産の減少は貸方
- 貸借一致を確認して記入する:借方 1,500,000 = 貸方 1,500,000
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未収入金 | 1,500,000 | 土地 | 1,500,000 |
帳簿価額どおりの売却なので売却損益は生じません(売却損益が出るケースは C07-T05 で扱います)。ここでは債権の科目に集中してください。
場面2:備品を購入し、代金は後日(×1年8月20日)
- 取引を読む:パソコン(事務用)の購入。代金はあとで支払う。
- 判別する:備品は商品ではない → 債務は未払金。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 備品 | 300,000 | 未払金 | 300,000 |
もしこれが「販売用のパソコンを掛けで仕入れた」なら、借方は仕入・貸方は買掛金になります。買った物は同じでも、目的で借方も貸方も変わります。
場面3:未収入金の回収(×1年8月31日)
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 1,500,000 | 未収入金 | 1,500,000 |
土地は動きません。 土地は場面1で減らし済みです。
⑥ 主な間違いやすいポイント
1.「後で受け取る=売掛金」「後で払う=買掛金」と考えてしまう
ここで注意したい誤りです。
判断の軸は「後払いかどうか」ではなく、「商品売買か、商品売買以外か」です。問題文に「代金は月末に受け取る」とあっても、それだけでは科目は決まりません。何を売買したのかを先に読んでください。
2.未収入金と未収収益を混同する
名称は似ていますが、使う場面が違います。
| 科目 | 使う場面 |
|---|---|
| 未収入金 | 商品以外の物の売却代金などの未回収 |
| 未収収益 | 利息・家賃など、時の経過で発生する収益の未収分(決算整理・C09) |
未収入金は取引が終わっているのに代金だけが未回収の状態、未収収益は決算整理で当期分を計上するものです。
3.未払金と未払費用を混同する
こちらも同様です。
| 科目 | 使う場面 |
|---|---|
| 未払金 | 備品購入代など、単発の取引の未払い |
| 未払費用 | 利息・家賃など、期間費用の見越し分(決算整理・C09) |
なお、未払費用は貸借対照表での表示総称であり、仕訳の正解には使いません。 仕訳では未払利息・未払家賃などの具体的な科目を使います。
⑦ 試験での問われ方
当サイトの本試験形式では、主に第1問対策(仕訳問題)に位置づけています。
第1問対策
当サイトの第1問形式では、固定資産の後払い売買とその決済、売掛金・買掛金との判別を練習します。同じ相手に対して商品の債権と商品以外の債権が同時に生じる形も扱います。
第2問対策
補助簿の選択(どの帳簿に記入するか)で、売掛金元帳・買掛金元帳の対象になるかどうかの判断が関係することがあります。
第3問対策
決算整理前残高試算表に未収入金・未払金が並びます。貸倒引当金の設定対象は原則として売上債権であり、未収入金を対象に含めないことが判断のポイントになります(C14-T03)。
⑧ まとめ
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 商品以外を売却し、代金は後日 | 未収入金 | 土地・備品・車両運搬具など |
| 未収入金を回収した | 現金・普通預金など | 未収入金 |
| 商品以外を購入し、代金は後日 | 備品・車両運搬具など | 未払金 |
| 未払金を支払った | 未払金 | 現金・普通預金など |
| (比較)商品を掛けで売買した | 売掛金 / 仕入 | 売上 / 買掛金 |
判別の手順は次のとおりです。
① 何を売買したかを読む → ② 商品か、それ以外かを判別する → ③ 商品なら売掛金・買掛金、それ以外なら未収入金・未払金
⑨ 関連問題への導線
- 一問一答:C05-T05「未収入金・未払金」(全10問)
- 仕訳問題:C05-T05「未収入金・未払金」(全9問・初級6問/標準2問/応用1問)
- 前のテキスト:C05-T04「貸付金・借入金」
- 次のテキスト:C05-T06「前払金・前受金」
- 固定資産の売却損益:C07-T05「固定資産の売却」
- 貸倒引当金の設定対象:C14-T03「貸倒引当金の決算整理」
⑩ 2級への接続
2級では、貸借対照表で債権を営業債権(売掛金など)と営業外債権(未収入金など)に区分して表示する考え方が本格的に扱われます。
また、固定資産の売却では売却損益の計算が加わり、本単元で扱った「代金の未回収部分は未収入金」という処理と組み合わさります。
3級で学ぶ「取引の原因に応じて科目を分ける」という考え方は、2級で債権を区分して表示する考え方を理解する土台になります。

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