学習のポイント
① 企業集団の中でお金が動いても、集団は儲かっていない
親会社と子会社が商品を売り買いすることがあります。親会社が子会社に800,000円を売れば、親会社の帳簿には売上800,000円が、子会社の帳簿には仕入800,000円が載ります。
しかし両社を1つの企業集団として見る連結財務諸表では、これは企業集団内部の取引です。企業集団の外部に対する売上ではないため、連結上は内部取引高を相殺します。
そこで連結修正仕訳で、この内部取引を消します。消し方は、増えたものと増えたものを打ち消し合わせるのではなく、売った側の売上と、買った側の売上原価を同額だけ減らすという形をとります。
② 消す対象は3つある
連結会社間の取引について、消す対象は次の3つです。
| 順 | 消す対象 | 何と何を消すか |
|---|---|---|
| 1 | 取引高 | 売上と売上原価 |
| 2 | 債権債務 | 売った側の債権と、買った側の債務 |
| 3 | 貸倒引当金 | 消した内部債権に対して設定されていた分 |
3つ目は少し性格が違います。1と2は企業集団内部の取引・債権債務を相殺する処理ですが、3は、連結上で消去した内部債権に対応する貸倒引当金を連結上に残さないための修正です。
③ 取引高の相殺
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売上 | 売上原価 |
売った側の売上を借方で減らし、買った側の売上原価を貸方で減らします。両方とも同額です。
④ 債権債務の相殺
期末に代金が未決済なら、売った側に債権が、買った側に債務が残っています。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 買掛金など(債務) | 売掛金など(債権) |
債務を借方で減らし、債権を貸方で減らします。相殺後、連結貸借対照表に内部の債権債務は残りません。
⑤ 貸倒引当金の修正
内部の債権に対して貸倒引当金が設定されていた場合、その債権を消したのですから、引当金も減らします。
貸倒引当金の修正額 = 消した内部債権の残高 × 設定率
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 貸倒引当金 | 貸倒引当金繰入 |
借方が貸倒引当金、貸方が貸倒引当金繰入です。引当金を設定したときの仕訳(借方 貸倒引当金繰入/貸方 貸倒引当金)と、ちょうど反対の向きになります。
掛ける相手は期末の内部債権残高です。内部売上高ではありません。内部売上高のうち期末に未決済で残っている分だけが債権になっているので、両者は別の金額です。
⑥ 売った側が子会社の場合
ここまでは親会社が売った場合を考えました。子会社が親会社に売った場合は、ひとつ違いが出ます。
貸倒引当金を設定していたのは、債権を持っている側、つまりこの場合は子会社です。その引当金を減らすと、子会社の利益がその分だけ増えます。
子会社の利益は、連結上、親会社の株主のものと、それ以外の株主のものに分かれます。したがって引当金の減額によって増えた利益も、非支配株主の分だけ按分されます。
非支配株主への影響額 = 引当金の減額分 × 非支配比率
たとえば引当金の減額が6,000円、非支配比率が20%なら、非支配株主への影響は6,000×20%=1,200円です。
反対に、親会社が売った場合は債権を持っているのが親会社なので、引当金を減らして増える利益は親会社のものです。この場合、非支配株主への按分は生じません。
⑦ 年度による違い
消す対象となる債権債務の種類は、年度によって変わります。
【2026年度】
連結会社間の債権債務には、売掛金と買掛金のほか、受取手形と支払手形も含まれます。手形も相殺の対象です。
順 借方 金額 貸方 金額 ① 取引高 売上 800,000 売上原価 800,000 ② 債権債務 買掛金 300,000 売掛金 300,000 ③ 債権債務 支払手形 200,000 受取手形 200,000 ④ 引当金 貸倒引当金 10,000 貸倒引当金繰入 10,000 内部債権の合計は300,000+200,000=500,000円、設定率2%なら引当金の修正額は10,000円です。
【2027年度】
出題範囲から手形が外れたため、連結会社間の債権債務は売掛金と買掛金、電子記録債権と電子記録債務などで扱います。考え方は変わりません。
順 借方 金額 貸方 金額 ① 取引高 売上 800,000 売上原価 800,000 ② 債権債務 買掛金 300,000 売掛金 300,000 ③ 債権債務 電子記録債務 200,000 電子記録債権 200,000 ④ 引当金 貸倒引当金 10,000 貸倒引当金繰入 10,000 内部債権の合計は300,000+200,000=500,000円、設定率2%なら引当金の修正額は10,000円です。
この例では、2026年度と2027年度で③の相殺に使う債権債務の勘定科目が異なります。取引高の相殺、内部債権債務の相殺、貸倒引当金修正という基本的な考え方と金額の求め方は共通です。
⑧ 算定の手順
- 内部売上高を確かめ、売上と売上原価を同額減らす
- 期末に残っている内部債権と内部債務を種類ごとに拾い、それぞれ相殺する
- 内部債権の合計に設定率を掛けて、貸倒引当金の修正額を出す
- 売った側が子会社なら、修正額に非支配比率を掛けて非支配株主への影響を出す
⑨ 検算とその限界
- 相殺したあと、内部の債権と債務が連結貸借対照表に残っていないか
- 売上と売上原価が同額だけ減っているか
- 引当金の修正額が「内部債権の合計×設定率」になっているか
ただし、これらの検算で見つからない誤りがあります。
ひとつは内部債権を1種類だけ拾ってしまう場合です。売掛金300,000円だけを見て手形や電子記録債権200,000円を見落とすと、引当金の修正額は300,000×2%=6,000円になります。この6,000円も「拾った債権×設定率」にはなっているので、3つ目の検算をすり抜けます。内部債権を漏れなく拾えているかは、期末残高の一覧に戻って確かめるほかありません。
もうひとつは持分比率と非支配比率の取り違えです。売った側が子会社のとき、引当金の減額6,000円に80%を掛けて4,800円としても、計算そのものは成立してしまいます。どちらが非支配株主の割合かを問題文で確かめる必要があります。
⑩ ここで扱わない範囲
- 連結会社間で売買した商品が期末に在庫として残っている場合の、上乗せ分の利益を消す処理
- 連結会社間で売買した固定資産について、売却によって生じた損益を消す処理
- 税金の影響を連結上で調整する処理
- 影響力はあるが支配はしていない会社への投資の処理
- 海外にある子会社の財務諸表を換算する処理
- 支配を獲得したあとに株式を買い足したり売ったりする場合の処理
これらは扱いません。ここでは取引高・債権債務・貸倒引当金の3つの相殺だけを考えます。