この単元の標語:問題文の条件から、代金を誰に請求することになるのかを読み取る。決済事業者に請求するならクレジット売掛金。売上は売価の全額、決済手数料は支払手数料として別に記録する。
① このページで学ぶこと
- クレジット払いで販売したときの債権が、なぜ通常の売掛金と区別されるのかを説明できる
- 決済手数料を支払手数料として処理できるようになる
- 販売時のクレジット売掛金の金額を正しく計算できるようになる
- 決済事業者から入金されたときの仕訳が切れるようになる
- 2027年度に明確化された範囲の拡張を理解できる
② 基礎概念
債権の相手が「お客」ではなく「決済事業者」
お客がクレジットカードで支払うと、当社は代金をお客からではなく、信販会社などの決済事業者から受け取ります。つまり販売と同時に生まれる債権の相手は決済事業者です。
| 勘定科目 | 債権の相手 |
|---|---|
| 売掛金 | 商品を掛けで買った得意先 |
| クレジット売掛金 | 信販会社などの決済事業者 |
どちらも資産ですが、債権の相手が異なります。 債権を相手先の性質で区別する——これが科目を分ける理由です。
[判断のしかた] 「クレジット」という言葉が出てきたから機械的にクレジット売掛金、と決めるのではありません。問題文の条件を読み、代金を誰に請求することになるのかを確認してください。
- 得意先に対して代金を請求する → 売掛金(C05-T01)
- 決済事業者から代金の精算を受ける → クレジット売掛金
決済手数料
決済事業者は、決済を仲介する対価として手数料を取ります。本教材では、この決済手数料を支払手数料(費用)として処理します。
問題文に「手数料は販売時に計上する」と示されている場合は、販売した時点で支払手数料を計上し、クレジット売掛金は手取額(売価 − 手数料)で計上します。
問題文に「決済手数料は考慮しない」と示されている場合は、クレジット売掛金を売価の全額で計上します。
どちらの処理になるかは、問題文の条件で決まります。
【2027年度(2027年4月~)受験の方】2027年度からの範囲の明確化
クレジット売掛金は、2026年度・2027年度のどちらでも3級の出題範囲です。 新しく加わった論点ではありません。
2027年度では、クレジット売掛金について、クレジット取引だけでなく各種キャッシュレス決済によって生じる債権を含むことが明確化されています。
基本となる考え方は、2026年度のクレジット取引と共通です。 決済方法の名称が何であれ、問題文に示された契約・決済・手数料の条件を読み、決済事業者に対する債権が生じるかどうかで判断します。
「キャッシュレス決済」という名称だけで会計処理が決まるわけではありません。
③ 仕組み・理由
なぜ売上と債権の金額が違うのか
売価 ¥100,000、決済手数料が売価の3%(販売時に確定)の場合を考えます。
手数料 = 100,000 × 3% = ¥3,000 決済事業者から受け取る金額 = 100,000 − 3,000 = ¥97,000
このとき、会社が商品を販売して得た売上そのものは ¥100,000 です。
手数料が差し引かれるからといって「売上が ¥97,000 だった」とは考えません。 会社は ¥100,000 の商品を販売し、その決済サービスを利用するための費用として ¥3,000 を負担しているという構造です。
したがって、3つに分けて記録します。
| 項目 | 金額 | 科目 |
|---|---|---|
| 商品を販売して得た収益 | 100,000 | 売上 |
| 決済サービスの利用料 | 3,000 | 支払手数料 |
| 決済事業者から受け取る権利 | 97,000 | クレジット売掛金 |
売上金額と、最終的に入金される金額を分けて考えることがポイントです。
手数料を販売時に計上する場合、入金時には登場しない
販売の時点で受取額が確定しているのであれば、債権も費用も最初から確定額で記録できます。分解の仕事は販売時に終わっているため、入金時には手数料が登場しません。
④ 基本例
青森商事株式会社の×1年11月の取引は次のとおりである。
- (a)11月5日 商品 ¥50,000 をクレジット払いの条件で販売した。決済手数料は考慮しないものとする。
- (b)11月12日 商品 ¥80,000 をクレジット払いの条件で販売した。決済事業者への手数料は販売代金の4%であり、販売時に計上する。
- (c)11月30日 (b)の代金が普通預金口座へ入金された。
⑤ 仕訳例:思考の手順つき
場面1:手数料を考慮しない場合(a)
- 取引を読む:クレジット払いで ¥50,000 の販売。「決済手数料は考慮しない」と示されている。
- 金額を確認する:手数料がないので、債権は売価の全額 ¥50,000。
- 勘定科目を決める:決済事業者に対する債権 → クレジット売掛金/収益 → 売上
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| クレジット売掛金 | 50,000 | 売上 | 50,000 |
支払手数料は登場しません。 問題文が手数料を考慮しないと示しているためです。
場面2:手数料を販売時に計上する場合(b)
- 取引を読む:クレジット払いで ¥80,000 の販売。手数料は販売代金の4%で、販売時に計上する。
- 金額を分解する:
- 売上 = ¥80,000(売価全額)
- 手数料 = 80,000 × 4% = ¥3,200
- 債権(手取額)= 80,000 − 3,200 = ¥76,800
- 勘定科目を決める:クレジット売掛金/支払手数料/売上
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| クレジット売掛金 | 76,800 | 売上 | 80,000 |
| 支払手数料 | 3,200 |
検算:借方 76,800 + 3,200 = 貸方 80,000
売上は ¥80,000 のままである点に注意してください。手数料を売上から差し引くのではなく、費用として別建てにします。
場面3:決済事業者からの入金(c)
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 76,800 | クレジット売掛金 | 76,800 |
- 借方の理由:普通預金(資産)の増加
- 貸方の理由:決済事業者への債権が回収された = クレジット売掛金(資産)の減少
- 支払手数料は登場しません:(b)で債権を手取額 ¥76,800 で計上しているため、分解の仕事は販売時に終わっています
- 売上も計上しません:(b)の販売時に売上を計上しているためです
⑥ 間違いやすいポイント
主なものを3つ確認します。 実際の誤りはこの3つに限りません。
1.売上を手取額にしてしまう
売上は売価の全額です。
お客に売った金額と、決済事業者から受け取る金額は別物です。手数料は売上のマイナスではなく、支払手数料という費用として記録します。
2.手数料の扱いを問題文で確認しない
手数料を販売時に計上するのか、そもそも考慮しないのかは、問題文の条件で決まります。
- 「手数料は販売時に計上する」 → 債権は手取額、支払手数料を同時に計上
- 「決済手数料は考慮しない」 → 債権は売価の全額、支払手数料は登場しない
手数料率が与えられていても、それが何に対する割合かを確認してください。 一部だけをクレジット払いとする取引では、クレジット利用額に対する割合であることがあります。
3.科目を売掛金にしてしまう
代金を誰に請求することになるかで選び分けます。
| 問題文の条件 | 科目 |
|---|---|
| 得意先に対して代金を請求する(掛け売上) | 売掛金(C05-T01) |
| 決済事業者から代金の精算を受ける | クレジット売掛金 |
勘定科目マスタでも、売掛金とクレジット売掛金は互いに「まぎらわしい科目」として挙げられています。 語群に両方が並んだら、必ず問題文の条件を確認してください。
⑦ 試験での問われ方
当サイトの本試験形式では、第1問対策(仕訳問題)に位置づけています。
第1問対策
販売時の3科目仕訳(クレジット売掛金・支払手数料/売上)が問われます。手数料率から金額を計算させる形が中心です。
手数料が金額で直接与えられる形もあります。資料の与え方(率か金額か)に応じて手順を切り替えてください。
第2問対策
クレジット売掛金の勘定記入では、販売時に増加し、入金時に減少するという流れを追います。
第3問対策
決算整理前残高試算表にクレジット売掛金が並びます。売上債権のひとつとして、貸倒引当金の設定対象になることがあります(C06・C14-T03)。
⑧ まとめ
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| クレジット払いで販売(手数料を考慮しない指示) | クレジット売掛金(売価全額) | 売上(売価全額) |
| クレジット払いで販売(手数料は販売時に計上) | クレジット売掛金(手取額) 支払手数料 |
売上(売価全額) |
| 決済事業者から入金 | 普通預金・当座預金など | クレジット売掛金(手取額) |
手数料が販売時に確定する場合
クレジット売掛金 = 売価 − 決済手数料 売上は売価の全額/決済手数料は支払手数料
販売時に売上を計上し、入金時には売上を計上しません。
⑨ 関連問題への導線
- 一問一答:C05-T02「クレジット売掛金」(全8問)
- 仕訳問題:C05-T02「クレジット売掛金」(全9問・初級3問/標準4問/応用2問)
- 前のテキスト:C05-T01「売掛金・買掛金」
- 次のテキスト:C05-T03「電子記録債権・電子記録債務」
- 受取商品券:C05-T09
- 貸倒引当金の設定:C06/C14-T03
⑩ 2級への接続
「債権額と手取額の差を費用にする」という型は、2級の売掛債権の譲渡(ファクタリング)で再登場します。
3級のクレジット売掛金で身につける「売上金額/決済事業者に対する債権/決済サービスの費用を分けて考える」力が、そのまま出発点になります。
この「取引を構成要素に分解して仕訳する」考え方は、2級でより複雑な販売・決済取引を学ぶ際にも役立ちます。

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