学習のポイント
① 売った側の利益が、まだ集団の外に出ていない
前の単元では、親会社と子会社の間の取引高や債権債務を相殺しました。ここでは、その取引で売った側が乗せた利益を扱います。
親会社が利益を上乗せして子会社へ商品を販売すると、親会社の個別帳簿にはその販売利益が計上されます。子会社がその商品を企業集団の外部へ販売すれば、内部売買で商品に含まれていた利益も企業集団全体として実現します。
ところが、子会社が期末までその商品を売らずに在庫として持っている場合、企業集団として見れば商品はまだ内部に残っています。それにもかかわらず、売った側の個別帳簿には内部売買による利益が計上されています。
この、まだ企業集団の外部への販売によって裏づけられていない利益を未実現利益といい、連結上は消去します。
② 期末商品の未実現利益
期末に残っている在庫のうち、連結会社から仕入れた分に利益率を掛けて求めます。
未実現利益 = 期末棚卸資産のうち内部仕入分 × 利益率
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売上原価 | 商品 |
貸方の商品は、在庫の金額を未実現利益の分だけ減らすことを表します。借方の売上原価は、その分だけ費用が増える、つまり連結上の利益が減ることを表します。
③ 付加率が与えられたときは利益率に直す
利益の割合の示し方には2通りあります。
- 利益率:売価に対する利益の割合
- 付加率:原価に対する利益の上乗せの割合
未実現利益の計算に使うのは売価に対する利益率です。買い手が計上している内部仕入価額は、売り手側の内部販売価額に対応するためです。付加率が与えられたときは次の式で直します。
利益率 = 付加率 ÷ (1 + 付加率)
付加率が25%なら、25% ÷ 125% = 20% です。原価100円に25円を上乗せして125円で売ったとき、売価125円に対する利益25円の割合は20%になります。付加率をそのまま掛けると金額が大きくなりすぎるので注意してください。
④ 期首商品は「引き継ぎ」と「実現」の2段構え
前期末に消去した未実現利益は、連結修正として処理され、親会社・子会社の個別帳簿には直接記帳されていません。そこで当期の連結財務諸表を作成するとき、前期末までの調整を当期首の状態として引き継ぎます。これが開始仕訳です。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 利益剰余金当期首残高 | 商品 |
前期の売上原価は当期には残っていないので、利益剰余金当期首残高 に置き換えます。
そのうえで、期首の在庫が当期中に企業集団の外部へ売られたなら、前期に消去した利益は当期に実現したことになります。そこで反対の仕訳を置きます。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 商品 | 売上原価 |
こちらは売上原価を減らす向きです。期末商品の消去(売上原価が増える)と向きが逆になります。
期首と期末の両方がある年度では、売上原価への正味の影響は期末の消去額から期首の実現額を引いた差になります。
⑤ 売った側が子会社の場合は按分する
売った側が子会社(アップストリーム)のとき、未実現利益を消去すると子会社の利益が変わります。子会社の利益は連結上、親会社の株主と非支配株主に分かれるので、変動額も按分します。
非支配株主への影響額 = 未実現利益 × 非支配比率
按分の向きは、子会社の調整後の利益が減るのか増えるのかで決まります。
| 場面 | 子会社の利益 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|---|
| 期末商品の未実現利益を消去 | 減る | 非支配株主持分 | 非支配株主に帰属する当期純利益 |
| 期首商品の未実現利益が実現 | 増える | 非支配株主に帰属する当期純利益 | 非支配株主持分 |
| 未実現損失を消去 | 増える | 非支配株主に帰属する当期純利益 | 非支配株主持分 |
売った側が親会社(ダウンストリーム)のときは、利益が変わるのは親会社なので按分は行いません。
期首の未実現利益を上方取引で引き継ぐときは、開始仕訳の借方も親会社持分と非支配株主分に分かれます。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 利益剰余金当期首残高(親会社持分) | 商品(未実現利益の全額) |
| 非支配株主持分当期首残高(非支配株主分) |
⑥ 土地の未実現損益
連結会社間で土地を売買し、買った側が期末も保有している場合、売却損益は企業集団の外部に対して実現していません。そこで消去します。
未実現利益のとき
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 固定資産売却益 | 土地 |
未実現損失のとき
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 土地 | 固定資産売却損 |
いずれの場合も、消去後の連結貸借対照表に載る土地は、内部で売買する前の、売った側の帳簿価額に戻ります。土地は減価償却をしないので、期間配分は考えません。
売った側が子会社なら、棚卸資産と同じく按分します。損失を消去すると子会社の利益は増えるので、向きに注意してください。
⑦ 算定の手順
- 期首の内部仕入分の在庫があれば、前期の未実現利益を求め、開始仕訳を置く
- その在庫が当期に外部へ売られていれば、実現の仕訳を置く
- 期末の内部仕入分の在庫に利益率を掛け、未実現利益を消去する
- 土地の内部売買があれば、売却損益を消去する
- 売った側が子会社なら、1〜4のうち子会社の利益を動かしたものについて非支配株主へ按分する
付加率が与えられている場合は、1と3の前に利益率へ換算します。
⑧ 検算とその限界
- 期首の実現と期末の消去の両方を入れたか
- 付加率を利益率に直したか
- 土地が売った側の元の帳簿価額に戻っているか
- 非支配株主分と親会社持分の合計が、調整額の全体に一致するか
ただし、これらの検算で見つからない誤りがあります。
ひとつは金額そのものの誤りです。未実現損益の消去はどれも借方と貸方が同じ金額になる形なので、貸借が一致していても金額が正しいとはかぎりません。掛ける相手と率を、問題文に戻って確かめる必要があります。
もうひとつは持分比率と非支配比率の取り違えです。70%と30%、あるいは80%と20%を入れ替えても、両者の合計は調整額の全体に戻ります。4つ目の検算はこの誤りを見つけてくれません。どちらが非支配株主の割合かを問題文で確かめるほかありません。
⑨ ここで扱わない範囲
- 棚卸資産と土地以外の資産について、内部売買から生じた損益を消す処理
- 税金の影響を連結上で調整する処理
- 影響力はあるが支配はしていない会社への投資の処理
- 海外にある子会社の財務諸表を換算する処理
- 支配を獲得したあとに株式を買い足したり売ったりする場合の処理
- 現金の流れをまとめた連結の計算書を作る処理
- 純資産の変動をより広くとらえた利益を表示する処理
これらは扱いません。ここでは棚卸資産と土地の未実現損益だけを考えます。