伝票・証ひょう 章末総合問題

1.この章末問題のねらい

この章末問題では、伝票から仕訳日計表を経て、帳簿へ流れ込むまでの全行程を1日分で確認します。

確認する内容 対応する単元 設問
入金伝票・出金伝票・振替伝票を、普通の仕訳へ復元する C12-T01「3伝票制(入金・出金・振替伝票)」 設問1・設問2
一部現金取引の起票(本問は全額を掛けとして擬制する方法) C12-T02「一部現金取引の起票(分解法・擬制法)」 設問1
伝票を科目別・貸借別に集計して仕訳日計表を作る/帳簿へ転記する C12-T03「伝票の集計と転記(仕訳日計表)」 設問2〜設問5

流れは次のとおりです。

伝票 → 仕訳へ復元 → 仕訳日計表 → 総勘定元帳・補助元帳への転記

当サイトでは、第2問(伝票・仕訳日計表)対策を意識した章末問題として構成しています。 なお、第1問・第2問・第3問という区分は当サイトの演習設計です。 公式に出題形式や配点が固定されているわけではありません。試験全体の構成は C17-T01「本試験形式の全体像」 で扱います。


2.共通資料

青森商事株式会社の ×年8月1日 に起票された伝票は、次の8枚である。

入金伝票

No. 科目欄 金額
101 売掛金(八戸商店) 45,000
102 ( ア ) ¥( イ )
103 売上 25,000

出金伝票

No. 科目欄 金額
201 買掛金(弘前商店) 60,000
202 仕入 20,000

振替伝票

No. 借方 金額 貸方 金額
301 仕入 80,000 買掛金(弘前商店) 80,000
302 売掛金(むつ商店) 120,000 売上 120,000
303 買掛金(弘前商店) 50,000 当座預金 50,000

なお、No.302 と No.102 は同一の取引「むつ商店へ商品 ¥120,000 を売り上げ、代金のうち ¥30,000 は現金で受け取り、残額は掛けとした」を、全額を掛け取引として擬制する方法で起票したものである。


3.設問

設問1 入金伝票 No.102 の科目欄(ア)と金額(イ)を答えなさい。

設問2 8枚の伝票から、仕訳日計表(×年8月1日)を完成させなさい。

設問3 仕訳日計表の借方合計・貸方合計を求め、一致することを確認しなさい。

設問4 総勘定元帳の現金勘定へ転記される内容(借方・貸方の金額と摘要欄の語句)を答えなさい。

設問5 売掛金元帳のむつ商店勘定へ転記される内容をすべて答え、8月1日終了時点の同勘定の残高を求めなさい。なお、むつ商店勘定の前日残高は ¥40,000(借方) である。



設問1 一部現金取引の空欄補完

(ア)売掛金  (イ)¥30,000

算定過程

項目 内容
起票方法の判定 振替伝票 No.302 に総額 ¥120,000 が載っている → 全額を掛けとして擬制する方法
入金伝票の意味 現金で受け取った ¥30,000 は、掛代金の回収として起票する
結論 科目欄=売掛金、金額=¥30,000

確認:この2枚を合算すると

(借)現金 30,000・売掛金 90,000 /(貸)売上 120,000

となり、元の取引(120,000 の売上のうち 30,000 が現金、残額 90,000 が掛け)と一致します。

解説

  • 集計の前に、まず伝票を完全な状態にします。
  • 判定の手がかりは振替伝票 No.302 の金額です。総額 ¥120,000 が載っているので、擬制する方法だと分かります。
  • 間違いやすいところ:科目欄を「売上 ¥30,000」としてしまう誤り。これは分解する方法(振替伝票に掛け分 ¥90,000 だけを起票し、入金伝票に売上 ¥30,000 を起票する方法)の書き方であり、本問の起票方法と混ざっています。この誤りをすると、仕訳日計表の売上が ¥145,000 ではなく ¥175,000 に膨らみ、以降の計算がすべてずれます。

主論点:擬制する方法による一部現金取引の起票 使用科目:売掛金


設問2 仕訳日計表

借方 勘定科目 貸方
100,000 現金 80,000
当座預金 50,000
120,000 売掛金 75,000
110,000 買掛金 80,000
100,000 仕入
売上 145,000
430,000 合計 430,000

復元した8本の仕訳

伝票 種類 復元した仕訳
No.101 入金 (借)現金 45,000 /(貸)売掛金 45,000
No.102 入金 (借)現金 30,000 /(貸)売掛金 30,000
No.103 入金 (借)現金 25,000 /(貸)売上 25,000
No.201 出金 (借)買掛金 60,000 /(貸)現金 60,000
No.202 出金 (借)仕入 20,000 /(貸)現金 20,000
No.301 振替 (借)仕入 80,000 /(貸)買掛金 80,000
No.302 振替 (借)売掛金 120,000 /(貸)売上 120,000
No.303 振替 (借)買掛金 50,000 /(貸)当座預金 50,000

科目別の算定過程

勘定科目 借方 貸方
現金 45,000 + 30,000 + 25,000 = 100,000 60,000 + 20,000 = 80,000
当座預金 No.303 = 50,000
売掛金 No.302 = 120,000 45,000 + 30,000 = 75,000
買掛金 60,000 + 50,000 = 110,000 No.301 = 80,000
仕入 20,000 + 80,000 = 100,000
売上 25,000 + 120,000 = 145,000

解説

  • 入金伝票は借方の現金、出金伝票は貸方の現金が省略されています。 集計する前に、必ず現金を補ってから仕訳に戻します。伝票に印字されている科目と金額だけを集計してはいけません。
  • 実務的には、入金伝票の束の合計 ¥100,000 が現金の借方出金伝票の束の合計 ¥80,000 が現金の貸方になります。科目欄に書かれた科目は、それぞれ反対側へ集計します。
  • 同じ勘定科目が借方と貸方の両方に出る場合、差し引いて残高だけにしてはいけません。 現金(借 100,000/貸 80,000)、売掛金(借 120,000/貸 75,000)、買掛金(借 110,000/貸 80,000)は、それぞれ別々に集計して両方を表示します。仕訳日計表は「合計」の表であって「残高」の表ではありません。
  • 間違いやすいところ:振替伝票 No.303 の当座預金の拾い漏れ。「現金・売掛金・買掛金・仕入・売上の5科目だけ」という思い込みで数えると落とします。また、入金伝票の科目欄(売掛金 75,000)を借方に集計してしまう誤りにも注意します。

主論点:伝票の復元と科目別・貸借別の集計


設問3 合計の検算

借方合計=貸方合計=¥430,000

区分 計算 金額
借方 100,000 + 120,000 + 110,000 + 100,000 430,000
貸方 80,000 + 50,000 + 75,000 + 80,000 + 145,000 430,000

解説

  • 一致しなければ、差額と同額の伝票の拾い漏れか、差額 ÷ 2 の金額の貸借取り違えを疑います。
  • ただし、借方合計と貸方合計が一致したからといって、仕訳の内容まで必ず正しいとは限りません。 たとえば、ある伝票の借方・貸方を両方とも同じ誤った科目や金額にしてしまった場合、合計は一致してしまいます。
  • したがって、貸借一致の確認と、伝票を復元した内容そのものの確認は、別々に行います。

主論点:貸借合計の検算とその限界


設問4 現金勘定への合計転記

現金勘定:借方 ¥100,000/貸方 ¥80,000  摘要欄:「仕訳日計表」

解説

  • 総勘定元帳へは、仕訳日計表の科目別合計をそのまま両建てで転記します。摘要欄には転記元である「仕訳日計表」と記入します。
  • 借方と貸方を相殺して差額 ¥20,000 だけを記入してはいけません。 借方 ¥100,000 と貸方 ¥80,000 を、それぞれの側へ総額のまま転記します。
  • 仕訳日計表を使うと、伝票を1枚ずつ元帳へ転記する必要がなくなり、1日分をまとめて転記できます。

主論点:仕訳日計表から総勘定元帳への合計転記


設問5 むつ商店勘定への個別転記と残高

転記される内容:借方 ¥120,000(No.302)/貸方 ¥30,000(No.102)

8月1日終了時点の残高:¥130,000(借方残高)

算定過程

項目 計算 金額
前日残高(借方) 40,000
No.302(掛売上) +120,000 160,000
No.102(掛代金の回収) △30,000 130,000

解説

  • 総勘定元帳(幹)には合計を、補助元帳の人名勘定(枝)には伝票から個別に転記します。
  • むつ商店勘定に載せるのは No.302 と No.102 の2枚だけです。八戸商店の No.101(¥45,000)を混ぜてはいけません。
  • 売掛金の貸方合計 ¥75,000 をそのまま人名勘定へ転記するのも誤りです。 枝には個別の金額を移します。

クロスチェック

借方 貸方
仕訳日計表の売掛金(幹) 120,000 75,000
むつ商店勘定 120,000 30,000
八戸商店勘定 45,000
枝の合計 120,000 75,000

幹の合計と枝の内訳が一致すれば、その日の転記が整合しています。

主論点:補助元帳への個別転記と、統制勘定との突合せ


5.伝票の復元ルールの整理

伝票の種類 省略されている側 復元のしかた
入金伝票 借方の現金 (借)現金 /(貸)伝票に書かれた科目
出金伝票 貸方の現金 (借)伝票に書かれた科目 /(貸)現金
振替伝票 なし 記載された借方・貸方をそのまま読む

仕訳日計表を作る手順

① 伝票の種類を見て、普通の仕訳へ戻す(現金を補う)

② 勘定科目ごとに、借方に出た金額と貸方に出た金額を別々に合計する

③ 仕訳日計表へ記入する(相殺しない)

④ 借方合計と貸方合計が一致することを確かめる

そのうえで、

転記先 転記するもの
総勘定元帳(幹) 仕訳日計表の科目別合計(摘要は「仕訳日計表」)
補助元帳(枝) 伝票から個別に

6.間違いやすいポイント

1.入金伝票・出金伝票の現金を集計し忘れない

伝票には現金が印字されていません。書かれている科目と金額だけを集計すると、現金の行がまるごと抜け落ちます。

伝票 書かれていること 補うもの
入金伝票 No.101「売掛金 45,000」 売掛金 45,000 借方に現金 45,000
出金伝票 No.201「買掛金 60,000」 買掛金 60,000 貸方に現金 60,000

2.同じ科目の借方と貸方を差し引かない

仕訳日計表は、科目ごとの「合計」を並べる表です。「残高」の表ではありません。

勘定科目 借方 貸方 誤った書き方
現金 100,000 80,000 借方に 20,000 だけ
売掛金 120,000 75,000 借方に 45,000 だけ
買掛金 110,000 80,000 借方に 30,000 だけ

総勘定元帳へ転記するときも同じで、総額のまま両建てで転記します。


3.貸借が一致しただけで、すべて正しいとは限らない

借方合計と貸方合計の一致は、集計が完了したことの目安にはなりますが、内容が正しいことの証明にはなりません。

たとえば、ある伝票の借方と貸方を両方とも同じ金額だけ間違えて書いた場合、合計は一致してしまいます。本問の設問1で科目欄を「売上」としてしまった場合も、貸借は一致したまま売上だけが ¥175,000 に膨らみます。

確認は2段構えで行います。

① 伝票を復元した内容そのものが正しいか

② 借方合計と貸方合計が一致しているか


7.まとめ

設問 確認したこと 答え
設問1 擬制する方法による一部現金取引の起票 (ア)売掛金/(イ)¥30,000
設問2 伝票の復元と科目別・貸借別の集計 現金 借100,000・貸80,000 ほか
設問3 貸借合計の検算 借方=貸方=¥430,000
設問4 総勘定元帳への合計転記 借方100,000・貸方80,000/摘要「仕訳日計表」
設問5 補助元帳への個別転記と残高 借方120,000・貸方30,000/残高 ¥130,000

伝票の問題では、次の順序を守ると安定します。

伝票を仕訳へ戻す(現金を補う)→ 科目別・貸借別に集計する → 貸借一致を確かめる → 幹には合計・枝には個別を転記する

  • 関連する単元:C12-T01「3伝票制(入金・出金・振替伝票)」/C12-T02「一部現金取引の起票(分解法・擬制法)」/C12-T03「伝票の集計と転記(仕訳日計表)」
  • 納品書・請求書・領収書などの読み取り:C12-T04「証ひょう(納品書・請求書・領収書等)」で扱います。

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