決算整理後残高試算表(ATB) 計算問題【全3問】

共通前提

  • 会計期間は×1年4月1日から×2年3月31日までである。決算日は×2年3月31日。
  • 商品売買は三分法による。
  • 各問とも、下記の決算整理事項以外に決算整理を要する事項はない
  • 解答は帳簿の勘定科目のまま記入する(財務諸表の表示科目へ読み替えない)。

決算整理仕訳そのものの作り方は C14-T02(商品棚卸)・C14-T04(減価償却)・C14-T07(経過勘定) が扱っています。ここでは、その仕訳を各勘定の残高へ反映して決算整理後残高試算表を完成させることに絞ります。


重要度:A 難易度:標準 論点:同一科目へ複数の決算整理が入る場合の反映(合計不変のケース)

問1(標準)

次の資料にもとづき、決算整理後残高試算表を完成させなさい。

資料1

決算整理前残高試算表

勘定科目 借方 貸方
現金 726,000
売掛金 326,000
繰越商品 187,000
買掛金 301,000
資本金 709,000
売上 1,043,000
仕入 548,000
支払家賃 266,000
合計 2,053,000 2,053,000

資料2 決算整理事項

  1. 期末商品棚卸高は ¥118,000 である。
解答を見る

正解

決算整理後残高試算表

勘定科目 借方 貸方
現金 726,000
売掛金 326,000
繰越商品 118,000
買掛金 301,000
資本金 709,000
売上 1,043,000
仕入 617,000
支払家賃 266,000
合計 2,053,000 2,053,000

算定過程

手順1 決算整理仕訳を作る

(借)仕入 187,000 /(貸)繰越商品 187,000 …… 期首商品の振替 (借)繰越商品 118,000 /(貸)仕入 118,000 …… 期末商品の振替

手順2 科目ごとに反映する

勘定科目 整理前 借方に入る 貸方に入る 決算整理後
繰越商品 借方 187,000 118,000 187,000 借方 118,000
仕入 借方 548,000 187,000 118,000 借方 617,000

仕入 = `548,000 + 187,000 − 118,000` = 617,000 繰越商品 = `187,000 + 118,000 − 187,000` = 118,000(期末商品棚卸高に置き換わる)

この2科目以外は、決算整理の影響を受けないのでそのままです。

手順3 検算する

# 確認 結果
1 決算整理仕訳の借方合計=貸方合計 `187,000 + 118,000 = 305,000` で一致 ✓
2 ATB の借方合計=貸方合計 2,053,000 = 2,053,000

本問では合計額が変わりません。 仕入と繰越商品という借方の科目どうしで振り替えているためです。

誤りとなる処理

  • 仕入を 118,000 と書く:118,000 は期末商品棚卸高であって、仕入の決算整理後残高ではありません。
  • 繰越商品を整理前の 187,000 のままにする:期末商品棚卸高に置き換わります。
  • 売上・支払家賃を消す:収益・費用は ATB に残ります。消えるのは帳簿締切の段階です(C15-T06)。
  • 仕入を「売上原価」と書く:ATB は帳簿の勘定科目のまま記入します。読み替えるのは損益計算書を作るときです(C15-T02)。

確認ポイント:仕入勘定には借方と貸方の両方が入ります。決算整理後残高は、その科目に関係するすべての決算整理を反映した結果です。


重要度:A 難易度:標準 論点:貸方残高科目の増加と、新しく生じる勘定の追加(合計が増えるケース)

問2(標準)

次の資料にもとづき、決算整理後残高試算表を完成させなさい。

資料1

決算整理前残高試算表

勘定科目 借方 貸方
現金 471,000
売掛金 556,000
備品 741,000
備品減価償却累計額 393,000
買掛金 351,000
資本金 902,000
売上 1,011,000
仕入 632,000
支払家賃 257,000
合計 2,657,000 2,657,000

資料2 決算整理事項

  1. 備品について、当期の減価償却費は ¥173,000 である。
  2. 支払家賃のうち ¥23,000 は翌期分である。
解答を見る

正解

決算整理後残高試算表

勘定科目 借方 貸方
現金 471,000
売掛金 556,000
備品 741,000
備品減価償却累計額 566,000
前払家賃 23,000
買掛金 351,000
資本金 902,000
売上 1,011,000
仕入 632,000
支払家賃 234,000
減価償却費 173,000
合計 2,830,000 2,830,000

算定過程

手順1 決算整理仕訳を作る

(借)減価償却費 173,000 /(貸)備品減価償却累計額 173,000 (借)前払家賃 23,000 /(貸)支払家賃 23,000

手順2 科目ごとに反映する

勘定科目 整理前 変化 決算整理後
備品減価償却累計額 貸方 393,000 貸方に 173,000 が加わる 貸方 566,000
減価償却費 (なし) 新しく生じる(借方) 借方 173,000
前払家賃 (なし) 新しく生じる(借方) 借方 23,000
支払家賃 借方 257,000 貸方に 23,000 が入り減る 借方 234,000

備品減価償却累計額 = `393,000 + 173,000` = 566,000 支払家賃 = `257,000 − 23,000` = 234,000

手順3 検算する

# 確認 結果
1 決算整理仕訳の借方合計=貸方合計 `173,000 + 23,000 = 196,000` で一致 ✓
2 ATB の借方合計=貸方合計 2,830,000 = 2,830,000
3 合計の増加額 `2,830,000 − 2,657,000` = 173,000(=減価償却費)✓

本問では合計額が増えます。 減価償却では借方に費用、貸方に累計額が新しく加わるためです。一方、前払家賃の振替は借方どうしの移動なので合計を変えません。

誤りとなる処理

  • 備品を、取得原価から累計額を差し引いた金額だけで書く:ATB では備品と備品減価償却累計額を別々の勘定として残します。貸借対照表では、取得原価・減価償却累計額・差引額などを問題所定の様式に従って表示します(C15-T03)。
  • 備品減価償却累計額を借方に置く:資産に関係しますが勘定残高は貸方です。
  • 減価償却費や前払家賃の行を作り忘れる:決算整理で新しく生じる勘定です。書き落とすと貸借が一致しません。
  • 前払家賃だけ書いて支払家賃を 257,000 のままにする:もとの科目の残高も減ります。

確認ポイント:当期の減価償却費をいくら計上するかという計算は C14-T04、翌期分の家賃をいくらにするかという期間配分は C14-T07 が扱います。本問はどちらも金額が与えられています。


重要度:A 難易度:応用 論点:複数の決算整理を反映した決算整理後残高試算表の完成

問3(応用)

次の資料にもとづき、決算整理後残高試算表を完成させなさい。

資料1

決算整理前残高試算表

勘定科目 借方 貸方
現金 646,000
売掛金 338,000
繰越商品 126,000
備品 819,000
備品減価償却累計額 317,000
買掛金 403,000
資本金 775,000
売上 1,584,000
仕入 928,000
支払家賃 222,000
合計 3,079,000 3,079,000

資料2 決算整理事項

  1. 期末商品棚卸高は ¥237,000 である。
  2. 備品について、当期の減価償却費は ¥168,000 である。
  3. 支払家賃のうち ¥61,000 は翌期分である。
解答を見る

正解

決算整理後残高試算表

勘定科目 借方 貸方
現金 646,000
売掛金 338,000
繰越商品 237,000
備品 819,000
備品減価償却累計額 485,000
前払家賃 61,000
買掛金 403,000
資本金 775,000
売上 1,584,000
仕入 817,000
支払家賃 161,000
減価償却費 168,000
合計 3,247,000 3,247,000

算定過程

手順1 決算整理仕訳を作る

(借)仕入 126,000 /(貸)繰越商品 126,000 (借)繰越商品 237,000 /(貸)仕入 237,000 (借)減価償却費 168,000 /(貸)備品減価償却累計額 168,000 (借)前払家賃 61,000 /(貸)支払家賃 61,000

手順2 科目ごとに反映する

勘定科目 整理前 変化 決算整理後
繰越商品 借方 126,000 借方 237,000/貸方 126,000 借方 237,000
仕入 借方 928,000 借方 126,000/貸方 237,000 借方 817,000
備品減価償却累計額 貸方 317,000 貸方 168,000 貸方 485,000
減価償却費 (なし) 新しく生じる 借方 168,000
前払家賃 (なし) 新しく生じる 借方 61,000
支払家賃 借方 222,000 貸方 61,000 借方 161,000

仕入 = `928,000 + 126,000 − 237,000` = 817,000 備品減価償却累計額 = `317,000 + 168,000` = 485,000 支払家賃 = `222,000 − 61,000` = 161,000

現金・売掛金・備品・買掛金・資本金・売上は、決算整理の影響を受けないのでそのままです。

手順3 検算する

# 確認 結果
1 決算整理仕訳の借方合計=貸方合計 `126,000 + 237,000 + 168,000 + 61,000 = 592,000` で一致 ✓
2 ATB の借方合計=貸方合計 3,247,000 = 3,247,000
3 合計の増加額 `3,247,000 − 3,079,000` = 168,000(=減価償却費)✓

商品棚卸と前払家賃の振替は合計を変えず、減価償却だけが合計を増やしています

誤りとなる処理

  • 決算整理事項を1つでも反映し忘れる:貸借は一致したままになることがあり、合計だけでは気づけません。各決算整理事項に必要な仕訳がすべて残高へ反映されたかを確認してください。
  • 貸借が一致したので正しいと判断する:同じ金額を別の科目へ入れても合計は一致します。科目ごとの反映を確かめてください。
  • 収益・費用を消す/当期純利益を繰越利益剰余金へ加える:どちらも帳簿締切の段階の処理です(C15-T06)。

確認ポイント:確認は「決算整理仕訳 → 科目ごとの反映 → 残高の側 → 合計」の順で行います。合計から先に見ると、科目の取り違えを見落とします。



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