この単元で身につけること
この単元では、公的年金に上乗せして老後資金を準備する制度を整理します。学習後は、確定給付型年金(DB)と確定拠出型年金(DC)の違い、企業型DCとiDeCo、国民年金基金、小規模企業共済・中小企業退職金共済、財形年金、個人年金の基本を区別できることを目標にします。
さらに、年金を受け取ったときの基本的な所得区分を整理します。税額の詳細計算ではなく、「どの制度の掛金・受取が、どの税区分に関係するか」を理解することがFP3級では重要です。
全体像
公的年金だけでなく、企業年金や個人で準備する年金・退職準備制度を組み合わせることで、老後資金を補うことができます。制度名が多いため、まず「企業が用意する制度」「個人が自分で加入する制度」「事業主や中小企業の退職準備」「個人年金・財形」の4つに分けます。
企業年金では、給付額の考え方でDBとDCを区別します。DBは加入期間などに基づき、あらかじめ給付額が定められる仕組みです。DCは拠出した掛金と運用収益の合計を基に給付額が決まります。企業型DCとiDeCoは、いずれもDCの考え方を持つ制度です。
iDeCoは個人型確定拠出年金で、加入区分などによって掛金上限が異なります。支払ったiDeCo掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除の対象です。なお、この教材は2026年4月1日時点を基準としているため、その後に施行される制度改正は現行制度として扱いません。
用語の説明
- DB(確定給付型年金):加入期間などに基づいて、あらかじめ給付額が定められている企業年金。
- DC(確定拠出型年金):拠出した掛金と運用収益の合計を基に給付額が決まる年金。
- 企業型DC:企業が制度を実施する確定拠出年金。
- iDeCo:個人型確定拠出年金。加入者が老後資金を準備するために利用する。
- 国民年金基金:主に国民年金第1号被保険者等の老後所得を上乗せする制度。
- 小規模企業共済:小規模企業の経営者や個人事業主などの退職・廃業時の資金準備を支える制度。
- 中小企業退職金共済(中退共):中小企業の従業員の退職金準備を支える制度。
- 非適格年金:本教材で、法定の企業年金制度等とは別に、企業独自の年金や生命保険契約等を利用した退職年金を整理するために用いる名称。法令上の正式な制度名ではありません。
- 財形年金貯蓄:勤労者が給与から定期的に積み立て、老後に年金として受け取る財形制度。
- 個人年金:民間の保険商品などを利用して個人が老後資金を準備する仕組み。
基本ルール
DBとDCは、「給付額が先に決まるか」「拠出額と運用結果を基に給付額が決まるか」で整理します。DBでは加入期間などに基づき給付額があらかじめ定められ、DCでは掛金と運用収益の合計を基に給付額が決まります(LN-A-133・134)。
iDeCoでは、掛金の上限は加入区分等によって異なります。2026年4月1日時点の法令数値マスタでは、第3号被保険者の上限は月額23,000円など、区分別の確定値が管理されています。老齢給付金は、通算加入者等期間が10年以上ある場合、原則60歳から受給できます(LN-A-072・074)。支払ったiDeCo掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除の対象です(LN-A-080)。
国民年金基金では、国民年金の任意加入被保険者である60~64歳の人も加入対象となり得ます(LN-A-082)。掛金上限は2026年11月分まで月額68,000円ですが、iDeCoとの合算管理などの条件があります(LN-A-081)。
小規模企業共済の掛金は月額1,000円から70,000円まで500円単位で設定でき、支払掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象です(LN-A-083~085)。中退共の通常掛金は月額5,000円から30,000円までの所定額から選択し、短時間労働者には2,000円・3,000円・4,000円の特例があります(LN-A-086・087)。
重要な数字
| 論点 | 2026年4月1日時点の確定値 |
|---|---|
| iDeCo・第3号被保険者の拠出上限 | 23,000円/月 |
| iDeCo老齢給付金の原則受給開始 | 60歳(通算加入者等期間10年以上等) |
| 国民年金基金の掛金上限 | 68,000円/月(2026年11月分まで) |
| 国民年金基金・60歳以上の加入 | 60~64歳の国民年金任意加入被保険者 |
| 小規模企業共済 | 1,000~70,000円/月、500円単位 |
| 中退共・通常掛金 | 5,000~30,000円/月 |
| 財形年金・契約時年齢 | 55歳未満 |
| 財形年金・積立期間 | 5年以上 |
| 財形年金・受取開始 | 60歳以降 |
制度改正で掛金上限等が変わる場合があります。教材ではLaw_Basis_Date後に施行される改正を現在の制度として混在させません。
具体例
会社員のAさんが老後資金を準備するとします。
勤務先に企業型DCがある場合、Aさんはその制度内容を確認します。一方、iDeCoを利用する場合は、自分の加入区分や勤務先の企業年金の有無などによって掛金上限を確認します。どちらもDCなので、将来の給付額は掛金と運用収益の結果に影響されます。
個人事業主のBさんであれば、小規模企業共済や国民年金基金、iDeCoなどが老後・退職準備の候補になります。ただし、各制度は加入対象や掛金上限、併用時の条件が異なるため、「誰が利用する制度か」を最初に確認することが大切です。
数字問題の考え方
このUnitの固定Question_Slotには計算問題はありません。数字は、複雑な計算より「何の上限・年齢・期間か」を判断するために使います。
たとえば「55歳未満」は財形年金の契約時年齢、「5年以上」は積立期間、「60歳以降」は年金受取開始の基本条件です。iDeCoの60歳という数字は、通算加入者等期間10年以上等の場合の老齢給付金の原則受給開始年齢です。
同じ60歳でも制度によって意味が違うため、数字だけを単独で暗記せず、制度名と条件をセットで覚えます。
間違いやすい点
- DBとDCを逆にする:DBは給付額があらかじめ定められ、DCは掛金と運用収益を基に給付額が決まります。
- iDeCoの上限を全加入者共通と考える:加入区分や企業年金の有無などで異なります。
- 国民年金基金とiDeCoの掛金上限を別々に最大まで使えると一般化する:合算管理などの条件があります。
- 小規模企業共済と中退共を同じ制度と考える:経営者・個人事業主の退職準備と、中小企業の従業員の退職金準備という役割を区別します。
- 財形年金の数字を混同する:契約時55歳未満、積立5年以上、受取60歳以降を整理します。
- 年金の所得区分をすべて同じと考える:公的年金等と、本人負担・本人受取の個人年金では所得区分が異なります。
試験での出題のされ方
過去問分析マスタでは、EX-A-004「確定拠出年金」とEX-A-005「私的年金・退職準備制度」が2024~2026のCBT公表分でともに3/3観測されています。
EX-A-004では、2024年に公務員のiDeCo拠出限度額、2025年に第3号被保険者のiDeCo、2026年にiDeCo老齢給付金の受取方法が観測されています。EX-A-005では、2024年に国民年金基金、2025年に小規模企業共済、2026年に中退共が観測されています。
企業年金全体像、非適格年金、個人年金・財形年金、年金と税金の一部Slotは公式範囲を補完するために設けており、Past_Exam_FrequencyはUNVERIFIEDです。これは「出題されない」ことを意味しません。
まとめ
- DBは給付額があらかじめ定められる。
- DCは掛金と運用収益の合計を基に給付額が決まる。
- iDeCo掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除の対象。
- 国民年金基金、小規模企業共済、中退共は対象者と役割を区別する。
- 財形年金は契約時55歳未満、積立5年以上、受取60歳以降が基本。
- 公的年金等は公的年金等に係る雑所得、本人負担・本人受取の個人年金は公的年金等以外の雑所得となる。
- 制度改正の施行日前後を混在させない。
練習のしかた
最初に制度を「DB」「DC」「退職準備制度」「個人年金・財形」「税金」に分類します。次に、対象者・掛金・受取・税区分のどれを問われているか確認します。
特にEX-A-004とEX-A-005では年度ごとに異なる制度要素が観測されているため、1つの数字だけではなく制度全体の基本構造を押さえることが重要です。
「非適格年金」は、03_Termsで示した教材上の整理名称として、法定制度との違いだけを押さえます。
FP2級へのつながり
FP2級では、企業年金の制度設計、確定拠出年金の拠出・移換、退職所得や年金課税などをさらに詳しく扱います。
FP3級では、DBとDCの基本差、主要制度の対象者、代表的な掛金・年齢・期間、受取時の所得区分を正確に整理することが先です。制度名を見て「誰のための制度か」「給付はどう決まるか」「税金はどこで関係するか」を説明できる状態を目指します。
関連する問題
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