FP技能士3級 相続・事業承継 相続と税金

この単元で身につけること

相続税について、次の状態を目標とします。

  1. 相続税の課税対象となる本来の財産を説明できる。
  2. 死亡保険金・死亡退職金がみなし相続財産として扱われることを判断できる。
  3. 死亡保険金・死亡退職金の非課税限度額を計算できる。
  4. 一定の債務・葬式費用が課税価格から控除されることを判断できる。
  5. 生前贈与加算について、加算対象期間の段階的な延長と経過措置を判断できる。
  6. 相続時精算課税による贈与財産の相続時加算を計算できる。
  7. 相続税の基礎控除額を計算できる。
  8. 法定相続人の数における養子の算入上限と、相続放棄の取扱いを判断できる。
  9. 相続税総額を求める手順を説明できる。
  10. 相続税の税率が8段階であることを答えられる。
  11. 2割加算の対象と、代襲相続した孫等の取扱いを判断できる。
  12. 配偶者の税額軽減の基準額と申告要件を説明できる。
  13. 相続税の申告期限と申告先を答えられる。

なお本単元は、納付方法の特例に関する詳細には立ち入りません。金額・期限はすべて法令基準日2026-04-01時点の現行制度によります。

全体像

相続税は、相続や遺贈によって財産を取得した場合に課される税です。計算は次の標準フローで進みます。

  1. 課税価格を求める:本来の財産にみなし相続財産を加え、非課税財産を除き、債務・葬式費用を控除し、生前贈与加算を行います。
  2. 基礎控除を差し引く:課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を求めます。
  3. 相続税総額を求める:課税遺産総額を法定相続分どおりに取得したと仮定して各人の税額を計算し、合計します。
  4. 各人の税額を調整する:実際の取得割合で按分したうえで、2割加算や配偶者の税額軽減などを適用します。
  5. 申告・納付する:期限内に所定の税務署へ申告します。

この流れのどの段階の話なのかを意識すると、個々の論点が整理しやすくなります。以下ではこの順に沿って確認します。

用語の説明

本来の課税財産:相続または遺贈により取得した、金銭で見積もることができる経済価値のある財産です。

みなし相続財産:本来は相続で取得した財産ではないものの、相続により取得したものとみなされる財産です。

非課税財産:相続税が課されない財産です。

債務控除:被相続人の債務や葬式費用を課税価格から差し引くことです。

生前贈与加算:一定期間内に受けた贈与財産を相続税の課税価格に加算することです。

課税遺産総額:課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いた金額です。

相続税総額:課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて計算した税額の合計です。

2割加算:一定の取得者について相続税額を2割増しにする仕組みです。

基本ルール

課税財産

本来の課税財産:相続または遺贈により取得した、金銭で見積もることができる経済価値のある財産が課税対象となるのが基本です。現預金・有価証券・不動産などが該当します。

みなし相続財産:被相続人の死亡により取得する一定の死亡保険金および死亡退職金は、相続または遺贈により取得したものとみなされます。被相続人が生前に持っていた財産ではありませんが、実質的に相続と同様の経済的効果があるためです。

非課税財産

死亡保険金の非課税限度額

500万円×法定相続人の数

死亡退職金の非課税限度額

500万円×法定相続人の数

いずれも同じ算式ですが、保険金と退職金でそれぞれ別枠として計算します。相続人が取得した場合に適用される点も押さえてください。

このほか、墓所・霊びょう・祭具等の一定の財産も相続税非課税です。

債務控除と葬式費用

被相続人の一定の債務は、相続税の課税価格から控除できます。また相続人等が負担した一定の葬式費用も課税価格から控除できます。

生前贈与加算

制度の原則:2024年1月1日以後の贈与から、相続税の加算対象期間は段階的に7年へ延長されます。

経過措置:相続開始日が2026年12月31日までの場合は、経過措置により相続開始前3年以内の贈与が加算対象となるのが基本です。法令基準日2026年4月1日の時点では、この経過措置の期間内にあたります。

100万円控除:相続開始日が2027年1月2日以後の場合、相続開始前3年以内以外の加算対象贈与については、総額100万円まで加算しない仕組みが設けられています。

「制度としては7年へ延長される」「ただし当面は経過措置により3年以内が基本」「3年より前の部分には総額100万円の控除がある」という3点で整理してください。

相続時精算課税財産の加算

2024年1月1日以後の贈与について相続時精算課税の適用を受けた財産は、贈与年ごとに贈与価額の合計から相続時精算課税の基礎控除額を差し引いた金額を、相続税の課税価格に加算します。

加算額=(各年の贈与価額の合計-その年の基礎控除額)の合計

贈与年ごとに基礎控除を差し引く点が要点です。複数年にわたる贈与の合計額から1回だけ差し引くのではありません。

基礎控除

相続税の基礎控除額は次の算式で求めます。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

法定相続人の数の数え方には、相続税法上の特別な取扱いがあります。

養子の算入上限:実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで算入できるのが原則です。 ・相続放棄の取扱い:相続放棄があっても、法定相続人の数は放棄がなかったものとして数えます。

民法上の相続人の判断とは数え方が異なる場面がある点に注意してください。

相続税総額の計算

課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いた課税遺産総額を、法定相続人が法定相続分どおりに取得したと仮定して各人の税額を計算し、それらを合計して相続税総額を求めます。実際にどう分けたかにかかわらず、いったん法定相続分で仮に分ける点が特徴です。

税率8段階で、10%・15%・20%・30%・40%・45%・50%・55%です。最低10%・最高55%という両端と段階数を押さえてください。

2割加算

被相続人の配偶者および一親等の血族等以外の者が財産を取得した場合、その者の相続税額は原則として20%加算されます。

ただし、被相続人の子が相続開始前に死亡して代襲相続人となった孫等は、一親等の血族として扱われ2割加算の対象外となるのが基本です。「孫だから必ず加算」ではない点に注意してください。

配偶者の税額軽減

配偶者が取得した財産については、次のいずれか多い金額までは相続税がかからないのが基本です。

1億6,000万円 ・配偶者の法定相続分相当額

したがって、配偶者の取得額が1億6,000万円を超えても、法定相続分相当額までであれば軽減の対象となります。

なお、この配偶者の税額軽減の適用を受けるには、原則として相続税の申告書の提出が必要です。

申告と納付

期限:相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。

申告先被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署です。相続人の住所地ではない点に注意してください。

申告の要否:課税価格の合計額が基礎控除額以下で、申告を要する特例を使わない場合は、原則として申告不要です。ただし小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などは、適用を受けるために申告が必要となります。「税額がゼロになるから申告不要」とは限らない点が重要です。

重要な数字

本単元の重要数字は次のとおりです(2026-04-01基準)。

・死亡保険金の非課税限度額:500万円×法定相続人の数 ・死亡退職金の非課税限度額:500万円×法定相続人の数(保険金とは別枠) ・生前贈与加算:制度上は7年へ段階延長/相続開始が2026年12月31日までは経過措置で3年以内が基本/3年以内以外の加算対象贈与は総額100万円控除 ・相続時精算課税財産の加算:贈与年ごとに贈与価額合計-その年の基礎控除額 ・相続税の基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の数 ・養子の算入上限:実子あり1人・実子なし2人 ・相続放棄:法定相続人の数は放棄がなかったものとして数える ・相続税の税率:8段階(10%・15%・20%・30%・40%・45%・50%・55%) ・2割加算:配偶者・一親等血族等以外は原則20%加算(代襲相続した孫等は基本的に対象外) ・配偶者の税額軽減:1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額まで ・申告・納付:相続開始を知った日の翌日から10か月以内/被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署

具体例

相続税を考える流れを具体的に追います。

課税価格を組み立てる:被相続人が残した現預金・不動産などの本来の財産を集計し、死亡保険金・死亡退職金があればみなし相続財産として加えます。ただし保険金・退職金にはそれぞれ非課税限度額があるため、その分を差し引きます。墓所などの非課税財産は含めません。次に借入金などの債務と葬式費用を差し引き、生前贈与加算の対象があれば加えます。

基礎控除を差し引く:法定相続人の数を確定して基礎控除額を求めます。ここで養子の算入上限や、相続放棄があった場合の数え方に注意します。

相続税総額を求める:課税遺産総額を法定相続分で仮に分け、各人の税額を計算して合計します。

各人の税額を調整する:兄弟姉妹や、代襲相続人でない孫などが取得している場合は2割加算を検討します。配偶者が取得している場合は税額軽減を検討します。

申告する:知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署へ申告します。配偶者の税額軽減などを使う場合は、税額がゼロでも申告が必要です。

計算のしかた

代表的な計算を確認します(数値は例示用です)。

例1:相続税の基礎控除額

法定相続人が2人である場合。

  1. 使用する算式:3,000万円+600万円×法定相続人の数
  2. 計算:3,000万円+600万円×2人=3,000万円+1,200万円
  3. 結果:42,000,000円

例2:死亡保険金の非課税限度額

法定相続人が2人である場合。

  1. 使用する算式:500万円×法定相続人の数
  2. 計算:500万円×2人
  3. 結果:10,000,000円

計算の順序は、まず法定相続人の数を確定することです。この人数が基礎控除と非課税限度額の両方に効いてくるため、養子の算入上限や相続放棄の取扱いを先に確認しておく必要があります。

相続時精算課税財産の加算については、贈与年ごとに基礎控除額を差し引いてから合計します。複数年の贈与価額をまとめてから1回だけ差し引くのではないため、年ごとに整理する手順を守ってください。

よくある間違い

  1. みなし相続財産を課税対象外と誤解する:一定の死亡保険金・死亡退職金は相続により取得したものとみなされます。
  2. 保険金と退職金の非課税枠を合算してしまう:算式は同じですが、それぞれ別枠で計算します。
  3. 非課税限度額の人数を実際の受取人数で数えてしまう:法定相続人の数を用います。
  4. 生前贈与加算の期間を一律7年としてしまう:相続開始が2026年12月31日までは経過措置により3年以内が基本です。
  5. 相続時精算課税の加算で基礎控除を1回しか引かない:贈与年ごとに差し引きます。
  6. 養子の算入上限を誤る:実子がいる場合は1人まで、いない場合は2人までです。
  7. 相続放棄した人を法定相続人の数から除いてしまう:放棄がなかったものとして数えます。
  8. 相続税総額を実際の取得割合で計算してしまう:いったん法定相続分で仮に分けて計算します。
  9. 孫はすべて2割加算と覚えてしまう:代襲相続人となった孫等は基本的に対象外です。
  10. 配偶者の税額軽減を1億6,000万円だけで判断する:法定相続分相当額のほうが多ければそちらまでが対象です。
  11. 税額がゼロなら申告不要と考える:配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、適用のために申告が必要です。
  12. 申告先を相続人の住所地としてしまう:被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署です。

試験での出題のされ方

本単元は複数の過去問観測枠に接続しています。EX-F-003(相続税の課税財産)、EX-F-004(相続税額の計算)、EX-F-005(相続・贈与の手続と期限)、EX-F-012(実技:相続税の資料計算)で、いずれも分析期間2024-2026 CBT公表分の観測数3/3(頻度100%・頻度区分A)です。

これらの頻度は、各Exam_Slotが表す能力枠全体についての観測値です。500万円の非課税限度額、基礎控除の算式、2割加算の20%、配偶者軽減の1億6,000万円、申告期限の10か月といった個別のサブ論点が、それぞれ3回とも出題されたという意味ではありません。頻度をサブ論点ごとの出題回数へ読み替えないよう注意してください。

また、本単元の一部の問題(死亡退職金の非課税限度額、相続時精算課税財産の加算、養子の算入人数、税率の段階、特例と申告要件)は、当該Question_Slotへ過去問頻度を直接付与していない管理状態(UNVERIFIED)に基づいています。これは管理上の状態であり、出題可能性の否定ではありません。いずれも相続税の基本論点として押さえてください。

まとめ

・本来の課税財産は、金銭で見積もることができる経済価値のある財産です。 ・一定の死亡保険金・死亡退職金はみなし相続財産として扱われます。 ・死亡保険金・死亡退職金の非課税限度額は、いずれも500万円×法定相続人の数(それぞれ別枠)。 ・一定の債務および葬式費用は課税価格から控除できます。 ・生前贈与加算は制度上7年へ段階延長されますが、相続開始が2026年12月31日までは経過措置で3年以内が基本です。3年以内以外の加算対象贈与には総額100万円の控除があります。 ・相続時精算課税財産は、贈与年ごとに基礎控除額を差し引いた金額を加算します。 ・基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。 ・法定相続人の数では、養子は実子あり1人・実子なし2人まで算入し、相続放棄はなかったものとして数えます。 ・相続税総額は、課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて計算した税額の合計です。 ・税率は8段階(10%~55%)です。 ・配偶者・一親等血族等以外は原則20%加算。代襲相続した孫等は基本的に対象外です。 ・配偶者の税額軽減は1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額までで、適用には原則として申告が必要です。 ・申告・納付は相続開始を知った日の翌日から10か月以内、被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署へ行います。

練習のしかた

  1. 死亡保険金の非課税限度額を求める算式は何か。
  2. 死亡退職金の非課税限度額は、死亡保険金の非課税枠と合算するか。
  3. 相続開始が2026年12月31日までの場合、生前贈与加算の対象期間は何年以内が基本か。
  4. 相続時精算課税財産の加算では、基礎控除額をどのように差し引くか。
  5. 相続税の基礎控除額を求める算式は何か。
  6. 実子がいる場合、法定相続人の数に算入できる養子は何人までか。
  7. 相続放棄があった場合、法定相続人の数はどのように数えるか。
  8. 相続税の税率は何段階か。
  9. 2割加算の対象とならないのはどのような者か。
  10. 配偶者の税額軽減の基準はどうなっているか。
  11. 相続税の申告期限と申告先はどこか。

(答え:1 500万円×法定相続人の数/2 合算せずそれぞれ別枠/3 3年以内/4 贈与年ごとに差し引く/5 3,000万円+600万円×法定相続人の数/6 1人まで/7 放棄がなかったものとして数える/8 8段階/9 配偶者・一親等の血族等(代襲相続した孫等を含む)/10 1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額まで/11 知った日の翌日から10か月以内・被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署)

FP2級へのつながり

FP2級では、各種の税額控除や相続税額の按分計算、申告手続がより詳細に問われます。FP3級では本単元の非課税限度額・基礎控除・2割加算・配偶者軽減・申告期限という骨格を正確に押さえることが土台になります。

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