学習のポイント
① 商品を仕入れる会社と、自分で作る会社
これまで扱ってきた会社は、商品を仕入れて売る会社でした。この場合、期末に残っている棚卸資産は商品の1種類です。
製造業を営む会社は、材料を買って自分で製品を作ります。作りかけのものも、完成して売れ残ったものもあるため、期末に残る棚卸資産が3種類になります。
| 棚卸資産 | 内容 |
|---|---|
| 材料 | まだ製造に投入していない原材料 |
| 仕掛品 | 製造の途中にあるもの |
| 製品 | 完成したが、まだ売れていないもの |
3つとも貸借対照表の流動資産に表示します。
② 原価が流れていく順序
製造業では、お金をかけた分が次の順に姿を変えていきます。
材料 → 仕掛品 → 製品 → 売上原価
- 材料を製造に投入すると、材料が減って仕掛品が増えます
- 完成すると、仕掛品が減って製品が増えます
- 売れると、製品が減って売上原価になります
売れ残った分だけが、材料・仕掛品・製品として貸借対照表に残ります。
③ 当期総製造費用
当期に製造のためにかけた費用の合計を、当期総製造費用といいます。
当期総製造費用 = 材料費 + 労務費 + 経費
- 材料費:当期に製造へ投入した材料の金額
- 労務費:製造に従事した人にかかった金額
- 経費:材料費・労務費以外で製造にかかった金額
材料費は、買った金額そのままではありません。期首にあった分と当期に買った分の合計から、期末に残った分を差し引きます。
材料費 = 期首材料 + 当期材料購入 - 期末材料
④ 経費に何が入るか
ここで注意が必要なのは、同じ種類の費用でも、製造のためのものかどうかで扱いが変わるという点です。
| 費用 | 扱い |
|---|---|
| 工場の建物・機械の減価償却費 | 経費(製造原価) |
| 工場の水道光熱費など | 経費(製造原価) |
| 事務所の建物の減価償却費 | 販売費及び一般管理費 |
| 事務所の水道光熱費など | 販売費及び一般管理費 |
工場でかかったものは製品を作るための費用なので、製造原価に含めます。事務所でかかったものは製造とは別なので、損益計算書の販売費及び一般管理費に入ります。
⑤ 当期製品製造原価
当期に完成した製品の原価を、当期製品製造原価といいます。
当期製品製造原価 = 期首仕掛品 + 当期総製造費用 - 期末仕掛品
当期にかけた費用の全部が完成するわけではありません。期末に作りかけのものが残れば、その分は製品になっていないので差し引きます。逆に、期首に作りかけだったものは当期に完成する可能性があるので加えます。
⑥ 売上原価
当期に売れた製品の原価が、売上原価です。
売上原価 = 期首製品 + 当期製品製造原価 - 期末製品 ± 原価差異
完成した製品が全部売れるわけではありません。期末に売れ残った分を差し引きます。
原価差異が生じている場合は、不利差異なら売上原価に加算し、有利差異なら減算します。ここでは原価差異のない場合を扱います。
⑦ 3つの式のつながり
⑤と⑥は形がそろっています。どちらも「期首+当期に入ってきた分-期末」です。
| 求めるもの | 期首 | 当期に入ってきた分 | 期末 |
|---|---|---|---|
| 材料費 | 期首材料 | 当期材料購入 | 期末材料 |
| 当期製品製造原価 | 期首仕掛品 | 当期総製造費用 | 期末仕掛品 |
| 売上原価 | 期首製品 | 当期製品製造原価 | 期末製品 |
3つとも「期首+当期に入ってきた分-期末」という共通した形です。ただし、材料費はそのまま次の式へ入るのではなく、労務費・経費と合計して当期総製造費用になります。その当期総製造費用が仕掛品計算の「当期に入ってきた分」となり、そこで求めた当期製品製造原価が製品計算の「当期に入ってきた分」になります。上から順に追えば、材料費から売上原価まで一本でつながります。
⑧ 財務諸表への接続
計算した金額は、次のように財務諸表へ載ります。
| 金額 | 表示場所 |
|---|---|
| 売上 | 損益計算書の売上高 |
| 売上原価 | 損益計算書の売上原価 |
| 期末の材料・仕掛品・製品 | 貸借対照表の流動資産 |
売上総利益 = 売上高 - 売上原価
商品を仕入れて売る会社と、この式は同じです。違うのは売上原価の求め方だけで、そこまでの計算が③〜⑥です。
⑨ 仕訳での動き
②の流れは、次の仕訳になります。
| 場面 | 仕訳 |
|---|---|
| 材料を掛けで購入 | 材料 / 買掛金 |
| 材料を製造に投入 | 仕掛品 / 材料 |
| 完成した | 製品 / 仕掛品 |
| 売れた | 売上原価 / 製品 |
材料・仕掛品・製品という資産の原価を次の資産へ振り替える場面では、増える資産を借方、減る資産を貸方に記入します。一方、材料を掛けで購入する仕訳では、材料という資産の増加を借方、買掛金という負債の増加を貸方に記入します。また、製品が売れたときは売上原価という費用の増加を借方、製品という資産の減少を貸方に記入します。したがって、貸方を単純に「減る側」と覚えるのではなく、科目の種類と増減を確認します。
⑩ 検算
- 材料:期首+購入-投入=期末になっているか
- 仕掛品:期首+当期総製造費用-完成品原価=期末になっているか
- 製品:期首+当期製品製造原価-売上原価=期末になっているか
- 売上総利益:売上高-売上原価になっているか
3つの勘定それぞれで「期首+増加-減少=期末」が成り立てば、計算はつながっています。
⑪ ここで扱わない範囲
- 製造にかかった費用を製品ごとに割り振る細かい方法
- 見積もった原価と実際の原価との差を分解して分析すること
- 部門ごと・工程ごとに原価を計算する方法
これらは工業簿記で扱います。ここでは、集計された金額を決算につなぐことに絞ります。