この単元で身につけること
この単元を学び終えると、次のことができるようになります。
- 公的年金の2階建て構造と、国民年金の第1号~第3号被保険者の区分を説明できる。
- 国民年金の強制加入年齢(20歳以上60歳未満)と、保険料の免除・納付猶予・学生納付特例の違い(特に所得審査の対象者)を区別できる。
- 厚生年金保険の保険料(保険料率18.3%・労使折半)と国民年金との関係を説明できる。
- 老齢基礎年金の受給資格期間(10年)・支給開始(原則65歳)・繰上げ(1か月0.4%減額)・繰下げ(1か月0.7%増額)を判断できる。
- 付加年金(付加保険料月額400円、年金額は200円×納付月数)を計算できる。
- 障害基礎年金の基本構造(1級は2級より高額、子の加算あり)を理解する。
- 遺族基礎年金の対象(子のある配偶者または子)と遺族厚生年金の受給順位を判断できる。
- 離婚時年金分割・在職老齢年金・年金請求手続・年金生活者支援給付金の基本的な位置づけを知る。
全体像
日本の公的年金は「2階建て」の構造です。1階部分が全国民共通の国民年金(基礎年金)、2階部分が会社員・公務員が上乗せで加入する厚生年金保険です。
国民年金の被保険者は次の3つに区分されます。
- 第1号被保険者:自営業者・学生など(第2号・第3号に該当しない20歳以上60歳未満の者)。保険料は自分で納めます。
- 第2号被保険者:厚生年金保険に加入する会社員・公務員など。厚生年金の保険料を納めることで、国民年金にも加入している扱いになります。
- 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者(原則20歳以上60歳未満)。自分で保険料を納める必要はありません。
公的年金の給付は、老齢給付(長生きに備える)、障害給付(障害状態に備える)、遺族給付(死亡に備える)の3種類です。「基礎年金+厚生年金」という2階建ての形は、老齢・障害・遺族のいずれの給付にも共通しています。
用語の説明
- 受給資格期間:老齢基礎年金の受給に必要な期間。納付済期間と免除期間等を合算して10年以上。
- 繰上げ受給:受給開始を60~64歳に早めること。年金額は減額されます。
- 繰下げ受給:受給開始を66~75歳に遅らせること。年金額は増額されます。
- 付加年金:付加保険料(月額400円)を上乗せ納付した人が、老齢基礎年金に上乗せで受け取る年金。
- 追納:免除・猶予された保険料を後から納めること(10年以内)。
- 離婚時年金分割:婚姻期間中の厚生年金記録を離婚時に当事者間で分割する制度。
- 在職老齢年金:賃金との合計額に応じて老齢厚生年金が支給停止されることがある仕組み。
- 年金生活者支援給付金:所得が一定基準以下の年金受給者への上乗せ給付金。
基本ルール
国民年金:日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者が基本的な強制加入対象です(LN-A-037)。2026年度の国民年金保険料は月額17,920円、老齢基礎年金の受給資格期間は10年以上です(LN-A-038・039)。
免除・猶予・学生納付特例:所得審査の対象者が異なります。申請免除は本人・配偶者・世帯主、納付猶予は本人・配偶者、学生納付特例は申請者本人です(LN-A-146・149・150)。対象期間は一定条件で10年以内の追納が可能です(LN-A-153)。
厚生年金:保険料率は18.3%で、事業主と被保険者が労使折半します(LN-A-041・042)。
老齢給付:老齢基礎年金は原則65歳から。1962年4月2日以後生まれ等の対象者の繰上げは1か月0.4%減額、繰下げは対象世代で1か月0.7%増額します(LN-A-044・048・051)。付加保険料は月額400円、付加年金の年額は「200円×納付月数」です(LN-A-053・054)。
障害・遺族給付:障害基礎年金には1級・2級があり、1級の基本額は2級より高く設定されています。遺族基礎年金の基本的な対象遺族は「子のある配偶者または子」です(LN-A-055・056・059)。
年金分割:2026年4月1日以後に離婚等をした場合の分割請求期限は5年以内です。3号分割は2分の1で当事者の合意を必要とせず、合意分割の按分割合の上限は50%です(LN-A-061~063)。
重要な数字
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 国民年金の強制加入年齢 | 20歳以上60歳未満 |
| 国民年金保険料(2026年度) | 月額17,920円 |
| 厚生年金保険料率 | 18.3%(労使折半) |
| 老齢基礎年金の受給資格期間 | 10年以上 |
| 老齢基礎年金の支給開始 | 原則65歳 |
| 老齢基礎年金の満額(2026年度) | 月額70,608円(1956年4月2日以後生まれ) |
| 繰上げ | 60~64歳・1か月0.4%減額・最大24%減額 |
| 繰下げ | 66~75歳・1か月0.7%増額・最大84%増額 |
| 付加保険料/付加年金 | 月額400円/年額200円×納付月数 |
| 追納可能期間 | 10年以内 |
| 遺族年金における「子」 | 18歳到達年度末まで(または20歳未満で障害等級1・2級) |
| 遺族厚生年金の額 | 報酬比例部分×3/4 |
| 離婚時年金分割の請求期限 | 5年以内(2026年4月1日以後の離婚等) |
| 3号分割/合意分割上限 | 50%/50% |
| 在職老齢年金の支給停止基準額 | 月65万円(2026年4月から) |
「0.4%と0.7%」「400円と200円」「10年(受給資格)と10年(追納)」のように紛らわしいペアが多いので、必ず用途とセットで覚えましょう。
具体例
自営業の村田さん(30歳・第1号被保険者)の例で整理します。
- 村田さんは20歳から60歳まで国民年金に加入し、2026年度は月額17,920円の保険料を納めます。将来、受給資格期間10年以上を満たせば、原則65歳から老齢基礎年金を受け取れます。
- 月額400円の付加保険料を120か月納めると、65歳から「200円×120か月=24,000円」の付加年金(年額)が上乗せされます。
- 妻(28歳)が会社員(第2号被保険者)なら、厚生年金保険料(18.3%・労使折半)を納め、老後は老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取ります。
- 学生時代に収入が少なければ学生納付特例を申請できました。本人の所得だけで審査されるため、親の所得が高くても利用できます。
計算のしかた
例題1(付加年金): 付加保険料を180か月納付した人が65歳から受け取る付加年金の年額はいくらか。
- 何を求めるか:付加年金の年額
- 使用する式:200円×付加保険料納付月数(LN-A-054)
- 数値代入:200円×180か月
- 計算:=36,000円
- 単位確認:円(年額)
- 正解:36,000円
例題2(繰下げ増額率): 65歳0か月で受給権を得た人が、68歳0か月まで繰り下げて受給する場合の増額率は。
- 何を求めるか:繰下げによる増額率
- 使用するルール:65歳到達月から繰下げ申出月の前月まで、1か月につき0.7%増額(LN-A-051)
- 数値代入:0.7%×36か月(65歳0か月→68歳0か月=36か月)
- 計算:=25.2%
- 確認:増額は生涯継続
- 正解:25.2%増額
繰下げの増額計算は「66歳から数える」のではなく、65歳到達月から数える点に注意してください。
間違いやすい点
- 繰上げ・繰下げの混同:繰上げは0.4%/月の減額、繰下げは0.7%/月の増額です。
- 400円と200円の混同:付加保険料は月400円ですが、付加年金は200円×納付月数で計算します。
- 免除・猶予・学生納付特例の混同:所得審査対象は、申請免除=本人・配偶者・世帯主、納付猶予=本人・配偶者、学生納付特例=本人のみです。
- 遺族基礎年金を配偶者なら受給できると考える:基本対象は「子のある配偶者または子」です。
- 年金分割の旧期限を使う:2026年4月1日以後の離婚等では請求期限は5年以内です。
試験での出題のされ方
過去問分析マスタでは、EX-A-003「国民年金」、EX-A-008「老齢年金」、EX-A-009「遺族年金」、EX-A-015「社会保険・公的年金の適用」が2024~2026のCBT公表分でいずれも3/3観測されています。
EX-A-003では第1号被保険者の年齢、第3号被保険者、学生納付特例、EX-A-008では繰上げ・繰下げ・付加年金、EX-A-009では遺族基礎年金・遺族厚生年金が年度ごとに観測されています。EX-A-015では2024年に遺族基礎年金、2025年に老齢基礎年金の繰上げ・繰下げが観測されています。
S003の厚生年金の基本、S006の障害給付、S008の年金分割等は公式範囲を補完するSlotで、Past_Exam_FrequencyはUNVERIFIEDです。これは「出題なし」や「低頻度」を意味しません。
まとめ
- 公的年金は国民年金を基礎とし、厚生年金が上乗せされる構造で整理する。
- 国民年金は20歳以上60歳未満が基本的な強制加入対象。受給資格期間は10年以上。
- 厚生年金保険料率は18.3%で労使折半。
- 老齢基礎年金は原則65歳。繰上げは減額、繰下げは増額。
- 付加年金は200円×付加保険料納付月数。
- 遺族基礎年金の基本対象は「子のある配偶者または子」。
- 2026年4月1日以後の離婚等に係る年金分割の請求期限は5年以内。
練習のしかた
まず、05_Numbersの表から「0.4/0.7」「400/200」「10年・65歳・18.3%」を即答できるまで反復します。次に、免除・猶予・学生納付特例を「所得審査の対象者」という1つの軸で自分で表に書き出してください。遺族給付は「子のある配偶者または子」を出発点に遺族厚生年金の順位を積み上げると混乱しません。仕上げに本単元のTF・三答択一・付加年金計算と、実技CASE(繰下げ増額率、遺族が受け取れる年金の判断)を解き、「誰が・何歳で・どの給付を」の読み取りを確実にしましょう。
FP2級へのつながり
FP2級では、老齢厚生年金の報酬比例部分の計算、加給年金・振替加算、在職老齢年金の具体的な支給停止額の計算、障害厚生年金や中高齢寡婦加算を含む遺族給付の詳細、併給調整の具体的な組合せへと発展します。FP3級の段階では、2階建て構造・被保険者区分・「10年・65歳・0.4%・0.7%・200円×月数・子のある配偶者または子」という基本の骨格を正確に固めることが、FP2級の詳細計算に進むための最短ルートです。
関連する問題
- FP技能士3級 ライフプランニングと資金計画 一問一答 第6問〜第10問
- FP技能士3級 ライフプランニングと資金計画 択一式(初級) 第6問〜第10問
- FP技能士3級 ライフプランニングと資金計画 択一式(初級) 第11問〜第15問
- FP技能士3級 ライフプランニングと資金計画 計算問題 第1問〜第5問
- FP技能士3級 ライフプランニングと資金計画 実技・事例問題 第1問〜第7問

コメント