この単元で身につけること
このUnitでは、土地・建物を売却したときの譲渡所得を、基本計算から居住用財産の代表特例まで順番に整理します。
学習後には、譲渡価額から取得費・譲渡費用を差し引く基本式、譲渡した年の1月1日で判定する長期・短期、一般長期・短期の代表税率、取得費不明時の概算取得費5%、マイホームの3,000万円特別控除、10年超所有の軽減税率、買換え特例、相続空き家特例、相続税の取得費加算、一定の居住用財産の譲渡損失特例を判断できることを目標とします。
このUnitは税制上の特例が多い分野です。FP3級では「制度の存在・代表数値・基本的な効果」を優先し、親族間譲渡、耐震要件、詳細な併用関係、相続税の按分などFP2級相当の全要件へ広げません。
全体像
土地や建物の譲渡所得は、給与所得などと合計せず、他の所得と分離して課税するのが基本です。
最初に譲渡所得の金額を計算し、次に長期・短期を判定し、その後に適用できる特例があるかを確認します。
基本式は、
譲渡価額-(取得費+譲渡費用)
です。
居住用財産の3,000万円特別控除などを適用する場合は、その特別控除を差し引いて課税譲渡所得を求める場面があります。本UnitのS001は特例を使わない基本式だけ、S006は3,000万円控除の制度だけ、というようにSlotごとの主要目的を分離します。
長期・短期は「売却日から単純に5年間」とは判定しません。譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超えているかを確認します。5年超なら長期、5年以下なら短期です。
用語の説明
- 譲渡価額:土地・建物を売却して受け取る対価の基本額。
- 取得費:土地・建物を取得するために要した費用等。建物では減価償却費相当額を考慮する場合がある。
- 譲渡費用:土地・建物を売るために直接要した一定の費用。
- 分離課税:土地・建物の譲渡所得を給与所得等と分けて税額計算する方式。
- 長期譲渡所得:譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える土地・建物等の譲渡所得。
- 短期譲渡所得:同じ基準日で所有期間が5年以下の土地・建物等の譲渡所得。
- 概算取得費:取得費不明等の場合に、譲渡価額の5%相当額を取得費とする基本的な取扱い。
- 課税繰延べ:現在の譲渡益への課税を将来へ繰り延べること。免税とは異なる。
- 取得費加算:一定の相続財産を一定期間内に譲渡した場合に、相続税額の一定部分を取得費へ加算する特例。
基本ルール
土地・建物の譲渡所得
土地・建物を売却したときの基本的な譲渡所得は、
譲渡価額-取得費-譲渡費用
で求めます。
例えば譲渡価額5,500万円、取得費3,000万円、譲渡費用300万円なら、特別控除前の譲渡所得は2,200万円です。
土地・建物の譲渡所得は、他の所得と分けて課税する分離課税が基本です。
長期・短期の判定
長期譲渡所得は、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える場合です。
短期譲渡所得は、同じ時点で所有期間が5年以下の場合です。
したがって、5年ちょうどは「5年超」ではなく短期側になります。実際の取得日と譲渡日だけを見て、1月1日基準を飛ばさないようにします。
一般長期・短期の代表税率
一般長期譲渡所得の基本構成は、
- 所得税:15%
- 住民税:5%
- 復興特別所得税相当を加味した教材上の実質合計率:20.315%
です。
一般短期譲渡所得は、
- 所得税:30%
- 住民税:9%
- 教材上の実質合計率:39.63%
です。
FP3級では、20.315%と39.63%を長期・短期で取り違えないことが重要です。復興特別所得税の細かな端数処理は本Unitの目的ではありません。
概算取得費5%
実際の取得費が分からない場合等には、譲渡価額の5%相当額を取得費とすることができます。
譲渡価額4,000万円なら、
4,000万円×5%=200万円
です。
この5%は税率ではなく「取得費として扱う金額を求める割合」です。
居住用財産3,000万円特別控除
一定のマイホームを売却した場合、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。
「10年以上所有していなければ3,000万円控除を使えない」という制度ではありません。10年超所有は別の軽減税率特例の論点です。
本Unitでは3,000万円という上限と所有期間不問という基本を扱い、親族間譲渡等の全適用要件は扱いません。
10年超所有の軽減税率
一定の居住用財産を売却し、所有期間が10年を超えるなどの要件を満たす場合、課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分について、所得税10%、住民税4%という軽減税率が基本となります。
S007では、復興特別所得税の詳細計算を除外し、固定Ruleの構成税率10%と4%を合計した14%を確認します。
「一般長期20.315%」と「10年超所有軽減の基本構成10%+4%」は別の制度として整理します。
特定マイホームの買換え特例
一定のマイホームを買い換えた場合、譲渡益への課税を将来へ繰り延べる特例があります。
これは譲渡益が完全に非課税・免税になる制度という意味ではありません。将来、新たに取得した資産を譲渡する場面などで課税関係がつながります。
FP3級では「買換え=課税繰延べ、免税ではない」という位置づけを押さえます。
被相続人居住用財産の空き家特例
相続等で取得した一定の被相続人居住用家屋・敷地等を、2027年12月31日までに譲渡して要件を満たす場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。
ただし、2024年1月1日以後の譲渡で、対象となる家屋・敷地等を相続・遺贈により取得した相続人の数が3人以上の場合は、最高2,000万円です。
通常のマイホーム3,000万円控除と、被相続人居住用財産の空き家特例は、対象となる財産・場面が異なります。
相続税の取得費加算
相続等で取得し相続税が課された財産を一定期間内に譲渡した場合、相続税額の一定部分をその財産の取得費に加算できる特例があります。
本Unitでは具体的な按分計算や申告期限からの詳細日数計算には広げず、「一定期間内の譲渡」「相続税の一部を取得費へ加算」という基本を確認します。
居住用財産の譲渡損失
土地・建物の譲渡損失は、原則として給与所得等との損益通算が自由にできるわけではありません。
ただし、一定のマイホームの譲渡損失については、損益通算・繰越控除の特例があります。
本Unitでは制度の存在だけを確認し、住宅ローン残高、所得制限、買換えの有無などの全要件は扱いません。D04「損益通算」と接続して理解します。
特例を使う順序
不動産譲渡税制では、最初から特例名だけを探すのではなく、まず通常の譲渡所得を計算し、長期・短期を判定したうえで、居住用財産・相続財産・譲渡損失などの条件に応じて特例の有無を確認します。
この順序を守ると、「3,000万円控除を使う前の譲渡所得はいくらか」「一般長期税率なのか、10年超所有の軽減税率なのか」「買換えは免税なのか繰延べなのか」といった論点を混同しにくくなります。
特例は有利な制度であっても、自動的にすべて適用されるわけではありません。本Unitでは固定Ruleにない詳細要件や併用可否を推測せず、問題文で適用前提が明示された範囲だけを使います。
重要な数字
| 項目 | 基本 |
|---|---|
| 長期判定 | 譲渡年1月1日で5年超 |
| 短期判定 | 譲渡年1月1日で5年以下 |
| 一般長期・所得税 | 15% |
| 一般長期・住民税 | 5% |
| 一般長期・教材上の実質合計率 | 20.315% |
| 一般短期・所得税 | 30% |
| 一般短期・住民税 | 9% |
| 一般短期・教材上の実質合計率 | 39.63% |
| 概算取得費 | 譲渡価額の5% |
| 居住用財産特別控除 | 最高3,000万円 |
| 10年超所有軽減税率の境界 | 課税長期譲渡所得6,000万円以下部分 |
| 同・所得税 | 10% |
| 同・住民税 | 4% |
| 空き家特例の原則上限 | 3,000万円 |
| 相続人3人以上の場合 | 2,000万円 |
| 空き家特例の期限 | 2027年12月31日 |
似た「3,000万円」が複数登場しますが、通常の居住用財産と被相続人居住用財産では対象場面を分けます。
具体例
基本譲渡所得
譲渡価額4,600万円、取得費2,700万円、譲渡費用100万円で、特例を考慮しない場合、
4,600万円-2,700万円-100万円=1,800万円
が基本的な譲渡所得です。
長期・短期
譲渡年1月1日時点で所有期間が5年8か月なら長期です。
同じ時点で5年ちょうどなら5年超ではないため短期です。
概算取得費
取得費不明で譲渡価額3,200万円なら、
3,200万円×5%=160万円
を概算取得費とする基本があります。
居住用特例
一定のマイホーム売却で譲渡所得2,500万円、3,000万円特別控除を適用できる前提なら、控除上限の範囲内で課税譲渡所得が0円となる例があります。
これは3,000万円控除の効果を示す単純例であり、他の特例との併用可否や全適用要件まで示すものではありません。
計算のしかた
E05では計算Slotが4つあります。
S001 基本式
譲渡価額から取得費と譲渡費用だけを差し引きます。特例を勝手に追加しません。
S003 一般長期の実質合計率
所得税15%に対する復興特別所得税相当は、
15%×2.1%=0.315%
です。
これに住民税5%を加えると、
15%+0.315%+5%=20.315%
となります。
S005 概算取得費
取得費不明等という前提を確認し、
譲渡価額×5%
で求めます。
S007 10年超所有軽減
問題文で「課税長期譲渡所得6,000万円以下部分」「復興特別所得税の詳細計算を考慮しない」と明示した場合、
所得税10%+住民税4%=14%
という基本構成を計算します。
税額計算なのか税率計算なのかを最初に確認し、問題文にない特例や税率を追加しません。
よくある間違い
- 土地建物の譲渡所得を給与所得と同じ総合課税だと考える。
- 譲渡価額から取得費だけを引き、譲渡費用を忘れる。
- 売却日から単純に5年経過したかだけで長期・短期を判定する。
- 5年ちょうどを5年超とする。
- 長期20.315%と短期39.63%を逆にする。
- 概算取得費5%を税率だと考える。
- 3,000万円特別控除には10年超所有が必須だと考える。
- 買換え特例を永久免税と考える。
- 空き家特例で相続人3人以上の場合も常に3,000万円とする。
- 取得費加算で相続税全額が必ず取得費になると考える。
- 不動産譲渡損失はすべて無条件で給与所得と損益通算できると考える。
- 特例同士が名称上似ているだけで自由に併用できると決めつける。
試験での出題のされ方
E05では、S002・S005・S010がEX-E-009、S006・S008・S009がEX-E-010に接続します。
EX-E-009「不動産譲渡所得」とEX-E-010「居住用財産の税制特例」は、いずれも2024~2026 CBT公表分で3/3、Frequency_Rate 100、Past_Exam_Frequency Aとして管理されています。
S001・S003・S004・S007・S011はUNVERIFIEDです。UNVERIFIEDは、当該Question_Slotへ過去問頻度を直接付与していない管理状態であり、出題なし・低頻度を意味しません。
EX-E-009・EX-E-010の3/3・100は能力枠全体の観測値です。長期20.315%、概算取得費5%、3,000万円控除、買換え、空き家、取得費加算といった各サブ論点が、それぞれ毎回出題されたという意味へ読み替えません。
過去問分析は出題能力の抽象化に利用し、公式問題の人物名・金額・選択肢・文章を再現しません。
まとめ
- 土地建物の譲渡所得は譲渡価額-取得費-譲渡費用で計算し、分離課税が基本。
- 譲渡年1月1日時点で5年超なら長期、5年以下なら短期。
- 一般長期の教材上の実質合計率は20.315%、一般短期は39.63%。
- 取得費不明等では譲渡価額の5%を概算取得費とできる。
- 一定のマイホームは所有期間に関係なく最高3,000万円特別控除。
- 一定の10年超所有マイホームでは6,000万円以下部分に所得税10%・住民税4%の軽減。
- 特定マイホーム買換え特例は課税繰延べであり免税ではない。
- 被相続人居住用財産の空き家特例は原則最高3,000万円、相続人3人以上は2,000万円、期限は2027年12月31日。
- 一定期間内の相続財産譲渡では相続税の一部を取得費へ加算できる特例がある。
- 一定のマイホーム譲渡損失には損益通算・繰越控除の特例がある。
練習のしかた
- 譲渡価額5,000万円、取得費3,100万円、譲渡費用200万円の基本譲渡所得を計算する。
- 譲渡年1月1日時点で所有期間5年ちょうどの場合、長期か短期か答える。
- 一般長期20.315%の構成を説明する。
- 一般短期の教材上の実質合計率を答える。
- 譲渡価額4,000万円で取得費不明の場合の概算取得費を求める。
- 3,000万円特別控除に所有期間の長短が必要か答える。
- 10年超所有軽減税率の6,000万円以下部分の所得税率・住民税率を答える。
- 買換え特例が免税か課税繰延べか答える。
- 空き家特例で相続人が3人以上の場合の最高控除額を答える。
- 相続税取得費加算の基本効果を説明する。
- 居住用財産の譲渡損失特例の存在を説明する。
FP2級へのつながり
FP2級では、居住用財産特例の詳細な適用要件、特例相互の併用可否、10年超軽減税率の6,000万円超部分、復興特別所得税を含む税額計算、買換資産・譲渡資産の要件、空き家特例の耐震・取壊し要件、相続税取得費加算の具体的按分などを詳しく扱います。
FP3級では、まず「基本譲渡所得→長短判定→代表税率→適用可能な特例の位置づけ」という順序を確実に身につけます。
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