この単元で身につけること
このUnitでは、次の2つができるようになることを目指します。
- FP(ファイナンシャル・プランナー)が社会から求められている理由と、FPが守るべき職業上の原則(顧客利益の優先・守秘義務など)を説明できる。
- 税理士法・保険業法・金融商品取引法・弁護士法などの関連法規との関係で、「FPが行ってよい一般的な説明」と「資格や登録がなければ行えない個別の専門業務」の境界を、相談場面に当てはめて判断できる。
全体像
人生には、就職、結婚、住宅購入、子育て、老後、相続など、お金に関わる出来事が次々と訪れます。社会保険や税金、金融商品の仕組みが複雑になり、また人生100年時代といわれるほど老後が長くなった現代では、「自分と家族のお金の計画」を総合的に考える必要性が高まっています。ここで力を発揮するのがFPです。FPは、顧客の家計・保険・住宅・老後資金などの情報をもとに、ライフプラン(人生設計)の実現を資金面から支援する専門家です。
ただし、FPの業務は幅広い分野にまたがるため、税理士・弁護士・保険募集人など、法律で独占業務や登録制度が定められた他の専門家の領域と隣り合っています。FPとして働くうえでは、「どこまでが自分の行える仕事か」という境界の理解が欠かせません。これがこのUnitの中心テーマです。
用語の説明
- 職業倫理:専門家として業務を行ううえで守るべき行動の原則。FPでは顧客利益の優先や守秘義務が代表です。
- 守秘義務:業務で知り得た顧客の情報を、顧客の同意なく第三者に漏らしてはならないという義務。
- 独占業務:特定の資格を持つ人だけが行うことを法律で認められた業務。例として税理士の税務代理などがあります。
- 一般的な説明(一般的情報提供):制度や商品の仕組みなど、誰に対しても当てはまる内容の説明。FPが行えます。
- 個別具体的業務:特定の顧客の事情に立ち入って行う専門業務。法律により資格や登録が必要な場合があります。
基本ルール
FPが守るべきルールは、大きく「職業倫理」と「関連法規との境界」の2つに分かれます。
(1)職業倫理。FPは、自己や第三者の利益ではなく顧客の利益を最も優先して業務を行います。また、業務で知り得た顧客情報について守秘義務を負い、顧客の同意なく他へ漏らしたり利用したりしてはなりません。
(2)税理士法との境界。税務代理、税務書類の作成、個別具体的な税務相談は税理士の独占業務であり、税理士資格のないFPは行えません。ここで重要なのは、有償か無償かを問わず行えないという点です。一方、税制の一般的な仕組みの解説や、仮定の数値を使った税額計算の例示は行えます。
(3)保険業法との境界。保険契約の締結の「代理」または「媒介」にあたる行為を保険募集といい、保険募集を行うには保険業法上の登録等の要件を満たす必要があります。FP資格そのものは保険募集人の登録等を代替しません。したがって、登録のないFPは、保険の一般的な仕組みや必要保障額の考え方の説明はできますが、特定の保険契約の締結の代理・媒介はできません。
(4)金融商品取引法との境界。投資顧問契約に基づいて、金融商品の価値分析に基づく投資判断を助言し報酬を受けるには、投資助言・代理業の登録が必要です。登録のないFPは、経済情勢や金融商品の一般的な仕組みの説明にとどめます。
(5)弁護士法との境界。弁護士でない者が、報酬を得る目的で法律事務を業として取り扱うことは原則として禁止されています。相続争いへの対応など個別の法律判断は弁護士の領域であり、FPは法制度の一般的な説明にとどめます。
重要な数字
このUnitには、暗記すべき金額や年数などの数値はありません。その代わり、「一般的な説明はできる/個別の専門業務はできない」という判断の枠組みそのものを正確に覚えることが、数値の暗記に相当する学習ポイントになります。
具体例
会社員のAさんが、FP(保険募集人の登録なし・税理士資格なし)のBさんに家計の相談をした場面を考えます。Bさんが「生命保険は万一の収入減少に備える商品で、必要保障額は遺族の支出見込みから遺族年金などの収入見込みを差し引いて考えます」と説明することは、一般的な説明としてできます。一方、Bさんが特定の保険会社の商品への申込手続きを代わりに進めること(契約締結の媒介)や、Aさんの前年の収入資料を預かって確定申告書を作成することは、登録・資格が必要な個別業務にあたるため行えません。
計算のしかた
このUnitに計算論点はありません(Calculation_Flag=FALSE)。計算問題は他のUnitで扱います。
よくある間違い
よくある誤解を3つ挙げます。第1に、「FP資格があれば保険や税務の手続きも代行できる」という誤解です。FP資格は他の法律上の資格・登録を代替しません。第2に、「無償なら税務相談を引き受けてよい」という誤解です。個別具体的な税務相談は有償・無償を問わず税理士以外は行えません。第3に、「顧客のためになる情報なら同意なく共有してよい」という誤解です。守秘義務は顧客の同意が原則であり、目的の善し悪しでは解除されません。
試験での出題のされ方
2024~2026の過去問分析マスタでは、このUnitに対応する論点が3年すべてで観測されています。学科では職業倫理や関連法規の正誤・選択判断、実技では相談場面でFPの対応が適切かを判断する力が重要です。税理士法・保険業法・金融商品取引法・弁護士法などについて、「一般的な説明」と「資格・登録が必要な個別業務」を見分けられるようにしておきましょう。
まとめ
FPは、複雑化した家計の課題に総合的に応える専門家であり、顧客利益の優先と守秘義務という職業倫理を土台に活動します。そのうえで、税務代理・税務書類作成・個別税務相談(税理士法)、保険契約締結の代理・媒介(保険業法)、報酬を得て行う投資判断の助言(金融商品取引法)、報酬目的の法律事務(弁護士法)は、資格・登録のないFPには行えません。境界の判断基準は一貫して「一般的な説明はできる、個別の専門業務はできない」です。
練習のしかた
次の3点を自分の言葉で説明できるか確認しましょう。説明できれば、このUnitの学習目標は達成です。
- FPが社会から求められる背景と、守るべき2つの職業倫理は何か。
- 税理士法との関係で、有償・無償を問わず行えない行為は何か。
- 保険募集とは何を指し、登録のないFPにできることとできないことはどこで分かれるか。
FP2級へのつながり
FP2級では、業際とコンプライアンスについて、より込み入った事例(複数の専門家との連携、金融サービス提供法や個人情報保護との関係など)を判断する力が問われます。3級で学んだ「一般的説明と個別業務の境界」という軸は、2級でもそのまま判断の土台になります。
関連する問題
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