この単元で身につけること
このUnitでは、所得税の基本構造と税額計算の流れを学びます。目標は次のとおりです。
- 所得税の課税期間(1月1日~12月31日の暦年)を答えられる
- 収入と必要経費、非課税所得の基本(身体の傷害等に基因する一定の保険金・給付金は原則非課税)を判断できる
- 所得税計算の基本順序(各所得の計算→損益通算等→所得控除→課税所得→税率適用→税額控除等)を説明できる
- 総合課税・申告分離課税・源泉分離課税の3つの課税方式を区別できる
- 課税総所得金額から速算表を使って所得税額を計算できる
- 復興特別所得税(基準所得税額×2.1%)を計算できる
全体像
所得税は、個人が1年間に得た所得に対して課される国税です(D01で学んだ位置づけ:国税・直接税・所得課税・申告納税方式)。このUnitでは、所得税の「骨格」を先につかみます。
骨格は3つです。第一に「期間と対象」。暦年(1月1日~12月31日)の所得が対象で、収入から必要経費を差し引いて所得を計算し、一部の非課税所得は課税対象から外れます。第二に「計算の流れ」。各所得の計算から税額控除まで、決まった順序で進みます。第三に「課税方式」。所得の種類により、総合課税・申告分離課税・源泉分離課税のいずれかの方式で課税されます。この骨格の上に、D03以降で各所得・控除の詳細を積み上げていきます。
用語の説明
- 課税期間:個人の所得税は原則として1月1日~12月31日の暦年単位
- 納税地:原則として住所地。所得税の申告・納税の基準となる場所
- 収入金額と必要経費:所得は原則として収入金額から必要経費等を差し引いて計算する
- 非課税所得:所得税が課されない所得。身体の傷害等に基因して受け取る一定の保険金・給付金は原則非課税
- 総所得金額:総合課税の対象となる所得を合計したもの
- 課税総所得金額:総所得金額から所得控除を差し引いた、税率を適用する金額
- 総合課税:各種所得を合計し累進税率を適用する課税方式
- 申告分離課税:他の所得と分離して税額を計算し確定申告する課税方式
- 源泉分離課税:支払時の源泉徴収だけで所得税の課税関係が完結する課税方式
- 復興特別所得税:基準所得税額に対して2.1%の税率で課される税
基本ルール
課税期間と納税地
個人の所得税は、原則として1月1日から12月31日までの1年間(暦年)を課税期間とします。「年度(4月~3月)」ではなく「暦年」である点が正誤問題のポイントです。納税地は原則として住所地です。
収入・必要経費と非課税所得
所得は、原則として収入金額から必要経費等を差し引いて計算します。また、社会政策的な配慮等から所得税が課されない非課税所得があり、代表例として、身体の傷害等に基因して受け取る一定の保険金・給付金は原則非課税とされます(分野Bで学んだ所得補償保険金等の扱いと同じ考え方です)。
所得税計算の基本順序
所得税の計算は、次の順序で進みます。
各所得の計算 → 損益通算等 → 所得控除 → 課税所得 → 税率適用 → 税額控除等
「所得控除は税率を掛ける前に差し引く」「税額控除は税額から差し引く」という位置の違いが、この流れを覚える最大の理由です。D03(各種所得)・D05(所得控除)・D06(税額控除)は、この流れの各段階を詳しく学ぶUnitです。
課税方式(3区分)
- 総合課税:各種所得を合計し、累進税率を適用する課税方式
- 申告分離課税:他の所得と分離して税額を計算し、確定申告する課税方式
- 源泉分離課税:支払時の源泉徴収だけで所得税の課税関係が完結する課税方式
代表例として、国内の預貯金の利子は原則として源泉分離課税であり、確定申告は不要です(税率20.315%は分野Cで学習済み)。「申告するか・しないか」「他の所得と合算するか・分離するか」という2つの軸で3方式を区別します。
所得税の税率(超過累進税率)
総合課税の所得税額は、課税総所得金額に速算表を適用して計算します。税率は5%から45%までの7段階の超過累進税率です(速算表は05_Numbers参照)。
所得税額=課税総所得金額×税率-速算控除額
速算控除額の差引きを忘れないこと、課税総所得金額がどの税率帯に入るかを正確に判定することが計算のポイントです。
復興特別所得税
復興特別所得税は、基準所得税額に対して2.1%の税率で課されます。現行の課税期間は2013年1月1日から2037年12月31日までです(法令基準日2026-04-01時点。基準日より後の改正による将来の変更は、現行制度としては扱いません)。
復興特別所得税額=基準所得税額×2.1%
重要な数字
所得税の速算表(課税総所得金額に対する)
| 課税所得金額 | 税率 | 速算控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円~1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円~ | 45% | 4,796,000円 |
その他の数値
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 課税期間 | 1月1日~12月31日(暦年) |
| 復興特別所得税率 | 基準所得税額×2.1% |
| 復興特別所得税の課税期間 | 2013-01-01~2037-12-31(基準日時点の現行) |
具体例
- 例1(課税期間):2026年分の所得税は、2026年1月1日から12月31日までの所得を対象に計算する。
- 例2(非課税所得):身体の傷害に基因して受け取った一定の保険金・給付金には、原則として所得税は課されない。
- 例3(課税方式):預貯金の利子は支払時の源泉徴収で課税関係が完結する(源泉分離課税)。給与所得や事業所得は総合課税として合算され、累進税率が適用される。
- 例4(計算の流れ):各所得を計算し、所得控除を差し引いて課税総所得金額を求め、速算表で税額を計算し、最後に税額控除等を差し引く。
計算のしかた
所得税額(速算表)
- 何を求めるか:課税総所得金額に対する所得税額
- 使用する式:課税総所得金額×税率-速算控除額
- 数値代入(例):課税総所得金額300万円の場合。速算表で10%帯(195万円~329.9万円)を選び、3,000,000円×10%-97,500円
- 計算:300,000円-97,500円=202,500円
- 端数処理:本例では端数は生じない
- 正解:所得税額は202,500円
復興特別所得税額
- 何を求めるか:復興特別所得税額
- 使用する式:基準所得税額×2.1%
- 数値代入(例):基準所得税額100,000円の場合。100,000円×2.1%=2,100円
- 端数処理:本例では端数は生じない
- 正解:復興特別所得税額は2,100円
税率帯の判定と速算控除額の差引きを、必ずセットで行いましょう。
よくある間違い
- 課税期間を「4月1日~3月31日の年度」と誤る。個人の所得税は暦年(1月1日~12月31日)
- 身体の傷害等に基因する保険金・給付金を課税対象と誤る。原則非課税
- 所得控除と税額控除の位置の混同。所得控除は税率適用前、税額控除は税額計算後に差し引く
- 課税方式の定義の入替え(源泉分離と申告分離の混同)。申告するか・源泉徴収で完結するかで区別
- 預貯金利子を総合課税・確定申告必要と誤る。原則として源泉分離課税
- 速算表の計算で速算控除額の差引きを忘れる
- 課税総所得金額の税率帯の判定誤り(境界値の見誤り)
- 復興特別所得税の税率を21%等と誤る。基準所得税額×2.1%
- 基準日より後の改正による将来の変更を、現行制度に混ぜて覚えてしまう
試験での出題のされ方
2024~2026年のCBT公表分(3セット)の観測では、EX-D-001(所得税の基本・課税方式)、EX-D-006(各種所得の計算)、EX-D-011(実技:所得税の計算)がいずれも3/3回観測、頻度Aです。所得税の基本・課税方式、各種所得計算、実技の所得税計算という能力枠が継続して観測されています。
一方、課税期間、速算表単独の税額計算、復興特別所得税の計算のPast_Exam_FrequencyはUNVERIFIEDです。UNVERIFIEDは当該Question_Slotへ過去問頻度を直接付与していない管理状態を示す表示であり、出題可能性の否定ではありません。いずれも公式試験範囲の基本論点として学習しておきましょう。
まとめ
- 個人の所得税は暦年(1月1日~12月31日)単位。納税地は原則住所地
- 所得=収入金額-必要経費等。身体の傷害等に基因する一定の保険金・給付金は原則非課税
- 計算の流れ:各所得→損益通算等→所得控除→課税所得→税率→税額控除等
- 課税方式:総合課税(合算・累進税率)/申告分離課税(分離・申告)/源泉分離課税(源泉徴収で完結)。預貯金利子は原則源泉分離
- 所得税額=課税総所得金額×税率-速算控除額(5~45%の7段階)
- 復興特別所得税=基準所得税額×2.1%(課税期間2013~2037年、基準日時点の現行)
練習のしかた
- 一問一答(TF)3問:課税期間(暦年)、身体傷害等に基因する保険給付金の非課税、預貯金利子の源泉分離課税
- 三答択一(MC3)1問:総合課税・申告分離課税・源泉分離課税の区別
- 計算問題(CALC)2問:速算表による所得税額、復興特別所得税額
- 実技事例(CASE)1問:総所得金額と所得控除の資料から所得税額を計算
05_Numbersの速算表を手元に置いて取り組んでください。
FP2級へのつながり
FP2級では、税額計算がより詳細に扱われます。FP3級の段階では、計算の流れ(順序)と課税方式の区別、速算表の正確な適用を身につけることが土台になります。この骨格が、D03以降の各種所得・所得控除・税額控除の学習を支えます。
関連する問題
- FP技能士3級 タックスプランニング 一問一答 第1問〜第5問
- FP技能士3級 タックスプランニング 択一式(初級) 第1問〜第5問
- FP技能士3級 タックスプランニング 計算問題 第1問〜第5問
- FP技能士3級 タックスプランニング 実技・事例問題 第1問〜第5問

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