この単元の標語:償却する金額を、使う期間に分けて費用にする。
① このページで学ぶこと
- 固定資産の取得原価を使用期間にわたって費用配分する理由がわかる
- 定額法の計算式を使い、残存価額の条件に応じて減価償却費を求められる
- 間接法という記帳方法と、減価償却累計額勘定の役割を説明できる
- 期中に取得した資産の月割計算ができる
- 帳簿価額(取得原価 − 累計額)という、次単元以降の鍵になる金額を求められる
② 基礎概念
減価償却とは
減価償却とは、固定資産の取得原価のうち償却対象となる金額を、その使用期間にわたって規則的に費用として配分する手続です。計上する費用の科目は減価償却費といいます。
C07-T01 で「長く使うものの代金は、買った年に全額費用にせず、使う期間に分けて費用化する」と学びました。減価償却は、その「分けて費用化する」を実行する仕組みそのものです。
建物や備品は使っているうちに古くなっていきます——このイメージから入ると理解しやすいのですが、簿記が行っているのは資産の値打ちを毎年測り直すことではありません。取得原価のうち償却対象となる金額を、使う期間に割り振る手続です。
この違いは、このあと学ぶ間接法の意味を理解するうえで効いてきます。
計算に使う3つの要素
| 要素 | 意味 |
|---|---|
| 取得原価 | C07-T01 で学んだ、購入代価 + 付随費用 |
| 耐用年数 | その資産を使える見込みの年数 |
| 残存価額 | 使い終わったときに残る見込みの価値 |
土地は減価償却しない
有形固定資産のうち、土地は減価償却の対象外です。
建物や備品には「何年使えるか」という耐用年数がありますが、土地には使用によって尽きる期間がありません。したがって、取得原価を使用期間にわたって規則的に配分するという減価償却の考え方が当てはまりません。土地は建物や備品のように、使用期間にわたって取得原価を規則的に費用配分する減価償却の対象としない——これが正確な言い方です。
なお、これは土地の市場価格が変動しないという意味ではありません。②で見たとおり減価償却は値打ちを測り直す手続きではないので、市場価格の上下とは別の話です。
第3問の決算整理で「建物・備品・土地」が並んでいても、償却するのは建物と備品だけ。土地を混ぜて計算しないよう注意してください。
減価償却累計額とは
減価償却費の相手勘定は、備品などの資産を直接減らすのではなく、減価償却累計額という別の勘定の貸方に積んでいきます。この方法を間接法といい、3級の記帳はこの方法によります。
累計額の勘定科目は、建物減価償却累計額・備品減価償却累計額・車両運搬具減価償却累計額のように資産名を冠した科目を使います。
③ 仕組み・理由
定額法の計算式
3級の基本となる定額法は、償却対象額を耐用年数にわたって均等に配分する方法です。1年を通じて使用する年度の年額は同額になります。
減価償却費(年額)=(取得原価 − 残存価額)÷ 耐用年数
この教材では、残存価額の条件として主に次のパターンを扱います。
| 指定 | 計算 |
|---|---|
| 残存価額ゼロ | 取得原価をそのまま耐用年数で割る |
| 残存価額は取得原価の10% | 取得原価の90%を耐用年数で割る |
どちらで計算するかは問題文の指定に従います。 計算式に入る前に、残存価額の条件を先に確認してください。
なぜ間接法で記帳するのか
なぜ、資産を直接減らさずに別勘定へ積むという回りくどいことをするのでしょうか。
それは、取得原価の情報を帳簿に残しておきたいからです。
資産を直接減らすと「もともといくらで買ったのか」が帳簿から見えなくなります。間接法なら、
帳簿価額 = 取得原価 − 減価償却累計額
という形で、「いくらで取得して(取得原価)、これまでにいくら費用配分して(累計額)、帳簿上いくら残っているか(帳簿価額)」の3つを区別して読み取れます。
この構造は、C06 で学んだ貸倒引当金と、資産から控除して表示する評価勘定という点で共通しています。こうした資産の控除項目は、貸方で増えていきます。
そして次単元以降の売却(C07-T05)や、2027年度版の除却(C07-T06)では、取得原価と累計額の両方を使います。間接法で情報を残しているからこそ、その計算ができるのです。
なお、固定資産の除却・廃棄は2027年度から3級の範囲に加わる論点です(C07-T06)。2026年度に受験する方は、売却(C07-T05)までを押さえれば十分です。
決算整理前の累計額と、当期の減価償却費は別もの
決算整理を行うとき、決算整理前残高試算表にはすでに減価償却累計額の残高が載っています。これは前期までに積み上がった累計であって、当期の費用ではありません。
当期の決算整理で計上するのは、当期1年分(または月割分)の減価償却費だけです。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| 決算整理前の累計額 | 前期末までの累計。当期の費用ではない |
| 当期の減価償却費 | 当期分だけ。損益計算書に載る |
| 決算整理後の累計額 | 前期末までの累計 + 当期分 |
試算表に載っている累計額を、そのまま当期の費用と取り違えないようにします。当期分は問題の条件から計算するのが基本です。
④ 基本例
例1 備品(残存価額ゼロ・1年分)
決算(×2年3月31日)につき、当期首に取得した備品(取得原価 ¥600,000、耐用年数5年、残存価額ゼロ)について、定額法により減価償却を行う。記帳は間接法による。
600,000 ÷ 5年 = ¥120,000
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 120,000 | 備品減価償却累計額 | 120,000 |
例2 建物(残存価額が取得原価の10%)
決算につき、店舗建物(取得原価 ¥3,000,000、耐用年数30年、残存価額は取得原価の10%)について、定額法により減価償却を行う。
まず残存価額を求めます。3,000,000 × 10% = ¥300,000。
(3,000,000 − 300,000)÷ 30年 = ¥90,000
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 90,000 | 建物減価償却累計額 | 90,000 |
残存価額を引き忘れると ¥100,000 になってしまいます。引いてから割る、の順序を守ってください。
例3 車両運搬具(期中取得・月割)
決算(×2年3月31日)につき、×1年10月1日に取得した営業用トラック(取得原価 ¥1,200,000、耐用年数6年、残存価額ゼロ)について、定額法により月割で減価償却を行う。
使ったのは10月〜3月の6か月です。
1,200,000 ÷ 6年 = 200,000(年額) → 200,000 × 6/12 = ¥100,000
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 100,000 | 車両運搬具減価償却累計額 | 100,000 |
⑤ 仕訳例:思考の手順つき
例3(期中取得・月割)を、手順に分けて組み立てます。
- 取引を読む:期中取得の車両運搬具を、定額法・間接法で減価償却する決算整理。
- 残存価額の条件を確認する:残存価額ゼロ。取得原価をそのまま割る。
- 年額を計算する:1,200,000 ÷ 6年 = ¥200,000
- 使用月数を数える:10月・11月・12月・1月・2月・3月 → 6か月
- 月割する:200,000 × 6/12 = ¥100,000
- 勘定科目を決める:費用は減価償却費。相手勘定は間接法なので車両運搬具減価償却累計額。
- 5要素と貸借を確認する:減価償却費は費用の発生 → 借方。累計額は資産のマイナスの増加 → 貸方。
手順4の月数の数え方には注意が必要です。「引き算で 3 − 10 = …」と考えると混乱します。指を折って1か月ずつ数えるくらい慎重で構いません。 1か月ずれると答えは確実に不正解になります。
この仕訳を毎期繰り返すと、累計額は 100,000 → 300,000 → 500,000… と積み上がり(2年目からは年額 200,000 ずつ)、帳簿価額はその分ずつ減っていきます。
⑥ 主な間違いやすいポイント
1.貸方を備品などの資産にしてしまう
間接法では、資産そのものは動かしません。貸方は資産名を冠した減価償却累計額です。
資産を直接減らすと取得原価の情報が消え、次単元の売却計算(取得原価と累計額を両方使います)で行き詰まります。「資産は買値のまま、減りは累計額に集める」と覚えましょう。
2.月割の月数を数え間違える
期中取得の月割では、取得月から決算月までを数えます。10月1日取得・3月31日決算なら、10・11・12・1・2・3 の6か月です。
取得年度に月割した資産でも、その後1年間を通じて保有・使用する年度は、原則として1年分(年額)を計上します。 取得年度の月割額を毎年繰り返すわけではありません。
ただし、月割が必要になるのは取得年度だけとは限りません。 期中に売却した年度も、期首から処分日までの月数で月割します(C07-T05)。2027年度版では、期中に除却した場合の月割もC07-T06で扱います。 「保有・使用した期間に応じて償却する」と整理してください。
3.残存価額の扱いを問題文で確認しない
残存価額ゼロの問題に慣れていると、「取得原価の10%」の条件を読み飛ばして過大に償却してしまいます。逆に、ゼロ指定なのに10%を引いてしまう誤りもあります。
さらに、決算整理前残高試算表の累計額をそのまま当期の費用にしてしまう誤りにも注意してください(③参照)。当期分は自分で計算します。
⑦ 試験での問われ方
減価償却は、仕訳・勘定記入・決算総合など複数の形式で確認できる論点です。
第1問(仕訳問題)
仕訳形式では、「決算につき、備品について定額法により減価償却を行う」といった条件から、取得原価・耐用年数・残存価額・取得時期を読み取り、自分で計算して仕訳を書く形があります。
第2問(勘定記入)
勘定記入形式では、減価償却累計額勘定の前期繰越・当期繰入・次期繰越の流れを確認する問題があります。前期繰越が決算整理前の累計額、当期繰入が当期の減価償却費、次期繰越が決算整理後の累計額に対応します。③で整理した3つの金額の区別が解答の骨格になります。
第3問(決算総合問題)
決算総合形式では、「建物・備品について定額法により減価償却を行う(期中取得の備品は月割計算)」のように、複数資産と月割を組み合わせて処理する問題があります。土地が資料に含まれている場合は、減価償却の対象から外します。
精算表では、減価償却費が損益計算書欄へ、減価償却累計額が貸借対照表欄へ振り分けられます。
C07-T01 の取得原価 → 本単元の償却 → C07-T05 の売却、という数字のリレーを意識して練習しましょう。
⑧ まとめ
| 場面 | 計算 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|---|
| 1年を通じて保有・使用した年度 | (取得原価 − 残存価額)÷ 耐用年数 | 減価償却費 | ◯◯減価償却累計額 |
| 期中に取得した年度(月割) | 年額 × 使用月数 ÷ 12 | 減価償却費 | ◯◯減価償却累計額 |
| 期中に売却した年度(月割) | 年額 × 期首から処分日までの月数 ÷ 12 | 減価償却費 | ◯◯減価償却累計額 |
| 期中に除却した年度(月割)【2027年度版】 | 年額 × 期首から処分日までの月数 ÷ 12 | 減価償却費 | ◯◯減価償却累計額 |
- 取得年度に月割した資産でも、1年を通じて保有・使用する年度は年額を計上する(月割額を毎年繰り返さない)
- 帳簿価額 = 取得原価 − 減価償却累計額(売却の計算の土台。除却は2027年度版)
- 土地は、使用期間にわたって取得原価を規則的に費用配分する減価償却の対象としない
⑨ 関連問題への導線
- 一問一答:C07-T03「減価償却の基本」(全12問)
- 仕訳問題:C07-T03「減価償却の基本」(全11問・初級3問/標準5問/応用3問)
- 計算・応用問題:C07-T03「減価償却の基本」(全9問)
- 前のテキスト:C07-T02「修繕と改良(収益的支出・資本的支出)」
- 次のテキスト:C07-T04「減価償却の定率法」【定率法の基本は2027年度から3級範囲】
C07-T05「固定資産の売却」では、本単元で求めた帳簿価額が主役になります。C07-T06「固定資産の除却・廃棄」も同じ帳簿価額を使いますが、こちらは2027年度から3級の範囲に加わる論点です。
⑩ 2級への接続
2級への学習接続では、定率法の応用(保証率・改定償却率を用いる200%定率法)や、生産高比例法など、3級の定額法から発展する減価償却方法を扱います。
なお、期中に売却した資産の月割償却は3級の範囲です(C07-T05)。2級で新しく学ぶ内容ではありません。
どの方法でも「取得原価を使用期間に配分する」という考え方と、帳簿価額 = 取得原価 − 累計額の構造は共通です。

コメント