1.このページで学ぶこと
決算整理のうち、決算日まで残ってしまった「一時的な勘定」を、正式な姿へ整理する処理をまとめて扱います。
対象は次の4つです。
- 現金過不足
- 仮払金
- 仮受金
- 当座預金の貸方残高(当座借越への振替)
それぞれの勘定がどういう取引で生まれるかという日常取引の側は、次の3単元ですでに扱っています。
| 単元 | 扱う内容 |
|---|---|
| C04-T01 現金と現金過不足 | 現金過不足の発生・期中の原因判明 |
| C05-T08 仮払金・仮受金 | 概算払い・内容不明の入金・期中の精算 |
| C04-T03 当座借越 | 当座借越の期中処理・貸方残高の算定 |
このページは、決算日という一時点で、残ってしまった残高をどう始末するかに集中します。
2.一時的な勘定とは
一時的な勘定とは、取引の時点では中身が確定していないため、とりあえず入れておく箱として使う勘定のことです。
| 勘定科目 | どんなときに使うか | 分類 |
|---|---|---|
| 現金過不足 | 帳簿の現金残高と実際有高が合わず、原因を調べている | 仮勘定 |
| 仮払金 | 金額や内容が確定しないまま支払った | 資産 |
| 仮受金 | 内容が分からない入金があった | 負債 |
本教材の決算整理問題では、現金過不足は決算日までに原因が分からない残額を雑損・雑益へ整理し、仮払金・仮受金は決算整理事項で内容が判明した場合に本来の科目へ振り替えるものとして扱います。問題文に判断材料がないのに、仮払金・仮受金の振替先を推測してはいけません。
当座預金の貸方残高は、これらとは性格が少し違います。当座預金自体は資産の科目ですが、貸方残高は借越状態を表します。本教材の基本ケースでは、その貸方残高を当座借越などの負債へ振り替えて表示を整えます。
| 整理の種類 | 対象 | 何をするか |
|---|---|---|
| 内容を確定する整理 | 現金過不足・仮払金・仮受金 | 中身が判明した分を正式な科目へ振り替える |
| 表示を直す整理 | 当座預金の貸方残高 | 貸方残高を、問題条件に従って負債へ振り替える |
3.決算までに整理する理由
決算時に作る財務諸表では、期末時点の財政状態と当期の経営成績を適切に示す必要があります。
- 現金過不足は、決算日まで原因不明額が残る本教材の基本ケースでは、残高の側に応じて雑損・雑益へ整理します。
- 仮払金・仮受金は、決算整理事項で内容が判明した分を本来の科目へ振り替えます。
- 当座預金が貸方残高となる基本ケースでは、その残高を資産としてそのまま表示せず、問題条件に従って負債へ振り替えます。
そのため、本教材では問題文から判断できる範囲で決算整理を行い、整理後の残高を財務諸表へつなげます。処理の順序は次のとおりです。
手順1 決算整理前残高試算表から、一時的な勘定・不自然な残高を見つける 手順2 問題文で、その中身が判明しているかを確認する 手順3 本来の科目を決める 手順4 決算整理仕訳を行う 手順5 整理後の残高を財務諸表へ反映する
4.現金過不足
帳簿の現金残高と実際有高が一致しないとき、差額をいったん現金過不足に入れておきます。
| 状態 | 意味 | 現金過不足の残高 |
|---|---|---|
| 帳簿 > 実際 | 現金が足りない | 借方残高 |
| 実際 > 帳簿 | 現金が多い | 貸方残高 |
発生時の処理そのものは C04-T01 で扱っています。ここで押さえるのは、残高がどちら側にあるかです。この向きが、後の振替先を決めます。
5.現金過不足の原因が判明した場合
原因が分かった分は、現金過不足を取り崩して、本来の科目へ振り替えます。
- 借方残高(不足)で原因が判明 → 現金過不足を貸方で消す
- 貸方残高(過剰)で原因が判明 → 現金過不足を借方で消す
このとき、現金勘定は動かしません。現金の金額は、過不足を発見した時点ですでに実際有高へ合わせてあるからです。
期中に原因が判明した場合の処理は C04-T01 で扱っています。決算日に判明した場合も、振り替えるという処理自体は同じです。
6.原因不明額が残った場合
決算日まで原因が分からなかった分は、雑損または雑益へ振り替えて、現金過不足を空にします。
| 現金過不足の残高 | 状態 | 振替先 |
|---|---|---|
| 借方残高 | 現金が足りなかった | 雑損(費用) |
| 貸方残高 | 現金が多かった | 雑益(収益) |
残高がある側と反対側に記入して消す、というのが基本です。借方残高なら貸方で消し、相手科目が雑損になります。
一部だけ判明した場合
判明分と不明分が混ざっている場合は、1本の仕訳で両方を処理します。
たとえば現金過不足が借方残高 ¥5,100 で、そのうち ¥1,700 が通信費の記帳漏れと判明し、残りは原因不明だったとします。
- 判明分:¥1,700 → 通信費
- 不明分:`5,100 − 1,700 = ¥3,400` → 借方残高なので 雑損
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 通信費 | 1,700 | 現金過不足 | 5,100 |
| 雑損 | 3,400 |
貸借は `1,700 + 3,400 = 5,100` で一致します。
判明分だけを処理して残額を放置してはいけません。 決算整理の目的は、現金過不足を空にすることです。
7.仮払金
金額や内容が確定しないまま支払った額を、いったん入れておく資産の科目です。
出張前に旅費を概算で渡す場合などに使います。支払いの場面そのものは C05-T08 で扱っています。
決算整理前残高試算表に仮払金が残っているということは、その支出の中身がまだ帳簿上は確定していないということです。
8.仮払金の内容判明時
中身が判明したら、仮払金を貸方で取り崩し、本来の科目を借方に計上します。
たとえば仮払金の全額が従業員の出張旅費であったなら、
(借)旅費交通費 /(貸)仮払金
となります。仮払金は資産なので、減らすときは貸方です。
問題文に中身の説明がないのに、それらしい費用へ振り替えてはいけません。 何のための支出だったかは、問題文の条件からしか決まりません。
9.仮受金
内容が分からない入金をいったん入れておく負債の科目です。
振込があったが誰からの何の入金か分からない、といった場合に使います。受取りの場面そのものは C05-T08 で扱っています。
10.仮受金の内容判明時
中身が判明したら、仮受金を借方で取り崩し、本来の科目を貸方に計上します。
たとえば仮受金が得意先からの売掛金の回収であったなら、
(借)仮受金 /(貸)売掛金
となります。仮受金は負債なので、減らすときは借方です。
このとき、入金そのものをもう一度記帳してはいけません。入金時に現金や普通預金の増加はすでに記録済みで、決算整理で行うのは相手科目の置き換えだけです。
11.当座借越
当座預金の残高を超えて支払いができる契約を結んでいる場合、支払いによって当座預金が貸方残高になることがあります。
期中は当座預金勘定1本で処理し、貸方残高のまま記録します。この期中の扱いと、貸方残高の算定は C04-T03 で扱っています。
12.決算時の当座預金貸方残高
決算日に当座預金が貸方残高になっている場合、その実態は銀行から資金を借りている状態です。本教材の基本ケースでは、その貸方残高を資産としてそのまま表示せず、問題条件に従って負債へ振り替えます。
当座預金の貸方残高が ¥63,000 であれば、
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 63,000 | 当座借越 | 63,000 |
となります。
- 借方の理由:貸方残高になっている当座預金を、借方に記入して0に戻す
- 貸方の理由:借りている状態を当座借越(負債)として計上する
これは、決算日に当座預金が貸方残高となっており、それを負債へ振り替える基本ケースの処理です。当座預金の貸方残高が常に借入金である、というように会計実務全般へ広げて理解しないでください。振り替えるかどうか、どの科目へ振り替えるかは、問題の条件で決まります。
13.当座借越への振替
本教材の公開問題では、使用勘定科目マスタのA列正式科目である 当座借越 を正答科目として統一します。
| 決算時の状態 | 本教材で使う科目 |
|---|---|
| 当座預金が貸方残高となり、決算で負債へ振り替える基本ケース | 当座借越 |
公式の標準・許容勘定科目表には許容される別表記もありますが、本教材の公開正答ではA列正式科目を使用するという制作ルールを優先します。
翌期首の再振替
決算日に行った振替は、翌期首に反対の仕訳で戻します。これを再振替といいます。
| 時点 | 仕訳 |
|---|---|
| 決算日 | (借)当座預金 /(貸)当座借越 |
| 翌期首 | (借)当座借越 /(貸)当座預金 |
戻す理由は、翌期の入出金を当座預金勘定で続けて処理できる状態にするためです。再振替をすると、当座預金は再び貸方残高に戻り、その後の入金によって解消されていきます。
再振替では借方と貸方を入れ替えます。決算日と同じ向きで仕訳を繰り返すと、負債が二重になってしまいます。
14.日常取引との境界
同じ勘定科目でも、いつの場面かで扱う単元が変わります。
| 場面 | 扱う単元 |
|---|---|
| 現金の過不足を発見したとき | C04-T01 |
| 期中に現金過不足の原因が判明したとき | C04-T01 |
| 決算日に現金過不足が残っているとき | 本ページ |
| 概算払い・内容不明の入金があったとき | C05-T08 |
| 期中に仮払金を精算したとき | C05-T08 |
| 決算日に仮払金・仮受金が残っているとき | 本ページ |
| 当座預金の残高を超えて支払ったとき | C04-T03 |
| 当座預金の貸方残高を算定するとき | C04-T03 |
| 決算日に当座預金が貸方残高のとき | 本ページ |
なお、決算整理仕訳を精算表の修正記入欄へ記入したり、精算表を完成させたりする技能は C15-T01(精算表) が扱います。
15.仮払金と前払金の違い
どちらも「先に支払った」ものですが、確定しているかどうかが違います。
| 科目 | 使う場面 |
|---|---|
| 仮払金 | 金額や内容が確定していないまま支払った額 |
| 前払金 | 商品などを受け取る前に支払った手付金・内金。何に対する支払いかは確定している |
前払金は、商品を受け取ったときに仕入へ振り替えます。仮払金は、中身が判明したときに、その内容に応じた科目へ振り替えます。
区別のポイントは、支払った時点で何に対する支払いか決まっているかです。詳しい区別は C05-T08 で扱っています。
16.仮受金と前受金の違い
受取り側も同じ考え方です。
| 科目 | 使う場面 |
|---|---|
| 仮受金 | 内容が確定していない入金 |
| 前受金 | 商品などを引き渡す前に受け取った手付金・内金。何に対する入金かは確定している |
前受金は、商品を引き渡したときに売上へ振り替えます。仮受金は、中身が判明したときに、その内容に応じた科目へ振り替えます。
17.まとめ
- 本教材の決算整理問題では、現金過不足は決算日の原因不明残高を整理し、仮払金・仮受金は内容が判明した分を本来の科目へ振り替える。
- 当座預金が貸方残高となる基本ケースでは、その残高を資産としてそのまま表示せず、問題条件に従って負債へ振り替える。
- 現金過不足の振替先は残高の側で決まる。借方残高 → 雑損/貸方残高 → 雑益。
- 一部だけ判明した場合は、判明分を本来の科目へ、残額を雑損または雑益へ、1本の仕訳で処理する。
- 仮払金は貸方で取り崩し、仮受金は借方で取り崩す。
- 仮払金・仮受金の振替先は、問題文で判明した内容からしか決まらない。推測で決めない。
- 当座預金の貸方残高は借方に記入して0に戻し、本教材では負債の 当座借越 を貸方に計上する。
- 決算日に行った当座借越への振替は、翌期首に反対の仕訳で戻す。
- 発生時・期中の処理は C04-T01/C05-T08/C04-T03、精算表の欄記入は C15-T01 が扱う。

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