試算表の基本|合計試算表・残高試算表・合計残高試算表の違い

① このページで学ぶこと

このページでは、総勘定元帳の記録を1枚の表にまとめた試算表を学びます。

  • 試算表とは何か、なぜ作るのか
  • 元帳と試算表の関係
  • 合計試算表・残高試算表・合計残高試算表の3種類の違い
  • 借方残高・貸方残高の判定
  • 試算表で発見できる誤り/できない誤り
  • 決算手続への接続

C02-T04では「借方合計=貸方合計」という貸借平均の原理を学びました。この原理を、実際に各勘定を集計する場面で使えるようにしたものが試算表です。


② 試算表とは

試算表とは、総勘定元帳にあるすべての勘定の金額を、1枚の表に集めた一覧表です。

簿記の記録は、次の順に進みます。

取引 → 仕訳 → 総勘定元帳への転記 → 試算表

元帳は勘定科目ごとにページが分かれているため、そのままでは会社全体の状況をつかみにくく、記録が正しいかどうかも確かめにくいという事情があります。そこで、期末や月末などの区切りで全勘定を1枚に集め、記録の状態をまとめて確認するのが試算表です。


③ なぜ試算表を作るのか

試算表を作る目的は、大きく2つあります。

1.記帳の点検

各勘定を集計して、借方の合計と貸方の合計が一致するかを確かめます。一致しなければ、仕訳・記帳・転記・集計のどこかに誤りがある可能性を疑い、記録をたどって確認します。

2.決算の出発点

期末に作成した試算表は、その後の決算手続の土台になります。ここで整理した各勘定の残高から、決算整理へ進みます。


④ 3種類の試算表

試算表には3種類あり、各勘定から何を写すかが違います。

種類 各勘定から写すもの
合計試算表 借方合計と貸方合計(両方をそのまま)
残高試算表 借方合計と貸方合計の差額(残高)だけ
合計残高試算表 合計と残高の両方

1つの勘定で違いを見てみましょう。現金勘定の借方合計が ¥300,000、貸方合計が ¥180,000 だったとします。

試算表の種類 現金勘定の記載
合計試算表 借方 300,000円 貸方 180,000円 の両方(総額のまま)
残高試算表 借方 120,000円 だけ(差額)
合計残高試算表 合計欄に 300,000円・180,000円、残高欄に 120,000円

合計試算表は相殺しない総額、残高試算表は差し引いた後の純額です。残高試算表に借方合計と貸方合計の両方を書くことはありません。

なお、正しく作成されていれば、どの種類の試算表でも表全体の借方合計と貸方合計は一致します。


⑤ 借方残高と貸方残高の判定

残高がどちら側に生じるかは、次のように判定します。

  • 借方合計 > 貸方合計 → その差額が 借方残高
  • 貸方合計 > 借方合計 → その差額が 貸方残高

多くの勘定では、5要素の定位置(ホームポジション)と一致します。

5要素 定位置 主な勘定科目
資産・費用 借方 現金・普通預金・売掛金・仕入・給料・支払家賃
負債・純資産・収益 貸方 買掛金・借入金・資本金・繰越利益剰余金・売上

たとえば仕入は「代金を支払うもの」という印象から貸方と考えてしまいがちですが、仕入は費用なので借方残高です。

ただし、科目の種類だけで決めつけるのは危険です。試算表を作るときは、与えられた合計額から実際に差額を計算し、どちら側に残高が生じているかを確認します。定位置は最終確認の目安として使いましょう。


⑥ 作成例|残高試算表を作る

青森商事株式会社の×3年3月31日(決算整理前)の各勘定残高が次のとおりだったとします。

現金 ¥120,000(借方)/売掛金 ¥180,000(借方)/買掛金 ¥90,000(貸方)/資本金 ¥100,000(貸方)/繰越利益剰余金 ¥30,000(貸方)/売上 ¥250,000(貸方)/仕入 ¥150,000(借方)/給料 ¥20,000(借方)

手順1:各勘定の残高を、生じている側へ配置します。

手順2:縦に合計し、借方と貸方が一致するかを確認します。

借方残高 勘定科目 貸方残高
120,000 現金
180,000 売掛金
買掛金 90,000
資本金 100,000
繰越利益剰余金 30,000
売上 250,000
150,000 仕入
20,000 給料
470,000 合計 470,000

借方合計 120,000+180,000+150,000+20,000 = 470,000円 貸方合計 90,000+100,000+30,000+250,000 = 470,000円

一致しました。ここまでが試算表の作成です。


⑦ 試算表で発見できる誤り

貸借の合計が一致しないとき、片側だけが狂うタイプの誤りが起きている可能性があります。

  • 転記するときに、借方または貸方の一方だけ金額を間違えた
  • 一方の勘定への転記を漏らした
  • 貸方残高であるべき科目を、誤って借方に記載した
  • 集計(縦計)を誤った

このように、試算表は記帳・転記・集計の誤りに気づくための検算として役立ちます。


⑧ 試算表だけでは発見できない誤り

一方で、貸借が一致していても、記録が正しいとは限りません

貸借平均の原理が保証しているのは「借方と貸方が同額ずつ動いた」ことだけです。次のような誤りは、貸借がそろったまま紛れ込むため、試算表では発見できません。

誤りの種類 試算表で発見できるか
片側だけ金額を間違えた できる(合計が食い違う)
一方の勘定への転記漏れ できる
貸方残高を借方に記載した できる
同じ金額のまま、誤った勘定科目へ記帳した できない
取引そのものを仕訳し忘れた(両側とも欠ける) できない
同じ仕訳を二重に記録した(両側とも二重) できない

試算表は万能の検査ではなく、一次的な点検と考えてください。だからこそ、この後の決算整理や補助簿との突合が意味を持ちます。

なお、誤りを見つけた後にどう訂正するか(訂正仕訳の作り方)はC16-T01で扱います。


⑨ 貸借が一致しないときの調べ方

合計が一致しなかった場合、差額から原因の見当をつけられることがあります。誤りが1か所だけと考えてよい場合の目安は次のとおりです。

  • 差額が、ある金額のちょうど2倍 → その金額を反対側に記載した可能性
  • 差額がそのままある金額と一致 → その金額を片側だけ記入し忘れた可能性

たとえば借方合計が貸方合計より 60,000円 多いとき、30,000円 の貸方残高を誤って借方に書いていれば、借方が 30,000円 増え貸方が 30,000円 減るため、差は 60,000円 になります。

ただしこれは決定則ではなく、まず疑ってみるための目安です。誤りが複数あれば差額はこのようにきれいには現れません。最終的には記録をたどって確認します。


⑩ 決算への接続

期末に作成した試算表は、決算手続の出発点になります。

元帳 → 試算表 → 決算整理 → 財務諸表

決算整理を行う前の状態でまとめた残高試算表を、決算整理前残高試算表と呼びます。この後、決算整理仕訳を加えて精算表や財務諸表へ進みますが、決算整理・精算表・財務諸表の具体的な作り方は後続の単元で扱います。

この単元では、その出発点となる試算表を正確に作れることを目標にします。


⑪ 主な間違いやすいポイント

1.「合計」と「残高」を混同する

合計は相殺しない総額、残高は差し引いた後の純額です。問題文がどちらを求めているかを最初に確認します。表全体で見ると、合計試算表の縦計は残高試算表の縦計と同額か、それ以上になります。両側に記入がある勘定が1つでもあれば、合計試算表の縦計のほうが大きくなります。

2.科目の種類だけで残高の側を決めつける

「資産だから必ず借方」と機械的に判断せず、与えられた合計額から差額を計算して側を確かめます。

3.貸借が一致すれば完全に正しいと思い込む

⑧のとおり、科目の取り違え・記帳漏れ・二重記録は貸借が一致したままです。

4.差額から原因を決めつける

⑨の目安は、誤りが1か所と考えてよい場合の手がかりにすぎません。


⑫ この単元と他の単元の境界

  • 借方合計=貸方合計という原理そのもの、なぜ一致するのか → C02-T04
  • 仕訳を元帳へ転記する操作 → C02-T03
  • 誤った仕訳を訂正する方法C16-T01
  • 決算整理仕訳・精算表・財務諸表の作成 → 後続の決算単元

⑬ まとめ

  1. 試算表は、総勘定元帳の全勘定を1枚に集めた一覧表
  2. 目的は記帳の点検決算の出発点
  3. 合計試算表=総額/残高試算表=差額/合計残高試算表=両方
  4. 残高の側は、借方合計と貸方合計のどちらが大きいかで決まる
  5. 貸借の不一致は、片側だけが狂う誤りを教えてくれる
  6. ただし、科目の取り違え・記帳漏れ・二重記録は発見できない
  7. 試算表は決算整理へ続く出発点

⑭ 2級への接続

2級でも試算表の役割は変わりません。扱う勘定科目が増え、金額も大きくなるため、合計と残高を取り違えないこと、貸借不一致の原因を効率よく絞り込むことがより重要になります。3級のうちに、合計試算表と残高試算表を自分の手で作り分けられるようにしておきましょう。


コメント

タイトルとURLをコピーしました