この単元で身につけること
この単元を学び終えると、次のことができるようになります。
- 公的医療保険・介護保険・労災保険・雇用保険の役割を区別できる。
- 健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度の基本的な加入対象を整理できる。
- 傷病手当金と健康保険の任意継続について、重要な期間・期限を判断できる。
- 介護保険の第1号・第2号被保険者を区別できる。
- 労災保険の保険料負担・特別加入、雇用保険の基本手当・育児休業給付の基本を説明できる。
- 介護休業の取得上限を判断できる。
公的年金の詳細は次のFP3-A04で学びます。
全体像
社会保険は、病気・けが・要介護・失業・労働災害などの生活上のリスクに、社会全体で備える公的な仕組みです。各制度の加入要件に応じて被保険者となり、保険料などを財源として必要な給付を行います。
FP3級で扱う社会保険は、大きく次の4つの柱で整理できます(公的年金を含めれば5つの柱ですが、年金はA04で扱います)。
- 公的医療保険:病気・けがの医療費に備える。健康保険等の被用者保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度など。
- 介護保険:加齢に伴う要介護状態に備える。市町村(特別区を含む)が保険者。
- 労災保険:仕事中や通勤中の負傷・疾病等に備える。
- 雇用保険:失業や育児・介護による休業等に備える。
労災保険と雇用保険をあわせて「労働保険」と呼びます。FPの相談実務では、「そのリスクはどの制度がカバーするのか」を正しく交通整理できることが出発点になります。
用語の説明
- 被保険者:保険制度の適用を受ける本人。
- 被扶養者:健康保険で被保険者に扶養され、一定要件のもとで給付を受ける家族。
- 傷病手当金:健康保険の被保険者が、業務外の病気やけがで働けない場合などに支給される所得補償の給付。
- 任意継続被保険者:退職などで健康保険の資格を失った後も、一定要件で従前の健康保険を継続する人。
- 特別加入:一人親方等の一定の者が、要件を満たして労災保険へ加入できる制度。
- 基本手当:雇用保険の失業等給付の中心となる給付。
- 介護休業:対象家族の介護のために育児・介護休業法に基づいて取得する休業。
基本ルール
公的医療保険の加入の整理:日本は国民皆保険であり、誰もがいずれかの公的医療保険に加入します。会社員等は健康保険(被用者保険)、その扶養家族は被扶養者となります。国民健康保険は、他の医療保険制度(被用者保険・後期高齢者医療制度)に加入していない住民を基本的な対象とする制度です。つまり、健康保険の被保険者やその被扶養者、後期高齢者医療制度の被保険者、生活保護受給者などは、国民健康保険の被保険者にはなりません(LN-A-173)。自営業者やフリーランスなどが代表的な加入者です。
傷病手当金の待期:業務外の病気・けがの療養のため働けない日が連続3日間続くと待期が完成し、4日目以降の働けない日について支給されます(LN-A-020)。
任意継続被保険者:退職後も健康保険に残る制度で、①資格喪失日の前日まで継続して2か月以上の被保険者期間があること(LN-A-016)、②資格喪失日(通常は退職日の翌日)から20日以内に申出をすること(LN-A-017)が要件です。任意継続被保険者でいられる期間は最長2年です(LN-A-018)。
介護保険の被保険者:第1号被保険者は65歳以上の者(LN-A-024)、第2号被保険者は40歳以上65歳未満の医療保険加入者です(LN-A-025)。保険者は市町村(特別区を含む)です。
労災保険:労働者の業務災害・通勤災害等に対して給付を行う制度で、保険料は全額事業主負担です(LN-A-131)。労働者本人の負担はありません。また、本来対象外の中小事業主等・一人親方等・海外派遣者等は、一定の要件の下で特別加入できます(LN-A-132)。
雇用保険の基本手当:一般の離職者(特定受給資格者・特定理由離職者に該当しない者)は、原則として離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あることが受給資格の要件です(LN-A-026)。
育児休業給付:育児休業等を取得した雇用保険の被保険者に支給される、雇用保険の給付制度です(LN-A-172)。健康保険の給付ではない点に注意してください。
介護休業:育児・介護休業法に基づき、要介護状態にある対象家族1人につき通算93日まで取得できます(LN-A-033)。
重要な数字
| 項目 | 数字 | ポイント |
|---|---|---|
| 傷病手当金の待期 | 連続3日 | 支給は4日目以降の働けない日から |
| 任意継続:退職前の被保険者期間 | 継続2か月以上 | 資格喪失日の前日まで |
| 任意継続:申出期限 | 20日以内 | 資格喪失日(通常は退職日の翌日)から起算 |
| 任意継続:加入できる期間 | 最長2年 | 資格取得日から |
| 介護保険 第1号被保険者 | 65歳以上 | 市町村の区域内に住所を有する者 |
| 介護保険 第2号被保険者 | 40歳以上65歳未満 | 医療保険加入者であることが要件 |
| 労災保険の保険料 | 全額事業主負担 | 労働者負担なし(雇用保険料は労使双方負担) |
| 基本手当の原則受給資格 | 離職前2年間に12か月以上 | 一般の離職者の場合 |
| 介護休業の取得上限 | 通算93日 | 対象家族1人につき |
「3日・20日・2か月・2年・93日・65歳・40歳」という数字の混同が失点の典型パターンです。表の右列の「何から数えるか・誰の要件か」とセットで覚えましょう。
具体例
会社員の高田さん(44歳)を例に整理します。
- 休日のけがなど業務外の傷病では、公的医療保険の対象を確認します。条件を満たせば傷病手当金も検討します。
- 仕事中の負傷であれば、労災保険の対象となるかを確認します。
- 44歳で医療保険に加入しているため、介護保険では第2号被保険者です。
- 退職後は、健康保険の任意継続、国民健康保険、家族の被扶養者となる場合などから条件に合う制度を確認します。
同じ「病気・休業・退職」でも、原因や加入状況によって制度が変わる点が重要です。
数字・期間問題の解き方
この単元は複雑な給付額計算より、年齢・期間・期限を正しく読み分けることが中心です。
- 何の制度かを特定する。
- 「年齢」「加入期間」「申出期限」「取得上限」のどれを問われているか確認する。
- 問題文の前提と、法令数値マスタの確定値を対応させる。
たとえば任意継続なら、「退職前に継続2か月以上」「資格喪失日から20日以内」「加入できる期間は最長2年」を区別します。傷病手当金なら「連続3日の待期」と「4日目以降の支給対象」を分けて判断します。
間違いやすい点
- 労災保険料を労使折半と誤解する:労災保険料は全額事業主負担です。
- 傷病手当金の待期を通算3日と覚える:待期は連続3日で、支給対象は4日目以降です。
- 任意継続の数字を混同する:「2か月・20日・2年」を時系列で整理します。
- 介護保険第2号の条件を年齢だけで判断する:40歳以上65歳未満に加え、医療保険加入者であることが必要です。
- 国民健康保険をすべての住民が加入する制度と考える:他の医療保険加入者・被扶養者などは基本対象から除かれます。
- 育児休業給付を健康保険の給付と混同する:育児休業給付は雇用保険の給付です。
試験での出題のされ方
- 学科では、雇用保険・労災保険(EX-A-002)と健康保険・介護保険(EX-A-007)が、いずれも2024~2026年のCBT公表3セットすべてで観測された頻出論点です(各3/3・頻度A)。観測論点は、雇用保険の基本手当・給付制限(2024)、高年齢雇用継続基本給付金(2025)、労災保険料の事業主負担(2026)、傷病手当金(2024)、健康保険の任意継続(2025)、介護保険の第2号被保険者(2026)と、本単元の中核とそのまま重なります。
- 実技(日本FP協会・資産設計提案業務)では、社会保険・公的年金の制度要件を資料から判断する問題(EX-A-015)が公表3セットすべてで観測されており(3/3・頻度A)、2026年には健康保険の任意継続が出題論点として確認されています。
- 社会保険制度の全体像、国民健康保険の加入対象、労災保険の特別加入、育児休業給付・雇用保険二事業、介護休業の93日は、公式試験範囲に含まれる論点ですが、現行CBT公表分では観測が確認されていない範囲補完論点です(Past_Exam_Frequency=UNVERIFIED)。観測がないことは「出題されない」ことを意味しないため、基礎として押さえておきましょう。
- 本教材は法令基準日(2026年4月1日)時点で施行されている制度を基準とし、高額療養費の2026年8月改正など未施行の内容は現行制度として扱いません。
まとめ
- 社会保険の4つの柱:公的医療保険(病気・けが)、介護保険(要介護)、労災保険(業務・通勤災害)、雇用保険(失業・休業)。年金はA04で学習。
- 国民健康保険は「他の医療保険制度に加入していない住民」が対象。被扶養者・後期高齢者医療加入者・生活保護受給者は対象外。
- 傷病手当金は連続3日の待期後、4日目以降から支給。
- 任意継続は「2か月以上・20日以内・最長2年」。
- 介護保険は第1号=65歳以上、第2号=40歳以上65歳未満の医療保険加入者。
- 労災保険料は全額事業主負担。中小事業主・一人親方等は特別加入が可能。
- 基本手当の原則受給資格は「離職前2年間に被保険者期間12か月以上」。
- 育児休業給付は雇用保険の給付。介護休業は対象家族1人につき通算93日。
練習のしかた
まず「制度名→対象リスク」を即答できるようにし、次に数字を制度とセットで覚えます。
- 連続3日 → 傷病手当金の待期
- 2か月・20日・2年 → 任意継続
- 65歳/40~64歳 → 介護保険
- 2年間に12か月 → 雇用保険基本手当
- 93日 → 介護休業
最後に、人物の年齢・加入状況・退職日などの条件から適用制度を判断する実技形式で仕上げます。
FP2級へのつながり
FP2級では、本単元で学んだ各制度について、給付額の計算(傷病手当金の支給額、基本手当の給付日数・日額など)や適用要件の詳細(高額療養費の自己負担限度額の区分、介護保険の給付内容、育児・介護休業給付の支給率など)まで踏み込みます。FP3級の段階では、「どの制度が・誰を・何から守るのか」という制度の骨格と、待期3日・93日・12か月といった基本数値を正確に押さえることが、FP2級の詳細論点を積み上げるための土台になります。
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