1.このページで学ぶこと
このページでは、当サイトの本試験形式における第3問を安定して解くための考え方を学びます。
- 第3問の3つの形式を見分けられる
- 3つの形式に共通する出発点がわかる
- 後の計算の基礎を変える処理を見つけて、連鎖ミスを防げる
- 1つの仕訳による複数の影響を漏らさず反映できる
- 決算整理の段階と、帳簿を締め切る段階を区別できる
- 複数の観点で検算できる
C17-T01「本試験形式の全体像」で試験全体の地図を、C17-T03「第2問(帳簿・資料問題)の攻略」で第2問の資料読解を確認しました。ここからは、第3問に入った後の進め方へ進みます。
2.第3問攻略の位置づけ
第3問の中心は、大きな表を一気に埋めることではありません。
決算整理事項を1件ずつ正しい仕訳にして、その影響を順番に反映していくこと
です。大きな表を直接埋めるのではなく、まず個々の仕訳と決算整理後残高を固め、その結果を指定された形式へ反映します。
このページが扱うのは、3つの形式を横断して共通する進め方です。各形式の仕組みそのもの、および配点のついた完成問題は、それぞれ別の単元が扱います(第16節)。
3.当サイトの第3問設計と公式仕様の区別
当サイトでは、本試験形式・模擬試験の演習設計として、第3問を 35点とし、次の3形式のいずれかを扱います。
| 当サイトの第3問の形式 | 完成させるもの | |
|---|---|---|
| A | 8桁精算表 | 損益計算書欄・貸借対照表欄まで含む1つの表 |
| B | 財務諸表作成 | 損益計算書と貸借対照表 |
| C | 決算整理後残高試算表 | 決算整理を反映した後の各勘定残高の一覧 |
また、当サイトでは第3問を次の11の構成部品から組み立て、1問あたり 6〜9個を組み合わせています。
| 部品 | 主な処理 |
|---|---|
| ① 未処理事項 | まだ帳簿へ反映されていない取引を処理する |
| ② 現金過不足 | 原因が判明した分を本来の科目へ、不明分を雑損・雑益へ |
| ③ 当座借越 | 当座預金の貸方残高を負債へ振り替える |
| ④ 商品棚卸・売上原価 | 期首・期末商品を反映して売上原価を算定する |
| ⑤ 貸倒引当金 | 期末債権残高から必要額を求めて補充する |
| ⑥ 減価償却 | 当期分を計算する |
| ⑦ 貯蔵品 | 未使用分を資産へ振り替える |
| ⑧ 消費税 | 仮払分と仮受分を精算する |
| ⑨ 経過勘定 | 前払・未払・未収・前受を期間配分する |
| ⑩ 法人税等 | 年税額と仮払額から未払額を計上する |
| ⑪ 純損益振替・帳簿締切 | 純損益を繰越利益剰余金へ振り替える |
この35点という配点も、3形式という分類も、11部品から6〜9個という組み合わせ方も、当サイトの演習設計です。 日本商工会議所が「第3問は35点」「第3問はこの3形式から出題する」「11部品から6〜9個を組み合わせる」と公式に定めているわけではなく、将来にわたって固定されるという意味でもありません。
公式試験仕様(商業簿記・3題以内・60分・70%以上)と当サイトの演習設計を分けて考える点は、C17-T01「本試験形式の全体像」で整理したとおりです。
4.3形式に共通する出発点
3つの形式は見た目が大きく違いますが、出発点は同じです。
決算整理前の残高 + 未処理事項・決算整理事項
たとえば減価償却費が 202,000円 であれば、決算整理仕訳は
(借)減価償却費 202,000 / (貸)備品減価償却累計額 202,000
であり、この仕訳そのものは3形式で共通です。
したがって、形式が変わっても、決算整理事項を仕訳として整理し、その効果を残高へ反映する部分は共通しています。 まず個々の処理を正確に整理することが、第3問の土台になります。
5.形式ごとに違うのは「その後」
共通の仕訳を作ったあと、どこへ書くかが形式によって変わります。
| 形式 | 仕訳を作ったあと |
|---|---|
| A 8桁精算表 | 修正記入欄へ書き、損益計算書欄・貸借対照表欄へ移す |
| B 財務諸表作成 | 決算整理後の金額を確定し、表示上の名称へ整えて損益計算書・貸借対照表へ振り分ける |
| C 決算整理後残高試算表 | 修正後の残高を帳簿の勘定科目のまま借方・貸方へ一覧化する |
確認ポイント
形式Cでは、売上・仕入・減価償却費・支払家賃などの収益・費用の勘定がまだ残っています。決算整理を終えた段階と、帳簿を締め切った後の段階は別です(第11節)。
各形式の仕組みそのものは、C15-T01(8桁精算表)/C15-T04(財務諸表作成)/C15-T05(決算整理後残高試算表)が扱います。このページでは3形式を横に並べて比べることに集中します。
6.「処理順」より「依存関係」を見る
第3問の決算整理事項に、すべての問題へ当てはまる絶対的な処理順序があるわけではありません。
大切なのは順番そのものではなく、
先に処理しないと、後の計算の基礎が変わってしまうものがあるか
という点です。
確認ポイント
問題文に並んでいる順番が、計算上のつながりを示しているとは限りません。後の処理が売掛金残高・当座預金残高・費用残高・税額などを使う場合は、その基礎になる残高を変える処理が他にないかを先に確認してください。
7.設例:未処理事項が貸倒引当金の計算基礎を変える
資料
決算整理前残高試算表に次の金額がある。
| 勘定科目 | 決算整理前の残高 |
|---|---|
| 売掛金 | 借方 1,385,000円 |
| 貸倒引当金 | 貸方 6,600円 |
| 仮受金 | 貸方 215,000円 |
決算整理事項
- 仮受金 215,000円は、得意先からの売掛金の回収額であることが判明した
- 決算整理後の売掛金残高に対して2%の貸倒引当金を設定する(差額補充法)
① 未処理事項を反映する
仮受金の内容が判明したので、仮受金を消して売掛金を減らします。新しい売上ではなく、すでに計上されている売掛金の回収だからです。
(借)仮受金 215,000 / (貸)売掛金 215,000
この結果、売掛金の残高は
`1,385,000 − 215,000` = 1,170,000円
になります。
② 修正後の残高を基礎に貸倒引当金を計算する
必要額 = `1,170,000 × 2%` = 23,400円
追加設定額 = `23,400 − 6,600` = 16,800円
(借)貸倒引当金繰入 16,800 / (貸)貸倒引当金 16,800
つながりの形
未処理事項 → 修正後の売掛金残高 → 貸倒引当金
貸倒引当金の設定率を掛ける相手は、決算整理前の 1,385,000円 ではなく、修正後の 1,170,000円です。
8.依存関係を見落とすと何が起きるか
前節で未処理事項を反映せず、決算整理前の売掛金にそのまま率を掛けると、次のようになります。
必要額(誤り) = `1,385,000 × 2%` = 27,700円
追加設定額(誤り) = `27,700 − 6,600` = 21,100円
正しい 16,800円 との差は
`21,100 − 16,800` = 4,300円
です。この差は、反映しなかった仮受金 215,000円に率を掛けた金額(`215,000 × 2%` = 4,300円)と一致します。
この考え方が誤りである理由
決算整理事項を「問題文に書かれている順に、それぞれ独立して」処理すると、前の処理が後の計算基礎を変えていることに気づけません。誤りは1か所で終わらず、貸倒引当金繰入(費用)と貸倒引当金(評価勘定)の両方、さらに当期純利益まで影響します。これが、第3問で依存関係を確認する理由です。
9.独立して処理できる項目から進める
第3問には複数の整理事項があります。1つ分からない項目があっても、そこで止まる必要はありません。
減価償却・経過勘定・貯蔵品・消費税などは、他の項目の結果を使わずに計算できることがあります。そうした項目は先に処理できます。
確認ポイント
すべての項目が独立しているわけではありません。 分からない項目を常に飛ばしてよいという意味でもありません。前節の売掛金と貸倒引当金のように、先の結果が後の計算基礎になる組み合わせでは、順番が結果を変えます。飛ばす前に、その項目が後続の計算基礎になっていないかを確認してください。
10.1つの仕訳の影響を漏らさない
決算整理仕訳は、必ず2つ以上の勘定に影響します。
たとえば家賃の前払分を繰り延べる仕訳が
(借)前払家賃 / (貸)支払家賃
であれば、
- 前払家賃が増える
- 支払家賃が減る
という2つの変化が同時に起きています。片方だけを反映すると、最終数値が合いません。
確認ポイント
これは「同じ表に必ず2か所書く」という意味ではありません。どこに何を書くかは形式によって違います。大切なのは、1つの仕訳が生む複数の勘定への影響を、どれも落とさずに反映することです。
11.決算整理と損益振替は段階が違う
第3節の部品⑪「純損益振替・帳簿締切」は、狭い意味の決算整理事項ではありません。
- 決算整理:減価償却・貸倒引当金・経過勘定などによって、当期の正しい損益を確定する段階
- 損益振替・帳簿締切:確定した損益を集計し、繰越利益剰余金へ振り替えて帳簿を締め切る段階
確認ポイント
形式C(決算整理後残高試算表)は、決算整理を終えた段階の残高一覧です。まだ帳簿を締め切っていないので、収益・費用の勘定が残っています。この2つの段階を同じものとして扱うと、形式Cで収益・費用を消してしまう誤りにつながります。
損益振替の仕訳や帳簿締切の手続そのものは、C15-T06「帳簿の締切り」が扱います。
12.当サイトの推奨する進め方
当サイトでは、第3問を次の流れで進めることを勧めています。
① 何を完成させる問題かを確認する → ② 決算整理前の残高を確認する → ③ 未処理事項を確認する → ④ 決算整理事項を1件ずつ仕訳にする → ⑤ 後続の計算との依存関係を確認する → ⑥ 決算整理後の残高を確定する → ⑦ 指定された形式へ反映する → ⑧ 当期純利益・当期純損失を確定する → ⑨ 検算する
確認ポイント
これは当サイトが学習しやすさのために整理した流れであり、日本商工会議所が定めた公式の解答手順ではありません。 また、問題の条件によっては③〜⑥が前後することもあります。順番そのものを覚えるのではなく、「後の計算の基礎を変える処理を先に済ませる」という考え方を身につけてください。
13.検算は複数の観点で行う
第3問では、形式に応じて次のような検算ができます。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 仕訳 | 1件ずつの借方合計と貸方合計が一致しているか |
| 修正後の残高 | 決算整理前の残高に、加減した金額が正しく反映されているか |
| 損益計算書 | 収益合計と費用合計の差額が、当期純利益(純損失)と一致するか |
| 貸借対照表 | 資産合計と、負債・純資産合計が一致するか |
| 決算整理後残高試算表 | 借方合計と貸方合計が一致するか |
| 当期純利益 | 別の経路(表の左右差額と、収益-費用)で求めた金額が一致するか |
確認ポイント
同じ当期純利益を2つの経路で求めて突き合わせると、片方だけでは気づけない誤りを見つけられます。
14.貸借一致だけでは発見できない誤り
借方合計と貸方合計の一致は重要な検算ですが、
貸借が一致している = 内容まで正しい
という意味ではありません。次のような誤りは、貸借が一致したままでも起こります。
| 誤りの種類 | 貸借はどうなるか |
|---|---|
| 借方と貸方を同じ金額で誤った | 一致したまま |
| 勘定科目を誤った | 一致したまま |
| 依存関係を見落として計算基礎を誤った | 一致したまま |
| 決算整理事項を1件まるごと処理し忘れた | 一致したまま |
3つ目は第3問で特に起こりやすい誤りです。第8節の例では、誤った 21,100円 で仕訳しても借方と貸方は一致します。貸借一致は必要な確認ではありますが、それだけで正解を保証するものではありません。
15.年度差
当サイトの演習では、2026年度・2027年度とも同じ3形式で扱います。 ただし、組み合わせる論点には年度差が生じることがあります。
【2026年度(2026年4月1日〜2027年3月31日)受験の方】 2027年度から追加された論点は、正解の計算に必要な論点としては含まれません。
【2027年度(2027年4月1日〜2028年3月31日)受験の方】 2027年度から追加された論点を含む問題があり得ます。
確認ポイント
年度限定の論点は、受験年度に合った問題で扱います。問題の年度ラベルを確認してから解いてください。どの論点がどの年度に属するかは、各論点の単元で確認できます。
16.この単元で扱わないこと
このページは3形式を横断した第3問の攻略を扱います。次の内容は、それぞれの単元が扱います。
| 内容 | 扱う単元 |
|---|---|
| 試験全体の地図・公式試験仕様・3つの大問の役割 | C17-T01「本試験形式の全体像」 |
| 第2問(帳簿・資料問題)の攻略 | C17-T03「第2問(帳簿・資料問題)の攻略」 |
| 大問ごとの時間配分・解く順番・見直しの順序 | C17-T05「本試験の時間配分と見直し」 |
| 配点のついた第3問そのもの(完成問題) | Eセクション(第3問A・B・C) |
| 8桁精算表の欄構造と作成方法 | C15-T01「精算表」 |
| 損益計算書・貸借対照表の様式と表示 | C15-T02・C15-T03 |
| 決算整理後残高から表示上の名称へ整えて財務諸表を作る仕組み | C15-T04「決算整理からの財務諸表作成」 |
| 決算整理後残高試算表の作成方法 | C15-T05「決算整理後残高試算表(ATB)」 |
| 損益振替・当期純損益の振替・帳簿締切・次期繰越 | C15-T06「帳簿の締切り」 |
| 現金過不足・商品棚卸と売上原価・貸倒引当金・減価償却・貯蔵品・消費税・経過勘定・法人税等などの個々の処理 | C14系および各論点の所有単元(C06系・C07系・C08系・C09系 ほか) |
配点のついた完成問題はEセクションが所有します。 このページでは、その形式を解くための共通の考え方だけを扱います。
17.後続の学習導線
このページを読み終えたら、3形式を1つずつ通して解き、最後に時間配分を整えます。
| 順序 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 本ページの `02_統合一問一答.md` で判断軸を確認 |
| 2 | Eセクション 第3問A(8桁精算表)を通して解く |
| 3 | Eセクション 第3問B(財務諸表作成)を通して解く |
| 4 | Eセクション 第3問C(決算整理後残高試算表)を通して解く |
| 5 | C17-T05「本試験の時間配分と見直し」 |
18.まとめ
確認ポイント
- 当サイトでは、第3問は大きな表を直接埋めず、まず決算整理事項を仕訳として整理する。
- 3形式の出発点は同じ(決算整理前の残高+未処理事項・決算整理事項)。違うのはその後。
- 処理順そのものより、後の計算基礎を変える処理があるかを見る。
- 未処理事項を反映してから率を掛ける(`1,385,000 − 215,000 → 1,170,000 × 2%`)。
- 依存関係を見落とすと、誤りが複数の欄と当期純利益へ波及する。
- 独立して計算できる項目は先に処理できるが、すべてが独立しているわけではない。
- 1つの仕訳が生む複数の影響を落とさない(書く場所は形式によって違う)。
- 決算整理の段階と、損益振替・帳簿締切の段階は別。
- 検算は複数の観点で行い、当期純利益は2つの経路で突き合わせる。
- 貸借一致だけでは、依存関係の誤りも処理もれも発見できない。
- 35点・3形式・11部品から6〜9個は、いずれも当サイトの演習設計である。
19.2級への接続
2級では決算整理事項が増え、1つの処理が複数の勘定残高へ影響する場面も多くなります。
3級のうちに、個別の仕訳を作る → 依存関係を確認する → 整理後の残高を確定する → 指定された形式へ反映するという流れを身につけておくと、2級の決算総合問題でも使える土台になります。

コメント