ケース1
共通資料
P社はS社の発行済株式の80%を保有している。当期は2028年4月1日から2029年3月31日である。段階的な取得ではなく、S社の資産・負債は帳簿価額と時価が一致している。
1. 個別損益計算書(単位:円)
| 科目 | P社 | S社 |
|---|---|---|
| 売上高 | 8,000,000 | 4,000,000 |
| 売上原価 | 5,200,000 | 2,600,000 |
| 販売費及び一般管理費 | 1,400,000 | 600,000 |
| 受取配当金 | 240,000 | 0 |
| 固定資産売却益 | 400,000 | 0 |
| 当期純利益 | 2,040,000 | 800,000 |
2. 個別貸借対照表(当期末、単位:円)
| 科目 | P社 | S社 |
|---|---|---|
| 現金及び預金 | 2,000,000 | 1,000,000 |
| 売掛金 | 1,300,000 | 800,000 |
| 電子記録債権 | 700,000 | 300,000 |
| 貸倒引当金 | △30,000 | △20,000 |
| 商品 | 1,200,000 | 1,500,000 |
| 土地 | 1,500,000 | 2,400,000 |
| 建物等 | 3,000,000 | 2,000,000 |
| 子会社株式 | 4,500,000 | — |
| 資産合計 | 14,170,000 | 7,980,000 |
| 買掛金 | 1,500,000 | 1,100,000 |
| 電子記録債務 | 500,000 | 500,000 |
| 借入金 | 2,630,000 | 480,000 |
| 資本金 | 4,000,000 | 3,000,000 |
| 利益剰余金 | 5,540,000 | 2,900,000 |
| 負債・純資産合計 | 14,170,000 | 7,980,000 |
3. 連結に関する資料
- のれん:当期首残高450,000円、当期償却額50,000円、当期末残高400,000円
- 非支配株主持分:当期首残高1,080,000円
- S社の当期純利益800,000円、当期の配当300,000円(うちP社が受け取った分240,000円)
- P社からS社への内部売上高800,000円
- 当期末の内部債権債務:P社売掛金/S社買掛金300,000円、P社電子記録債権/S社電子記録債務200,000円
- 内部債権に対してP社が設定していた貸倒引当金10,000円
- S社の期末商品に含まれるP社からの仕入分300,000円、利益率は売価に対して20%
- P社は帳簿価額2,000,000円の土地をS社へ2,400,000円で売却し、S社は当期末も保有している
- 利益剰余金の当期首残高:P社4,000,000円、S社2,400,000円
- 連結上の利益剰余金の当期首残高:4,270,000円
- P社が企業集団の外部へ支払った配当500,000円
- 内部取引はすべて親会社から子会社への販売である
問1
連結修正を行う前の、個別損益計算書の売上高の合算額と売上原価の合算額を求めなさい。
解答を見る
正答
- 売上高の合算額:12,000,000円
- 売上原価の合算額:7,800,000円
解説
連結精算表はまず両社の個別財務諸表を単純に足すところから始まります。売上高は8,000,000+4,000,000=12,000,000円、売上原価は5,200,000+2,600,000=7,800,000円です。この段階では内部取引の消去は行いません。
配点
| 項目 | 配点 |
|---|---|
| 売上高の合算額 12,000,000円 | 1 |
| 売上原価の合算額 7,800,000円 | 1 |
| 合計 | 2 |
採点要素
- 両社の同一科目を単純に合算していること
- この段階で内部売上高を差し引いていないこと
部分点
あり(2点満点、1点単位)
部分点の取扱い
売上高・売上原価それぞれについて独立に採点する。一方のみ正しい場合は1点。合算の段階で内部売上高800,000円を差し引いた金額(11,200,000円・7,000,000円)を記入した場合は、当該項目を0点とする。
問2
連結損益計算書の売上高と売上原価を求めなさい。
解答を見る
正答
- 売上高:11,200,000円
- 売上原価:7,060,000円
解説
売上高:合算額12,000,000円から内部売上高800,000円を消去して11,200,000円。
売上原価:期末商品の未実現利益は300,000×20%=60,000円です。合算額7,800,000円から内部売上高800,000円を消去し、未実現利益60,000円を加えて7,800,000-800,000+60,000=7,060,000円。
売上原価の行には向きの異なる2つの修正が入ります。内部売上高の消去は減らす向き、未実現利益の消去は増やす向きです。
配点
| 項目 | 配点 |
|---|---|
| 売上高 11,200,000円 | 1 |
| 売上原価から内部売上高800,000円を消去 | 1 |
| 売上原価に未実現利益60,000円を加算 | 1 |
| 売上原価 7,060,000円 | 1 |
| 合計 | 4 |
採点要素
- 内部売上高800,000円を売上高と売上原価の両方から消去していること
- 期末商品の未実現利益を300,000×20%=60,000円と算定していること
- 未実現利益の消去が売上原価を増やす向きであること
部分点
あり(4点満点、1点単位)
部分点の取扱い
売上原価は過程を分けて採点する。7,000,000円(未実現利益の脱落)は2点、7,860,000円(内部売上高の消去の脱落)は1点、7,800,000円(両方の脱落)は0点とする。売上高は独立に採点し、12,000,000円は0点とする。
問3
連結損益計算書の販売費及び一般管理費、受取配当金、固定資産売却益を求めなさい。
解答を見る
正答
- 販売費及び一般管理費:2,040,000円
- 受取配当金:0円
- 固定資産売却益:0円
解説
販売費及び一般管理費:合算額は1,400,000+600,000=2,000,000円。内部債権に対する貸倒引当金10,000円の減額が費用を減らし、のれんの償却50,000円が費用を増やします。2,000,000-10,000+50,000=2,040,000円。
受取配当金:P社が計上した240,000円はS社から受け取ったものであり、企業集団の内部で動いただけです。全額を消去して0円になります。
固定資産売却益:P社が計上した400,000円は、S社へ売却した土地に係るものです。土地は当期末もS社が保有しており企業集団の外部へ出ていないため、全額を消去して0円になります。
配点
| 項目 | 配点 |
|---|---|
| 販売費及び一般管理費で貸倒引当金10,000円を減額 | 1 |
| 販売費及び一般管理費でのれん償却50,000円を加算 | 1 |
| 販売費及び一般管理費 2,040,000円 | 1 |
| 受取配当金 0円 | 1 |
| 固定資産売却益 0円 | 1 |
| 合計 | 5 |
採点要素
- 販売費及び一般管理費に向きの異なる2つの修正を入れていること
- 受取配当金の消去が内部の資金移動であることによると説明できること
- 土地の売却益が企業集団の外部へ実現していないため消去されること
部分点
あり(5点満点、1点単位)
部分点の取扱い
販売費及び一般管理費は修正2件を独立に採点する。1,990,000円(貸倒引当金のみ反映)は1点、2,050,000円(のれん償却のみ反映)は1点、2,000,000円(両方の脱落)は0点とする。受取配当金・固定資産売却益は各1点で独立に採点し、合算額のまま(240,000円・400,000円)は0点とする。
問4
(1)連結損益計算書の当期純利益、(2)非支配株主に帰属する当期純利益、(3)親会社株主に帰属する当期純利益を求めなさい。あわせて(4)当期純利益の金額が正しいことを確かめても、内部売上高の消去が行われたことは確かめられない理由を説明しなさい。
解答を見る
正答
- (1) 当期純利益:2,100,000円
- (2) 非支配株主に帰属する当期純利益:160,000円
- (3) 親会社株主に帰属する当期純利益:1,940,000円
- (4) 内部売上高の消去は売上高と売上原価から同額を減らすため、両方とも落としても差額である当期純利益は変わらないため
解説
判断根拠
(1) 連結損益計算書の各行から求めます。11,200,000-7,060,000-2,040,000+0+0=2,100,000円。
(2) 非支配株主に帰属する当期純利益は、子会社の当期純利益に非支配比率を掛けて求めます。800,000×20%=160,000円です。内部取引の修正はすべて親会社から子会社への販売に係るものなので、子会社の利益は動きません。 したがって按分の基礎は子会社の当期純利益800,000円のままです。
(3) 2,100,000-160,000=1,940,000円。
(4) 内部売上高800,000円は、売上高の行と売上原価の行から同額ずつ消去されます。両方の消去を落とすと、売上高は12,000,000円、売上原価は7,860,000円となりますが、差額である当期純利益は2,100,000円のまま変わりません。当期純利益の金額が合っていることは、この消去が行われた証拠にはならないのです。
検証
| 検証項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 当期純利益 | 11,200,000-7,060,000-2,040,000 | 2,100,000 |
| 分解の一致 | 1,940,000+160,000 | 2,100,000 |
| 合算からの検算 | 2,840,000-740,000 | 2,100,000 |
| 消去を落とした場合 | 12,000,000-7,860,000-2,040,000 | 2,100,000(変わらない) |
合算の当期純利益2,840,000円からの差額740,000円の内訳は、未実現利益60,000円、のれん償却50,000円、受取配当金240,000円、土地の売却益400,000円で、貸倒引当金の減額10,000円が反対向きに働きます。
この検証の限界:当期純利益の分解が成り立つことは、分解の計算が正しいことを示すだけです。売上高と売上原価の行そのものが内部売上高の分だけ減っているかを、直接確かめる必要があります。
想定される誤り:ひとつは当期純利益の一致だけを見て内部売上高の消去を落とすことです。ふたつめは非支配株主への按分の基礎に、下方取引の修正を反映した金額を用いてしまうことです。修正はすべて親会社側で生じており、子会社の利益は800,000円のままです。三つめは親会社株主に帰属する当期純利益に、当期純利益の全体2,100,000円を用いてしまうことです。
配点
| 項目 | 配点 |
|---|---|
| 当期純利益 2,100,000円 | 1 |
| 非支配株主に帰属する当期純利益 160,000円 | 1 |
| 按分の基礎が子会社の当期純利益800,000円であること | 1 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 1,940,000円 | 1 |
| (4) 売上高と売上原価から同額を消去するため差額が変わらない旨 | 2 |
| 合計 | 6 |
採点要素
- 当期純利益を親会社株主分と非支配株主分に分解していること
- 下方取引であるため子会社の利益が動かないことを示していること
- 消去の脱落が当期純利益に影響しないことを、金額を挙げて説明していること
部分点
あり(6点満点、1点単位)
部分点の取扱い
(1)〜(3)は各1点で独立に採点し、按分の基礎の説明に1点を加える。(4)は「売上高と売上原価の両方から同額を消去する」ことの指摘に1点、「したがって当期純利益は変わらない」という結論に1点を与える。結論のみで理由がない場合は1点とする。「当期純利益が合っていれば消去は正しい」という趣旨の記述があれば(4)は0点とする。