費用の未払いと収益の未収(見越し)|決算日の左側を足す

① 見越しとは

このページでは、お金がまだ動いていないのに、当期分の費用・収益がすでに発生している場合の決算整理を学びます。これを見越しといいます。

  • 未払:当期分の費用が発生済みだが、まだ支払っていない
  • 未収:当期分の収益が発生済みだが、まだ受け取っていない

いずれも決算で、当期分を追加で計上します。

この単元を貫く一行は次のとおりです。

支払・受取が先なら、決算日より後に属する翌期分を当期から除く(繰延)。費用・収益の発生が先なら、決算日までの未計上当期分を加える(見越し)。


② 未払とは

未払は、当期分の費用がすでに発生しているのに、支払日がまだ来ていない状態です。

たとえば借入金の利息が後払いの契約なら、決算日の時点で1円も支払っていなくても、借りたお金を使った期間の分はすでに発生した費用です。計上しなければ、当期の費用が実態より少なくなってしまいます。

支払う義務が残るので、相手勘定は負債になります。


③ 未収とは

未収は、当期分の収益がすでに発生しているのに、受取日がまだ来ていない状態です。

当社が貸す側なら、貸した期間の分の利息はすでに発生した収益です。受け取る権利が残るので、相手勘定は資産になります。


④ 未払と未収の対称関係

何が発生済みか 決算で行うこと 相手勘定 5要素
未払 当期分の費用 費用を増やす(借方) 未払利息など 負債(貸方)
未収 当期分の収益 収益を増やす(貸方) 未収利息など 資産(借方)

未払 = 費用の増加 + 負債の増加 未収 = 資産の増加 + 収益の増加

権利になるのが未収、義務になるのが未払です。


⑤ 未払の基本仕訳

×3年3月31日 決算にあたり、3月分の事務所家賃 ¥43,000 が未払いであり、まだ記帳していない。

借方科目 金額 貸方科目 金額
支払家賃 43,000 未払家賃 43,000

検算:借方 43,000 = 貸方 43,000 ✓

  • 借方の理由:当期分の費用なので、支払家賃(費用)を増やす。費用の発生は借方です。
  • 貸方の理由:まだ支払っていないので、支払う義務として未払家賃(負債)を計上します。

⑥ 未収の基本仕訳

×3年3月31日 決算にあたり、貸している倉庫の3月分の家賃 ¥35,000 をまだ受け取っておらず、記帳もしていない。

借方科目 金額 貸方科目 金額
未収家賃 35,000 受取家賃 35,000

検算:借方 35,000 = 貸方 35,000 ✓

  • 借方の理由:まだ受け取っていないので、受け取る権利として未収家賃(資産)を計上します。
  • 貸方の理由:当期分の収益なので、受取家賃(収益)を増やす。収益の発生は貸方です。

⑤と比べてください。 費用側は借方から、収益側は貸方から埋まります。5要素の発生側どおりです。


⑦ 未払利息・未払給料・未払家賃

もとの費用ごとに、内容を表す具体的な科目を使います。

もとの費用 未払分の科目 5要素
支払利息 未払利息 負債
給料 未払給料 負債
支払家賃 未払家賃 負債

⑧ 未収利息・未収家賃

収益側も同じ規則です。

もとの収益 未収分の科目 5要素
受取利息 未収利息 資産
受取家賃 未収家賃 資産

見越し処理をしても、もとの費用・収益が何だったかは科目名に残ります


⑨ 未払金との違い

名前が似ていますが、未払金は別の科目です。

科目 何に使うか 扱う単元
未払金 備品など商品以外のものを取得し、代金がまだ未払いのとき C05-T05「未収入金・未払金」
未払利息・未払給料・未払家賃 利息・給料・家賃など、時の経過で発生する費用の未払分 C09-T05(このページ)

未払金は取引そのものが終わって金額が確定した債務、未払利息などは期間の経過にもとづいて見越した債務です。


⑩ 未収入金との違い

収益側も同じ関係です。

科目 何に使うか 扱う単元
未収入金 固定資産の売却など、商品以外の取引の代金がまだ未回収のとき C05-T05
未収利息・未収家賃 利息・家賃など、時の経過で発生する収益の未収分 C09-T05(このページ)

未収入金・未払金の詳しい処理は C05-T05 が扱います。


⑪ 月割で未計上の当期分を求める

見越しでは、まだ支払・受取をしていない契約について、決算日までに発生済みで、まだ記帳していない当期分を求めます。契約総額が示されている場合は、その総額から1か月分を求め、決算日までに発生した月数分だけを見越計上します。

1か月分 × 決算日までに経過した月数 = 未払額/未収額

借入金の利息は、×2年12月から×3年5月までの6か月分 ¥162,000 を×3年5月末にまとめて支払う契約である。決算日(×3年3月31日)まで利息を記帳していない。毎月同額とする。

手順1 1か月分を求める。

162,000 ÷ 6か月 = ¥27,000

手順2 決算日までに経過した月数を数える。

“` ×2年12/1 ────────── ×3年3/31 決算 ──── ×3年5/31 支払い │← 経過済み:12〜3月の4か月 →│(支払いはまだ先) “`

12・1・2・3 の 4か月

手順3 未払額を求める。

27,000 × 4か月 = ¥108,000

決算日より後の4月・5月分は翌期の費用なので、当期の計算には入れません。

利息の総額が示されず、元本と年利率が示される場合は、次の式で求めます。

元本 × 年利率 × 経過月数 ÷ 12

日割で計算する条件は扱いません。


⑫ 前払・前受との違い

繰延(C09-T03・C09-T04)と見越し(このページ)は、数える側が逆になります。

お金 期間 決算で行うこと 数える側
前払(C09-T03) 支払済み 翌期分が混ざる 費用を減らす 決算日の右側
前受(C09-T04) 受取済み 翌期分が混ざる 収益を減らす 決算日の右側
未払(このページ) まだ 当期分が発生済み 費用を増やす 決算日の左側
未収(このページ) まだ 当期分が発生済み 収益を増やす 決算日の左側

問題文で、当期分が発生済みか、支払・受取済みか、翌期分が含まれるかを確認してから、繰延か見越しかを判断します。単に「未払い・未回収」という語だけで決めず、期間帰属を確認してから月数を数えてください。

見越しでは現金・普通預金は登場しません。お金が動くのは翌期の支払日・受取日だからです。決算整理の仕訳にお金の科目が出てきたら、構造の読み違いを疑ってください。


⑬ 未払費用・未収収益という表示総称

未払費用・未収収益は、貸借対照表で使う表示上の総称です。日本商工会議所の勘定科目表では、未払利息・未払給料・未払家賃・未収利息・未収家賃などの具体的な科目がA欄に、未払費用・未収収益がB欄に置かれています。

本教材では、仕訳の解答に具体的な科目を用い、貸借対照表では次のように読み替えます。

仕訳で使う科目 貸借対照表の表示
未払利息・未払給料・未払家賃 未払費用
未収利息・未収家賃 未収収益

なお、問題文で使用する勘定科目が指定されている場合は、その指定に従ってください。

貸借対照表への表示そのものは、C15-T03「貸借対照表(勘定式)」・C15-T04「決算整理からの財務諸表作成」で扱います。


⑭ 翌期首の再振替について

決算で計上した未払分・未収分は、翌期首に反対仕訳で戻します。これを再振替といいます。

再振替の仕訳、再振替後に利払日を迎えたときの処理、経過勘定の一巡は、C09-T06「再振替仕訳と経過勘定の一巡」が扱います。

このページで扱うのは、決算日(3月31日)の見越計上までです。


⑮ 4種類をまとめて扱う決算整理について

前払・前受・未払・未収の4種類が同時に資料へ並ぶ決算整理は、C14-T07「経過勘定の決算整理」が扱います。

このページでは、未払と未収の2つを対比しながら確実にするところまでを目標にします。


⑯ まとめ

借方 貸方
未払 支払利息・給料・支払家賃 など(費用の増加) 未払利息・未払給料・未払家賃(負債)
未収 未収利息・未収家賃(資産) 受取利息・受取家賃 など(収益の増加)

金額の求め方は次のとおりです。

1か月分 × 決算日までに経過した月数 = 未払額/未収額 利息は「元本 × 年利率 × 経過月数 ÷ 12」でも求められる


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