この単元で身につけること
この単元では、損害保険を「基本の仕組み」「火災・地震」「自動車」「傷害」「賠償責任」「その他の損害保険」「税務」の順に整理します。
学習後は、地震保険の付帯・保険金額、自賠責保険の補償範囲と支払限度額、任意自動車保険の主要補償、傷害保険の3要件、個人賠償責任保険とPL保険の違い、失火責任法の基本、損害保険金の税務を判断できることを目標にします。
単に商品名を覚えるのではなく、「どの事故原因に対して、誰のどの損害を補償するのか」という軸で整理します。これにより、似た名称の保険でも補償対象を取り違えにくくなります。
全体像
損害保険は、偶然な事故による経済的損失を保険で補填する仕組みです(LN-B-047)。損害保険では、実際に生じた損害を基礎として保険金を支払う損害填補型が中心です(LN-B-048)。ただし、定額給付型の商品など例外もあるため、「損害保険はすべて実損額と完全一致する」と一般化しないことが重要です。
住宅では、火災保険と地震保険を区別します。地震・噴火・これらによる津波を原因とする火災・損壊等は火災保険では原則補償されず、地震保険で備えます(LN-B-049)。地震保険は単独契約ではなく、火災保険にセットして契約します(LN-B-050)。
自動車事故では、自賠責保険と任意自動車保険を区別します。自賠責保険は強制保険であり、他人を死傷させた人身事故の損害賠償が対象です。物損や運転者自身の傷害などは対象外です(LN-B-058・059)。任意自動車保険には対人・対物・人身傷害・搭乗者傷害・車両保険などがあります(LN-B-063)。
傷害保険では、事故が急激・偶然・外来の3要件を満たすかが基本です(LN-B-064)。また、病気・けがによる就業不能期間の所得減少に備える所得補償保険もあります(LN-B-065)。したがって、身体に関係する保険でも、「事故そのものによる傷害」と「就業不能による所得減少」は分けて考えます。
用語の説明
- 損害填補:実際に生じた損害を基礎として保険金を支払う考え方。
- 保険価額:保険の対象となる財産の評価額。保険金額とは区別して考える。
- 保険金額:契約で定める、保険金支払いの上限となる金額。
- 地震保険:地震・噴火・これらによる津波を原因とする一定の損害に備える保険。
- 自賠責保険:原動機付自転車を含む自動車に法律上加入が義務付けられる強制保険。
- 傷害保険:急激・偶然・外来の事故による身体傷害を基本的な対象とする保険。
- 旅行傷害保険:旅行中の事故による傷害等に備える損害保険。個別の補償範囲は契約内容による。
- 所得補償保険:病気・けがによって就業不能となった期間の所得減少を補償する保険。
- 個人賠償責任保険:日常生活上の偶然な事故で他人に法律上の損害賠償責任を負った場合の損害を補償する保険。
- PL保険:製造・販売した製品等によって第三者に損害を与え、法律上の賠償責任を負うリスクを補償する保険。
- 失火責任法:失火による損害賠償責任について、重大な過失がない場合の責任を制限する基本ルールを定める法律。
基本ルール
地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30%~50%の範囲で設定します(LN-B-051)。ただし、居住用建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限です(LN-B-052・053)。
地震保険の損害区分に応じた代表的な支払割合は、全損100%、大半損60%、小半損30%、一部損5%です(LN-B-054~057)。B04の固定CALCでは、損害区分の支払額ではなく、火災保険金額から地震保険の設定可能範囲を計算します。
自賠責保険は、他人を死傷させた人身事故を対象とし、死亡による損害は被害者1名につき3,000万円、傷害による損害は120万円が代表的な支払限度額です(LN-B-059~061)。後遺障害は等級・介護の要否により75万円~4,000万円です(LN-B-062)。
個人賠償責任保険は、日常生活上の偶然な事故で他人に法律上の損害賠償責任を負った場合に備える保険です(LN-B-067)。PL保険は、製造・販売した製品等により第三者の身体・財物へ損害を与え、法律上の賠償責任を負うリスクに備えます(LN-B-068)。どちらも「賠償責任」に関係しますが、事故が発生する場面が異なります。
重要な数字
| 論点 | 数字 |
|---|---|
| 地震保険の設定割合 | 火災保険金額の30%~50% |
| 地震保険・居住用建物の上限 | 5,000万円 |
| 地震保険・家財の上限 | 1,000万円 |
| 地震保険・全損 | 保険金額の100% |
| 地震保険・大半損 | 60% |
| 地震保険・小半損 | 30% |
| 地震保険・一部損 | 5% |
| 自賠責・死亡 | 3,000万円/被害者1名 |
| 自賠責・傷害 | 120万円/被害者1名 |
| 自賠責・後遺障害 | 75万円~4,000万円/被害者1名 |
| 地震保険料控除・所得税上限 | 5万円 |
地震保険の30~50%と建物・家財の上限、自賠責の死亡3,000万円・傷害120万円は、数字と対象をセットで覚えます。
また、地震保険料控除の所得税上限5万円(LN-B-073)は、地震保険そのものの保険金額上限とは別論点です。「5,000万円」と「5万円」を単位ごと区別します。
具体例
火災保険金額が1億2,000万円の居住用建物に地震保険を付ける場合を考えます。
設定割合だけなら、下限は1億2,000万円×30%=3,600万円、上限は1億2,000万円×50%=6,000万円です。しかし、居住用建物の地震保険金額には5,000万円の上限があります。したがって、この場合の設定可能範囲は3,600万円~5,000万円となります。
また、自動車事故で相手の車を壊しただけの場合、自賠責保険は物損を対象としません。対物損害に備えるには、任意自動車保険の対物賠償保険などを確認します。
日常生活中に自転車で他人の物を壊し、法律上の損害賠償責任を負った場合は、個人賠償責任保険の基本的な対象となり得ます。一方、自社が製造・販売した製品によって第三者に損害が生じた場合は、PL保険の論点です。事故場面を先に特定すると、賠償責任保険を選びやすくなります。
計算問題の考え方
地震保険の設定可能範囲を求めるときは、最初に火災保険金額へ30%・50%を掛けます。
下限=火災保険金額×30%
上限候補=火災保険金額×50%
その後、建物なら5,000万円、家財なら1,000万円の上限と比較します。上限候補が法定上限を超える場合は、その上限で止めます。
計算問題では、割合だけ計算して終わらず、「建物か家財か」「上限に達していないか」まで確認します。火災保険金額が大きいケースでは、50%計算値が上限額を超えるため、最後の上限確認が正解を分けます。
間違いやすい点
- 地震による火災も火災保険で当然に補償されると考える:地震等を原因とする損害は火災保険では原則対象外です。
- 地震保険を単独で契約できると考える:火災保険にセットして契約します。
- 地震保険は火災保険金額の100%まで設定できると考える:30%~50%の範囲で、建物・家財には上限があります。
- 自賠責保険が物損や自分の車両損害も補償すると考える:基本は他人の人身損害です。
- 傷害保険は病気も通常の対象だと考える:基本は急激・偶然・外来の事故による身体傷害です。
- 個人賠償責任保険とPL保険を同じと考える:日常生活上の賠償と、製品等による賠償を区別します。
- 失火なら必ず賠償責任を負うと考える:失火では重大な過失がある場合を除き、原則として民法709条の責任を負いません(LN-B-069)。
- 個人が受け取る損害保険金はすべて課税されると考える:建物焼失や身体傷害・疾病を原因として受け取るものは原則非課税です(LN-B-071)。
試験での出題のされ方
B04では、火災・地震保険、自動車保険、傷害保険、賠償責任、損害保険の税務が重要です。固定SlotではEX-B-004、005、008、010、013に接続する論点がPast_Exam_Frequency=Aです。
一方、失火責任法、費用・利益・積立型損害保険、損害填補の基本は`UNVERIFIED`です。これは低頻度・出題なしという意味ではなく、現行の公表3セットから頻度を確定していない補完Slotです。
実技CASEでは、公式過去問の人物・事故・金額・資料配置を再現せず、独自の事故場面からどの賠償責任保険が対応するかを判断します。
まとめ
- 損害保険は偶然な事故による経済的損失を補填する仕組み。
- 地震等による損害は火災保険では原則補償されず、地震保険で備える。
- 地震保険は火災保険金額の30%~50%、建物5,000万円・家財1,000万円が上限。
- 自賠責は他人の人身事故が対象で、死亡3,000万円・傷害120万円。
- 傷害保険は急激・偶然・外来の3要件が基本。
- 個人賠償責任保険とPL保険は事故原因・責任の種類で区別する。
- 個人が建物の焼失や身体の傷害等で受け取る損害保険金は原則非課税。
- 費用損失・利益減少・積立機能に対応する損害保険もある(LN-B-070)。
練習のしかた
火災・地震では、まず「原因が地震等か」を確認し、次に地震保険の付帯・設定割合・上限を確認します。
自動車保険では、「他人の身体」「他人の物」「自分や同乗者の身体」「自分の車」のどれを補償するかを整理します。傷害保険では、事故が急激・偶然・外来の3要件を満たすかを確認します。
賠償責任では、日常生活の偶然事故なら個人賠償責任、製造・販売した製品等に起因する第三者損害ならPL保険という基本軸で判断します。
税務では、個人の建物焼失・身体傷害等による保険金の原則非課税と、事業用商品の損失補填が事業収入となる場合があること(LN-B-072)を同じルールとして混同しないようにします。
FP2級へのつながり
FP2級では、火災・自動車・傷害・賠償責任保険について、補償範囲や契約条件、法人契約、税務をより詳細に扱います。
FP3級では、約款の細部ではなく、事故原因と補償対象、主要な金額・割合、賠償責任保険の役割、税務の原則を正確に区別することが土台です。
関連する問題
- FP技能士3級 リスク管理 一問一答 第11問〜第17問
- FP技能士3級 リスク管理 択一式(初級) 第11問〜第15問
- FP技能士3級 リスク管理 択一式(初級) 第16問〜第20問
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