除却・廃棄、判断するのは「対価を受け取るか」です

【2027年度(2027年4月~)受験の方】

この単元は、2027年度から日商簿記3級の出題範囲に加わった論点です。

【2026年度(~2027年3月)受験の方】

この単元は 2026年度の試験範囲には含まれません。読み飛ばしてかまいません。

この単元の標語:問題文が示す条件から、対価を受け取ったのか、使用をやめて帳簿から取り除いただけなのかを読み取る。対価を受け取らずに取り除いたなら、帳簿価額から処分価値を差し引いた残額が固定資産除却損。


① このページで学ぶこと

  • 除却・廃棄とは何かを説明できる
  • 売却との違いを、対価を受け取るかどうかで判断できる
  • 除却時の帳簿価額を計算できる
  • 処分価値がある場合に貯蔵品を計上できる
  • 固定資産除却損を計算できる

② 基礎概念

除却と廃棄

用語 意味
除却 固定資産としての使用をやめ、その固定資産勘定から取り除く処理
廃棄 不用になった固定資産を、実際に処分すること

この2つは、指している場面が違います。

  • 除却は「使用をやめる」という事実にもとづいて、その固定資産を固定資産勘定から取り除く処理です。帳簿だけを操作するのではなく、事業で使うのをやめたという事実がその前提にあります。
  • 廃棄は「実際に処分する」という行為そのものです。

実務では、廃棄にともなって除却の処理を行うことが多くなります。 そのため簿記では、除却と廃棄をまとめて扱い、いずれの場合も同じ考え方で処理します。

[注意] 「除却=捨てること」「廃棄=帳簿から消すこと」と入れ替えて覚えないでください。使用をやめて固定資産勘定から取り除く処理が除却、実際に処分する行為が廃棄です。

【3級での典型的な処理】

3級では、除却でも廃棄でも、次の同じ手順で処理します。

① 固定資産の取得原価を貸方に置いて帳簿から取り除く ② 減価償却累計額を借方に置いて取り消す ③ 処分価値があれば貯蔵品として借方に計上する ④ 差額を固定資産除却損(費用)とする

売却との違い ── 判断するのは「対価を受け取るか」

場面 受け取るもの 差額の科目
売却(C07-T05) 現金・未収入金などの対価 固定資産売却損 または 固定資産売却益
除却・廃棄(本単元) 対価はない(処分価値があれば貯蔵品) 固定資産除却損

[判断のしかた] 「手放した」「処分した」という言葉だけで決めないでください。

  • 問題文が「売却した」「代金を受け取った」と示している → 売却(C07-T05)
  • 問題文が「除却した」「廃棄した」と示し、対価の受取りがない → 本単元

「現金を受け取らない=すべて廃棄」でもありません。 使用をやめただけで捨てていない場合もあり、そのときも本単元の処理をします。

勘定科目は「固定資産除却損」で統一する

除却でも廃棄でも、正解の科目は「固定資産除却損」です。

「固定資産廃棄損」という科目名は採点上許容される表記として扱われる場合がありますが、標準的な科目は固定資産除却損であり、本教材の正解はこちらで統一します。

減価償却累計額も同様です。 「減価償却累計額」という総称ではなく、「備品減価償却累計額」「建物減価償却累計額」「車両運搬具減価償却累計額」のように資産名を冠した科目を使います。


③ 仕組み・理由

なぜ損失になるのか

帳簿価額が残っている資産の使用をやめるということは、「まだ ¥○○ 分の価値がある」と帳簿に載せていたものが、対価なしに消えるということです。

消えた価値は費用(固定資産除却損)として計上します。

なぜ貯蔵品を挟むのか

スクラップや部品として ¥30,000 で処分できる見込みがあるなら、その分の価値はまだ消えていません。

全額を損失にすると損失の過大計上になります。そこで、生き残った価値を貯蔵品(資産)として残し、本当に消えた分だけを除却損とします。

固定資産除却損 = 帳簿価額 − 処分価値

貯蔵品は、収入印紙・郵便切手の期末振替(C14-T05)でも使う勘定です。 勘定科目マスタでも「除却資産の処分価値もここへ」と定められています。

帳簿価額の求め方

帳簿価額 = 取得原価 − 減価償却累計額

取得原価そのものが帳簿価額ではありません。 減価償却累計額を差し引いた残りです。

期中に除却・廃棄する場合は、その前に当期分の減価償却を反映します(下記 ⑤場面3)。

[関連単元] 減価償却の計算方法そのもの(定額法の計算・月割の考え方)は C07-T03 で扱います。本単元では、除却の仕訳を完成させるための途中計算として使います。


④ 基本例

青森商事株式会社(会計期間 ×1年4月1日〜×2年3月31日)の取引は次のとおりである。

  • (a)期首に、備品(取得原価 ¥500,000、備品減価償却累計額 ¥420,000)を除却した。この備品の処分価値は ¥30,000 と見積もられた。
  • (b)期首に、備品(取得原価 ¥300,000、備品減価償却累計額 ¥270,000)を廃棄した処分価値はない。
  • (c)×1年9月30日に、備品(取得原価 ¥960,000、耐用年数8年、残存価額 ¥0、期首の備品減価償却累計額 ¥480,000)を除却した処分価値はない。 減価償却は定額法・月割による。

⑤ 仕訳例:思考の手順つき

場面1:処分価値がある除却(a)

  1. 条件を読む:「除却した」と示され、対価の受取りはない処分価値 ¥30,000 がある。
  2. 帳簿価額を求める:500,000 − 420,000 = ¥80,000
  3. 消すものを並べる:貸方に備品 ¥500,000(取得原価)、借方に備品減価償却累計額 ¥420,000
  4. 生き残る価値を置く:処分価値 ¥30,000 を借方に貯蔵品として計上
  5. 差額で損失を確定する:80,000 − 30,000 = 固定資産除却損 ¥50,000
借方科目 金額 貸方科目 金額
備品減価償却累計額 420,000 備品 500,000
貯蔵品 30,000
固定資産除却損 50,000

検算:借方 420,000 + 30,000 + 50,000 = 貸方 500,000 検算:処分価値 30,000 + 除却損 50,000 = 帳簿価額 80,000

場面2:処分価値のない廃棄(b)

帳簿価額 300,000 − 270,000 = ¥30,000 の全額が損失になります。科目はこの場合も固定資産除却損です。

借方科目 金額 貸方科目 金額
備品減価償却累計額 270,000 備品 300,000
固定資産除却損 30,000

処分価値の記載がなければ、貯蔵品は登場しません。

場面3:期中の除却(c)── 当期分の減価償却を先に反映する

期中に除却する場合、その資産は期首から除却日まで使用しています。 そのため、まず当期分の減価償却を計上してから帳簿価額を求めます。

  1. 1年分の減価償却費:960,000 ÷ 8年 = ¥120,000
  2. 当期の使用期間:4月1日〜9月30日 = 6か月
  3. 当期の減価償却費:120,000 × 6/12 = ¥60,000
  4. 除却時点の減価償却累計額:期首 480,000 + 当期 60,000 = ¥540,000
  5. 除却時点の帳簿価額:960,000 − 540,000 = ¥420,000
  6. 処分価値なし → 帳簿価額の全額が除却損
借方科目 金額 貸方科目 金額
減価償却費 60,000 備品 960,000
備品減価償却累計額 480,000
固定資産除却損 420,000

検算:借方 60,000 + 480,000 + 420,000 = 貸方 960,000

[注意] 借方の備品減価償却累計額は期首の ¥480,000 です。当期分の ¥60,000 は減価償却費として別に計上します。除却時点の累計額 ¥540,000 は帳簿価額を求めるための金額であり、仕訳の借方に書く金額ではありません。


⑥ 間違いやすいポイント

主なものを3つ確認します。 実際の誤りはこの3つに限りません。

1.処分価値の貯蔵品計上を忘れる

処分価値は ¥○○ と見積もられた」という一文を読み飛ばし、帳簿価額の全額を除却損にする誤りです。損失が過大になります。

除却・廃棄の問題では「処分価値」という言葉を探すことを手順に組み込んでください。 逆に、処分価値の記載がなければ貯蔵品は登場しません。

2.固定資産売却損と取り違える

判別するのは、問題文が示す条件です。

問題文が示す条件 差額の科目
売却して代金(対価)を受け取った 固定資産売却損 または 固定資産売却益
対価を受け取らずに帳簿から取り除いた 固定資産除却損

語群に両方が並ぶことがあります。 「売却した」「除却した」「廃棄した」という記述と、対価の受取りがあるかどうかを確認してください。

3.廃棄だから「廃棄損」と書いてしまう

標準的な勘定科目は、廃棄の場合も固定資産除却損です。

「固定資産廃棄損」は採点上許容される表記として扱われる場合がありますが、本教材では解答に使いません。 減価償却累計額も、資産名を冠した科目(備品減価償却累計額など)を使います。


⑦ 試験での問われ方

当サイトの本試験形式では、第1問対策(仕訳問題)に位置づけています。

第1問対策

処分価値 ¥○○ と見積もられた」を含む除却の一文型が中心です。貯蔵品の計上ができるかが得点の分かれ目になります。

期中の除却では、除却日までの月割の減価償却を先に行う形もあります。

判別の練習

売却(C07-T05)とセットで練習するのが効率的です。対価の受取りがあるかどうかを判別の軸にしてください。


⑧ まとめ

場面 借方 貸方 ポイント
除却・廃棄(処分価値あり) ○○減価償却累計額
貯蔵品
固定資産除却損
備品・建物・車両運搬具 など(取得原価 除却損 = 帳簿価額 − 処分価値
除却・廃棄(処分価値なし) ○○減価償却累計額
固定資産除却損
同上 帳簿価額の全額が除却損
期中の除却・廃棄 減価償却費
○○減価償却累計額(期首
(貯蔵品)
固定資産除却損
同上 当期分の減価償却を先に反映する

科目は廃棄でも「固定資産除却損」で統一します。


⑨ 関連問題への導線

  • 一問一答:C07-T06「固定資産の除却・廃棄」(全10問)
  • 仕訳問題:C07-T06「固定資産の除却・廃棄」(全8問・初級3問/標準3問/応用2問)
  • 計算問題:C07-T06「固定資産の除却・廃棄」(全5問・標準2問/応用3問)
  • 前のテキストC07-T05「固定資産の売却」
  • 減価償却の計算C07-T03「減価償却の基本(定額法・間接法・月割)」
  • 貯蔵品の期末振替:C14-T05「貯蔵品の決算整理」
  • 固定資産台帳:C07-T07

⑩ 2級への接続

除却・廃棄の処理そのものは、2級でも3級と同じです。

2級では、総合問題の中で減価償却や買換えと組み合わされるなど、応用の場面が広がります。

3級で身につける「帳簿から取り除く → 残る価値は貯蔵品 → 差額が除却損」という手順が、そのまま通用します。


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