有形固定資産の取得と付随費用|取得原価・未払金の考え方

この単元の判断軸:取得原価は、購入代価と取得に直接要した付随費用をもとに決める。


① このページで学ぶこと

  • 有形固定資産がどのような資産か説明できる
  • 建物・備品・車両運搬具・土地を使い分けられる
  • 購入代価と付随費用から取得原価を計算できる
  • 固定資産を後払いで取得したときに未払金を使える
  • 付随費用と、同時に購入した別の物品・費用を区別できる

② 基礎概念

有形固定資産とは

有形固定資産とは、会社が営業活動などのために長期間使用する、形のある資産です。

3級では、主に次の科目を使います。

科目
建物 店舗、事務所、倉庫
備品 パソコン、机、棚
車両運搬具 営業車、トラック
土地 店舗や倉庫の敷地

同じ物でも、保有する目的によって科目が変わることがあります。たとえば、自社の事務所で長く使う机は備品ですが、販売目的で仕入れた商品なら仕入として処理します。

取得原価とは

固定資産を取得したときに帳簿へ記録する金額を考える基本式は、次のとおりです。

取得原価 = 購入代価 + 取得に直接要した付随費用

本教材で扱う基本例では、次のような支出が付随費用として示されます。

  • 備品:運送費、据付費
  • 建物:取得に直接要した仲介手数料、登記費用
  • 土地:取得に直接要した整地費用、登記費用

問題文で「取得に直接要した付随費用」として示された金額は、独立した費用にせず、対象となる固定資産の取得原価に含めます。


③ 仕組み・理由

固定資産の取得では、支出の名前だけで科目を決めないことが大切です。

たとえば「仲介手数料」という名称だけを見ると支払手数料を使いたくなります。しかし、建物の取得に直接要した仲介手数料として問題文に示されているなら、その金額は建物の取得原価に含めます。

一方、固定資産と同じ日に購入したからといって、すべての支出を固定資産へまとめるわけではありません。たとえば、パソコンと文房具を同時に購入し、問題文で文房具を消耗品費として処理すると指定されているなら、パソコンは備品、文房具は消耗品費として分けます。

判断するときは、

  1. 何を取得したのか
  2. その支出は取得に直接要した付随費用か
  3. それとも別の独立した支出か

の順に確認します。


④ 基本例

例1:備品と付随費用

業務用パソコン一式を480,000円で購入し、引取運賃8,000円、据付費12,000円とともに普通預金から支払った。

取得原価は、

480,000+8,000+12,000=500,000円

です。

借方科目 金額 貸方科目 金額
備品 500,000 普通預金 500,000

例2:固定資産の後払い

営業用トラック1,800,000円を購入し、代金を月末に支払うこととした。

借方科目 金額 貸方科目 金額
車両運搬具 1,800,000 未払金 1,800,000

固定資産は商品仕入ではないため、本教材の基本ケースでは後払代金を未払金で処理します。

例3:土地の取得原価

土地3,500,000円を購入し、取得に直接要した整地費用180,000円と登記費用120,000円を含む全額を普通預金から支払った。

3,500,000+180,000+120,000=3,800,000円

借方科目 金額 貸方科目 金額
土地 3,800,000 普通預金 3,800,000

なお、3級で扱う土地は減価償却しません。減価償却の詳しい判断はC07-T03で扱います。


⑤ 仕訳例:思考の手順

次の取引を考えます。

店舗用の建物を2,400,000円で購入し、購入代価は月末払いとした。取得に直接要した仲介手数料120,000円は現金で支払った。

手順1:取得した資産を決める 店舗用の建築物なので建物です。

手順2:取得原価を計算する 2,400,000+120,000=2,520,000円

手順3:決済方法を分ける 購入代価2,400,000円は後払いなので未払金、仲介手数料120,000円は現金払いです。

手順4:借方と貸方を確認する 建物は資産の増加なので借方。未払金は負債の増加なので貸方。現金は資産の減少なので貸方です。

借方科目 金額 貸方科目 金額
建物 2,520,000 未払金 2,400,000
現金 120,000

借方2,520,000円=貸方2,520,000円となります。


⑥ 主な間違いやすいポイント

1.付随費用を名称だけで費用処理する

仲介手数料、登記費用、運送費、据付費という名称だけで判断しません。問題文で固定資産の取得に直接要した付随費用として示されているかを確認します。

2.固定資産の後払いを買掛金にする

買掛金は商品を掛けで仕入れた代金に使います。固定資産など商品以外の購入代金が未払いなら、本教材の基本ケースでは未払金を使います。

3.同時に支払った金額を全部取得原価へ入れる

同じ日に支払ったかどうかではなく、その固定資産の取得に直接要した支出かを確認します。独立した文房具などは、問題文の条件に応じて別科目で処理します。


⑦ 問題を解くときの確認順序

当サイトの演習では、次の順序で読むと整理しやすくなります。

  1. 建物・備品・車両運搬具・土地のどれを取得したか確認する
  2. 購入代価を確認する
  3. 取得に直接要した付随費用を拾う
  4. 取得原価を計算する
  5. 現金・普通預金・未払金など決済方法を確認する
  6. 付随費用ではない独立した支出が混ざっていないか確認する
  7. 最後に借方合計と貸方合計を照合する

⑧ まとめ

場面 基本処理
固定資産を取得 建物・備品・車両運搬具・土地などを借方へ
取得に直接要した付随費用 対象固定資産の取得原価へ含める
現金・預金で支払う 現金・普通預金などを貸方へ
固定資産代金を後払い 未払金を貸方へ
同時購入した別の物品 付随費用か独立した支出かを条件から判断

取得原価の中心式は、

購入代価+取得に直接要した付随費用

です。


⑨ 関連問題への導線

  • 一問一答10問:固定資産の定義、科目、取得原価、未払金を確認
  • 仕訳問題8問:基本取得、付随費用、後払い、決済分割、共通付随費用の配分を練習
  • 計算問題5問:購入代価と付随費用から取得原価を算定
  • 次の単元:C07-T02「修繕と改良」

⑩ 2級への接続

2級では、固定資産の取得に関する扱いを、より多様な取引へ広げて学びます。

3級で身につけるべき土台は、取得した資産を正しく特定し、購入代価と取得に直接要した付随費用を区別して取得原価を決めることです。この判断を安定させておくと、固定資産の発展論点へ進みやすくなります。


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