第1問(仕訳問題)の攻略

1.このページで学ぶこと

当サイトの本試験形式では、第1問を仕訳問題として設計しています。このページでは、すでに学んだ各論点の知識を、問題文から読み取った取引に当てはめて仕訳へ変換する力を整理します。

このページで身につけるのは、次の判断です。

  • 問題文を読んで、何の取引かを先に確認する
  • 「入金」「支払い」といった言葉だけで勘定科目を決めない
  • どの処理段階(日常取引・訂正・決算整理・再振替・帳簿締切)の話かを確認する
  • 勘定科目・5要素・増減・借方貸方・金額の順に整理する
  • 複数の勘定科目が関係する取引を、増減と金額に分けて整理する
  • 解答後に、取引内容・科目・金額・借方貸方・貸借合計を確認する

各論点そのものの処理方法は、このページでは扱いません。 商品売買・現金預金・債権債務・固定資産・純資産・税金・訂正仕訳・決算整理・経過勘定・帳簿締切は、それぞれの単元で学びます。このページは、その知識を問題文とつなぐ部分を扱います。

試験全体の構成や、第1問・第2問・第3問がそれぞれどういう位置づけかは、「本試験形式の全体像」で扱います。


2.最初に取引内容を読む

仕訳問題を読んだとき、すぐに勘定科目を書き始めないでください。先に取引の中身を確認します。

当サイトでは、次の4点を確認することを基本の出発点としています。

確認すること
① 何をしたのか 商品を売った/商品を買った/備品を買った/給料を払った/代金を回収した
② いつの処理か 取引が起きた日の処理か、決算日の処理か、期首の処理か
③ 何で決済したのか 現金/普通預金/掛け/後払い/前払い/前受け/決済がまだない
④ 何を計上・消去・振替するのか 新しく計上するのか、すでにある残高を消すのか、別の科目へ振り替えるのか

この4点は、当サイトが整理した基本的な確認の枠組みです。 決まった順番で確認しなければならない公式の手順ではありません。実際には、問題文を読むうちに①〜④が同時に見えてくることもあります。大切なのは、科目を決める前にこれらが確認できているかです。

とくに④は見落とされやすい観点です。同じ「商品を売った」でも、

  • 販売時点の処理なら、売上を新しく計上する
  • 代金を後で回収した処理なら、すでにある売掛金を消す(売上は計上しない)

というように、必要な仕訳が変わります。


3.キーワードだけで決めない

問題文の一部の言葉だけを拾って科目を決めると、取り違えが起こります。

3-1.「入金」があっても、売上とは限らない

お金が入ってきた取引でも、入ってきた理由によって相手科目は変わります。

入金の理由 相手科目
商品を販売した 売上
すでに計上した売掛金を回収した 売掛金(売上は計上しない)
商品以外を売却した未収代金を回収した 未収入金
お金を借りた 借入金
商品の代金を前もって受け取った 前受金

売掛金の回収では、売上は販売した時点ですでに計上済みです。入金の時点で売上をもう一度計上すると、二重計上になります。

3-2.「支払い」があっても、仕入とは限らない

お金が出ていった取引も同じです。

支払いの理由 相手科目
商品を仕入れた 仕入
すでに計上した買掛金を支払った 買掛金(仕入は計上しない)
以前、後払いで購入した商品以外の代金を支払った 未払金
借りていたお金を返した 借入金
商品の代金を前もって支払った 前払金

3-3.「未払い」があっても、買掛金とは限らない

後払いという条件が同じでも、何を買ったのかで科目が変わります。

買ったもの 後払いの科目
商品(販売目的) 買掛金
備品など、商品以外 未払金

3-4.区別するポイント

いずれも、判断の順番は同じです。

お金が動いたかどうかより先に、なぜ動いたのかを確認する。

言葉に対応する科目を暗記するのではなく、取引の原因から科目へたどるようにしてください。


4.処理段階を確認する

同じ論点でも、どの段階の処理かによって必要な仕訳が変わります。

処理段階 どういう場面か
日常取引 取引が起きた日に記録する
訂正仕訳 すでに記録した仕訳の誤りを直す
決算整理 決算日に、当期の金額へ調整する
再振替仕訳 期首に、前期末の決算整理を戻す
帳簿締切 決算の最後に、収益・費用や利益を振り替える

たとえば問題文に「備品」という語があっても、

  • 備品を取得した日常取引なのか
  • 決算日に減価償却を行う決算整理なのか

で、書く仕訳はまったく違います。「備品」という語だけを見て取得の仕訳を書いてしまうと、決算整理の問題を落とします。

判断の手がかりになるのは、次のような表現です。

手がかり 示している段階
「決算において」「決算日に」「決算にあたり」 決算整理
「前期末に計上した経過勘定などを翌期首に戻す」と示されている 再振替仕訳
「誤って〜と記帳していた」「これを訂正する」 訂正仕訳
日常的な売買・入出金などが記載されている 日常取引の可能性(問題全体から確認)

それぞれの処理の詳細は、各単元で学んだとおりです。 ここで扱うのは「どの段階か」の見分けであって、各処理のやり方ではありません。


5.勘定科目を決める

取引内容と処理段階を確認したうえで、勘定科目を決めます。

科目を選ぶときは、教材で標準としている正式な勘定科目名を使います。問題で使用できる勘定科目群が指定されている場合は、その指定に従ってください。似た名称を自己判断で置き換えず、取引内容に合う科目を選びます。

勘定科目群が示されている場合でも、科目名だけを消去法で当てはめるのではなく、取引内容から科目を導けるようにしておくと、形式が変わっても対応しやすくなります。


6.5要素・増減・借方貸方へつなぐ

科目が決まったら、その科目が次のどれかを確認します。

5要素 増えたとき 減ったとき
資産 借方 貸方
負債 貸方 借方
純資産 貸方 借方
収益 貸方 借方
費用 借方 貸方

この「5要素」は、学習を整理するための分類です。 解答用紙にこの分類を書くわけではありませんし、公式に定められた解答手順でもありません。ただし、科目から借方・貸方を確認するときの基本的な方法として役立ちます

慣れてくると、科目を見た瞬間に借方・貸方が浮かぶようになります。それでかまいません。迷ったときに戻れる道筋として、この分類を持っておいてください。


7.複合仕訳

1つの取引に、3つ以上の勘定科目が関係することがあります。

たとえば次のような場合です。

  • 代金の一部を現金で受け取り、残額を掛けとした
  • 前もって受け取っていた分を充当し、残りを現金で受け取った
  • 給料の総額から源泉徴収額を差し引いて支給した
  • 振込手数料を差し引かれた金額が入金された

こうした取引では、借方または貸方に複数の科目が並びます。

7-1.分けて整理する

複合仕訳でつまずくのは、1つの金額だけを見て仕訳を書いてしまう場合です。次のように分けてください。

① どの科目が増えたか ② どの科目が減ったか ③ それぞれいくらか

条件が複数書かれているときは、条件ごとにどの科目・金額へ影響するかを確認し、問題文を最後まで読み直します。

7-2.借方と貸方の科目数はそろわない

複合仕訳では、借方に2科目・貸方に1科目、というように左右の科目数が違うことがあります。 科目数をそろえようとすると、かえって誤ります。そろえるのは科目数ではなく、金額の合計です。


8.金額を確定する

金額には、問題文に書かれている数字をそのまま使う場合と、計算して求める場合があります。

金額の型
そのまま使う 「商品を〜円で仕入れた」の仕入額
差額を求める 総額から一部受取額を引いた残額/総額から控除額を引いた支給額
合計する 本体価格に付随費用を加えた取得原価
割り戻す 税込金額から本体価格と税額を分ける
期間で按分する 決算整理で当期分と翌期分に分ける

それぞれの計算方法は、各単元で学んだとおりです。 ここで確認したいのは、「そのまま書く金額」なのか「計算して求める金額」なのかを最初に見分けることです。

問題文に金額が2つ以上出てきたら、そのうちどれが解答に使う金額かを確かめてください。書かれている数字をすべて仕訳に書くとは限りません。


9.年度ラベルを確認する

受験する年度によって、出題の対象となる処理や使える勘定科目が異なる場合があります。当サイトの教材では、そうした論点に年度のラベルを付けています。

第1問を解くときは、自分が受験する年度のラベルが付いた問題を解いているかを確認してください。年度のラベルが付いた問題は、その年度の受験者向けです。

それぞれの論点が、どの年度で出題対象になるのかという詳しい内容は、該当する各単元で確認してください。このページは両方の年度に共通する攻略の考え方を扱います。


10.最後に検算する

仕訳を書いたら、次を確認します。

順番 確認すること
取引内容——問題文の取引と、書いた仕訳が合っているか
勘定科目——正式科目を使っているか。似た科目と取り違えていないか
金額——そのまま使う金額と、計算した金額が正しいか
借方・貸方——増減の向きと合っているか
貸借合計——借方合計と貸方合計が一致しているか

10-1.区別して確認したい科目

②では、次のような科目を区別して確認します。

区別して確認する対象
売掛金 と 未収入金
買掛金 と 未払金
前払金 と 前払家賃
前受金 と 前受家賃
現金 と 普通預金

10-2.貸借一致だけでは正解を保証できない

⑤の貸借合計の一致は、必要な確認です。しかし、貸借が一致していれば仕訳が正しい、ということにはなりません。

誤りの型 貸借合計
借方と貸方を同じ金額で誤った 一致したまま
勘定科目を取り違えた 一致したまま
借方と貸方を逆に書いた 一致したまま

貸借合計の一致は、借方合計と貸方合計が一致しているかを確かめる確認の一つです。不一致があれば、金額・借貸・転記などに誤りがある可能性があります。一方、科目や取引内容を誤っていても貸借が一致する場合があるため、①〜④も別に確認します。

見直しに使える時間の配分や、試験全体をどの順番で解くかは、「本試験の時間配分と見直し」で扱います。


11.本試験形式へ進む

このページで確認した流れをまとめます。

段階 確認すること
① 取引を読む 何をしたのか
② 処理段階・決済方法を確認 日常取引か決算整理か/何で決済したか/何を計上・消去・振替するか
③ 勘定科目を決める 取引の原因から科目へたどる(正式科目を使う)
④ 5要素を確認 資産・負債・純資産・収益・費用のどれか
⑤ 増減を確認 増えたのか、減ったのか
⑥ 借方・貸方を決める 増減の向きから左右へ
⑦ 金額を確定 そのまま使うのか、計算するのか
⑧ 検算 取引内容・科目・金額・借貸・貸借合計

この流れは、当サイトが整理した基本的な攻略の手順です。 日本商工会議所が公式に定めた解答手順ではありません。慣れてきたら段階をまとめて処理してかまいませんし、問題によっては順番が前後します。迷ったときに戻れる道筋として使ってください。

流れが確認できたら、本試験形式の第1問(仕訳問題)へ進みます。そこでは、複数の論点が混ざった問題を、実際に1セットとして通しで解きます。

11-1.このページで扱わないこと

内容 扱う単元
試験全体の構成、第1問・第2問・第3問の位置づけ、当サイトの配点設計 本試験形式の全体像
帳簿・資料問題の読み取り方 第2問(帳簿・資料問題)の攻略
決算総合問題の解き方 第3問(決算総合問題)の攻略
試験全体の時間配分、解く順番、見直しに使う時間 本試験の時間配分と見直し
各論点そのものの処理方法 商品売買・現金預金・債権債務・固定資産・純資産・税金・訂正仕訳・決算整理・経過勘定・帳簿締切の各単元
本試験形式の1セットとして通しで解く演習 本試験形式の第1問(仕訳問題)

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