FP技能士3級 相続・事業承継 相続と法律

この単元で身につけること

このUnitでは、相続がいつ始まり、誰が相続人となり、どの割合で財産を承継するかを民法の基本から整理します。

学習後には、配偶者と血族相続人の順位、配偶者と子・直系尊属・兄弟姉妹の法定相続分、代襲相続、養子の民法上の扱い、相続の承認・放棄、遺産分割、普通方式の遺言、自筆証書遺言、公正証書遺言、法務局の自筆証書遺言書保管制度、遺留分、相続登記の申請義務を判断できることを目標とします。

このUnitは税額計算ではなく、相続税計算の前提となる「誰が相続人か」「法律上どの割合か」「どの手続が必要か」を扱います。相続税の基礎控除や生命保険金の非課税限度額などはF04以降で扱います。

全体像

相続は、人の死亡によって開始します。相続人は、被相続人の財産に属した権利義務を包括的に承継するのが基本ですが、被相続人だけに専属する権利は除かれます。

法定相続では、配偶者は常に相続人となり、血族相続人には順位があります。第1順位は子、第2順位は直系尊属、第3順位は兄弟姉妹です。先順位の血族相続人がいる場合、後順位の血族は原則として相続人になりません。

誰が相続人かを確定した後、法定相続分を確認します。配偶者と子なら各1/2、配偶者と直系尊属なら配偶者2/3・直系尊属全体1/3、配偶者と兄弟姉妹なら配偶者3/4・兄弟姉妹全体1/4です。同順位の相続人が複数いる場合は、そのグループの相続分を人数で分けるのが基本です。

相続では、相続財産を受け継ぐだけでなく、相続放棄・限定承認などの選択、遺産分割、遺言、遺留分、不動産の相続登記といった手続も重要です。

用語の説明

  • 被相続人:死亡して相続の対象となる財産を残した人。
  • 相続人:被相続人の権利義務を承継する人。
  • 法定相続人:民法の定めにより相続人となる人。
  • 法定相続分:民法が定める相続人間の相続割合。
  • 代襲相続:本来相続人となる者が相続開始前に死亡するなど一定の場合、その者の子等が代わって相続する制度。
  • 単純承認:被相続人の権利義務を原則としてそのまま承継する相続の方法。
  • 限定承認:相続によって得た財産の限度で被相続人の債務等を弁済することを留保して相続を承認する方法。
  • 相続放棄:相続人としての地位を放棄する手続。
  • 遺産分割:共同相続となった遺産を各相続人へ具体的に分けること。
  • 自筆証書遺言:遺言者自身が所定の方式で作成する遺言。
  • 公正証書遺言:公証人と証人が関与して作成する遺言。
  • 秘密証書遺言:遺言内容を秘密にしつつ所定の方式で作成する遺言。
  • 遺留分:兄弟姉妹以外の一定の相続人に保障される最低限の取り分。
  • 検認:家庭裁判所が遺言書の状態等を確認する手続。
  • 相続登記:相続による不動産の所有権移転を登記簿へ反映する手続。

基本ルール

相続の開始と包括承継

相続は被相続人の死亡によって開始します。

相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するのが基本です。ただし、被相続人の一身に専属した権利は承継の対象から除かれます。

FP3級では、まず「死亡で相続開始」という起点を確実にします。

法定相続人の順位

配偶者は常に相続人です。

血族相続人の順位は、

  1. 第1順位:子
  2. 第2順位:直系尊属
  3. 第3順位:兄弟姉妹

です。

例えば配偶者と子がいる場合、直系尊属や兄弟姉妹は原則として相続人になりません。子がいなければ直系尊属、子も直系尊属もいなければ兄弟姉妹へ順位が移ります。

法定相続分

配偶者と子が相続人の場合は、

  • 配偶者:1/2
  • 子全体:1/2

です。

配偶者と直系尊属の場合は、

  • 配偶者:2/3
  • 直系尊属全体:1/3

です。

配偶者と兄弟姉妹の場合は、

  • 配偶者:3/4
  • 兄弟姉妹全体:1/4

です。

同順位の相続人が複数いるときは、各自の相続分は原則として等しいものとします。本Unitでは半血兄弟姉妹の詳細は扱いません。

代襲相続

被相続人の子が相続開始前に死亡するなど一定の場合、その子の子、つまり被相続人から見た孫等が代襲相続します。

兄弟姉妹についても一定の場合には、その子である甥・姪が代襲相続します。ただし、兄弟姉妹の代襲は甥・姪までで、さらにその子へ再代襲する仕組みではありません。

固定Slot S006では、子が先に死亡した場合の孫の代襲相続を中心に確認します。

養子と相続

民法上の養子は、養親との関係では原則として実子と同様に相続人となります。

相続税計算上の法定相続人の数に算入できる養子の人数制限は、民法上の相続人資格とは別の税法上の論点であり、F04で扱います。

単純承認・限定承認・相続放棄

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について単純承認・限定承認・相続放棄を選択するのが基本です。

相続放棄は家庭裁判所への申述によって行います。

限定承認は、共同相続人がいる場合、共同相続人全員が共同して行う必要があります。相続人の一人だけが勝手に全体について限定承認するものではありません。

FP3級では熟慮期間の伸長や限定承認後の清算手続の詳細には広げません。

遺産分割

共同相続人は、遺産分割協議によって遺産の具体的な分け方を決めるのが基本です。

代表的な方法として、

  • 現物分割:財産を現物のまま分ける。
  • 代償分割:特定の相続人が財産を取得し、他の相続人へ金銭等を支払う。
  • 換価分割:財産を売却し、代金を分ける。

があります。

「自宅は長男が取得し、長男が他の相続人へ代償金を支払う」という形は代償分割です。

遺言の普通方式

普通方式の遺言には、

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

があります。

危急時遺言など特別方式は本Unitの対象外です。

自筆証書遺言

自筆証書遺言では、遺言者が遺言書の本文、日付、氏名を原則として自書し、押印するのが基本です。

財産目録については、自書によらない方法を用いることができますが、その場合にも各頁への署名・押印等が必要です。

「パソコンで作成した財産目録が使える」ことを、「遺言本文も自由にパソコン作成できる」と広げないようにします。

公正証書遺言

公正証書遺言では、公証人のほか証人2人以上の立会いが必要です。

公正証書遺言は家庭裁判所の検認を要しません。

FP3級では証人になれない者の細かな範囲などは扱いません。

法務局保管の自筆証書遺言

自筆証書遺言であっても、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して保管された遺言書は、相続開始後の家庭裁判所の検認が不要です。

自宅で保管している通常の自筆証書遺言と、法務局保管制度を利用した自筆証書遺言を区別します。

遺留分

遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められるのが基本です。

遺留分全体の割合は、

  • 相続人が直系尊属のみ:1/3
  • それ以外:1/2

です。

兄弟姉妹には遺留分がありません。

遺留分が侵害された場合の遺留分侵害額請求は、原則として金銭請求です。特定の不動産そのものを当然に返してもらう請求と考えないようにします。

相続登記の申請義務

相続登記の申請義務化は2024年4月1日に始まりました。

相続により不動産を取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請するのが基本です。

相続人申告登記という制度もありますが、FP3級では「相続登記が義務化され、基本期限が3年以内」という核心を優先します。

重要な数字

論点 基本
配偶者+子 配偶者1/2・子全体1/2
配偶者+直系尊属 配偶者2/3・直系尊属全体1/3
配偶者+兄弟姉妹 配偶者3/4・兄弟姉妹全体1/4
相続承認・放棄の熟慮期間 相続開始を知った時から3か月以内
公正証書遺言の証人 2人以上
遺留分・直系尊属のみ 1/3
遺留分・その他 1/2
相続登記義務化施行 2024年4月1日
相続登記の基本期限 不動産取得を知った日から3年以内

数字は単独で覚えるのではなく、相続人の組合せや手続名とセットにします。

具体例

配偶者と子

遺産総額が48,000,000円で、相続人が配偶者と子2人の場合、配偶者の法定相続分は1/2なので、

48,000,000×1/2=24,000,000円

です。

子全体の法定相続分も24,000,000円で、子2人が同順位なら原則として各12,000,000円です。

代襲相続

被相続人に配偶者と子A・子Bがいたものの、子Bが被相続人より先に死亡し、子Bに子Cがいる場合、CはBを代襲して相続人となる基本があります。

この場合、配偶者1/2、子の系統全体1/2という大枠を作った後、子Aの系統と子Bの系統で原則等分し、子Bの分をCが引き継ぎます。

相続放棄

相続開始を知った日を基準に3か月以内という熟慮期間を確認します。「死亡日から必ず3か月」と機械的に覚えず、「自己のために相続開始があったことを知った時から」と判断します。

計算のしかた

F03の通常CALC SlotはS003です。

配偶者と子が相続人であることを確認し、遺産総額に配偶者の法定相続分1/2を乗じます。

例えば遺産総額48,000,000円なら、

48,000,000×1/2=24,000,000円

です。

実技CASE S007では、親族関係図を先に読み、相続人を確定してから法定相続分を計算します。

計算の順序は、

  1. 配偶者の有無を確認。
  2. 血族相続人の順位を確認。
  3. 代襲相続の有無を確認。
  4. 配偶者と血族グループの法定相続分を決定。
  5. 同順位の人数・代襲系統に応じて分ける。

です。

相続税額の基礎控除や税率はF04以降のため、F03の法定相続分計算へ混ぜません。

親族関係図を読む順序

親族関係図の問題では、最初に金額計算を始めないことが重要です。まず配偶者がいるかを確認し、次に第1順位の子またはその代襲者がいるかを確認します。子の系統がなければ直系尊属、さらに直系尊属もいなければ兄弟姉妹の順に進みます。

たとえば、被相続人に配偶者、存命の子1人、相続開始前に死亡した子1人、その死亡した子の子である孫1人がいる場合、孫は死亡した子の系統を代襲します。このとき「配偶者・存命の子・孫」という3人がいるから3等分するのではありません。

最初に配偶者1/2、子の系統全体1/2と分けます。その後、子の系統全体の1/2を、存命の子の系統と死亡した子の系統で原則等分します。代襲相続では、代襲者が本来の相続人の系統を引き継ぐという考え方が重要です。

手続問題を読む順序

相続手続では、似た期間・機関を混同しやすいため、何の手続かを先に特定します。

相続放棄や限定承認の基本では「自己のために相続開始があったことを知った時から3か月以内」が軸です。相続税の申告期限や相続登記の3年義務とは別の期限です。

限定承認では、共同相続人がいるかを確認します。共同相続人がいる場合は全員共同で行うのが基本です。一方、相続放棄は各相続人が自分について行う手続です。両者を「どちらも全員で行う」と覚えないようにします。

遺言問題を読む順序

遺言は、まず方式を特定します。

自筆証書遺言なら、自書が必要な部分と財産目録の方式特例を区別します。公正証書遺言なら、公証人と証人2人以上の関与を確認します。法務局保管の自筆証書遺言なら、保管制度を利用しているため家庭裁判所の検認が不要という点を確認します。

「自筆証書遺言だから必ず検認が必要」と機械的に判断すると、法務局保管制度の問題で誤ります。逆に、自宅保管の通常の自筆証書遺言と法務局保管制度を同一視しないことも重要です。

遺留分と法定相続分の違い

法定相続分は、共同相続人間の法律上の基本割合です。遺留分は、一定の相続人に保障される最低限の取り分であり、同じ割合ではありません。

たとえば配偶者と子が相続人なら法定相続分はそれぞれ1/2ですが、遺留分全体は「直系尊属のみの場合以外」の1/2です。そこから各遺留分権利者の法定相続分に応じて考えることになります。

FP3級の固定Slotでは個々人の遺留分額の複雑な計算までは行わず、「兄弟姉妹には遺留分がない」「直系尊属のみなら全体1/3、その他は全体1/2」「侵害額請求は原則金銭請求」という骨格を優先します。

相続登記の期限を他の3年と混同しない

相続登記の基本期限は、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内です。相続開始そのものを知った日、遺産分割協議が終わった日、相続税の申告日などを無条件に起点とするものではありません。

本Unitでは過料や正当理由などの詳細へ広げず、2024年4月1日から義務化されたことと、「不動産取得を知った日から3年以内」という基本を確実にします。

よくある間違い

  • 相続が遺産分割協議成立時に開始すると考える。
  • 配偶者を血族相続人と同じ順位制で考える。
  • 子がいるのに直系尊属や兄弟姉妹も同時に法定相続人とする。
  • 配偶者と子の相続分を配偶者2/3・子1/3とする。
  • 配偶者と兄弟姉妹の相続分を配偶者1/2・兄弟姉妹1/2とする。
  • 子が先に死亡していても孫の代襲相続を考えない。
  • 民法上の養子と税法上の養子人数制限を混同する。
  • 相続放棄の3か月を、事情にかかわらず死亡日から数える。
  • 限定承認を共同相続人の一人だけで行えると考える。
  • 代償分割と換価分割を逆にする。
  • 自筆証書遺言の本文を自由にパソコン作成できると考える。
  • 公正証書遺言の証人を1人でよいと考える。
  • 法務局保管の自筆証書遺言にも検認が必要と考える。
  • 兄弟姉妹にも遺留分があると考える。
  • 遺留分侵害額請求を当然に現物返還請求と考える。
  • 相続登記を任意の手続のままと考える。

試験での出題のされ方

F03では複数の広いExam_Slotに接続します。

EX-F-007にはS002~S005が接続し、法定相続人・法定相続分を判断する能力枠です。

EX-F-011にはS007が接続し、親族関係図から相続人・法定相続分を判断する実技能力枠です。

EX-F-005にはS009・S010・S017が接続し、相続・贈与の手続・期限を判断する能力枠です。

EX-F-002にはS013・S014・S016が接続し、遺言・遺留分・相続法の基本を判断する能力枠です。

これらはいずれも2024~2026 CBT公表分で3/3、Frequency_Rate 100、Past_Exam_Frequency Aとして管理されています。

S001・S006・S008・S011・S012・S015はUNVERIFIEDです。UNVERIFIEDは、当該Question_Slotへ過去問頻度を直接付与していない管理状態であり、出題なし・低頻度を意味しません。

3/3・100は各Exam_Slotという広い能力枠全体の観測値です。「法定相続分1/2」「3か月」「証人2人」「遺留分1/2」などの個別知識が、それぞれ毎回出題されたという意味へ読み替えません。

公式過去問は能力抽象化にのみ利用し、人物名・親族構成・金額・選択肢・図表配置を再現しません。

まとめ

  • 相続は人の死亡で開始。
  • 配偶者は常に相続人、血族は子→直系尊属→兄弟姉妹の順。
  • 配偶者+子は1/2ずつ。
  • 配偶者+直系尊属は2/3と1/3。
  • 配偶者+兄弟姉妹は3/4と1/4。
  • 子が先に死亡するなど一定の場合、孫等が代襲相続。
  • 民法上の養子は原則実子と同様に相続人。
  • 承認・放棄は相続開始を知った時から3か月以内。
  • 限定承認は共同相続人がある場合は全員共同。
  • 遺産分割には現物・代償・換価分割等。
  • 普通方式の遺言は自筆証書・公正証書・秘密証書。
  • 自筆証書遺言は本文・日付・氏名を原則自書し、財産目録には方式特例。
  • 公正証書遺言は証人2人以上。
  • 法務局保管の自筆証書遺言は検認不要。
  • 兄弟姉妹に遺留分はない。
  • 相続登記は2024年4月1日から義務化され、基本は取得を知った日から3年以内。

練習のしかた

  1. 配偶者と子がいる場合の法定相続人を答える。
  2. 配偶者と直系尊属の法定相続分を答える。
  3. 配偶者と兄弟姉妹の法定相続分を答える。
  4. 子が先に死亡し孫がいる場合の代襲相続を説明する。
  5. 民法上の養子が相続人となるか判断する。
  6. 相続放棄の熟慮期間を答える。
  7. 限定承認を誰が行うか答える。
  8. 現物・代償・換価分割を区別する。
  9. 普通方式の遺言3種類を答える。
  10. 自筆証書遺言の自書原則と財産目録特例を説明する。
  11. 公正証書遺言に必要な証人数を答える。
  12. 法務局保管の自筆証書遺言に検認が必要か答える。
  13. 兄弟姉妹に遺留分があるか答える。
  14. 直系尊属のみの場合の遺留分割合を答える。
  15. 相続登記の基本期限を答える。

FP2級へのつながり

FP2級では、相続欠格・廃除、半血兄弟姉妹、特別受益・寄与分、遺産分割の詳細、自筆証書遺言の訂正方式、遺言執行、遺留分侵害額請求の期間、相続登記義務違反の正当理由や過料などを詳しく扱います。

FP3級では、相続人順位、法定相続分、代襲相続、3か月の熟慮期間、遺言方式、遺留分、相続登記3年義務という骨格を正確に身につけます。

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